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APACHE IIICU重症度予後予測

APACHE II スコア計算ツール|ICU重症度・推定死亡率を即算出

APACHE II(Acute Physiology and Chronic Health Evaluation II)スコアを、急性生理点数(APS:0-60点)、年齢点数(0-6点)、慢性疾患点数(0-5点)から即算出(総合0-71点)。ICU入室24時間以内のデータで評価し、推定死亡率、施設間ベンチマーク、研究データベース入力、終末期医療判断の補助指標として活用。Knaus 1985原典(Crit Care Med. 1985;13:818-829)、SOFA・SAPS II・qSOFA との比較、日本集中治療医学会のJIPADレジストリ運用まで実務ポイントを解説します。

最終更新:2026-08-08/監修:計算ツールズ編集部

APACHE II 計算機

APACHE IIの構成と算定式

基本式

APACHE II 総合スコア = 急性生理点数(APS) + 年齢点数 + 慢性疾患点数(0〜71点)

APACHE II はKnaus WA らが1985年 Critical Care Medicine 誌に発表したICU重症度評価スコア(PMID: 3928249)。ICU入室後24時間以内の最悪値を使って算定します。APS 12項目(0〜60点)+年齢(0〜6点)+慢性疾患(0〜5点)の3コンポーネントから構成され、総合スコアの数値が高いほど重症・死亡率が高いことを示します。

予測死亡率のロジスティック回帰式

ln(R/(1-R)) = -3.517 + (APACHE II × 0.146) + 0.603(緊急手術後)+ 診断カテゴリ係数

ここでR = 病院死亡率。APACHE II原典では50以上の主要診断名ごとに補正係数が設定されており、正確な予測にはApache Medical Systems社のAPACHE III/IVを使用しますが、上記簡易式で±5〜10%の精度で予測可能です。

評価タイミング(重要)

ICU入室24時間以内の最悪値を用いるのが原則。48時間後や1週間後の再計算はAPACHE IIの本来の使い方から外れ、SOFAスコアの時系列評価の方が適切です。研究・レジストリ入力では入室24時間以内固定が絶対条件。

急性生理点数(APS:Acute Physiology Score)12項目

APSは12の生理指標の異常度から算定します。それぞれ正常値から離れるほど加点され、0〜4点/項目(項目により最大4点)で総和0〜60点。

#指標0点(正常)要注意域の目安
1直腸温 (℃)36-38.4<30または>41で+4
2平均動脈圧 (mmHg)70-109<50または>160で+4
3心拍数 (/分)70-109<40または>180で+4
4呼吸数 (/分)12-24<6または>50で+4
5酸素化 (A-aDO2 or PaO2)FiO2≥0.5:A-aDO2<200
FiO2<0.5:PaO2>70
A-aDO2>500で+4
6動脈血pH7.33-7.49<7.15または≥7.7で+4
7血清Na (mEq/L)130-149<111または≥180で+4
8血清K (mEq/L)3.5-5.4<2.5または≥7で+4
9血清Cr (mg/dL) ※AKIで2倍0.6-1.4≥3.5で+4
10ヘマトクリット (%)30-45.9<20または≥60で+4
11白血球数 (×10³/μL)3-14.9<1または≥40で+4
12Glasgow Coma Scale15点満点15 − 実測GCSが加点

血清HCO3-(重炭酸)はABG(動脈血ガス)が測定できない場合の代替項目として使用可能(原典で規定)。急性腎障害(AKI)がある場合、血清Cr項目のスコアを2倍にする補正あり。

年齢点数

年齢点数
44歳以下0点
45〜54歳2点
55〜64歳3点
65〜74歳5点
75歳以上6点

年齢は入室時の暦年齢を使用。閉塞性肺疾患・重症心不全等の基礎疾患は慢性疾患点数で別途評価されるため、年齢点数では二重計上しないよう注意。

慢性疾患点数

以下のいずれかの重篤な慢性臓器不全または免疫抑制状態がある場合に加点します。

該当条件(下記いずれか)

