計算ツール
尿量ICU輸液医療AKI

時間尿量(mL/kg/h)計算ツール|KDIGO AKI基準・乏尿多尿判定・輸液指標

時間尿量(mL/kg/h)を尿量・時間・体重から瞬時に算出。KDIGO急性腎障害(AKI)基準に基づく乏尿・無尿・多尿の自動判定、循環血液量・腎機能・水分バランスの一元評価に対応。ICU・救急外来・術後回復室・透析室・在宅医療の実務で頻用される国際指標を、日本集中治療医学会・日本腎臓学会・日本救急医学会などのガイドラインに照らして解説します。

最終更新:2026-08-08/監修:計算ツールズ編集部

時間尿量(mL/kg/h)計算機

計算式と定義

基本式

時間尿量 (mL/kg/h) = 尿量 (mL) ÷ 時間 (h) ÷ 体重 (kg)

時間尿量は1kgの体重あたり、1時間に排出する尿量を表す国際指標です。単なる総尿量ではなく体重と時間で補正することで、体格差・観察時間差の影響を排除し、患者間・時間帯間の比較が可能になります。ICU・術後回復室・救急外来では1時間ごとの経時変化を追跡することが標準運用で、電子カルテのバイタルモニタリング画面にも自動計算値が表示されるのが一般的です。

成人の正常値

正常:0.5〜1.5 mL/kg/h(成人)

成人では体重60kgの場合、1時間あたり30〜90mL、24時間で約720〜2160mLの尿量が正常範囲とされます。0.5mL/kg/hを下回る状態が6時間以上続くと急性腎障害(AKI)のリスクが顕在化し、KDIGOガイドラインでは輸液負荷試験や利尿剤投与、原因検索(前腎性・腎性・後腎性の鑑別)が必要と判断されます。

関連する派生指標

尿量指標には他にCr比(Cr比)、FENa(ナトリウム排泄率)、Fractional Excretion of Urea(FEUrea)、尿浸透圧、尿比重があり、乏尿の原因(前腎性か腎性か)の鑑別に用います。詳細な計算はFENa計算水分バランス計算ページを参照してください。

KDIGO急性腎障害(AKI)診断基準

KDIGO(Kidney Disease: Improving Global Outcomes) 2012年ガイドラインでは、血清クレアチニン値と尿量の両方でAKIを診断・ステージ分類します。尿量基準は以下のとおりです。

ステージ尿量基準血清Cr基準臨床対応
Stage 1<0.5 mL/kg/h が 6〜12時間1.5〜1.9倍上昇 or ≥0.3 mg/dL増原因検索・輸液調整
Stage 2<0.5 mL/kg/h が ≥12時間2.0〜2.9倍上昇薬剤中止・造影剤回避
Stage 3<0.3 mL/kg/h が ≥24時間 or 無尿12時間3.0倍以上 or ≥4.0 mg/dL腎代替療法(CRRT)検討

KDIGOは世界標準の診断基準として日本腎臓学会「AKI診療ガイドライン2016」にも採用されており、電子カルテの自動アラート設定にも広く実装されています。尿量基準を満たしただけでもStage分類は成立するため、時間尿量の継続監視は極めて重要です。

乏尿・無尿・多尿の判定基準

尿量の異常は程度によって呼称が定められており、臨床対応が異なります。

状態時間尿量24時間尿量意義
無尿(Anuria)<0.1 mL/kg/h<100 mL/日腎完全不全・尿路完全閉塞
乏尿(Oliguria)<0.5 mL/kg/h<400 mL/日AKI・脱水・循環不全
低尿量0.5〜1.0 mL/kg/h400〜800 mL/日境界域・要観察
正常0.5〜1.5 mL/kg/h800〜2000 mL/日健常成人
多尿(Polyuria)>3.0 mL/kg/h>3000 mL/日糖尿病・尿崩症・多飲
頻尿正常範囲排尿回数のみ増加(尿量正常)

無尿と乏尿は「AKI Stage 3」以上に相当し、直ちに輸液・利尿剤・腎代替療法(CRRT/HD)を検討する重症サインです。一方、多尿は糖尿病(浸透圧利尿)、尿崩症(ADH欠乏)、電解質異常、心因性多飲などの鑑別が必要で、24時間尿量測定・尿浸透圧・血糖・ADH値の総合評価が求められます。

