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親族扶養義務 計算ツール|民法877条の扶養範囲・月額目安・生活保護との関係

親族扶養義務を、親の年収と子の年収から月額目安として試算します。日本では民法877条により直系血族と兄弟姉妹に扶養義務が定められ、生活保持義務(夫婦・未成熟子)生活扶助義務(親と成人子・兄弟姉妹)を区別する必要があります。生活保護法4条2項の扶養照会や家庭裁判所の審判事例、標準算定方式(養育費・婚姻費用)との違いまで、法務省・厚生労働省・最高裁判所の一次資料に照らして整理しました。

最終更新:2026-08-05/監修:計算ツールズ編集部

親族扶養義務 計算機

計算の考え方

本ツールの計算式

親の月間不足額 = 親の月間生活費 − 親の月収(年収 ÷ 12)

子の可処分月収 = 子の年収 × (1 − 税社保率0.25) ÷ 12 − 家族の最低生活費

扶養月額 = min(親の不足額, 子の可処分月収 × 分担率)

親族扶養は「余裕がある場合に、無理のない範囲で援助する」のが原則です。子が自身と自身の配偶者・未成熟子を扶養した残余の可処分所得から、親の不足額に応じて分担額を算出します。分担率は家裁の実務で概ね10〜20%程度が目安ですが、法定の一律基準はなく、当事者の合意または家庭裁判所の審判で個別決定されます。

「生活を保持する義務」と「生活を扶助する義務」

民法上、扶養は同一の条文でも質の異なる2つの義務が並存します。夫婦間・親と未成熟子(概ね20歳未満または大学在学中)は生活保持義務(自らと同じ水準の生活を保障する)、成年に達した子と親、兄弟姉妹の間は生活扶助義務(自らの生活を犠牲にせず余力の範囲で援助する)というのが判例・通説です(最高裁昭和42年判例、最高裁昭和54年判決)。

養育費・婚姻費用の標準算定方式との違い

離婚・別居時の子の養育費や配偶者への婚姻費用は、司法研修所の標準算定方式(2019年改訂)により具体的な算定表があります。一方、成年子から老親への扶養や兄弟姉妹間の扶養には統一算定表がなく、個別事情による審判・調停で決まる点に注意が必要です。

扶養義務の2類型

類型生活保持義務生活扶助義務
対象夫婦間・親→未成熟子成年子→親・兄弟姉妹間
義務の重さ自らと同水準の生活を保障余力の範囲で援助
金額の考え方収入按分・標準算定方式個別事情による審判
典型例養育費・婚姻費用老親扶養・兄弟援助
優先度自らを削っても実施自らの生活を守った上で
公的支援との関係受給要件に強く影響扶養照会の対象だが原則任意

老親を扶養する成年子の義務は生活扶助義務のため、自身と自身の家族の生活を維持することが優先されます。「親を助けるために自分の家族が困窮する」ような扶養は法律上要求されません。

義務の範囲(民法877条)

民法877条1項:直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。

民法877条2項:特別の事情があるときは、家庭裁判所は、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。

絶対的扶養義務者と相対的扶養義務者

区分範囲成立条件
絶対的義務者直系血族(親・子・祖父母・孫)・兄弟姉妹民法877条1項により当然に発生
相対的義務者おじ・おば・甥・姪・いとこの一部(三親等内親族)特別の事情があり家裁の審判があった場合のみ
対象外四親等以上・姻族(直系姻族を除く)原則として扶養義務なし

離婚した元配偶者は扶養義務者ではありません。連れ子(継子)との養子縁組をしていない場合も、法律上の扶養義務は発生しません。

年収別 扶養月額の目安

子の年収別に、老親(生活費18万円/月、収入なし)を扶養する場合の月額目安です。家族構成別に、実務での目安として整理しました(あくまで参考値、家裁の審判により個別決定されます)。

