不動産投資利回り 計算ツール|表面・実質・NOI利回りを即算出、地域別相場と実務指標つき
不動産投資物件の表面利回り・実質利回り(NOI利回り)を、物件価格と家賃・経費から瞬時に計算。地域別の利回り相場、キャップレート、IRR、DSCR、レバレッジ効果まで対応。ワンルーム投資・一棟アパート・区分マンションの投資判断で頻用される指標を、日本不動産研究所・国土交通省・不動産証券化協会の公表データに照らして解説します。
不動産投資利回り 計算機
計算式と定義
基本式
表面利回り(%) = 年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100
実質利回り(%) = (年間家賃収入 − 年間経費) ÷ 物件価格 × 100
NOI利回り(%) = 純営業収益(NOI) ÷ 物件取得総額 × 100
表面利回り(グロス利回り)は、物件広告で最も一般的に表示される簡易指標。実質利回り(ネット利回り、NOI利回り)は、管理費・修繕費・固定資産税・保険料などの運営コストを差し引いた実際のキャッシュフローを反映した実態的な収益性指標です。
本ツールの前提
本ツールは月家賃×12ヶ月の満室想定を年間家賃収入とし、経費を年額で控除して簡易計算します。空室率、修繕費、税金、諸経費、金利、減価償却など、より本格的なキャッシュフロー分析はDCF法・IRR計算が必要です。
物件広告の利回りに注意
不動産ポータルサイトや物件広告で表示される「利回り○%」は、ほぼ全て表面利回りです。実質利回りは表面利回りより1〜3ポイント低くなるのが一般的で、都心築古の高稼働物件で1〜2ポイント差、地方築古の空室リスク高物件では3〜5ポイント差になることも。
表面利回りと実質利回りの違い
両者の違いは「経費を含めるか否か」にあります。実務では両方を併記して物件比較するのが基本です。
| 項目 | 表面利回り(グロス) | 実質利回り(ネット/NOI) |
|---|---|---|
| 分子 | 年間家賃収入(満室想定) | 年間家賃収入 − 年間経費 |
| 分母 | 物件価格 | 物件取得総額(諸費用込) |
| 用途 | 物件広告・簡易比較 | 投資判断・CF分析 |
| 都心区分マンション | 4〜5% | 2〜3% |
| 地方一棟アパート | 8〜12% | 5〜8% |
| REIT組入物件 | 4〜5% | 3〜4% |
物件取得時には仲介手数料・登記費用・不動産取得税・ローン諸費用などで、物件価格の6〜10%程度の諸費用が別途かかります。厳密な実質利回りは、この諸費用を含めた総取得コストを分母にすべきです。
地域・物件タイプ別の利回り相場
日本不動産研究所「不動産投資家調査」の期待利回りデータ(2026年前期)を参考にした表面利回りの水準感です。地域・築年数・立地・物件タイプで大きく変動します。
| 物件タイプ | 東京都心 | 大阪・名古屋 | 地方主要都市 |
|---|---|---|---|
| ワンルームマンション(築浅) | 3.8〜4.5% | 4.5〜5.5% | 6〜8% |
| ワンルームマンション(築古) | 5〜7% | 6〜8% | 9〜12% |
| ファミリーマンション | 3.5〜4.5% | 4.5〜5.5% | 6〜8% |
| 一棟アパート(木造築古) | 7〜9% | 8〜11% | 10〜15% |
| 一棟マンション(RC築浅) | 4〜5% | 5〜6% | 6〜8% |
| 店舗・オフィス | 4〜5% | 5〜6.5% | 7〜10% |
| 物流施設(大型) | 4〜5% | 4.5〜5.5% | 5〜6.5% |
| ホテル(シティ) | 4〜5% | 5〜6% | 6〜9% |