正常尿量・年齢別早見表

年齢によって基準値が異なります。小児は成人より体重あたりの尿量が多く、高齢者は腎機能低下により正常でもやや少なめに推移します。

年齢層正常時間尿量目安24時間尿量
新生児(〜1ヶ月)1.0〜3.0 mL/kg/h15〜60 mL/kg/日
乳児(1ヶ月〜1歳)1.5〜3.0 mL/kg/h40〜80 mL/kg/日
幼児(1〜3歳)1.0〜2.0 mL/kg/h25〜50 mL/kg/日
小児(4〜12歳)0.5〜1.5 mL/kg/h15〜35 mL/kg/日
青年〜成人0.5〜1.5 mL/kg/h800〜2000 mL/日
高齢者(65歳以上)0.5〜1.0 mL/kg/h600〜1500 mL/日

体重60kg成人の場合、1時間あたり30〜90mLが正常範囲となり、ICUの尿量モニターでは「30mL/h以下が2〜3時間持続」で医師へのアラートが慣習的なトリガーです。

尿量異常の原因分類

乏尿・無尿の原因は解剖学的に3つに分類され、鑑別診断が治療方針を決定します。

前腎性(Prerenal) — 全体の約55%

循環血液量減少・心拍出量低下による腎血流量減少が原因。脱水・出血・敗血症・心不全・肝不全・薬剤(NSAIDs・ACE阻害薬・造影剤)など。FENa < 1%、尿浸透圧 > 500 mOsm/kg、Cr比 > 20 が特徴。輸液負荷で改善するのが原則。

腎性(Intrinsic) — 全体の約35%

腎実質障害。急性尿細管壊死(ATN)、糸球体腎炎、間質性腎炎、腎毒性薬剤(アミノグリコシド・シスプラチン・造影剤)など。FENa > 2%、尿浸透圧 < 350、Cr比 < 10 が特徴。原因薬剤中止と対症療法が主体。

後腎性(Postrenal) — 全体の約10%

尿路閉塞。前立腺肥大・膀胱結石・尿管結石・腫瘍・カテーテル閉塞など。超音波・CTで水腎症・膀胱残尿を確認、閉塞解除で急速改善する例が多い。カテーテル閉塞は物理的原因のため、必ず尿量低下時の最初の除外項目とすべき。

鑑別のための追加検査

指標前腎性腎性(ATN)後腎性
FENa(%)<1>2変動
尿浸透圧(mOsm/kg)>500<350<350
尿Na(mEq/L)<20>40変動
BUN/Cr比>20<10-15>15
尿沈渣正常/硝子円柱顆粒円柱・上皮正常/血尿
画像所見正常正常/腫大水腎症

診断確定には血液検査(BUN・Cr・電解質)、尿検査(比重・浸透圧・Na・沈渣)、腹部超音波(膀胱・腎盂・腎実質)、必要に応じCT・腎生検を組み合わせます。FENa計算ツールで前腎性/腎性の第一鑑別を行い、専門医コンサルトへの引き渡し情報を整理してください。

尿量測定の実務

時間尿量測定(尿バッグ経路)

膀胱留置カテーテル(Foleyカテーテル)+目盛付き尿バッグ(Urimeter)で1時間毎に読み取り、記録。ICU・術後回復室の標準運用。精度±5mL程度で、mL/kg/h算出には十分。バッグの位置・折れ・凝血塊詰まりに注意。

24時間蓄尿

1日分の全尿を蓄尿ボトルに集め、総量とクレアチニン・ナトリウム等を測定。腎機能評価(Cr Cl・タンパク定量)、尿路結石・多尿の精査に必須。開始時排尿は捨て、翌朝同時刻の排尿分まで含める。

自己排尿記録(排尿日誌)

在宅・外来患者向け。3日間の排尿時刻・尿量を記録することで、頻尿・夜間多尿・尿失禁の評価に活用。過活動膀胱・前立腺肥大・尿崩症の一次スクリーニングとして重要。

膀胱内圧・残尿量測定

超音波(ブラダースキャン)またはIVP・尿流動態検査で、排尿後の残尿量を測定。50mL以下が正常、100mL以上は排尿障害の疑い。神経因性膀胱・前立腺肥大の評価で必須。

臨床現場での応用

ICU・救急集中治療

循環動態評価の第一指標。ショック管理では時間尿量0.5mL/kg/h以上を維持することが輸液・昇圧剤(ノルアドレナリン・バソプレシン)の目標値。日本集中治療医学会「日本版敗血症診療ガイドライン2020」でも重要指標として位置づけられています。

術後管理・麻酔科

大手術後の腎機能監視。心臓手術・大血管手術・肝切除・膵頭十二指腸切除などの侵襲的手術では術中・術後の時間尿量低下がAKIの早期兆候。0.5mL/kg/h以下が2時間続くと輸液調整・利尿剤(フロセミド)を検討します。