子の年収単身夫婦夫婦+子1人夫婦+子2人
300万円1.0〜1.5万円0.5〜1.0万円0円〜0.5万円0円(困難)
400万円1.5〜2.5万円1.0〜1.8万円0.5〜1.0万円0円〜0.5万円
500万円2.5〜3.5万円2.0〜3.0万円1.0〜2.0万円0.5〜1.0万円
600万円4.0〜5.0万円3.0〜4.0万円2.0〜3.0万円1.0〜2.0万円
700万円5.0〜6.5万円4.0〜5.5万円3.0〜4.5万円2.0〜3.5万円
800万円6.5〜8.0万円5.5〜7.0万円4.0〜5.5万円3.0〜4.5万円
1000万円8.0〜10万円7.0〜9.0万円5.5〜7.5万円4.0〜6.0万円
1500万円10万円超9.0〜12万円7.0〜10万円5.5〜8.0万円

兄弟姉妹が複数いる場合は、上記金額を人数で按分するのが基本です(年収比按分・均等按分などケースにより異なる)。ただし、疎遠・非協力の兄弟がいる場合には、実際に扶養する者が全額負担する事例も少なくありません(後日の求償請求は可能)。

生活保護と扶養照会

生活保護法4条2項の位置づけ

生活保護法4条2項:民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。

生活保護は、民法上の扶養義務者による扶養が期待できない場合の最後のセーフティネットです。生活保護の申請があると、福祉事務所は原則として扶養照会(親族に扶養可否を問い合わせる書類)を実施します。ただし2021年の厚生労働省通知「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」の改訂で、以下の場合は扶養照会を省略できると明示されました。

  • DV・虐待の加害者にあたる可能性がある扶養義務者への照会
  • 20年以上音信不通など、著しく関係が疎遠な扶養義務者
  • 扶養義務者自身が生活保護受給・要保護状態にある場合
  • 照会により本人の自立に支障をきたすおそれがある場合

また、扶養照会に対して扶養できないと回答した場合、金銭援助を強制されることはありません。扶養照会は「意思確認」であり、行政による扶養命令ではない点が誤解されがちです(自治体・福祉事務所の説明義務あり)。

家庭裁判所の実務

調停・審判の流れ

親族間で扶養額の話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に扶養調停の申立てができます(家事事件手続法別表第二の8項)。調停で合意できない場合は、審判に移行し、裁判官が具体的金額・支払方法を決定します。

審判で考慮される主な要素

扶養権利者側の要素

年齢・健康状態・収入・資産・生活費(住居費・医療費・介護費)・年金受給額・現在の生活状況・過去の生活歴。要介護状態にある高齢親の場合、介護報酬相当額の生活費が加算されることも。