「高利回り=好条件」ではありません。高利回り物件はリスク(空室・修繕・流動性)も高いのが基本原則。低利回りの都心区分は空室リスクが低く安定性が高い一方、キャピタルゲイン狙いの側面もあります。
実質利回り計算に含める経費項目
実質利回り(NOI利回り)を正確に算定するには、以下の経費を年額で見積もる必要があります。物件価格の年5〜7%が経費の目安となる物件が多いです。
| 経費項目 | 目安(年額) | 備考 |
|---|---|---|
| 建物管理費・共益費 | 家賃収入の5〜10% | 区分マンションは管理組合へ支払い |
| 修繕積立金 | 家賃収入の3〜7% | 大規模修繕への備え |
| PM(不動産管理会社)手数料 | 家賃収入の3〜5% | 入居募集・家賃徴収・退去対応 |
| 固定資産税・都市計画税 | 物件価格の0.5〜1% | 1月1日基準 |
| 火災保険料・地震保険料 | 年2〜10万円 | 木造・RC造で差あり |
| 入居募集の広告料(AD) | 入居時1〜2ヶ月分 | 賃料の1〜2ヶ月分 |
| 原状回復・退去修繕費 | 入居時20〜50万円 | 10年に1回の平均 |
| 共用部電気・水道 | 年3〜10万円 | アパート・小規模マンション |
| 予備費・雑費 | 家賃収入の3〜5% | 訴訟対応・法定検査等 |
キャップレート・NOIの実務
キャップレート(還元利回り)
キャップレート(%) = NOI ÷ 物件価格 × 100
キャップレート(Cap Rate、還元利回り)は、収益還元法による物件評価で使う指標です。NOI(純営業収益)を市場のキャップレートで割ることで収益価格を算定します。J-REIT・不動産ファンドの物件評価で標準的に使われます。
NOI(純営業収益)の定義
NOI = 総収入 − 空室損 − 運営費用
NOI(Net Operating Income)は、満室想定家賃から空室損失(通常5〜10%)を差し引き、運営費用(管理費・修繕費・税金等、ローン返済と減価償却は除く)を控除した収益です。ローン金利や税金前の収益指標として、投資家間の物件比較で使われます。
IRR・DSCR・レバレッジ効果
IRR(内部収益率)
投資期間全体のキャッシュフロー(家賃収入-経費-ローン返済+売却益)を割り引き、NPVがゼロになる割引率=IRR(Internal Rate of Return)。不動産投資では税引後IRRで8〜15%が実務目標。
DSCR(債務返済カバー率)
DSCR = NOI ÷ 年間ローン返済額
金融機関の融資審査で使う指標。DSCR 1.2〜1.3以上が融資可能水準、1.5以上が安全圏。1.0を下回るとローン返済でキャッシュ不足に陥ります。
レバレッジ効果
ローンを活用することで自己資本利回りを高める効果。融資金利より物件利回りが高ければプラスのレバレッジ、逆なら「逆レバ」と呼び、ローン組成で赤字になる状態を指します。
ケース別の利回りシミュレーション
実際の物件を想定した表面利回り・実質利回りのケーススタディです。物件個別の条件で変わりますが、水準感を掴む参考にしてください。
【ケース1】都心築5年ワンルームマンション
- 物件価格 2500万円、家賃月10万円、想定満室
- 年間家賃収入 120万円、表面利回り 4.8%
- 年間経費:管理費修繕費18万・PM手数料6万・固都税6万・保険2万・雑費3万=35万円
- 実質利回り (120-35)/2500=3.4%
- 諸費用込み総取得額 2700万円で再計算:3.15%
【ケース2】地方築25年木造アパート
- 物件価格 3000万円(6室)、満室想定家賃 月30万円
- 年間家賃収入 360万円、表面利回り 12.0%
- 年間経費:PM 18万・固都税 8万・保険 5万・修繕費 30万・その他 15万=76万円
- 空室率20%想定:家賃収入288万円
