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qSOFA 敗血症 スクリーニング 救急 Sepsis-3

qSOFA敗血症スクリーニング

収縮期血圧・呼吸数・意識状態の3項目からqSOFAスコアを即算出。感染疑い患者のベッドサイド早期認識ツールで、Sepsis-3(2016)準拠です。

最終更新:2026-07-29/監修:計算ツールズ編集部

qSOFA敗血症スクリーニングツール

qSOFAスコア算出

qSOFA = 該当項目数(0-3点)

quick SOFA(Sepsis-related Organ Failure Assessment)は、①SBP≤100mmHg、②呼吸数≥22回/分、③意識レベル低下(GCS<15)の3項目で構成されます。

2点以上で敗血症が疑われ、院内死亡率10-20%とされます。感染疑い時のベッドサイドツールとして、検査結果を待たずに30秒で評価可能な点が最大の利点です。

早期認識と初期治療(1時間バンドル:乳酸測定・血液培養・広域抗菌薬投与・輸液蘇生・昇圧剤)の開始が生存率を大きく左右します。

Sepsis-3では従来のSIRS基準を廃止し、qSOFAを一般病棟スクリーニング、SOFA≥2を敗血症診断に用いる二段構えの体系を採用しています。診断アルゴリズムの明確化により、診療の均質化が進みました。

qSOFA項目・カットオフ

項目 基準 該当時の意味
収縮期血圧 SBP ≤ 100mmHg 循環不全・組織灌流低下の兆候
呼吸数 ≥ 22 回/分 代謝性アシドーシス・低酸素の代償
意識状態 GCS < 15 脳灌流低下・敗血症性脳症

※呼吸数はバイタル4項目中で最も見落とされやすい指標。実測15秒×4より30秒×2が推奨されます。

スコア別の対応アクション

qSOFAスコアの結果に応じて、以下の対応が推奨されます。

スコア 0点

低リスクだが感染徴候があれば継続監視。バイタルサインの経時変化に注意し、悪化時の再評価を怠らないことが重要です。

スコア 1点

中リスク。感染源検索・血液検査(CBC・生化学・CRP・乳酸)を実施。1-2時間毎の再評価で悪化傾向をモニタリングします。

スコア 2点

高リスク。1時間バンドル即開始。血液培養・広域抗菌薬・輸液蘇生を迅速に。ICU管理の必要性を主治医・集中治療医と協議します。

スコア 3点

極めて高リスク。敗血症性ショックの可能性が高く、即座にICU管理・昇圧剤導入・中心静脈路確保を検討。家族への説明・治療方針決定も並行して進めます。

qSOFA敗血症スクリーニングの詳しい解説

qSOFAは「敗血症早期発見の簡便ツール」として2016年のSepsis-3で導入されました。感染疑い患者を一般病棟でスクリーニングし、2点以上で早期の抗菌薬投与・循環管理(Sepsis Bundle)を実施することで死亡率を改善します。

血液検査・画像検査を必要とせず、看護師・医師・救急救命士が誰でも30秒で評価できる点が最大の実務価値です。導入以前の敗血症診療は診断遅延が課題でしたが、qSOFAが標準化されたことで診療の均質化が進みました。

ただしqSOFAには限界があり、感度は比較的低い(40-60%)ものの特異度は高い(80%前後)ため、「陽性なら真」だが「陰性でも安心はできない」性質を持ちます。実務では低リスク除外ではなく、高リスク検出のトリガーとして使用します。

感染徴候(発熱・悪寒・局所症状)を伴う患者では、qSOFA陰性でもSIRS基準・NEWS2スコア・乳酸値等を併用した多層評価が推奨されます。単独ツールに依存せず、複数指標の総合判断が実務の要諦です。

Sepsis-3の敗血症定義は「感染に対する制御不能な宿主反応による生命を脅かす臓器障害」であり、これはSOFA急性2点上昇で操作的に定義されます。qSOFAはあくまでスクリーニング、確定はSOFA・臨床所見・治療反応で行う二段構えを理解しておく必要があります。