透析導入・腎代替療法

慢性腎不全からの透析導入時、残存腎機能の指標として時間尿量を評価。100mL/日以下(無尿)は完全代替療法の必要性が高く、体重増加率・血中カリウム・肺うっ血症状と合わせて透析条件を決定します。

心不全・利尿剤調整

心不全患者の水分バランス管理で、フロセミド・トルバプタン投与量調整の指標。目標尿量2000mL/日程度に調整し、過剰利尿による低血圧・電解質異常・急性腎障害を避けます。BNP・体重変化と併せて評価。

小児・NICU

新生児は成人の3〜5倍の体重あたり尿量が正常。NICUでは1時間ごとの尿量測定が標準で、脱水・敗血症・尿路奇形の早期発見に重要。低体温療法中の新生児仮死児では特に厳密な尿量管理が必要。

在宅医療・訪問看護

在宅患者の脱水・尿路感染症の早期発見に時間尿量観察が有効。オムツ重量法(排尿前後の重量差)で概算可能。特に高齢者・認知症患者では脱水症状(食欲低下・意識レベル低下)の陰に乏尿があることが多い。

よくある間違い・注意点

  • 総尿量だけで判断 — 「1000mL/日出ているから大丈夫」は誤り。体重100kg患者の1000mL/日は0.42mL/kg/hで乏尿相当。必ず体重・時間で補正した mL/kg/h で評価してください。
  • カテーテル閉塞を見落とす — 尿量急減時、まず物理的原因(尿管閉塞・カテーテル屈曲・凝血塊)を除外。バッグ位置確認・生理食塩水でのカテーテル洗浄・膀胱エコーで残尿確認を行ってから、腎性・前腎性を疑うべきです。
  • 肥満患者の実体重で計算 — 高度肥満患者(BMI > 35)では実体重ではなく理想体重(IBW)または補正体重で計算するのが集中治療領域の慣習。過剰な高値誤判定を避けられます。
  • 利尿剤投与直後の値で判断 — フロセミド静注後の尿量増加は「腎機能改善」ではなく「薬理効果」。真の腎機能評価には投与前の自然尿量、または投与から6時間以降の値を使用すべきです。
  • 単回測定で長期評価 — 尿量は食事・活動・水分摂取で30分単位で変動。単回測定より、6〜12時間の平均値を用いた方が臨床的意義が高いです。
  • 不感蒸泄・下痢を無視 — 発熱・熱傷・下痢がある場合は尿量が正常でも体液は喪失中。IN-OUTバランス表で全経路の水分収支を管理する必要があります。
  • 多尿を軽視 — 3mL/kg/h以上の多尿は糖尿病・尿崩症・薬剤性(SGLT2阻害薬・利尿剤)・電解質異常のサイン。血糖・尿浸透圧・血清ナトリウム測定で原因検索を。

関連ガイドライン・法令

  • KDIGO Clinical Practice Guideline for AKI (2012) ― 国際腎臓学会が策定した急性腎障害の診断・治療の世界標準。尿量基準・血清Cr基準・ステージ分類を規定。日本語訳版が日本腎臓学会サイトで公開。
  • AKI(急性腎障害)診療ガイドライン2016 ― 日本腎臓学会・日本集中治療医学会・日本透析医学会などが共同策定。KDIGO準拠の日本語版として、国内臨床の標準基準。
  • 日本版敗血症診療ガイドライン2020(J-SSCG2020) ― 日本集中治療医学会・日本救急医学会。敗血症性ショックの循環管理目標に時間尿量0.5mL/kg/h以上を明記。
  • 心不全診療ガイドライン(2021改訂版) ― 日本循環器学会・日本心不全学会。急性心不全の利尿剤投与時の尿量目標を規定。
  • Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2021 ― 国際的敗血症診療の標準ガイドライン。時間尿量による臓器灌流評価が推奨事項。
  • 透析導入ガイドライン(維持血液透析ガイドライン2013) ― 日本透析医学会。導入判定の臨床指標として尿量を含む。
  • 保健師助産師看護師法・看護記録基準 ― 尿量測定は看護観察項目として法定義務化はされていないが、日本看護協会「看護記録に関する指針」で標準記録項目として推奨。

参考文献・公的資料

より正確な診断基準や最新のエビデンスを確認したい場合は、以下の公的機関・学会の資料を参照してください。

※本ページの計算結果および判定基準は、教育・参考目的の概算値です。実臨床での診断・治療方針の決定は、上記公的機関のガイドラインおよび患者の全身状態・検査所見・治療歴を総合評価した医師の判断に基づいて行ってください。特にAKI・敗血症・心不全等の重篤病態では、腎臓内科医・救急医・集中治療医などの専門医の判断を仰いでください。本ツールを用いた自己判断による医療行為の中止・変更は避けてください。

よくある質問(FAQ)

500mL/6h/60kgの時間尿量は?