- 実質利回り (288-76)/3000=7.1%
【ケース3】郊外築15年RC一棟マンション
- 物件価格 8000万円(15室)、家賃合計 月60万円
- 年間家賃収入 720万円、表面利回り 9.0%
- 年間経費:PM 36万・修繕積立 30万・固都税 25万・保険 10万・雑費 20万=121万円
- 空室率10%想定:家賃収入 648万円
- 実質利回り (648-121)/8000=6.6%
【ケース4】REIT組入型 東京商業物件想定
- 取得価格100億円、NOI 4.5億円
- キャップレート 4.5%、LTV 45%、DSCR 2.0以上
- 分配金利回り水準 3.8〜4.2%(投資家目線)
不動産所得の税務ポイント
個人の不動産投資では、家賃収入は「不動産所得」として給与所得等と合算し総合課税されます。実質利回りの計算とは別に、税務面の理解が必須です。
不動産所得の計算
不動産所得 = 総収入(家賃・更新料等) − 必要経費
必要経費に含めるもの:固定資産税・都市計画税、火災保険料、修繕費、PM手数料、減価償却費、借入金利息(元本部分は不可)、青色申告特別控除(10・55・65万円)、消耗品費、旅費交通費など。
減価償却の耐用年数
木造(住宅)は22年、木造モルタルは20年、鉄骨造(4mm超)は34年、RC造は47年。中古取得は「(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%」で減額計算。築年数超過物件は「法定耐用年数×20%」で最短4年減価償却が可能で、高所得者の節税手法として活用されます。
損益通算のルール
不動産所得のマイナスは給与所得等と損益通算可能ですが、土地取得の借入金利息は損益通算不可のルールに注意。海外中古物件の減価償却による損益通算も2020年度税制改正で制限強化されました。
こんな場面で使う
ワンルーム投資の勧誘を検討中
「表面利回り5%」を謳うワンルーム勧誘に対し、実質利回りが2%台になるケースは典型パターン。管理費・修繕積立金・固都税・PM手数料を必ず計上し、実質利回りベースで投資可否を判断すべきです。
一棟アパート・マンションの物件比較
複数物件を検討する際、表面利回りだけでなく実質利回り、キャップレート、DSCRの三点セットで比較。地方高利回り物件は空室リスクを空室率20〜30%で見積もり直す慎重さが必要。
金融機関への融資相談前
物件価格・想定家賃・経費からDSCRを試算し、1.3以上を確保できる融資条件・自己資金比率を事前検討。金融機関との交渉で「事業計画書の裏付け」となります。
持ち家の賃貸転用シミュレーション
転勤・住み替えで自宅を賃貸に出す場合の収益性チェック。想定家賃-管理費-固都税-補修費で実質利回りを試算し、売却との比較材料に。
不動産クラウドファンディングの利回り比較
ソーシャルレンディング・不動産CF案件の想定利回り(5〜8%)を、実物投資の実質利回り相場と比較。流動性・保全性の差も加味して判断。
相続不動産の売却vs保有判断
相続した収益物件を、売却してキャッシュ化するか保有継続するか。現時点の実質利回りと売却手取り+運用益(株式配当等)を比較して判断。
実物投資とREITの詳細比較
実物不動産投資とJ-REITは、いずれも不動産に投資する手段ですが、性質が大きく異なります。ご自身の投資目的・時間・資金力に応じた選択が必要です。
| 比較項目 | 実物不動産投資 | J-REIT投資 |
|---|---|---|
| 最低投資額 | 数百万〜数億円 | 10万〜30万円/銘柄 |
| レバレッジ | ローンで3〜5倍可能 | 個人はレバレッジ不可(信用取引除く) |
| 流動性 | 売却に3〜6ヶ月 | いつでも売買可能 |
| 分散性 | 1〜数物件に集中 | 1銘柄で数十〜数百物件に分散 |
