共済年金推計(公務員年金)計算機|老齢厚生年金と3階建て年金の月額試算
2015年10月の被用者年金一元化で共済年金は厚生年金に統合されました。本ツールは公務員の加入期間・平均標準報酬月額から、老齢基礎年金(1階)・老齢厚生年金(2階)・年金払い退職給付(3階)の合計受給月額を試算します。報酬比例部分は「平均標準報酬月額 × 5.481/1000 × 加入月数」、基礎年金は「81.6万円 × 加入月数/480」の公式に基づく標準計算。65歳基準の受給額に加え、60〜75歳の繰上げ・繰下げ受給(0.4%/月減額 or 0.7%/月増額)による年額の変動、経過的職域加算(2015年9月以前の共済加入期間)、遺族厚生年金の目安まで、日本年金機構・KKR・地方共済の公式資料に沿って解説します。
共済年金推計 計算ツール
共済年金と厚生年金一元化の経緯
かつて公務員が加入していた「共済年金」は、2015年10月1日の被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律により、厚生年金に統合されました。これに伴い、公務員も民間サラリーマンと同じ厚生年金保険料率(18.30%、労使折半9.15%)を負担することになり、「共済のほうが手厚い」という時代は終焉。ただし、2015年9月30日以前の共済加入期間については「経過的職域加算」として旧共済3階部分の給付が残っています。
現在の公務員年金は3階建て。1階が全国民共通の老齢基礎年金(20〜60歳の国民年金加入期間に応じて満額81.6万円/年)、2階が民間と共通の老齢厚生年金(報酬比例部分)、3階が公務員独自の年金払い退職給付(2015年10月以降の加入期間に対応)。標準報酬月額40万円・35年勤続の代表モデルで、月額約17〜18万円(1階6.8万円+2階9.5万円+3階1万円弱)が2026年時点の受給水準です。
計算式(基礎・報酬比例・年金払い退職給付)
1. 老齢基礎年金(1階)
老齢基礎年金(年額)= 816,000円 × 保険料納付月数 / 480月
2026年度の満額は年816,000円(月68,000円)。20〜60歳の40年間(480月)すべて国民年金保険料を納付していれば満額。40年満額で月68,000円、35年加入なら月59,500円。
2. 老齢厚生年金(2階・報酬比例部分)
老齢厚生年金(年額)= 平均標準報酬月額 × 5.481/1000 × 加入月数
2003年4月以降の被保険者期間は上記の一般式。標準報酬月額40万円・35年(420月)加入なら、年額 400,000 × 5.481/1000 × 420 = 920,808円(月76,734円)。2003年3月以前の被保険者期間は「平均標準報酬月額×7.125/1000×加入月数」で計算(賞与を含まない旧式)。
3. 年金払い退職給付(3階)
年金払い退職給付 ≒ 標準報酬月額 × 加入月数 × 0.0225% ×(有期20年 or 終身)
2015年10月以降の加入期間に対応。掛金率0.75%(労使折半、組合員負担)で積立てた原資を、退職後に有期年金(20年)または終身年金として給付。有期分は退職時に一時金選択も可能。月額数千円〜1万円強の上乗せ年金として機能します。
4. 繰上げ・繰下げ受給の調整率
繰上げ:1ヶ月あたり 0.4% 減額(60歳受給で24%減)
繰下げ:1ヶ月あたり 0.7% 増額(70歳受給で42%増、75歳で84%増)
繰上げは1962年4月2日以降生まれから0.4%/月、それ以前生まれは0.5%/月。繰下げは2022年4月以降75歳まで可能。長生きするほど繰下げが有利ですが、健康寿命・生活資金とのバランスが重要です。
5. 総受給月額
年金月額 = (基礎年金 + 老齢厚生年金 + 年金払い退職給付)× 繰上げ・繰下げ調整率 ÷ 12
加入期間×平均報酬別 年金月額表
基礎年金40年満額(月68,000円)を前提に、公務員加入期間と平均標準報酬月額の組み合わせで65歳受給時の年金月額を示したものです。
| 加入期間 | 標準報酬30万 | 標準報酬40万 | 標準報酬50万 | 標準報酬60万 |
|---|---|---|---|---|
| 20年 | 約10.3万円 | 約11.7万円 | 約13.2万円 | 約14.6万円 |
| 25年 | 約11.5万円 | 約13.4万円 | 約15.2万円 | 約17.0万円 |
