介護休業給付金 計算ツール|休業前賃金の67%給付・最大93日・社会保険料の扱い完全解説
介護休業給付金は、要介護状態の家族の介護のために雇用保険被保険者が休業する場合に、休業前賃金(休業開始時賃金日額×支給日数)の67%が雇用保険から支給される制度です。対象家族1人につき通算93日まで、最大3回に分割して取得可能で、月額上限は341,298円(賃金月額509,400円相当が上限)。雇用保険加入12か月以上の労働者が対象で、パート・アルバイト・派遣社員でも要件を満たせば申請できます。育児休業給付金(180日目まで67%、以降50%)と異なり、介護休業給付金は67%固定で社会保険料の免除はありません(源泉所得税・住民税は非課税)。本ツールは月収から給付月額を即算出し、対象家族の範囲、申請フロー、育休との違い、介護休暇(時間単位取得)との使い分けまで、厚生労働省・ハローワーク・日本年金機構の公的資料に基づき網羅解説します。
介護休業給付金計算ツール
介護休業給付金とは
介護休業給付金は、育児・介護休業法に基づく「介護休業」を取得した雇用保険被保険者に対して、雇用保険から支給される給付金です。1995年の育児・介護休業法制定時に創設され、当初は賃金の25%給付でしたが、2016年に40%、2017年に67%へと段階的に引き上げられました。少子高齢化に伴う「介護離職」(家族の介護を理由とする離職)を防ぎ、仕事と介護の両立を支援する政策的位置づけです。
厚生労働省「就業構造基本調査」によれば、日本では年間約10万人が介護離職しており、その多くが40〜50代の管理職・専門職。この層の離職は企業にとってもキャリア形成上も大きな損失であることから、介護休業制度・給付金の周知と活用が政策的に推進されています。2025年の育児・介護休業法改正では、介護休暇の時間単位取得の全労働者への拡大、事業主による介護両立支援の個別周知・意向確認の義務化などが導入されました。
計算式と支給日額の考え方
基本式
介護休業給付金 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
休業開始時賃金日額 = 休業開始前6か月間の賃金総額 ÷ 180日
月給30万円の場合の計算例
- 休業前6か月の賃金総額:30万円 × 6か月 = 180万円
- 休業開始時賃金日額:180万円 ÷ 180日 = 10,000円
- 1か月(30日)分の給付金:10,000円 × 30日 × 67% = 201,000円
- 93日分(最大)の給付金:10,000円 × 93日 × 67% = 623,100円
手取り実質率は約80%
介護休業給付金は非課税所得(所得税・住民税がかからない)ですが、社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)は免除されず、給与から控除される仕組みは継続します。ただし、休業中の給与は0円なので、実質的には翌月以降の給与から控除されるか、事業主・従業員間で調整することになります。手取りベースでは、休業前手取りの約80%が実質給付率となります(育児休業給付金の実質80%と類似)。
月収別・介護休業給付金早見表
| 月収(休業前) | 賃金日額 | 給付月額(30日) | 給付93日総額 |
|---|---|---|---|
| 150,000円 | 5,000円 | 100,500円 | 311,550円 |
| 200,000円 | 6,667円 | 134,004円 | 415,412円 |
| 250,000円 | 8,333円 | 167,493円 | 519,229円 |
| 300,000円 | 10,000円 | 201,000円 | 623,100円 |
| 350,000円 | 11,667円 | 234,506円 | 726,970円 |
| 400,000円 | 13,333円 | 267,993円 | 830,779円 |
| 450,000円 | 15,000円 | 301,500円 | 934,650円 |
| 500,000円 | 16,667円 | 335,000円 | 1,038,850円 |
| 509,400円(上限) | 16,980円 | 341,298円 | 1,058,024円 |
| 600,000円 | — | 341,298円(上限) | 1,058,024円 |
月収50万円を超えると支給額は上限341,298円で頭打ちになります。上限額は毎年8月に自動改定される仕組みです。
支給上限・下限一覧(2026年度)
| 項目 | 金額・要件 |
|---|---|
| 賃金日額上限 | 16,980円/日 |
| 支給月額上限(30日) | 341,298円 |
| 賃金日額下限 | 2,869円/日 |
| 支給月額下限(30日) | 57,667円 |