敗血症性ショックは、輸液蘇生後も昇圧剤を要し乳酸>2mmol/Lの状態と定義されます。これはSepsis-3で臨床的に最重症とされ、集中治療室での管理が必須となる病態です。

業界・現場での使い方

救急外来

受診時初期評価の第一段階。感染疑い+qSOFA≥2でER内トリアージを引き上げ、乳酸測定・血液培養を即開始します。ER滞在時間短縮とICU早期搬送の判断材料になります。

一般病棟

急変兆候の早期発見。バイタル定期測定にqSOFA評価を組み込み、日勤帯・夜勤帯で継続監視します。RRS(迅速対応システム)起動基準に組み込む病院が増えています。

集中治療

敗血症診療・鑑別診断の入口。ICU入室後はSOFA・APACHE II等のより詳細な評価に切り替えます。抗菌薬選択・輸液戦略・昇圧剤導入の判断根拠にも活用されます。

救急救命士

プレホスピタルでの重症度判断。搬送先選定と受入病院への事前情報提供に活用します。総合病院・救急救命センターへの直接搬送判断に有用です。

看護教育

新人・院内教育の急変察知トレーニング。呼吸数測定の重要性を教える教材としても有効です。シミュレーション研修での必須知識となっています。

在宅医療・訪問看護

在宅患者の急変察知に活用。家族への急変時対応教育にも簡便で理解しやすい指標として役立ちます。

よくある間違い・注意点

  • 慢性状態と混同 — COPD患者の頻呼吸、慢性低血圧の高齢者など、ベースラインと急性変化の区別が重要。急性変化を評価する視点が不可欠です。
  • スコア=診断と誤認 — qSOFAはあくまでスクリーニング。確定診断はSOFA≥2と臨床所見の総合判断で行います。
  • 感度過信 — qSOFA陰性でも重症敗血症は起こり得ます。感染徴候があれば継続監視が必須です。
  • 呼吸数の目測 — 頻呼吸は最も鋭敏な急変予兆だが、目測で軽視されがち。30秒×2の実測を励行します。
  • 抗菌薬遅延 — 敗血症疑い時は1時間以内の広域抗菌薬投与が生存率を左右します。培養採取後即投与が原則です。
  • 薬剤影響の見落とし — 降圧剤内服・β遮断薬服用中の患者では血圧・脈拍反応が鈍く、スコアが過小評価される可能性があります。
  • 年齢調整不足 — 高齢者では発熱・頻脈が起こりにくく、意識障害が唯一の症状となることが多い。意識レベル変化を注意深く観察します。

関連するガイドライン・文献

  • Sepsis-3 定義(JAMA 2016; Singer et al.)
  • SSCG(Surviving Sepsis Campaign Guidelines)2021
  • 日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG) 2020
  • 日本救急医学会・日本集中治療医学会 合同ガイドライン
  • 1時間バンドル(Hour-1 Bundle)
  • WHO 敗血症関連決議 (WHA70.7)
  • Global Sepsis Alliance
  • NICE guideline NG51 (Sepsis)
  • SIRS基準 (Bone 1992・歴史的位置づけ)
  • NEWS2スコア (英国王立医師会)

※本ツールは医学的スクリーニングの補助を目的とした参考計算です。診断・治療の決定は必ず担当医師の判断に従い、緊急時は速やかに医療機関を受診してください。本ツールは自己診断を目的としたものではありません。

よくある質問(FAQ)

SBP 95・RR 24・意識低下は?

qSOFA 3点(高リスク)。敗血症が強く疑われ、即座に乳酸測定・血液培養・広域抗菌薬・輸液蘇生を開始する対象です。

qSOFAとSIRSはどう違うのですか?

SIRSは体温・脈拍・呼吸・白血球の4項目、qSOFAは血圧・呼吸・意識の3項目。Sepsis-3以降はqSOFAが主流で、SIRSは補助的位置づけです。

qSOFA 1点は問題ないですか?

1点でも感染徴候があれば継続監視が必要。時間経過で2点以上に進行するケースがあり、1-2時間毎の再評価が推奨されます。

1時間バンドルとは何ですか?