約1.39 mL/kg/hで正常範囲です。計算は 500 ÷ 6 ÷ 60 = 1.389。成人の正常値は0.5〜1.5 mL/kg/hであり、この値は健常時の典型的な尿量に該当します。ICUのアラート閾値である0.5 mL/kg/h(体重60kgで30mL/h)には十分な余裕があります。

乏尿(0.5未満)が続いたらどうする?

まず物理的原因(カテーテル閉塞・尿路閉塞)の除外が最優先。次に脱水評価(バイタル・皮膚ツルゴール・粘膜乾燥)と輸液反応性の確認(受動的下肢挙上テスト・輸液負荷試験)、原因薬剤(NSAIDs・造影剤・ACE阻害薬)の中止検討。それでも改善しなければ腎臓内科・集中治療科コンサルトが必要です。

KDIGO AKI Stage 1と2の違いは?

Stage 1は0.5 mL/kg/h未満が6〜12時間、Stage 2は0.5 mL/kg/h未満が12時間以上持続した状態です。血清Crは1.5〜1.9倍でStage 1、2.0〜2.9倍でStage 2。Stage 2以降は造影剤回避・腎毒性薬剤中止・透析準備を検討します。

肥満患者の体重は実測値でよい?

BMI 30以上の高度肥満では理想体重(IBW)または補正体重で計算するのが集中治療領域の慣習です。実測体重を使うと分母が過大になり、実際は乏尿でも「正常」判定されるリスクがあります。IBWは男性50kg+2.3×(身長cm-152)/2.54、女性45.5kg+2.3×(身長cm-152)/2.54で算出。

小児の正常尿量は成人と同じ?

異なります。新生児は1.0〜3.0 mL/kg/h、乳児は1.5〜3.0 mL/kg/hと成人より多く、幼児以降で徐々に成人値に近づきます。小児科・NICUでは年齢別基準値を参照してください。

多尿(3 mL/kg/h超)が続いたら何を疑う?

糖尿病(浸透圧利尿)、尿崩症(中枢性/腎性)、電解質異常(高Ca血症・低K血症)、薬剤性(SGLT2阻害薬・ループ利尿剤)、心因性多飲、原発性アルドステロン症など。血糖・尿浸透圧・血清Na・尿比重・ADH値の追加検査で鑑別診断を行います。

術後1日目の尿量はどれくらいが正常?

大手術後は0.5〜1.0 mL/kg/hが一般的目標。心臓手術・肝切除・膵頭十二指腸切除などの大侵襲手術では術後24時間の輸液管理で尿量を確保することが術後AKI予防の要。麻酔記録・術中輸液量・出血量と併せて評価します。

フロセミド投与後の尿量で腎機能を評価してよい?

不適切です。フロセミド投与直後の尿量増加は薬理効果であり、腎機能改善を示すものではない。真の腎機能評価には投与前の自然尿量、あるいは投与から6時間以上経過した後の値を使用します。フロセミド反応性試験(FST)自体はAKIの予後予測に用いられることがありますが、専門医の判断が必要です。

在宅・介護施設で尿量を測る方法は?

膀胱留置カテーテルの使用がなければオムツ重量法(排尿前後のオムツ重量差から尿量を推定、1g=1mL)、あるいは排尿日誌で自己排尿量を記録します。訪問看護での脱水評価・尿路感染症スクリーニングに実用的です。

敗血症性ショックの尿量目標は?

J-SSCG2020および国際SSC2021ガイドラインでは0.5 mL/kg/h以上を維持することが循環管理の目標。初期6時間で乳酸クリアランス・平均血圧65mmHg以上・尿量0.5 mL/kg/h以上を達成することが敗血症バンドル(1時間バンドル)の重要指標です。

透析導入の判断に尿量は使う?

使います。100mL/日以下の無尿状態が持続すると腎代替療法の適応が強く、体重増加率・電解質異常・肺うっ血・尿毒症症状と併せて透析導入時期を決定します。日本透析医学会「維持血液透析ガイドライン」に判定基準の詳細が示されています。

時間尿量と1日尿量、どちらを重視すべき?

急性期(ICU・術後・救急)は時間尿量(mL/kg/h)で早期異常を検出、慢性期(外来・透析導入評価)は1日尿量(mL/日)で全体の腎機能を評価します。両方の視点を組み合わせることで、急性・慢性の変化を漏らさず捉えられます。