| 運営負担 | PM委託でも意思決定必要 | プロが完全運用 |
| 期待利回り(税引前) | 実質6〜10%(高レバなら15%+) | 分配金利回り3.5〜4.5% |
| 節税効果 | 減価償却・損益通算あり | NISA非課税枠適用可 |
| 相続対策 | 評価圧縮効果大 | 時価評価で圧縮効果小 |
| 金利変動リスク | 変動金利ローンで直撃 | 市場金利上昇で価格下落 |
| 災害リスク | 物件の直接被災 | 分散で相対的に軽減 |
J-REIT公表利回りをベンチマークにする
機関投資家が組成するJ-REITの分配金利回りは、プロが受け入れている利回り水準そのものです。個人が検討中の物件の実質利回りをこの水準と並べると、割高・割安の判断がしやすくなります。
| 投資対象 | 分配金利回りの目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| J-REIT市場全体(東証REIT指数) | 4.5〜5.0% | 分散投資済・流動性が高い |
| オフィスREIT大手 | 4.0〜4.8% | 都心Aグレードオフィス中心 |
| 住宅REIT | 4.2〜5.0% | 賃貸マンション主体 |
| 商業施設REIT | 4.5〜5.5% | ショッピングモール・アウトレット |
| 物流REIT | 4.0〜4.8% | Eコマース需要で堅調 |
| ホテルREIT | 5.0〜6.5% | インバウンド動向の影響大 |
| ヘルスケアREIT | 5.0〜6.0% | 介護施設・病院・シニア住宅 |
現物ワンルーム投資の実質利回りがJ-REITの分配金利回りを下回るケースは珍しくありません。「なぜ機関投資家が買わない物件を個人が買うのか」という視点は常に持ちたいところです。手間・時間・レバレッジ効果・節税効果・売却時のキャピタルゲインなど、REITにない差別化要因を説明できない物件は、投資の合理性が薄いと考えてください。
融資条件と法定耐用年数
金融機関は「法定耐用年数 − 築年数」を融資期間の上限とする運用が一般的です。木造築15年なら融資7年、RC造築20年なら融資27年が目安になります。融資期間が短いほど年間返済額が増え、DSCRとキャッシュフローが一気に悪化するため、利回りと同じ重みで確認すべき条件です。
| 金融機関タイプ | 融資金利の目安 | 融資期間 | LTV上限 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 都市銀行(プロパー) | 0.8〜1.5% | 法定耐用年数内 | 70〜80% | 年収・保有資産の要件が厳しい |
| 地方銀行 | 1.5〜3.0% | 法定耐用年数内 | 80〜90% | 地域密着・築古物件も相談可 |
| 信用金庫・信用組合 | 2.0〜3.5% | 法定耐用年数内 | 80〜90% | 地元投資家向けで柔軟な対応 |
| 日本政策金融公庫 | 1.2〜2.5% | 最長20年 | 案件次第 | 創業融資・小規模投資家向け |
| ノンバンク・不動産特化 | 2.5〜4.5% | 耐用年数超過も可 | 90〜100% | 築古RCでも長期融資が組める反面、金利が高い |
フルローンに近い高LTVは自己資金利回り(CCR)を大きく見せますが、金利上昇と空室が重なったときの耐性は下がります。表面利回りが同じ物件でも、どの金融機関でいくらの金利・何年で借りられるかによって手残りは倍以上変わる点を押さえてください。
出口戦略と売却時コスト
不動産投資の最終的な損益は、保有中のキャッシュフローと売却代金の合計で決まります。保有中の利回りだけで判断すると、出口で赤字に転じるケースを見落とします。
出口価格の決まり方
