遺言書作成費用 計算ツール|自筆・公正証書・秘密証書の総費用+検認+執行を試算
遺言方式(自筆証書・公正証書・秘密証書)と遺産総額・相続人数・専門家依頼有無から、公証人手数料・弁護士報酬・家庭裁判所検認費用・法務局保管制度3,900円・遺言執行者報酬までを一括試算します。相続争い予防・遺留分侵害額請求対策・相続税申告・遺言執行のスムーズ化に必要な費用感を把握できます。2020年施行の「法務局における遺言書保管等に関する法律」により自筆証書遺言でも検認不要・原本保管が可能になり、2019年施行の民法改正(相続法改正)では自筆証書遺言の財産目録がパソコン作成OKになるなど、近年大きく制度が変わりました。民法・公証人法・裁判所実務・日本公証人連合会の公式資料に基づき、実務目線で解説します。
遺言書作成費用ツール
計算式(公証人手数料の算定基準)
公証人手数料は、公証人手数料令(政令)により全国一律で定められています。遺産の額(目的の価額)に応じて階段制で決まり、遺言公正証書の場合は原則として相続人・受遺者ごとに手数料を計算した合計額となります。
公証人手数料 = Σ(受益者ごとの手数料階段額) + 遺言加算11,000円(全体1億円以下)
本ツールは実務上多いパターン(受益者=相続人数)で概算計算しています。実際は分割される遺産額と相続人ごとの受益額に応じて公証役場で見積もりされます。
3種の遺言方式・比較表
| 方式 | 作成方法 | 費用目安 | 検認 | 効力・特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 自筆証書遺言 | 本人が全文・日付・氏名を自筆(財産目録はPC可) | 0-4千円 (法務局保管3,900円) | 要 (法務局保管なら不要) | △ 書式ミス・紛失・改ざんリスクあり。保管制度で改善 |
| 公正証書遺言 | 公証人が公証役場で作成、証人2名立会い | 3-20万円+ | 不要 | ◎ 最確実。原本は公証役場で50年以上保管、無効リスク最小 |
| 秘密証書遺言 | 本人が作成し公証役場で封印手続き(内容非公開) | 1万円+ | 要 | ○ 内容を秘密にできる。使用例は少ない |
遺産1,000万円以上または相続人間で争いの予想される場合は、公正証書遺言が最も安全です。手数料は5万-20万円程度になりますが、無効化リスク・検認の手間・執行トラブルを大きく減らせます。
公証人手数料の階段制
公証人手数料令に定められた手数料の階段は次のとおりです。遺言公正証書は「相続人・受遺者ごとの相続額」を基準に手数料が計算されます。
| 目的価額 | 手数料 |
|---|---|
| 100万円以下 | 5,000円 |
| 200万円以下 | 7,000円 |
| 500万円以下 | 11,000円 |
| 1,000万円以下 | 17,000円 |
| 3,000万円以下 | 23,000円 |
| 5,000万円以下 | 29,000円 |
| 1億円以下 | 43,000円 |
| 3億円以下 | 43,000円+超過5,000万円ごとに13,000円 |
| 10億円以下 | 95,000円+超過5,000万円ごとに11,000円 |
| 10億円超 | 249,000円+超過5,000万円ごとに8,000円 |
これに加えて、目的価額の合計が1億円以下の場合は遺言加算11,000円が上乗せされます。また、正本・謄本交付手数料(1枚250円×枚数)、出張加算(公証人の出張時1.5-2倍)、病床・介護施設への出張旅費・日当等がかかる場合があります。
弁護士・司法書士報酬の相場
| 専門家 | 依頼内容 | 報酬目安 |
|---|---|---|
| 弁護士 | 公正証書遺言の作成サポート(定型) | 10-20万円 |
| 弁護士 | 複雑な遺言(事業承継・複数不動産・海外資産) | 20-50万円+ |
| 司法書士 | 不動産の書き方サポート・登記関連 | 5-10万円 |
| 税理士 | 相続税シミュレーション+遺産分割アドバイス | 5-20万円 |
| 行政書士 | 自筆証書遺言の文案作成(登記・訴訟代理不可) | 3-10万円 |