| 給付率 | 67%(固定) |
| 対象家族1人あたり日数 | 通算93日 |
| 分割回数 | 最大3回 |
| 雇用保険加入要件 | 被保険者期間12か月以上 |
| 賃金支払い基礎日数 | 11日以上ある月が12か月以上 |
| 就業日数制限(1支給単位期間) | 10日以下または80時間以下 |
対象家族の範囲(要介護状態)
介護休業給付金の対象となる「家族」は、法律で範囲が定められています。同居・扶養の有無は原則不問ですが、以下の家族が「要介護状態」にあることが必要です。
対象家族の範囲(育児・介護休業法第2条)
- 配偶者(事実婚含む)
- 父母(実父母・養父母)
- 子(実子・養子)
- 配偶者の父母(義父母)
- 祖父母・兄弟姉妹・孫
要介護状態の判定
「要介護状態」とは、負傷・疾病・身体上または精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態です。厚生労働省が定める「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」に基づき、日常生活動作(歩行・排泄・食事・入浴・着脱衣等)の一部または全部で介助が必要な状態を指します。介護保険制度の「要介護認定」を受けていなくても、この基準を満たせば介護休業給付金の対象となります。
雇用保険の受給要件
被保険者期間の要件
介護休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が通算12か月以上あることが必要です。パート・アルバイト・派遣社員でも、雇用保険加入かつこの要件を満たせば申請可能。
有期雇用労働者の要件
雇用期間の定めがある労働者(有期雇用)は、介護休業開始予定日から93日を経過する日から6か月を経過する日までに、雇用契約が満了することが明らかでないことが要件。2022年4月から要件が緩和され、勤続1年以上の要件は撤廃されました。
就業日数・時間の制限
介護休業給付金の支給単位期間(1か月)中、就業した日数が10日以下または就業時間が80時間以下である必要があります。これを超えると当該支給単位期間は不支給。テレワーク等での部分的就業には制限があります。
賃金の支給割合
介護休業中に事業主から賃金が支払われた場合、支給単位期間中の賃金が休業前賃金の80%以上であれば不支給、13%超80%未満の場合は減額支給、13%以下の場合は満額(67%)支給となります。
育児休業給付との違い・介護休暇との使い分け
| 項目 | 介護休業給付金 | 育児休業給付金 | 介護休暇 |
|---|---|---|---|
| 給付率 | 67%(固定) | 67%(180日目まで)→50% | 無給(事業主任意) |
| 期間 | 対象家族1人あたり通算93日 | 子1人あたり原則1年 | 年5日(家族2人以上10日) |
| 分割 | 最大3回 | 最大2回 | 時間単位可 |
| 社会保険料免除 | なし | あり | なし |
| 所得税・住民税 | 非課税 | 非課税 | — |
| 申請先 | ハローワーク(事業主経由) | ハローワーク(事業主経由) | 事業主 |
| 用途 | 長期介護 | 育児 | 通院付添・介護準備 |
93日という限られた期間を有効活用するため、「介護の初期準備(介護保険申請・施設探し・家族会議)」に集中させ、実際の介護は家族分担やプロサービス(訪問介護・デイサービス)に切り替える戦略が推奨されます。介護休暇(時間単位取得可能)は通院付添や急な対応に、介護休業(給付金あり)は長期対応に、と使い分けるのが賢明です。
申請フローと必要書類
- 事業主への介護休業申出(休業開始2週間前まで):介護休業申出書を事業主に提出
- 休業開始:休業中は原則として賃金は支払われない(事業主が任意で支給する場合あり)
- 支給申請書の記入:休業終了後、事業主が「介護休業給付金支給申請書」を作成
- ハローワークへの申請(事業主経由):休業終了日翌日から2か月経過日が属する月の末日までに提出
- 審査・支給決定:ハローワークが要件確認後、指定口座に振込(申請から約1か月)
必要書類
- 介護休業給付金支給申請書(事業主作成)
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- 介護休業申出書(コピー)
- 賃金台帳・出勤簿(休業前6か月+休業期間)
- 住民票等の家族関係を証明する書類
- 対象家族の要介護状態を証明する書類(医師の診断書等)
電子申請のオプション
2020年10月以降、雇用保険関係手続きは電子政府(e-Gov)を通じたオンライン申請が可能となりました。事業主が申請するのが基本ですが、本人からの申請も条件付きで認められています。書面提出と比べて審査期間が短縮される傾向があるため、急ぎの支給希望時は事業主に電子申請を依頼するのも一つの選択肢です。