| 30年 | 約12.7万円 | 約15.0万円 | 約17.2万円 | 約19.5万円 |
| 35年 | 約13.9万円 | 約16.7万円 | 約19.4万円 | 約22.2万円 |
| 40年 | 約15.1万円 | 約18.3万円 | 約21.4万円 | 約24.6万円 |
標準報酬40万円・35年勤続の平均的な公務員モデルで月額約16.7万円、年間200万円。夫婦2人(配偶者は第3号被保険者で基礎年金月6.8万円)なら世帯合計月23.5万円、年282万円が老後の年金収入の目安です。
繰上げ・繰下げ受給の損益分岐
年金は60〜75歳の間で受給開始時期を選べます。早く受け取れば月額は減り、遅くすれば月額が増える仕組みです。
| 受給開始 | 調整率 | 65歳17万→月額 | 累積受給85歳時 |
|---|---|---|---|
| 60歳(繰上げ) | −24% | 129,200円 | 約3,876万円 |
| 62歳 | −14.4% | 145,520円 | 約4,016万円 |
| 65歳(標準) | ±0% | 170,000円 | 約4,080万円 |
| 68歳 | +25.2% | 212,840円 | 約4,341万円 |
| 70歳(繰下げ) | +42% | 241,400円 | 約4,344万円 |
| 75歳(最大繰下げ) | +84% | 312,800円 | 約3,754万円 |
損益分岐年齢の目安
- 65歳 vs 70歳繰下げ:81歳11ヶ月で累積が逆転。それ以降長生きすれば繰下げが有利。
- 65歳 vs 75歳繰下げ:86歳11ヶ月で累積が逆転。90歳超まで長生きする自信があれば有利。
- 65歳 vs 60歳繰上げ:76歳8ヶ月で累積が逆転。それ以前に亡くなれば繰上げが有利。
日本人男性の平均寿命81歳、女性87歳を踏まえると、健康な人・貯蓄に余裕のある人は繰下げ、健康不安・生活資金に余裕がない人は65歳受給が現実的な選択肢です。
経過的職域加算とは
2015年10月以前に共済組合員だった期間については、旧共済3階部分に相当する「経過的職域加算」が上乗せ支給されます。2015年9月30日時点の加入期間に応じて計算され、当該期間分の1階(基礎)・2階(報酬比例)に加えて3階として支給。1985年以降に採用された公務員は30年程度の共済加入期間があるため、月額数千〜1万円程度の上乗せがあるのが一般的です。
経過的職域加算の計算式
経過的職域加算(年額)= 平均標準報酬月額 × 給付乗率 × 2015年9月以前の加入月数
給付乗率は0.7125/1000〜1.425/1000で、加入期間・退職事由・障害有無で変動。詳細は所属共済組合の年金定期便で確認できます。
遺族厚生年金・障害厚生年金
遺族厚生年金
公務員(厚生年金加入者)が在職中に死亡、または退職後に一定要件を満たして死亡した場合、遺族に遺族厚生年金が支給されます。年額は原則老齢厚生年金の3/4で、標準報酬40万・35年勤続なら月額約57,000円が終身給付。配偶者・子(18歳到達年度末まで)が受給権者。40歳〜65歳未満で子のない妻には中高齢寡婦加算(年約61万円)も加算されます。
障害厚生年金
在職中の傷病で1〜3級の障害状態になった場合、障害厚生年金が支給されます。1級は老齢厚生年金の1.25倍+障害基礎年金1級、2級は老齢厚生年金の1倍+障害基礎年金2級、3級は老齢厚生年金の1倍のみ(最低保証あり)。公務災害(公務中の負傷)の場合は共済独自の公務災害補償も別途あり。
加給年金
老齢厚生年金の受給権者に65歳未満の配偶者または18歳到達年度末までの子がいる場合、加給年金が加算されます。配偶者加給年金は年額228,700円+特別加算で最大41万円。配偶者が老齢基礎年金を受給開始(65歳到達)すると打切り。
公務災害補償との併給調整
公務中の負傷・疾病による障害の場合は、地方公務員災害補償基金・国家公務員災害補償の給付が併給されます。障害厚生年金と公務災害の障害補償年金は調整率0.86〜0.88で調整され、二重取りにはなりません。傷病手当金(共済短期給付)との調整も同様。
特別支給の老齢厚生年金(経過措置)
1961年4月1日以前生まれの男性・1966年4月1日以前生まれの女性は、生年月日に応じて60〜64歳から特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分のみ)を受給可能でした。1966年4月2日以降生まれは適用なく、原則65歳受給スタート。この生年月日別の経過措置は共済加入者にも適用されました。