扶養義務者側の要素

収入・資産・家族構成(配偶者・子)・自身の家族の生活費・住宅ローン・教育費・自身の健康状態。複数の扶養義務者間の分担も、各人の資力に応じて按分するのが原則。

過去の家族関係

親から虐待を受けた過去、長年の音信不通、親から相続や贈与を多く受けた履歴などを考慮。極端に関係の悪い当事者では、扶養義務が大幅減額または免除される審判例あり。

扶養の方法

金銭給付が原則ですが、同居扶養(自宅に引き取る)・現物給付(食料・介護等の直接提供)も認められます。当事者間の合意があれば柔軟な方法が選べます。

主な相談ケース

低年金の親を成年子が扶養

老親の年金だけでは生活費が不足するケース。子が複数いる場合は分担額を按分する。親が特別養護老人ホームや介護施設に入所する場合、施設利用料の一部負担も含めて算定。

要介護親の在宅介護費用

介護保険の1〜3割自己負担、日用品費、おむつ代、通院交通費、家屋改修費など介護保険適用外の費用が扶養義務に含まれる。介護休業給付金・障害年金の受給有無も考慮。

兄弟姉妹間の分担・求償

兄弟姉妹の1人だけが親を扶養している場合、他の兄弟姉妹に対して過去分の扶養料を求償できる(民法879条・880条)。時効(民法166条:5年)に注意。

生活保護申請時の扶養照会

親が生活保護申請したときの子への扶養照会。回答は任意で、援助不可と回答して問題なし。ただし援助可能な場合の申告漏れは後日返還請求の対象となる可能性がある。

音信不通の親の扶養請求

疎遠だった親からの突然の扶養請求。義務は法律上あるが、家裁調停で過去の関係を考慮した減額・免除が認められる審判例あり(最高裁昭和40年判例参考)。

養子と実親の扶養義務

普通養子は実親・養親の双方に扶養義務あり(民法817条の2による特別養子縁組の場合は実親との関係断絶)。実親からの扶養請求を拒否できないケースが問題化しやすい。

よくある間違い・注意点

  • 「扶養義務がある=月額いくらと決まっている」と誤解 — 一律の法定金額は存在しません。当事者合意または家裁の個別判断で決定。標準算定方式は養育費・婚姻費用のためのもので、老親扶養には直接適用されません。
  • 扶養照会=強制的な支払命令と誤解 — 扶養照会は「意思確認」であり、援助拒否は自由です。福祉事務所が扶養義務を強制する法的権限はありません。
  • 離婚した元配偶者への扶養義務があると誤解 — 離婚により配偶者間の扶養義務は消滅します。ただし未成熟子の養育費は別問題。
  • 「兄弟のうち収入が多い1人が全額」と誤解 — 民法の原則は分担。ただし他兄弟の非協力・所在不明時は事実上1人負担となり、後日の求償請求が実務上の解決手段。
  • 老親の借金まで肩代わりする義務があると誤解 — 扶養義務は生活費相当額であり、親の負債返済は含みません。相続放棄・限定承認と混同しないよう注意。
  • 「子ども名義の預金は親の資産」と誤解 — 生活保護要否判定で、名義人が別人の預金は原則資産にカウントされません。扶養義務の考慮要素ですが、子の資産を親の生活費に強制的に流用させる制度ではありません。
  • 過去の扶養不履行に対する慰謝料請求ができると誤解 — 扶養義務違反は原則的に慰謝料の対象になりません。求償請求は可能ですが、5年の消滅時効(民法166条)に注意。

関連する法令・審判基準

  • 民法877条 ― 扶養義務者の範囲。直系血族・兄弟姉妹は当然に扶養義務者、三親等内親族は家裁の審判で義務者になり得る。
  • 民法878条〜881条 ― 扶養の順位・程度・方法・変更・処分の禁止。扶養請求権は差押禁止(民事執行法152条1項1号)。
  • 生活保護法4条2項 ― 民法上の扶養が生活保護に優先。ただし扶養は義務者の任意で、強制ではない。
  • 厚生労働省 生活保護法による保護の実施要領(令和3年通知改訂) ― 扶養照会を省略できる場合を明示。DV・虐待・音信不通・自立支障のケース。
  • 司法研修所 標準算定方式(2019年改訂) ― 養育費・婚姻費用の算定表。老親扶養には直接適用外だが、家裁の参考資料として引用されるケースあり。
  • 家事事件手続法別表第二の8項 ― 扶養調停・審判の管轄と手続。相手方住所地の家庭裁判所に申立。
  • 民法166条 ― 債権の消滅時効(5年)。過去の扶養料求償請求時に注意。
  • 民事執行法152条1項1号 ― 扶養料債権は差押禁止(給料・手当の1/2まで差押不可の特則あり)。

参考文献・公的資料(発リンク)

※本ページの計算結果はあくまで概算目安であり、法的効力はありません。扶養義務の具体的な金額・方法は、当事者間の合意または家庭裁判所の調停・審判で個別に決定されます。生活保護申請、扶養調停、遺産分割等の実務対応にあたっては、必ず弁護士・司法書士・自治体の福祉事務所など有資格者にご相談ください。特にDV・虐待の履歴がある場合は、弁護士や女性相談センター等の専門機関にご連絡ください。

よくある質問(FAQ)

親族扶養義務は誰にある?