敗血症疑い時、1時間以内に①乳酸測定、②血液培養採取、③広域抗菌薬投与、④低血圧/乳酸高値時の輸液30mL/kg、⑤輸液後も低血圧なら昇圧剤を実施する初期治療パッケージです。

小児にqSOFAは使えますか?

qSOFAは成人向けカットオフです。小児では年齢別バイタル基準を用いた小児SIRS・pSOFAを使用します。

qSOFAとNEWS2の使い分けは?

NEWS2は一般病棟の急変察知全般、qSOFAは感染疑い時の敗血症スクリーニング。両者は補完的に用いるのが英国NHS等の実務です。

敗血症の死亡率はどのくらい?

敗血症全体で10-30%、敗血症性ショックでは30-50%と高い。早期認識・早期治療が予後改善の唯一の道です。

敗血症の疫学とインパクト

敗血症は世界的な公衆衛生上の重大課題であり、その規模と影響を把握することが重要です。

発症数と死亡率

WHOによれば全世界で年間約5,000万人が敗血症を発症し、約1,100万人が死亡しています。全世界の死因の約2割を占めるとされ、癌・心疾患と並ぶ主要死因です。

日本国内の状況

日本では敗血症関連死亡が年間10-20万人と推計。高齢化の進展で敗血症発症・死亡は増加傾向にあり、2050年に向けてさらに拡大が予測されています。

医療経済負担

敗血症治療のICU入院費は1入院あたり500-1500万円と極めて高額。医療費全体でも大きな比重を占め、早期認識・早期治療による費用削減が政策課題となっています。

WHO決議・国際目標

2017年、WHO総会は敗血症を国際保健の優先課題と位置づけ、加盟国に対策強化を求める決議を採択。9月13日「世界敗血症の日」として啓発活動が行われています。

敗血症生存者の後遺症

敗血症を生き延びた患者の50%以上が身体的・認知的・精神的後遺症を経験。集中治療後症候群(PICS)として認識されるようになり、リハビリテーション・フォローアップが重視されています。

SOFAスコアとの関係

qSOFAとよく混同されるのがSOFA(Sequential Organ Failure Assessment)スコアです。SOFAは6臓器系の障害を0-4点で評価する詳細な指標で、qSOFAはその簡略版です。両者の関係を整理します。

SOFA評価項目

SOFAは以下の6項目を評価します。①呼吸(PaO2/FiO2)、②凝固(血小板数)、③肝(ビリルビン)、④循環(血圧・昇圧剤量)、⑤中枢神経(GCS)、⑥腎(クレアチニン・尿量)。各項目0-4点で最大24点、急性の2点以上上昇で敗血症診断となります。

使い分けの実務

qSOFAはベッドサイド・救急外来・一般病棟のスクリーニング用、SOFAはICU・詳細評価用と使い分けます。qSOFAで疑いを持ってから、血液検査結果を待ってSOFAを計算するのが標準的な流れです。

スコアの経時変化

治療開始後のスコア変化は予後の重要指標。SOFAが低下すれば治療反応良好、悪化すれば治療戦略の見直しが必要です。ICU管理下では24時間ごとに再計算するのが実務標準です。

Sepsis-3対応の1時間バンドル

敗血症疑い時、1時間以内に以下の5項目を実施することがSurviving Sepsis Campaign Guidelines (SSCG) 2021で強く推奨されています。