93日を最大活用する戦略
介護休業93日は「介護そのもの」ではなく「介護体制の構築」に使うのが厚労省・専門家の推奨する戦略です。連続93日を自分ですべて介護に充てると、休業終了時に介護体制がゼロで即・介護離職に直結します。以下のような戦略的分割取得が有効です。
- 第1回(30日):緊急対応・要介護認定申請・ケアマネジャー選定・住宅改修
- 第2回(30日):施設見学・在宅サービス手配・家族会議・金融資産整理
- 第3回(33日):山場対応(入院・手術・看取り)に予備として温存
この間、有給休暇・介護休暇(年5〜10日)・時短勤務制度を並行活用し、介護と仕事の両立を長期的に維持します。93日を使い切っても仕事を継続できる体制を作ることが、最終的な家計と老後資金を守る鍵です。
活用シーン(家族介護・仕事両立)
親の緊急入院・要介護認定申請
親が突然の脳卒中・骨折等で入院し、退院後の介護体制構築が必要な場合。介護休業93日を使って介護保険申請、ケアマネジャー選定、施設見学、住宅改修等の初期準備に集中。
認知症進行への対応
親の認知症診断後、症状悪化への対応と長期介護体制の設計。93日の間に、認知症専門医への通院、成年後見制度の検討、金融資産の整理、家族会議での役割分担を進める。
配偶者のがん・重篤疾患
配偶者ががん治療・大手術で長期療養が必要な場合。93日を分割取得し、手術直後・化学療法期・自宅療養期など、山場ごとに介護休業を組み合わせる戦略。
子のケガ・障害の長期リハビリ
子(成人子含む)が交通事故・スポーツ事故等で長期リハビリを要する場合。育児休業と異なり子の年齢制限がないため、成人した子の介護でも申請可能。
介護離職の回避策
「働きながらの介護」を継続するための時間確保。93日で施設入所・在宅サービス手配を完了させ、その後は時短勤務・介護休暇(年5〜10日)で継続対応するのが典型的な設計。
看取り・葬儀後の遺産整理
末期がん等での看取りが近い場合、家族との時間確保と葬儀後の遺産分割・相続手続きにも介護休業を分割取得可能。事後手続きは介護保険外なので慎重な設計が必要。
よくある間違い・注意点
- 「93日連続」と誤解 ― 93日は通算で、最大3回まで分割取得可能。1回目30日・2回目30日・3回目33日といった柔軟な取り方ができます。連続取得を強制されることはありません。
- 介護保険の要介護認定が必要と誤解 ― 要介護認定を受けていなくても、厚労省の「常時介護を必要とする状態」判断基準を満たせば給付対象。認定申請中でも介護休業は取得可能です。
- 社会保険料が免除されると誤解 ― 育児休業給付金は社会保険料免除がありますが、介護休業給付金には免除制度なし。休業中も健康保険料・厚生年金保険料は継続発生し、給与から控除できないため事業主との調整が必要。
- 賃金の80%以上が支払われると不支給 ― 事業主が善意で高額の休業手当を出すと不支給になります。給付金と併給する場合は、事業主賃金を賃金月額の13%以下に調整すると満額給付。
- 就業日数10日または80時間超で不支給 ― テレワークや軽微な緊急対応での就業も日数・時間としてカウント。1支給単位期間中に10日または80時間を超えると当該期間は不支給となるため、事前に事業主と調整。
- 申請期限を過ぎて失効 ― 支給申請は休業終了日翌日から2か月経過日が属する月の末日まで。事業主経由で提出するため、休業終了時点で事業主と申請スケジュールを確認しておくこと。
- 対象家族の範囲を誤解 ― 兄弟姉妹・祖父母・孫も対象。同居・扶養の有無は原則不問(一部要件あり)。「同居しないと申請できない」は誤りです。ただし、2017年以前は同居要件があったため古い情報に注意。
参考文献・公的資料
より正確な給付要件・申請手続き・法改正情報を確認したい場合は、以下の公的機関の資料を参照してください。
- 厚生労働省 介護休業制度 ― 育児・介護休業法に基づく介護休業制度の公式解説。
- ハローワーク 雇用保険手続き ― 介護休業給付金・育児休業給付金の申請フロー・書式。
- 厚生労働省 介護休業給付金支給申請書(記入例) ― 支給申請書の記入方法と添付書類。
- 日本年金機構 育児・介護休業中の保険料の取扱い ― 介護休業中の社会保険料の扱いに関する公式情報。
- 厚生労働省 介護保険制度 ― 介護保険の要介護認定・給付・在宅サービス。
- 財務省 所得税の非課税所得 ― 介護休業給付金の非課税扱い。
- 国税庁 非課税所得(No.2011) ― 雇用保険給付金の税務上の取扱い。
- 日本FP協会 ― 家族介護と家計・キャリアプランニング。
- 金融庁 ― 介護に関する家計金融資産の運用情報。
- 日本証券業協会 ― 老後・介護資金形成のNISA・iDeCoに関する情報。
よくある質問(FAQ)
社会保険料は免除されますか?
