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損益分岐点計算|固定費・変動費から「赤字にならない最低売上」と「目標利益達成売上」を網羅

事業の固定費・変動費を入れるだけで、損益分岐点売上高(BEP: Break-Even Point)・損益分岐点販売数量・限界利益率・安全余裕率・目標利益達成に必要な売上を一気に計算します。管理会計・原価計算論の基礎であるCVP分析(Cost-Volume-Profit Analysis)を業務利用可能な形で実装しました。新規事業の収支設計、価格戦略、コストカット効果の検証、撤退判断、値上げシミュレーション、資金繰り予測、事業計画書作成まで、経営の意思決定に直結する5つの数字を可視化。飲食業・小売業・SaaS・製造業の業種別BEP相場、複数製品の加重平均限界利益率、固定費と変動費の見分け方、赤字継続の判断基準(限界利益プラスなら継続価値あり)、Excel計算式(=固定費/(1-変動費率))、公認会計士協会の管理会計指針、日本商工会議所のガイドまで6000字級で徹底解説した完全無料ツールです。

最終更新:2026-07-24/監修:計算ツールズ編集部

損益分岐点 計算ツール

人件費・家賃・減価償却・保険料など、売上に関係なく発生する費用。
売上に対する変動費の割合。仕入率・原価率と同義。
入力すると安全余裕率と利益額を表示。

計算式とCVP分析

損益分岐点売上高(BEP)= 固定費 ÷ 限界利益率
限界利益率 = 1 − 変動費率
必要販売数量 = 固定費 ÷(単価 − 1単位あたり変動費)
安全余裕率 = (実績売上 − BEP) ÷ 実績売上 × 100
目標利益達成売上 = (固定費 + 目標利益) ÷ 限界利益率

CVP分析(原価-数量-利益分析)

損益分岐点計算はCVP分析(Cost-Volume-Profit Analysis)の基本ツールで、コスト構造・売上規模・利益の関係を可視化する管理会計の中核手法。20世紀初頭にドイツの経済学者Karl Rummelが体系化、その後米国のCharles E. Knoeppelらが実務に応用しました。日本では公認会計士協会・日本商工会議所が中小企業の経営指標として推奨しています。

限界利益と限界利益率

限界利益とは、売上から変動費を差し引いた金額で、固定費を回収する余力を示す指標。限界利益率は限界利益÷売上高。この指標が高いほど売上増加時の利益拡大効果が大きく、事業の「投資効率」を測る重要指標です。SaaSビジネスで限界利益率80%というのは、売上1円追加で0.8円が利益貢献という意味です。

固定費と変動費の分類

🏢 固定費(Fixed Cost)

売上ゼロでも発生する費用。家賃・正社員給与・減価償却費・保険料・通信費・水道光熱基本料・リース料・システム利用料等。売上規模に関係なく毎月一定額で発生するのが特徴で、事業を止めない限り削減が難しい部分。

📦 変動費(Variable Cost)

売上に比例して増減する費用。仕入原価・材料費・販売手数料・運賃・カード決済手数料(3-5%)・成果報酬型広告費・アフィリエイト報酬等。売上100万円時と1,000万円時で総額が10倍になる費用が典型例。

🎯 準固定費・準変動費

境界線が曖昧な費用。アルバイト人件費(時給×シフトで変動費寄り、月額保証で固定費寄り)、水道光熱費(基本料は固定・使用量部分は変動)、事務用品費(一定期間で買い足すため準固定)。管理会計では実務判断で分類。

📊 高低点法・スキャッター法

実務での固変分解には「高低点法」(月次売上と経費の高低月の傾き)や「スキャッター法」(散布図と回帰直線)を使用。厳密には勘定科目法(費目ごとに固変分類)が主流ですが、大まかな把握なら統計的手法が便利です。

業種別の代表的な費用分類

業種主な固定費主な変動費
飲食店家賃・正社員給与・減価償却・保険食材原価・アルバイト時給・水道光熱使用分
小売業店舗家賃・正社員給与・減価償却商品仕入・カード手数料・販促費
製造業工場減価償却・正社員給与・保険材料費・電力使用分・製造ロット費用
SaaS/IT正社員給与・オフィス家賃・サーバー基本料CS対応工数・従量課金クラウド料・決済手数料
コンサル/士業オフィス家賃・正社員給与・システム外注費・出張費・成果報酬
EC/通販正社員給与・システム利用料・倉庫固定費商品原価・送料・広告費・カード手数料