1. 乳酸値測定

初期乳酸値は組織灌流の指標。>2mmol/Lで組織低灌流を疑い、>4mmol/Lで重症度が高い。2-4時間後の再測定で治療反応性を評価します。

2. 血液培養採取

抗菌薬投与前に2セット以上採取。原因菌同定と感受性検査が治療戦略を左右します。培養採取と抗菌薬投与の時間差を最小化するのが実務原則です。

3. 広域抗菌薬投与

疑い1時間以内の投与が生存率を左右。感染源不明時はカルバペネム系+抗MRSA薬を検討。培養結果判明後にディエスカレーション(狭域化)します。

4. 輸液蘇生

低血圧or乳酸>4mmol/L時、晶質液30mL/kgを3時間以内に投与。反応性を血圧・尿量・乳酸で評価し、追加輸液の判断を行います。

5. 昇圧剤導入

輸液蘇生後も平均血圧<65mmHgの場合、ノルアドレナリン第一選択で開始。中心静脈路確保が必要となり、ICU管理への移行が検討されます。

特殊な患者集団での考慮点

qSOFAは成人一般を対象に開発されましたが、特殊な患者集団では追加の考慮が必要です。

高齢者

高齢者は感染時の発熱反応が乏しく、意識レベル低下(せん妄)が唯一の症状となる場合が多い。ベースラインとの比較が重要で、施設・家族からの情報聴取が診断精度を左右します。

妊婦

妊娠中は生理的に血圧低下・頻脈傾向があり、SBP≤100mmHgの基準では過剰検出のリスク。妊娠版qSOFA(omqSOFA)としてSBP≤90mmHgを用いる報告もあります。

免疫抑制患者

抗癌剤・ステロイド・免疫抑制剤使用中は典型的症状が抑制される。CRP・プロカルシトニン等の炎症マーカーも上昇が鈍く、微細な臨床変化の察知が重要です。

透析患者

血液透析中の血圧変動が大きく、qSOFAの血圧項目の解釈に注意が必要。透析日・非透析日のベースラインを踏まえた評価が求められます。

臨床現場での落とし穴と対策

qSOFAスコアの運用で実務上頻繁に遭遇する落とし穴と、その対策を整理します。

落とし穴1:時間帯による評価差

夜勤帯は看護師配置が薄く、バイタル測定間隔が延びる傾向。スコア悪化を見逃すリスクがあり、夜間の観察頻度基準を明文化する必要があります。

落とし穴2:曜日効果

週末・祝日は医師配置が薄く、専門判断の遅延が起こりやすい。オンコール体制・遠隔相談システムの整備が重要です。

落とし穴3:認知症患者の意識評価

認知症患者では通常の意識レベル評価が困難。普段との比較が肝要で、家族・施設スタッフからの情報が不可欠です。

落とし穴4:抗菌薬耐性への対応

院内感染由来の敗血症では耐性菌の可能性が高い。地域・施設別耐性菌マップを参照した経験的治療が推奨されます。

落とし穴5:家族への説明

敗血症は死亡率20-30%と高いため、早期の家族説明・治療方針決定が重要。DNARを含む治療目標の共有が必要な場面です。

院内敗血症対策の質改善

敗血症診療の質改善には、院内システム全体での取り組みが重要です。以下、優れた実践例を紹介します。

電子カルテ連動アラート

バイタルサインの自動計算からqSOFA≥2を検出し、即座に主治医・当直医へアラート通知するシステム。認識遅延を10-30分短縮できたとの報告があります。

敗血症コード導入

「敗血症疑い」の院内コール(コードセプシス)で、輸液・抗菌薬・血液培養を同時展開できる体制。1時間バンドル遵守率が20-40ポイント改善する事例が多数あります。

院内敗血症委員会

感染症科・救急科・集中治療科・看護部・薬剤部の多職種で構成する院内委員会。診療プロトコルの標準化・研修・監査を担当し、継続的改善を推進します。

データベース・レジストリ参加

日本集中治療医学会JIPADなどのレジストリ参加により、自施設の敗血症診療の質を全国平均と比較可能。ベンチマーキングによる改善が可能です。

本ツールの使い方・重要な注意事項

本ツールは医療従事者向けのスクリーニング補助を目的としており、以下の点にご注意ください。

  • 自己診断禁止 — 本ツールは一般の方の自己診断を目的としたものではありません。体調不良時は速やかに医療機関を受診してください。
  • スクリーニング目的 — qSOFAは早期認識のためのツールで、確定診断・治療方針決定には別途評価が必要です。
  • 継続監視必須 — 陰性でも感染徴候があれば継続監視が必要。単一時点の評価に依存しないでください。
  • 専門医判断優先 — 治療方針・投薬・輸液戦略は必ず担当医師が決定します。
  • 最新ガイドライン確認 — 敗血症診療は継続的に更新されており、SSCG・J-SSCGの最新版を参照してください。