弁護士に依頼した場合、遺言書作成料に加え、遺言執行報酬・相続紛争発生時の対応料が別途発生します。日本弁護士連合会の旧報酬規定は自由化(2004年)されており、事務所ごとの見積もりが必要です。
遺言執行者の役割と報酬
遺言執行者は、遺言の内容を実現するための法定代理人。相続人代表の役割を担い、遺言書に基づき預貯金解約、不動産登記名義変更、有価証券の名義書換、遺産分割の実行、相続税申告のサポートを行います。2019年の相続法改正で権限が強化されました。
報酬相場
| 遺産額 | 専門家(弁護士等)報酬目安 | 信託銀行報酬目安 |
|---|---|---|
| 3,000万円 | 30-60万円(遺産の1-2%) | 100万円前後(最低報酬) |
| 5,000万円 | 50-100万円(遺産の1-2%) | 110-150万円 |
| 1億円 | 100-300万円 | 150-250万円 |
| 3億円 | 300-500万円 | 500-1000万円 |
信託銀行の遺言信託は最低報酬100-110万円と高額ですが、金融機関ならではの信頼性・長期保管・執行実務のノウハウが強み。個人資産家・相続トラブル予想時は弁護士執行者、単純ケース・資産1億円超は信託銀行執行者という使い分けが実務では一般的です。
法務局保管制度(2020年開始)
2020年7月10日施行の「法務局における遺言書保管等に関する法律」により、自筆証書遺言を法務局が原本保管する制度が始まりました。従来の自筆証書遺言の最大の弱点(紛失・改ざん・発見遅延・書式ミス)が大幅に改善されています。
制度の要点
- 保管手数料は1件3,900円(法務省令)。原本は遺言者死亡後50年、画像データは150年間保管。
- 保管申請時に法務局職員が形式的な要件チェック(自筆かどうか、署名押印、日付有無等)を実施。ただし内容の実質的有効性チェックはない。
- 相続開始後、家庭裁判所の検認手続きが不要。相続人が「遺言書情報証明書」を法務局に請求すれば取得可能。
- 本人が生存中は本人以外は閲覧不可。相続開始後は相続人・受遺者・遺言執行者が閲覧・写しを取得可能。
- 「関係遺言書保管通知」(相続人が閲覧した場合、他相続人にも通知)、「死亡時通知制度」(生前に指定した1名に死亡時通知)などの補助機能もある。
公正証書遺言との比較
法務局保管でも「内容の実質的有効性」まではチェックされないため、遺留分侵害や不明確な条項による将来の紛争リスクが残ります。争いが予想される場合や遺産1,000万円以上は、依然として公正証書遺言のほうが安全です。ただし費用が10分の1程度で済むため、シンプルな相続予定の家庭では法務局保管の自筆証書遺言が第一選択肢となります。
家庭裁判所での検認手続き
公正証書遺言および法務局保管の自筆証書遺言以外は、相続開始後に家庭裁判所での「検認」が必要です(民法1004条)。
検認手続きの流れ
- 相続開始(遺言者死亡)を知ったら、遅滞なく家庭裁判所に検認申立て。
- 申立て時に戸籍謄本(遺言者・全相続人)、遺言書原本、収入印紙800円、連絡用郵便切手を提出。
- 家庭裁判所が全相続人に検認期日を通知(通常1-2ヶ月後)。
- 期日に家庭裁判所で遺言書を開封・閲覧・写真撮影。検認調書作成。
- 検認済証明書(150円)を取得。これで金融機関の名義変更・不動産登記に使える。
検認は遺言書の存在確認・現状保存の手続きであり、遺言の内容が有効かどうかまでは判断しません。相続人全員が参加する必要はありませんが、通知は全員に行われるため相続開始と遺言の存在が全員に知られる点は要注意です。
遺留分・特別受益・寄与分
遺言書があっても、相続人には民法上の最低限保障された取り分「遺留分」があります。遺留分を侵害する遺言があった場合、相続人は「遺留分侵害額請求権」を1年以内に行使できます。
遺留分の割合
| 法定相続人 | 遺留分割合(全体) | 個々の遺留分 |
|---|---|---|
| 配偶者のみ | 1/2 | 1/2 |
| 配偶者+子ども | 1/2 | 配偶者1/4・子全体で1/4 |
| 子どものみ | 1/2 | 1/2を子数で等分 |
| 配偶者+直系尊属 | 1/2 | 配偶者1/3・尊属1/6 |
| 直系尊属のみ | 1/3 | 1/3を尊属数で等分 |
| 兄弟姉妹 | なし | — |
兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言で自由に配分できます。特別受益(生前贈与)・寄与分(介護・事業支援等)による調整も別途あり、遺言書作成時に配慮が必要です。
シーン別・使い方
60-70代・元気なうちの生前準備
遺言書は元気なうち(判断能力があるうち)に作成するのが基本。認知症等の疑いがあると無効主張されるリスク。60代前半での作成が理想。10年ごとに見直しも推奨。
相続争いの予想される家族
再婚家庭(前妻/先夫の子と現配偶者の子)、事業承継、不動産が大部分の遺産、複数相続人での不平等分配など、争いが予想される場合は公正証書+弁護士執行者の組み合わせを強く推奨。
単身・子なし夫婦
配偶者+兄弟姉妹の相続では兄弟姉妹の遺留分がないため、遺言で配偶者に全額相続させることが可能。逆に無ければ兄弟姉妹に法定相続分が渡る。単身者はNPO・自治体への寄付遺言も選択肢。
財産が主に不動産のケース
不動産の分割・共有はトラブルの元。遺言で単独取得者を指定+代償金支払い方式が推奨。遺言執行者に司法書士を選任すると登記までスムーズ。
事業承継
自社株式・事業用資産を後継者に集中させる遺言。他相続人の遺留分対策として、生命保険活用、種類株式発行、経営承継円滑化法の民法特例(除外合意)なども組み合わせる。
ペット・NPO・母校への遺贈
「猫のかいちゃん」に遺す等、法的にペットには相続権がないが、飼育者への負担付遺贈で対応可能。NPO・母校への遺贈は相続税優遇(公益法人等)あり。
よくある間違い・注意点
- 自筆で書式ミス — 全文自筆(財産目録除く)、日付明記、氏名署名、押印の4要件が必須。1つでも欠けると無効です。財産目録は2019年からパソコン作成可能ですが、目録の各ページに署名押印が必要。
- 遺言執行者を未指定 — 執行者がいないと、預貯金解約・不動産登記・株式名義変更のたびに相続人全員の同意書・実印・印鑑証明が必要になり、手続きが数ヶ月〜半年遅れます。争いがなくても指定推奨。
- 遺留分を無視した遺言 — 「長男に全財産」といった遺言は他の子から遺留分侵害額請求が来ます。侵害額の現金支払いが必要になり、想定外の資金負担が発生。生命保険等で対策を。
- 遺産評価額の見積もり違い — 不動産は路線価・固定資産税評価額・実勢価格で乖離があります。相続税は相続税評価額(路線価)、遺留分は実勢価格ベースなど、局面ごとに評価が異なります。
- 共同遺言(夫婦連名等)は無効 — 民法975条で禁止。夫婦がそれぞれ別々の遺言書を作成する必要があります。
- 「見せておく」を忘れる — 遺言書の存在を誰にも知らせず、金庫の中で発見されず相続完了、というトラブルが多発。信頼できる家族・弁護士・法務局保管・公証役場の連絡先メモを残す運用が重要。
- 公正証書=絶対有効ではない — 遺言時の判断能力(遺言能力)が争われるケースあり。認知症診断歴のある方は診断書・意見書を残す等の準備が必要。
参考文献・公的資料
正確な費用・手続き・法令解釈は、以下の公的機関の一次資料を参照してください。
- 法務省 遺言・相続関連情報 ― 相続法改正、遺言書の書き方、法定相続分等の総合案内。
- 法務省 法務局における自筆証書遺言書保管制度 ― 保管手数料3,900円、申請手続き、必要書類、閲覧方法等の公式解説。
- 日本公証人連合会 ― 公正証書遺言の作成手順、公証人手数料令の詳細、全国の公証役場検索。
- 裁判所 検認手続き(自筆証書遺言) ― 家庭裁判所での検認申立ての流れ、必要書類、収入印紙額。
- e-Gov 民法(相続編) ― 遺言の種類・遺留分・遺言執行者・相続の効力に関する条文原文。
- e-Gov 法務局における遺言書の保管等に関する法律 ― 保管制度の法律原文。
- 国税庁 相続税の計算 ― 相続税の基礎控除、税率、申告手続き。遺言との組み合わせ実務。
- 日本弁護士連合会 ― 遺言・相続に関する弁護士業務、法律相談窓口、報酬の目安。
- 日本司法書士会連合会 ― 遺言・相続登記に関する司法書士業務、無料相談窓口。
- 日本税理士会連合会 ― 相続税申告・遺産評価に関する税理士業務。
よくある質問(FAQ)
自筆と公正証書、どちらが良い?