  • 肝臓:肝生検で肝硬変証明済み、門脈圧亢進症、上部消化管出血の既往、肝性脳症・昏睡
  • 循環器:NYHA Class IV(安静時に症状)
  • 呼吸器:慢性拘束性・閉塞性・血管性疾患による重度活動制限、慢性低酸素症、CO2貯留、慢性肺高血圧、呼吸器依存
  • 腎臓:慢性透析
  • 免疫抑制:免疫抑制療法・化学療法・放射線療法・長期高用量ステロイド・白血病・リンパ腫・AIDS等

点数配分

状態非手術/緊急手術後待機的手術後
該当なし0点0点
該当あり5点2点

待機的手術後は「事前準備が可能な選択的手術」として、緊急・非手術症例より慢性疾患の影響が小さいと見なし、2点に減じます。

スコア別 推定死亡率(Knaus 1985 原典データ)

APACHE II非手術患者 推定死亡率緊急手術後待機的手術後
0-4約4%約1%約1%
5-9約8%約3%約2%
10-14約15%約7%約4%
15-19約25%約12%約8%
20-24約40%約30%約15%
25-29約55%約35%約20%
30-34約73%約73%約45%
35以上約85%約88%約88%

実際の死亡率は診断分類(敗血症・心不全・呼吸不全・多臓器不全・術後合併症など)で大きく変動します。同じAPACHE II 25点でも、敗血症性ショックと術後合併症では予後が大きく異なります。あくまで「重症度の目安」として運用。

SOFA・SAPS II・qSOFAとの比較

スコア発表年項目数用途特徴
APACHE II198514項目ICU入室時重症度・死亡予測最も広く使用、施設間比較の標準
APACHE III / IV1991/200617項目+診断より正確な死亡予測商用ソフト、精度高いが日本普及低
SAPS II199317項目ICU入室時死亡予測欧州で使用、多施設で開発
SAPS 3200520項目入室1時間以内評価2005年国際大規模研究
SOFA19946臓器臓器不全時系列評価1日1回計算、敗血症診断基準
qSOFA20163項目敗血症スクリーニングICU外・救急外来で使用
MPM II199315項目Mortality Probability Model入室時と24時間版

ICU入室時の初期評価はAPACHE II、日々の臓器機能推移はSOFA、救急外来の敗血症スクリーニングはqSOFA、と時期・目的別に使い分けるのが臨床実務です。

臨床現場での使い方

ICU入室時の重症度評価

入室24時間以内の最悪値でAPACHE IIを算定し、電子カルテのICUデータベースに記録。夜勤引き継ぎ・カンファレンスで患者の重症度共有、治療方針決定の客観的指標として活用。日本集中治療医学会のJIPADレジストリでも入力必須項目。

研究論文の患者背景記述

ICU関連の臨床研究では、患者背景として「APACHE II 中央値〜四分位範囲」の記載が事実上必須。介入群と対照群の重症度が同等であることを示す指標。SOFAスコアと併記するケースが多い。

施設間ベンチマーク

「予測死亡率 vs 実死亡率」の比(SMR: Standardized Mortality Ratio)で施設のICUパフォーマンスを評価。SMR<1.0が「予測より良い成績」。日本集中治療医学会のJIPADや米国のAPACHE Outcomesベンチマーキングで使用。

終末期医療の判断補助

APACHE II 30点以上・多臓器不全併存等の高スコア患者では、家族カンファレンスでのDNAR(心肺蘇生拒否)治療中止の話し合いの客観データとして使用。ただしスコア単独で判断せず、患者・家族の意向と併せた総合判断が原則(日本救急医学会「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン」)。

ICU入退室判断

APACHE II が過度に低い症例は「HCU(高度治療室)や一般病棟でも管理可能」と判定し、ICUベッドの効率的運用に寄与。逆に高スコア症例は積極的な集学的治療の対象として資源配分。