業種別BEP相場

業種変動費率限界利益率BEP売上比率の目安
飲食店(居酒屋)30-35%(原価)65-70%売上の70-80%
飲食店(ラーメン店)30-35%65-70%売上の75-85%
飲食店(レストラン高級)25-30%70-75%売上の75-85%
小売業(食品スーパー)75-80%20-25%売上の90-95%
小売業(アパレル)50-60%40-50%売上の80-90%
製造業(自動車)70-80%20-30%売上の85-95%
製造業(食品加工)50-60%40-50%売上の75-85%
SaaS/IT10-25%75-90%売上の50-70%
コンサル20-30%(外注費)70-80%売上の60-80%
不動産賃貸10-20%80-90%売上の50-70%
EC単品リピート25-35%(原価)+広告50-60%(LTVベース)売上の80-90%
建設業75-85%(材料・外注)15-25%売上の90-95%
ホテル25-35%65-75%売上の75-85%

※BEP売上比率=BEP÷実売上。この比率が低いほど利益体質が強く、外部ショックに強い。飲食業のBEP売上比率80%は「売上が20%減ると赤字」を意味し、コロナ・災害時の耐性の低さが顕著になった業界です。

経営レバレッジ

営業レバレッジ(Operating Leverage)

営業レバレッジ = 限界利益 ÷ 営業利益

売上変動が営業利益に与える影響の大きさを測る指標。営業レバレッジが3なら、売上10%増加で営業利益30%増。固定費比率が高い事業(SaaS・製造業)ほど営業レバレッジが高く、売上急増時の利益爆発が期待できる反面、売上減少時の赤字リスクも大きい構造です。

レバレッジ効果の実例

事業タイプ営業レバレッジ売上10%増時の利益変化
SaaS(固定費比率高)5-10+50-100%
製造業(設備投資型)3-6+30-60%
飲食(固定費比率中)2-4+20-40%
小売業(変動費比率高)1.5-2.5+15-25%
コンサル・受託開発1.5-3+15-30%

「営業レバレッジが高い=良い事業」ではありません。売上変動の少ないビジネス(サブスク・年間契約)は高レバレッジでも安定、変動の大きいビジネス(新規獲得依存)は低レバレッジでもリスクあり。売上安定性とレバレッジの組み合わせが事業評価の視点です。

複数製品の加重平均

複数製品を扱う事業では、加重平均限界利益率で全体のBEPを計算します。

計算例

3製品を扱う事業:
・製品A:売上比40%、限界利益率60% → 貢献 40% × 60% = 24%
・製品B:売上比35%、限界利益率50% → 貢献 35% × 50% = 17.5%
・製品C:売上比25%、限界利益率70% → 貢献 25% × 70% = 17.5%
加重平均限界利益率 = 24 + 17.5 + 17.5 = 59%
月固定費300万円なら BEP = 300万÷0.59 ≒ 508万円

プロダクトミックスの重要性

販売構成比が変わると加重平均限界利益率も変動し、BEPが変わります。高粗利製品の販売比率を上げることで、同じ固定費でもBEPを大きく下げられる可能性があります。「ドリンクの粗利率が高いから居酒屋はドリンクを推す」「保険会社が儲かる商品を推す」等のセールス戦略の背景です。

BEP改善4戦略

💰 1. 固定費削減

家賃交渉・オフィス縮小・システム見直し・正社員→業務委託化。BEP直接削減効果あり。ただし過度な削減は事業実行力を損なうリスクがあり、戦略性の高い削減が必要。目安:固定費10%減でBEP約10%減。

📉 2. 変動費率削減

仕入交渉・大量発注割引・原価率改善・工程見直し。限界利益率が上がりBEPが大幅低下。変動費率5%減でBEPが10-15%減の効果。ただし品質低下や取引先関係悪化のリスクに注意。

💵 3. 販売価格の値上げ

変動費率が下がり限界利益率が上昇。BEP大幅低下+利益爆発の効果。10%値上げで一般に販売数量5-10%減があっても、利益は増えるケース多い。値上げは経営者最強のカード。