遺産1,000万円以上、または相続人間で争いが予想される場合は公正証書遺言を強く推奨。無効化リスクが極めて低く検認も不要です。シンプルな相続予定の家庭や、生前準備の第一歩としては、法務局保管制度3,900円を利用した自筆証書遺言が費用対効果が高いです。
法務局保管制度とは?
2020年7月10日施行の「法務局における遺言書保管等に関する法律」により、自筆証書遺言を法務局が原本保管する制度。手数料1件3,900円、原本は死亡後50年保管。相続開始後の家庭裁判所検認が不要になり、紛失・改ざんリスクも大幅に軽減されます。
公証人手数料はいくらぐらい?
遺産5,000万円・相続人3名の標準ケースで約5-8万円が目安。遺産1億円で15万円前後、3億円で30万円前後。相続人・受遺者ごとの受益額に応じて計算され、遺言加算11,000円(全体1億円以下の場合)が別途上乗せされます。
遺言執行者は誰を選ぶべき?
信頼できる相続人1名(通常は長男・長女や配偶者)、または利害関係のない弁護士・信託銀行が一般的。複雑な相続や争いが予想される場合は弁護士や司法書士等の専門家を推奨。信託銀行は最低報酬100万円超で高額です。
遺留分とは何ですか?
民法で保障された、法定相続人(兄弟姉妹以外)の最低限の取り分。配偶者+子の場合、全体の1/2が遺留分となります。遺言で遺留分を侵害された相続人は、1年以内に「遺留分侵害額請求」を提起可能。生命保険等で対策が必要です。
遺言書は何回でも書き直せる?
可能です。日付の新しい遺言書が優先されます(民法1023条)。同一方式でなくても構いません。例えば古い公正証書遺言を、後日の自筆証書遺言で撤回・変更することも法的に有効です。ただし混乱を避けるため、古い遺言書は破棄・保管取消しを推奨。
認知症でも遺言書を書ける?
遺言時の判断能力(遺言能力)があれば書けます。ただし後日「無効」と主張される可能性があるため、主治医の診断書、専門医の意見書、公正証書遺言方式、証人による確認記録などで意思能力の証拠を残すことが重要です。
相続税の申告と遺言書の関係は?
遺言書は「誰が何を受け取るか」の指定、相続税申告は「税金を計算・納付する手続き」で別物です。遺言書に基づく分配で相続税額が変わる(小規模宅地等の特例適用の可否等)ため、遺言書作成時に税理士と連携するのが実務的です。
遺言書の効力はいつから?
遺言者の死亡時から発生します(民法985条)。生前は撤回・変更が自由。停止条件付き遺言(例:「大学卒業したら」等)は条件成就時に効力発生。負担付遺贈(「〇〇を介護する条件で」)の場合は負担も履行される必要があります。
遺言書はどこに保管する?
自筆証書は法務局保管3,900円が最推奨。それ以外は自宅の耐火金庫、信頼できる家族、弁護士事務所、信託銀行等の選択肢があります。公正証書遺言は原本を公証役場が50年以上保管するので、正本・謄本のみ手元管理でOK。
財産目録はパソコン作成できますか?
2019年1月13日以降の自筆証書遺言では、財産目録はパソコン・不動産登記事項証明書・預金通帳コピーの添付が可能になりました。ただし目録の各ページに署名押印が必要です。本文は依然として全文自筆が必要です。
遺言書を発見したら開けていい?
自筆証書・秘密証書遺言は絶対に開けてはいけません(民法1005条・過料5万円)。家庭裁判所の検認手続き前に開封すると過料の対象になります。法務局保管制度利用の自筆証書遺言は例外で、相続人が法務局で閲覧可能です。