売却時の価格は、その時点の家賃水準と市場が要求する期待利回りで決まります。
想定売却価格 = 売却時点の年間家賃 ÷ 売却時点の期待利回り
家賃が下落する、あるいは市場の期待利回りが上昇する(=価格が下がる)と、購入時に想定した売却価格は実現しません。築年数が進むほど家賃も下がり、買い手が求める利回りも上がるため、この二重の下押しを織り込んだ試算が必要です。
売却時にかかる費用と税
売却時には仲介手数料(売買価格×3%+6万円+消費税が上限)、印紙税、抵当権抹消費用などがかかり、さらに譲渡益には課税されます。個人の譲渡所得は所有期間で税率が変わり、譲渡した年の1月1日時点で所有5年以下は短期譲渡所得39.63%、5年超は長期譲渡所得20.315%(いずれも所得税・復興特別所得税・住民税の合計)です。短期売却は税負担が倍近くになるため、売却時期の設計は利回り以上に手残りを左右します。
減価償却は出口で跳ね返る
減価償却で保有中の課税所得を圧縮した分だけ簿価が下がり、売却時の譲渡益は大きくなります。節税効果は永続せず、償却が終われば経費が減って課税所得が増え、売却時にはその繰り延べ分が精算されるという構造です。築古木造の短期償却スキームを使う場合ほど、出口の税負担まで含めた通算で判断してください。
修繕積立金は上がる前提で試算する
分譲マンションの修繕積立金は新築時に低く設定され、長期修繕計画に沿って段階的に引き上げられる方式が一般的です。購入時点の金額が10年後も同じという前提で試算すると、保有後半のキャッシュフローを過大評価します。購入前に管理組合の長期修繕計画と積立金残高を必ず確認しましょう。
よくある間違い・注意点
- 表面利回りだけで購入判断 — 物件広告は表面利回り。実質利回りは1〜3ポイント低いのが常識。管理費・修繕積立金・固都税・保険・PM手数料の年額を必ず控除して判断してください。
- 満室想定を鵜呑み — 「想定利回り」は満室前提。空室率10%(都心築浅)〜30%(地方築古)を織り込んで実効利回りを再計算しましょう。
- 諸費用を分母に含めない — 物件価格の6〜10%程度の諸費用(仲介手数料・登記費用・不動産取得税等)を分母に含めず、実質利回りを高く見せる悪意ある表示に注意。
- 減価償却を経費と混同 — 減価償却費は税務上の経費であり、キャッシュアウトを伴わない。実質利回り計算では経費に含めるべきではないが、税引後利回り計算では税額計算に必要。
- 大規模修繕費を軽視 — 築古RCマンションは10〜15年ごとに数百万円〜数千万円の大規模修繕。積立金不足なら追加負担も。中長期の修繕サイクルを織り込んだ利回りで判断。
- 金利上昇リスクの軽視 — 変動金利ローンで利回り確保しているケースは、金利1%上昇でDSCRが逆転し赤字化することも。ストレステストが必須。
- 売却時の流動性リスク — 地方・築古・特殊物件は売却時の買い手が限定的。IRR計算で想定した売却価格が実現しない可能性を織り込んで判断すべき。
関連する法令・実務基準
- 不動産鑑定評価基準(国土交通省) ― 収益還元法・DCF法・原価法・取引事例比較法などの評価アプローチと利回りの位置づけ。
- 宅地建物取引業法 ― 不動産販売時の重要事項説明義務。物件広告の表示ルール(不当景品類及び不当表示防止法)にも影響。
- 不動産の表示に関する公正競争規約 ― 表面利回り・実質利回りの表示ルール。誤解を招く表示の禁止。
- 金融商品取引法 ― J-REIT・不動産ファンド等の証券化商品の情報開示ルール。運用報告書のNOI・キャップレート表示。
- 投資信託及び投資法人に関する法律 ― J-REITの投資法人としての運営ルール。分配可能利益・LTVの規制。
- 金融庁 金融機関の不動産投資向け融資監督指針 ― 投資用不動産融資でのDSCR・LTV審査基準。