シミュレーション例(6ケース)
① 定年退職・35年勤続・平均40万
基礎年金68,000円+報酬比例76,700円+年金払い退職給付8,000円=月額約152,700円。年額183万円。夫婦(配偶者は基礎のみ)で世帯月額約22万円、年264万円が老後収入の目安。
② 定年退職・40年勤続・平均50万(管理職)
基礎年金68,000円+報酬比例109,700円+年金払い退職給付15,000円=月額約192,700円。年額231万円。9級管理職まで昇任した公務員の老後モデル。
③ 中途離職・自己都合25年・その後民間15年
公務員期間(平均35万)と民間期間(平均40万)の合算。公務員期間の職域加算あり、民間期間は通常の厚生年金。総額月額約16万円。転職しても厚生年金は通算されるので不利にならない。
④ 早期退職・55歳・以降無職
共済加入32年・平均42万→65歳から月額約15.4万円。55〜65歳の10年間の生活費(月25万×120=3,000万円)を退職金と貯蓄で賄う必要あり。
⑤ 60歳繰上げ受給を選択
65歳基準17万円→60歳繰上げで月額約12.9万円(24%減)。76歳を超えて長生きすれば繰上げは損。健康寿命・生活資金の余裕度で判断。
⑥ 70歳繰下げ受給を選択
65歳基準17万円→70歳繰下げで月額約24.1万円(42%増)。82歳を超えて長生きすれば繰下げが有利。60〜70歳の10年間は退職金・貯蓄・iDeCo一時金で生活。
こんな時に使えます
50代の老後資金計画
退職まで10年前後で年金月額の目安を把握。老後資金計算と併用して不足額を試算し、iDeCo・NISAの追加積立を決定。
年金定期便との突合
毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」の記載額と本ツールの試算値を突合し、加入記録の漏れがないか確認。
繰下げ受給の判断材料
65歳・70歳・75歳の月額と累積受給額を比較して、最適な受給開始時期を選択。健康寿命・貯蓄額と併せて判断。
共働き公務員夫婦の世帯年金
夫婦それぞれが公務員(または一方が民間)の世帯年金合計を試算。老後の月収キャッシュフローの基礎。
配偶者の遺族年金試算
在職中・退職後の死亡時の遺族年金額を試算。生命保険の必要保障額の見直し材料に。
早期退職・セカンドキャリアの判断
55〜60歳での早期退職を検討する際の年金月額シミュレーション。退職手当と併せて生涯収入を試算。
よくある間違い・注意点
- 「共済年金は民間より手厚い」の誤解 — 2015年10月の一元化で厚生年金と同水準に。旧共済3階部分は「経過的職域加算」として残るが、新規加入分は民間と同じ計算式。
- 年金定期便を確認せず概算に依存 — 加入記録の漏れ・給料改定の反映漏れがあると数万円/年の差になる。日本年金機構と共済組合の両方から届く定期便を必ず確認。
- 繰上げ受給を安易に選択 — 一度繰上げると生涯減額が確定し、後から取消不可。障害年金・遺族年金の受給権も一部制限。健康・生活資金に余裕があるなら65歳以降を推奨。
- 繰下げ受給を長生きリスク視点で判断しない — 82歳超まで長生きするなら繰下げが有利、82歳未満で亡くなれば損。両親の寿命・健康状態を参考に判断。
- 在職老齢年金の減額を認識しない — 65歳以降も働いて月給+厚生年金月額が50万円を超えると、超過分の半額が減額。再任用・非常勤で年金停止のリスク。
- 年金受給時の税負担を忘れる — 公的年金は雑所得(公的年金等控除後)として所得税・住民税の課税対象。年金月額20万円なら年約10万円の税負担。手取りベースで生活設計を。
- 配偶者の第3号被保険者期間を過信 — 配偶者が公務員被扶養者だった期間は第3号被保険者として保険料免除。40年満額なら月6.8万円だが、免除期間や未加入期間があれば月5万円台に。
- 加給年金の打切りを認識しない — 配偶者が65歳到達で加給年金(年最大41万円)は打切り。配偶者の年金開始で世帯年金が減少するタイミングに注意。
- iDeCo受取と年金の税制ミス — iDeCoを年金受取(雑所得)にすると公的年金と合算課税で税負担増。一時金受取(退職所得)にすると分離課税で有利になるケースが多い。