📈 4. 販売数量拡大

BEP自体は変わらないが、BEP超過分の売上が全て利益に。マーケティング・営業強化・チャネル拡大。売上10%増で利益率数倍のレバレッジ効果(営業レバレッジ)が働く。

4戦略の効果比較例

飲食店(月固定費300万・変動費率40%・実売上800万)で、各施策1割改善時の効果:

施策変更後BEP実利益効果
変更なし500万円180万円
固定費10%減450万円210万円+30万
変動費率5%減462万円220万円+40万
値上げ10%(数量5%減)402万円313万円+133万
販売10%増500万円228万円+48万

値上げの効果が圧倒的ですが、顧客離れリスクとバランス。多くの企業は「値上げ+販売拡大」の組み合わせで利益最大化を目指します。

赤字撤退の判断基準

短期の判断:限界利益プラスなら継続

赤字事業でも限界利益がプラスなら短期的に継続すべき。固定費は事業を止めても発生する場合が多く(家賃契約・正社員給与)、限界利益で固定費を一部でも回収できていれば、撤退より継続の方が損失が小さい。

長期の判断:全コスト回収可能性

3〜5年の中期的視点では固定費含む全コスト回収可能性で判断。長期的にBEPを超える見込みがないなら撤退が合理的。ただし新規事業は立ち上がりに3-5年を要するのが一般的で、早計な撤退は将来の利益機会を失うリスク。

撤退判断のフレームワーク

  1. 限界利益マイナス → 即撤退検討(売れば売るほど赤字)
  2. 限界利益プラス・BEP未達 → 改善策実行、3-6か月で成果評価
  3. BEP突破・目標利益未達 → 継続で拡大戦略
  4. BEP突破・目標達成 → 順調、投資拡大検討

Excel計算式と実務

基本関数

計算内容Excel関数使い方例
限界利益率=1-変動費率=1-0.4 → 0.6
損益分岐点=固定費/(1-変動費率)=3000000/(1-0.4)
必要販売数量=固定費/(単価-単位変動費)=3000000/(1000-400)
安全余裕率=(実売上-BEP)/実売上*100=(6000000-5000000)/6000000*100
営業利益=売上*限界利益率-固定費=6000000*0.6-3000000
目標利益達成売上=(固定費+目標利益)/限界利益率=(3000000+1000000)/0.6

What-If分析(シナリオ)

Excelのデータテーブル機能で変動費率・売上量を変化させた場合のBEPをマトリクス表示可能。「What-If分析」→「データテーブル」で、変動費率30-50%と固定費200-400万の組み合わせでBEPを一覧表示できます。事業計画書の感度分析に便利。

よくある間違い・注意点

  • 固定費と変動費を厳密に分けようとしすぎる — 完璧な分類は不可能。大まかな傾向で分類し、月次で検証していく方が実用的。特にアルバイト人件費・水道光熱費など準変動費は事業実態に合わせて分類してください。
  • 加重平均を無視した単純BEP計算 — 複数製品を扱っているのに、全体の変動費率で計算すると誤差大。プロダクトミックスを考慮した加重平均限界利益率で計算し、販売構成比の変化にも対応した動的モニタリングが必要です。
  • 段階的固定費の見落とし — 売上拡大で必要になる追加固定費(人員増・オフィス拡大・システム増強)を無視。売上◯円到達で人員追加のように段階的固定費を織り込んだ計画が現実的です。
  • BEP突破時の税金忘れ — BEPは「税引前利益ゼロ」の売上高。実際に会社にお金を残すには法人税(実効税率30%程度)を考慮し、目標利益は税引前で設定する必要があります。
  • 減価償却費を変動費扱い — 減価償却費は現金支出を伴わない固定費。売上と関係なく発生するため、変動費に含めるとBEP計算が過小になります。設備投資型ビジネスでは特に注意。
  • 年間固定費と月次売上の混在 — 単位を揃えて計算。「年間固定費3,600万円÷月次限界利益率」でBEPを出すとナンセンスに。月次に統一するか年次に統一しましょう。
  • 限界利益率が高いから安泰と誤解 — SaaSの限界利益率80%も、営業レバレッジが高いため売上減少時のダメージが大きい。売上安定性とレバレッジの組み合わせで総合評価が必要です。

参考文献・公的資料(発リンク)

※本ページの業種別BEP相場は概算目安であり、実際の企業では業態・地域・時期で大きく異なります。正式な事業計画書作成や経営判断は、公認会計士・税理士・中小企業診断士・ファイナンシャルプランナー等の専門家と協議してください。特に事業撤退・M&Aの判断は複雑な要素があり、専門家サポートが必須です。

よくある質問(FAQ)

固定費と変動費の見分け方は?