- 会計基準(企業会計原則) ― 収益・費用の期間帰属、減価償却の計算方法。個人不動産所得の申告にも準用される部分あり。
参考文献・公的資料
より正確な相場感や指標の考え方を確認したい場合は、以下の公的機関・業界団体の資料を参照してください。
- 日本不動産研究所 不動産投資家調査 ― 半期ごとに公表される投資家の期待利回り(Cap Rate)データ。物件タイプ・地域別。国内で最も信頼される利回りベンチマーク。
- 国土交通省 不動産鑑定評価基準 ― 収益還元法・DCF法など不動産評価の公的基準。
- 国土交通省 不動産価格指数・住宅市場動向 ― 全国の不動産価格・賃料動向。
- 一般社団法人 不動産証券化協会(ARES) ― J-REIT・不動産ファンドの制度・運用データ。ARES J-REIT Index。
- J-REIT AT-A-GLANCE ― 全J-REIT銘柄の分配金利回り・NAV・LTVの一覧。実物投資のベンチマーク。
- 公益財団法人 不動産流通推進センター ― 不動産流通実務の情報。宅建士・不動産鑑定士向け資料。
- 金融庁 監督指針 ― 投資用不動産融資の審査基準、DSCR・LTV等。
- 国税庁 不動産所得の計算 ― 不動産所得の必要経費・減価償却費の税務ルール。
- 全日本不動産協会 ― 不動産業界団体。市場動向・実務情報。
- 日本不動産鑑定士協会連合会 ― 不動産鑑定士の団体。鑑定評価の実務ガイドライン。
よくある質問(FAQ)
表面利回りと実質利回りの違いは?
表面利回りは「年間家賃÷物件価格」の単純計算。実質利回り(NOI利回り)は「(家賃-経費)÷物件価格(諸費用込)」で、管理費・修繕費・固定資産税・保険料・PM手数料などを差し引いた実態的な収益率です。物件広告はほぼ表面利回り。投資判断は実質利回りベースが原則です。
不動産投資で目安となる利回りは?
物件タイプ・地域で大きく異なります。都心築浅ワンルームは表面4〜5%(実質2〜3%)、地方一棟アパートは表面10〜15%(実質6〜10%)が2026年の相場感。ただし高利回り=好条件ではなく、リスクの反映です。日本不動産研究所の投資家調査が最新の期待利回りベンチマークになります。
キャップレートとは何?
Cap Rate(還元利回り)は、NOI(純営業収益)を物件価格で割った指標。収益還元法の基礎で、J-REITや不動産ファンドの評価で使われます。表面利回りに近い概念ですが、分子がNOI(空室損・運営費用控除後)である点が異なります。
DSCRとは?金融機関はどう見る?
DSCR(債務返済カバー率)=NOI÷年間ローン返済額。1.0を下回るとキャッシュフロー赤字。金融機関の融資審査では1.2〜1.3以上が可能水準、1.5以上が安全圏とされます。金利上昇リスクを織り込むため、ストレステスト(金利+1%)後の値も要検討。
IRR(内部収益率)はどう計算する?
投資期間中のCF(家賃-経費-ローン返済+売却益)のNPVがゼロになる割引率。Excel関数のIRR/XIRRで算出可能。不動産投資では税引後IRRで8〜15%が実務目標。単年の利回りより投資全体の収益性を反映する指標です。
諸費用は分母に入れるべき?
厳密な実質利回り計算では入れるべきです。物件価格の6〜10%の諸費用(仲介手数料・登記費用・不動産取得税・ローン諸費用等)を「物件取得総額」として分母にしないと、利回りが過大評価されます。表面利回りが7%でも、諸費用込みの実質利回りは4〜5%というケースは頻繁にあります。
空室率はどのくらい見積もる?
物件立地・築年数・タイプで異なります。都心築浅ワンルームで5〜10%、地方築古ファミリーで20〜30%が実務での目安。金融機関の融資審査では空室率20%程度で保守的に見積もることが多いです。実際の稼働率をレインズや周辺相場から検証しましょう。
減価償却は利回り計算に含める?