- 年金分割制度を認識しない — 離婚時に婚姻期間中の厚生年金保険料納付記録を配偶者と分割できる。3号分割は2008年4月以降、合意分割は婚姻期間全体。離婚予定なら必ず社労士・年金事務所に相談。
- 年金財政の将来見通しを軽視 — 5年ごとの財政検証で所得代替率は現役世代の50%程度への低下が見込まれる。年金だけに頼らず、iDeCo・NISA・退職金運用の3層で老後資金を厚くする視点が必須。
- マクロ経済スライドを認識しない — 少子高齢化に応じて年金給付水準が実質的に抑制される制度。物価上昇率と同じだけ年金額は上がらないため、購買力ベースで見ると微減トレンド。
参考文献・公的資料
共済年金・厚生年金一元化の詳細は、以下の公的機関の資料をご確認ください。
- 日本年金機構 ― 公的年金制度の総合窓口、ねんきん定期便・ねんきんネットの利用案内。
- 日本年金機構「厚生年金と共済年金の一元化」 ― 2015年10月の一元化の公式解説、経過措置と手続き。
- 国家公務員共済組合連合会(KKR) ― 国家公務員の共済年金・退職等年金給付の公式サイト。
- 地方職員共済組合 ― 地方公務員の共済年金・退職等年金給付の公式サイト。
- 警察共済組合 ― 警察職員の共済年金の公式サイト。
- 厚生労働省「被用者年金の一元化」 ― 一元化の政策背景と制度の詳細解説。
- 日本年金機構「繰上げ・繰下げ受給」 ― 60〜75歳の繰上げ・繰下げ受給の減額・増額率と手続き。
- 厚生労働省「年金・日本年金機構関係」 ― 財政検証・年金制度改革の最新情報。
- 国税庁「公的年金等の課税」 ― 公的年金等控除・雑所得としての税制解説。
- 日本FP協会 ― 老後資金・年金設計の総合相談窓口。
- 財務省「社会保障」 ― 年金・医療・介護の給付と負担の全体像、財政検証の背景資料。
よくある質問(FAQ)
公務員35年勤続の年金は?
平均標準報酬40万円で月額約17万円(基礎6.8万+厚生9.5万+退職給付0.7万)。年額約200万円が2026年時点の代表モデルです。
民間との差は?
2015年10月の一元化で厚生年金額はほぼ同水準。ただし公務員独自の年金払い退職給付(3階部分)で月数千〜1万円が上乗せされます。2015年9月以前の加入期間には経過的職域加算あり。
繰上げ・繰下げの目安は?
65歳基準。60歳繰上げで24%減、70歳繰下げで42%増、75歳繰下げで84%増。健康・貯蓄に余裕があるなら繰下げ、生活資金不安なら65歳受給が現実的です。
年金定期便はいつくる?
毎年誕生月に日本年金機構から届きます。50歳未満は加入実績のみ、50歳以上は将来受給見込額の詳細版。ねんきんネットでもいつでも確認可能。
共済年金と厚生年金は別?
2015年10月の一元化で厚生年金に統合。掛金率・給付水準は民間と同じ。ただし旧共済3階部分は「経過的職域加算」として残り、2015年10月以降は「年金払い退職給付」として新設。
退職金と年金は別々?
退職手当(退職手当計算)は退職時の一時金、共済年金は退職後の月次年金。両方セットで公務員の老後保障が完成します。
在職老齢年金の減額とは?
65歳以降も働いて月給+年金月額が50万円を超えると、超過分の半額が年金から減額(在職老齢年金制度)。再任用職員は要注意。
年金にも税金がかかる?
公的年金は雑所得(公的年金等控除後)として所得税・住民税の課税対象。年金月額20万円(年240万円)で年約10万円の税負担。手取りベースで生活設計を。
配偶者の年金は?
配偶者が公務員被扶養者だった期間は第3号被保険者として保険料免除、40年満額なら月6.8万円の基礎年金。共働きなら配偶者にも報酬比例部分あり。
遺族年金はいくら?
公務員(厚生年金加入者)死亡時、遺族に老齢厚生年金の3/4が遺族厚生年金として終身給付。標準報酬40万・35年で月額約5.7万円。中高齢寡婦加算等の加算あり。
離婚時の年金分割は?
婚姻期間中の厚生年金保険料納付記録を配偶者と分割可能。3号分割(2008年4月以降)または合意分割(婚姻期間全体)。詳細は年金事務所・社労士に相談を。
iDeCoは活用できる?
公務員も加入可能で、掛金上限は月1.2万円(2027年から月2.0万円に拡充予定)。全額所得控除で節税、老後はiDeCo一時金受取と年金受取の税制を比較して選択。
マクロ経済スライドとは?
少子高齢化に応じて年金給付水準を実質的に抑制する自動調整の仕組み。名目額は物価上昇に応じて増えるものの、実質的な購買力は微減トレンドが続きます。年金依存を減らす資産形成が重要です。