薬剤コスト評価・DPC対応

特定集中治療室管理料(1〜4)算定要件の重症度評価、抗菌薬・血液製剤の使用実績分析、DPC(診断群分類包括評価)の重症度補正指標。医事課・DPC担当と共有する客観データとしても機能します。

よくある間違い・注意点

  • 入室後48時間・1週間で再計算 — APACHE IIは入室24時間以内評価が絶対。時系列評価にはSOFAスコアを使うのが正しく、48時間・1週間後のAPACHE IIは原典と乖離し比較不能に。
  • スコア=絶対的予後と誤解 — APACHE IIは統計的な群平均予測。個人差が大きく「30点でも生存」「10点でも死亡」もあります。個別患者の予後決定には使用不可、あくまで集団的な重症度指標。
  • 術後患者で待機/緊急を混同 — 待機的手術は慢性疾患2点、非手術・緊急手術は5点。カテゴリを誤ると死亡率予測が10〜20%ずれます。
  • GCSの計算方向を逆にする — APS 12番目のGCS項目は「15 − 実測GCS」を加点。GCS 15なら0点、GCS 3なら12点。GCS点数をそのまま加点する誤りが頻発。
  • AKI時のCr補正忘れ — 急性腎障害がある場合、血清Cr項目のスコアを2倍にする補正あり。原典を確認しないと見落としがち。
  • 慢性疾患の判定が甘い — 「慢性心不全あり」だけでは慢性疾患5点にならず、NYHA Class IV(安静時症状)等の重症度が必要。定義を厳格に適用する。
  • 入室時刻の設定ミス — 「入室24時間以内」の基準時刻はICU物理的入室ではなく、集中治療開始時刻。救急搬送〜ICU入室に数時間かかる場合、開始時刻の定義を院内で統一しておく。

関連ガイドライン・レジストリ

  • Knaus WA et al. 1985 ― Crit Care Med. 1985;13(10):818-829. APACHE II原典論文。全ての引用の基準。
  • APACHE III (1991) / IV (2006) ― Zimmerman JE らによる改訂版。より正確だが商用ソフトが必要。
  • 日本集中治療医学会 JIPAD ― Japanese Intensive care PAtient Database。全国ICUデータベース、APACHE II・SOFA・SAPS II等を入力。
  • SCCM(米国集中治療医学会) ― APACHE等重症度スコアの推奨ガイドライン発行。
  • 日本救急医学会・日本集中治療医学会 敗血症診療ガイドライン(J-SSCG 2020) ― 敗血症診断でSOFAスコア+qSOFAを推奨。
  • Surviving Sepsis Campaign Guidelines ― 国際敗血症ガイドライン。重症度評価の国際基準。
  • 日本救急医学会・日本集中治療医学会 救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン ― 治療中止・DNAR判断でスコアを補助指標として位置付け。
  • 特定集中治療室管理料(診療報酬) ― 施設基準にSOFA・APACHE II等の重症度データ収集要件を含む。

参考文献・公的資料

APACHE II の正確な運用・研究利用にあたっては、以下の学会・公的機関の一次資料を参照してください。

※本ツールはAPACHE II原典(Knaus 1985)に基づく簡易計算です。臨床判断・研究データ・DPC請求等の公式用途では、電子カルテ・専用ICU情報システム(Philips ICCA、GE Centricity Critical Care等)による自動集計値、または訓練を受けた医療従事者による手計算値を必ず併用してください。個別患者の予後・治療方針決定は主治医・集中治療医の総合判断であり、本スコア単独では行いません。診療報酬算定や研究データ提出には、必ず所属施設のICU管理者・研究倫理委員会等の承認を経てください。

よくある質問(FAQ)

APACHE II 20点の推定死亡率は?