免除されません。育児休業給付金は社会保険料が本人・事業主とも免除されますが、介護休業給付金には免除制度がありません。休業中の給与が0円でも健康保険料・厚生年金保険料は継続発生し、事業主との調整が必要となります。介護休業中も標準報酬月額は休業前の等級で継続します。
源泉所得税・住民税はかかりますか?
非課税です。介護休業給付金は雇用保険法上の失業等給付として所得税・住民税がかかりません(所得税法第9条・地方税法第24条の5)。年末調整・確定申告での申告も不要です。
育児休業給付金との違いは?
育児休業給付金は最初の180日が67%、以降は50%給付+社会保険料免除あり。介護休業給付金は93日間ずっと67%給付、社会保険料免除なし。育休は子1人1年、介護休業は家族1人93日と期間も大きく異なります。育休のほうが手厚い制度設計となっています。
93日を分割して取得できますか?
はい、最大3回まで分割取得可能です。1回目30日・2回目30日・3回目33日といった柔軟な取り方ができ、状況に応じて使い分けられます。ただし合計は93日以内。分割申請は事業主に事前届出が必要です。
パート・派遣社員でも申請できますか?
はい、雇用保険に加入していて要件を満たせば申請可能です。雇用保険被保険者期間が12か月以上(賃金支払基礎日数11日以上の月が12か月以上)あることが基本要件。有期雇用の場合は、休業予定日から93日経過後6か月間の雇用継続見込みが必要(2022年4月要件緩和)。
要介護認定は必要ですか?
介護保険の要介護認定は不要です。厚生労働省の「常時介護を必要とする状態」判断基準(2週間以上の常時介護、日常生活動作の介助が必要)を満たせば対象となります。認定申請中でも介護休業取得は可能で、実務では医師の診断書・診療情報提供書で証明することが多いです。
祖父母・孫の介護でも申請できますか?
はい、対象家族は配偶者・父母・子・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫まで含まれます。2017年の法改正で範囲が拡大され、同居・扶養の要件も原則撤廃されました。ただし、対象家族1人あたり93日で、対象家族が複数いれば別々に93日ずつ取得可能です。
介護休業中に副業してもいい?
介護休業給付金の支給単位期間中に就業日数10日以下または就業時間80時間以下であれば給付対象です。これを超えると当該期間の給付が停止されます。副業・アルバイトも「就業」に含まれるため、事前に事業主と要件を確認してください。
介護休暇との使い分けは?
介護休業は長期対応(93日・給付金あり)、介護休暇は短期対応(年5日・時間単位可・給付金なし)と使い分けます。通院付添や急な対応には介護休暇、施設入所準備や大手術後の看護には介護休業、といった具合。介護休暇は無給ですが、年次有給休暇とは別枠で取得可能です。
申請から入金までの期間は?
休業終了後、事業主を経由してハローワークに申請してから、約1か月で指定口座に振込されます。休業終了日翌日から2か月経過日が属する月の末日までに申請しないと失効するため、事業主と申請スケジュールを事前確認してください。
復職後にすぐ退職しても大丈夫?
介護休業給付金は復職を前提とした給付ですが、復職後に事情変更で退職しても給付金の返還義務はありません。ただし、休業前から退職予定であることが明らかな場合や、休業終了時点で退職が確定している場合は不支給となる可能性があります。
2025年法改正で何が変わった?
2025年4月施行の育児・介護休業法改正で、①介護休暇の時間単位取得を全労働者に拡大、②事業主による介護両立支援の個別周知・意向確認の義務化、③家族介護・仕事両立に関する研修・相談体制整備の努力義務化、が導入されました。介護休業給付金の給付率・日数自体に変更はありません。