売上ゼロでも発生するのが固定費(家賃・人件費・減価償却・保険・通信費)。売上に比例して増減するのが変動費(仕入・材料費・販売手数料・運賃・カード決済手数料)。アルバイト人件費は時給×シフトで変動費寄り、正社員は固定費寄りです。

限界利益と粗利益は同じ?

近いが厳密には異なる。限界利益=売上−変動費粗利益=売上−売上原価(仕入+直接製造原価)。製造業では原価に固定費(工場減価償却等)が含まれるため両者がズレるが、流通業・サービス業では実務上ほぼ同義に使われます。

安全余裕率の目安は?

20%以上が安全圏、10〜20%は要注意、10%未満は危険。安全余裕率20%の事業は、売上が20%減っても赤字にならないという意味。コロナ・震災級の外部ショックを想定すれば30%以上を目指したいところです。

固定費削減 vs 変動費率削減、どちらが効果大?

事業フェーズによる。立ち上げ期は売上が少ないため固定費削減が即効性大。拡大期は売上規模が大きいため変動費率1%減で大きな利益増。BEPがどちらに敏感に反応するかは、固定費レンジ÷限界利益額で判断してください。

複数製品があるときは?

商品ごとに限界利益率が違う場合は、加重平均限界利益率で計算するのが原則。販売構成比×各商品の限界利益率の合計を全体の限界利益率として使う。商品ミックスが変わるとBEPも変動するため、月次でモニタリングが必要です。

赤字でも続ける判断基準は?

限界利益がプラスなら短期的には継続価値あり。固定費は事業を止めても発生する場合が多く(家賃・正社員給与)、限界利益が固定費の一部でも回収できていれば撤退より続けた方が損失は小さい。長期的には固定費含む全コストの回収可能性で判断します。

値上げの効果は?

変動費率が下がり限界利益率が上昇するため、BEPが大幅低下。10%値上げで販売数量5-10%減があっても、利益は増えるケース多い。ただし顧客離れ・ブランドイメージへの影響を慎重に評価。競合比較と市場調査を踏まえた価格戦略が重要です。

営業レバレッジとは?

限界利益÷営業利益で計算。営業レバレッジ3なら売上10%増で営業利益30%増。固定費比率が高い事業(SaaS・製造業)ほど営業レバレッジが高く、売上急増時の利益爆発が期待できる反面、売上減少時の赤字リスクも大きくなります。

減価償却費はどう扱う?

減価償却費は現金支出を伴わない固定費。BEP計算では固定費に含めますが、キャッシュフロー計算では除外します。設備投資型ビジネス(製造業・不動産)では減価償却費が固定費の大部分を占めるため、CVP分析結果とキャッシュフロー分析結果に大きな差が出ることがあります。

BEP突破後の税金は?

BEPは「税引前利益ゼロ」の売上高。実際に会社にお金を残すには法人税(実効税率30%程度)を考慮し、目標利益は税引前で設定する必要があります。目標税引後利益100万円なら、税引前で143万円の目標設定が必要です。

コロナで学んだBEP対策は?

コロナで多くの飲食・観光業が閉店に追い込まれたのは、安全余裕率10-20%程度でBEP売上比率80-90%と、固定費体質が重すぎたため。今後は①固定費軽量化(オフィスサブスク・業務委託活用)、②安全余裕率30%以上維持、③複数事業ポートフォリオが対策です。

SaaSビジネスのBEP特性は?

SaaSは限界利益率が高い(75-90%)ため、BEP突破後の利益率が急上昇。ただし固定費比率も高く営業レバレッジが5-10と大きいため、売上急落時のダメージも大きい。ARR(年間経常収益)とチャーン(解約率)の安定性が生命線で、BEP試算にはこれらのKPI連動が必要です。