実質利回り(NOI利回り)には含めません(キャッシュアウトを伴わないため)。ただし税引後利回り・IRR計算では、減価償却費が所得税を圧縮するタックスシールド効果を反映します。木造築古22年超は4年、RC造47年、木造新築22年など耐用年数で差が出ます。
大規模修繕はどう見積もる?
RC造マンションは10〜15年ごとに数百万円〜数千万円の大規模修繕が必要。区分マンションは管理組合の修繕積立金でカバーされるのが原則ですが、積立不足時は追加負担も。一棟物件は自らの積立必要。長期修繕計画(修繕・修繕積立金の目安)を国交省ガイドラインで検討可能。
利回りが高い物件はなぜリスクが高い?
市場が高利回りを要求する=リスクが高い、が投資理論の基本原則。地方築古・特殊物件は空室リスク・修繕リスク・流動性リスク(売却困難)が高い分、利回りで補償されているのです。「利回り18%」だけを見て飛びつくと、実質利回りが空室率考慮で6%以下、修繕費で赤字化するリスクが高いです。
ワンルーム投資は儲かる?
都心築浅ワンルームは表面4〜5%・実質2〜3%が相場で、純粋な家賃収益では黒字化困難なケースが多いです。節税(不動産所得のマイナスを給与所得と相殺)や、将来の売却キャピタルゲイン狙いの側面が強く、営業トークに要注意。金融機関融資での自己資本利回り(レバレッジ後)がプラスかどうかがカギ。
REITと実物投資、どちらが良い?
REITは流動性・分散性・小口投資で優位、実物投資はレバレッジ効果・節税・自己コントロールで優位。J-REITの平均分配金利回りは3.5〜4.5%で、実物投資の税引後IRR(8〜15%)には及ばないが、時間コスト・専門性・リスクを考えると、多くの初心者にはREITが現実的な選択肢です。
CCR(自己資金利回り)の見方は?
CCR(Cash on Cash Return)は「投下した自己資金に対して年いくら手残りが戻るか」を見る指標です。10%以上が一般的な目安、15%以上なら好条件とされます。ただし高いCCRはレバレッジが効いている裏返しでもあるため、返済比率50%以下・DSCR1.2以上を同時に満たしているかを必ず確認してください。
銀行融資が出ない物件の特徴は?
木造築22年超、RC造築47年超のように法定耐用年数を超過した物件は融資期間が極端に短くなるか、融資自体が出ないことがあります。再建築不可、市街化調整区域、既存不適格、接道義務違反の物件も融資が付きにくい典型です。出口で買い手が融資を使えない物件は売却も難しくなるため、購入前の融資戦略が重要です。
築古木造の減価償却スキームとは?
法定耐用年数(木造22年)を超えた中古物件は「法定耐用年数×20%」で最短4年での減価償却が可能です。短期間に多額の減価償却費を計上して不動産所得をマイナスにし、給与所得と損益通算して節税する手法ですが、償却期間が終われば効果は切れ、売却時には簿価が下がった分だけ譲渡益が増えます。節税ではなく課税の繰り延べだと理解して使うべき手法です。
サブリース(家賃保証)の落とし穴は?
「30年家賃保証」を謳う契約でも、5〜10年ごとに保証賃料を減額改定できる条項が入っているのが大半です。2018年のいわゆる「かぼちゃの馬車」問題ではサブリース業者の破綻でオーナーがローン返済不能に陥りました。2020年施行のサブリース新法(賃貸住宅管理業法)で勧誘・契約時の規制は強化されましたが、保証額が将来も維持される保証ではありません。契約書の減額条項と免責期間を必ず確認してください。
不動産クラウドファンディングとの違いは?
不動産クラウドファンディングは1万円程度から投資でき、運営会社が物件の取得・管理を行う手軽さが魅力ですが、想定利回りは年3〜7%程度と現物投資より低めで、途中解約の制限や元本毀損のリスクがあります。少額から分散したい方に向く手段で、レバレッジと自己判断を活かしたい方は現物投資、という棲み分けになります。