非手術患者で約40%、緊急手術後で約30%、待機的手術後で約15%(Knaus 1985原典データ)。ただし診断分類・合併症により大きく変動し、敗血症性ショックでは同スコアでも50%を超え、術後合併症では20%程度に留まるなど幅があります。

APACHE IIとAPACHE III・IVの違いは?

APACHE III(1991)は17項目+主要診断カテゴリー、APACHE IV(2006)は現代のICU死亡率にキャリブレーションし直したもの。予測精度はIIより高いが、専用ソフト(Cerner・Philips等)が必要で日本での普及は低い。学術論文引用ではAPACHE IIが依然主流。

いつ計測すればいい?

ICU入室後24時間以内の最悪値で1回のみ算定するのが原則(Knaus 1985定義)。48時間や1週間後のAPACHE IIは原典と乖離するため、時系列の重症度推移を見るならSOFAスコアの日々計算を使用。

SOFAスコアとどう使い分ける?

APACHE IIは入室時の初期重症度、SOFAは臓器機能の時系列推移を評価。APACHE IIで入室時のスクリーニング、SOFAで日々の治療反応性確認、qSOFAは救急外来での敗血症スクリーニング、と目的別に組み合わせて使用します。

個別患者の予後判断に使える?

使えません。APACHE IIは統計的な群平均の死亡率予測で、個人差が大きい(30点でも生存、10点でも死亡あり)。個別患者の治療方針・予後説明は、スコアを参考にしつつ、主治医・集中治療医・患者・家族の総合的な意思決定で行うのが原則。

慢性疾患点数の判定が難しい

「慢性心不全あり」だけではNYHA Class IV(安静時症状)が必要、「慢性肺疾患」なら慢性低酸素症・CO2貯留・肺高血圧・呼吸器依存が必要、と厳格な基準あり。基準を満たさない場合は加点0で計算します。カルテ記載の症状・検査値を照合して判定。

術後患者で待機/緊急の判別は?

「入院時から計画されていた予定手術」が待機的(elective)、「緊急入院・急変での手術」が緊急(emergency)。非手術・緊急手術は慢性疾患5点、待機手術は2点と大きな差があるので、カルテの入院種別・手術予定表を厳格に確認します。

GCS点数の計算方法は?

APS 12番目のGCS項目は「15 − 実測GCS」を加点します。GCS 15なら0点、GCS 10なら5点、GCS 3なら12点。GCS点数をそのまま加算する誤りが頻発するので注意。GCSが正確に取れない鎮静中患者はRASSスコア等を併記して判断。

日本のICUでの平均スコアは?

JIPAD 2020年報告では、日本全国ICU登録症例のAPACHE II 中央値は約17点、死亡率約12%。米国のAPACHE Outcomes登録では中央値18〜20点、死亡率15〜18%。日本のICUは重症度・死亡率ともにやや低い傾向にあります。

電子カルテで自動計算できる?

Philips ICCA・GE Centricity Critical Care・NEC MegaOak・富士通ICCU等のICU情報システムで、生体情報モニター・検査値と連動した自動計算機能あり。手入力の場合、電子カルテのテンプレート・スコアシートで補助する運用が多く、正確性はダブルチェック体制で担保します。

DPC請求・診療報酬にAPACHE IIは必要?

特定集中治療室管理料の算定要件ではSOFAスコアの記録が必須ですが、APACHE IIは必須ではありません。ただし施設の重症度分析・厚労省提出データ・学会JIPADレジストリ入力にはAPACHE IIも記録するのが実務標準。DPC分析でも重症度補正の参考データとして活用されます。

APACHE IIを終末期判断に使ってよい?

スコア単独では判断しません。「日本集中治療医学会・日本救急医学会 救急・集中治療における終末期医療ガイドライン」に基づき、APACHE II・SOFA等の客観指標+不可逆的臓器障害+治療反応性の総合判断で、患者・家族と共同意思決定(Shared Decision Making)を行うのが標準。倫理コンサルテーションの活用も推奨されます。