民法877条1項により、直系血族(親・子・祖父母・孫)と兄弟姉妹は互いに扶養義務を負います。三親等内の親族(おじ・おば・甥・姪等)は特別事情があり家裁の審判があった場合のみ義務者となります。四親等以上の親族や姻族(配偶者の親等)には原則として扶養義務がありません。

扶養義務は拒否できる?

老親扶養は生活扶助義務のため、自身の生活を犠牲にしてまで援助する義務はありません。生活困窮・失業・自身の家族扶養で余裕がない場合は、扶養照会に「不可」と回答して問題ありません。家裁の調停でも収入・家族構成に応じた減額・免除が認められる審判例があります。

生活保護と扶養の関係は?

生活保護法4条2項で「扶養は保護に優先」と定められますが、これは扶養が実現できる場合に限ります。扶養照会は意思確認であり、援助拒否は自由。福祉事務所は扶養義務を強制する法的権限を持ちません。2021年の厚生労働省通知でDV・音信不通等の場合は照会自体を省略できるようになりました。

兄弟姉妹間の分担はどう決まる?

民法879条は「扶養の程度・方法は当事者の協議で決まり、まとまらない場合は家裁が決定」と規定します。原則は収入や資力に応じた按分ですが、地理的近さ・過去の親との関係・介護の実労働などを総合考慮。1人が全額負担した場合、他兄弟に対する求償請求が可能です(5年の消滅時効に注意)。

介護費用は扶養に含まれる?

介護保険1〜3割自己負担、施設利用料の食費・居住費、日用品費、通院交通費、家屋改修費等は生活費と一体として扶養義務の範囲に含まれます。要介護状態が重い場合、月10万円以上の負担も珍しくないため、家裁調停で分担割合を明確にする事例が増えています。

音信不通だった親から扶養請求が来た

民法上の扶養義務は音信不通でも法的には維持されますが、家裁調停で過去の関係悪化や虐待歴を考慮し、大幅減額または免除される審判例があります。DV・ネグレクト・遺棄などの記録があれば書面・診断書・第三者証言等で証明準備が有効。まず法テラス(民事法律扶助)や弁護士に相談を。

親の借金は肩代わりする義務がある?

扶養義務は生活費相当額で、親の借金返済は含まれません。親の死亡後の相続放棄・限定承認(家裁申立3か月以内)と混同しないよう注意が必要。存命中の親の債務については、原則として子に返済義務は生じません(保証人になった場合を除く)。

離婚した元配偶者に扶養義務はある?

離婚により配偶者間の扶養義務は消滅します。ただし未成熟子の養育費は父母双方の義務として離婚後も継続。元配偶者の親(元舅・元姑)に対する扶養義務も離婚により消滅します。

扶養義務者の税制優遇は?

扶養控除(所得税38万円・住民税33万円)、老人扶養親族控除(58万円)、同居老親等控除(58万円+住民税45万円)等の税制優遇があります。生計を一にする70歳以上の親を扶養する場合、勤務先の年末調整または確定申告で扶養控除を申請できます(所得税法84条・85条)。

扶養調停の申立ての費用は?

家庭裁判所への調停申立て手数料は1件1200円(収入印紙)+郵券約1000円、比較的低額です。弁護士に依頼する場合は着手金15〜30万円+成功報酬が目安。経済的に困難な場合、法テラス(民事法律扶助制度)で弁護士費用の立替・免除が受けられる場合があります。

扶養料の支払は差押禁止?

受け取る側(扶養権利者)にとって、扶養料債権の1/2までは差押禁止です(民事執行法152条1項1号)。支払う側(扶養義務者)については、給与から扶養料を差押えできる特則があり、通常の1/4ではなく1/2まで差押可能(民事執行法152条3項)。養育費・婚姻費用と同じ強い履行確保が図られています。

親を引き取って同居扶養する方法は?

金銭給付でなく同居して衣食住を提供する形も扶養方法として認められます(民法879条)。相続税・住宅取得等でメリットもあり、老親居住のための同居用リフォームには介護保険の住宅改修費支給、税制優遇(バリアフリー改修促進税制)も適用されます。ただし介護負担・家族関係悪化のリスク管理は事前に。