計算ツール
粘度配管ポンプ熱交換現場実務

水の粘度・動粘度 計算ツール|0-100℃の粘度早見表とレイノルズ数・配管圧損の同時算出

水の粘度・動粘度・密度・レイノルズ数を、温度を入力するだけでVogel式・Kell式により即時計算。0℃から100℃までの温度依存性を1桁精度でカバーし、配管圧損・ポンプ選定・熱交換器伝熱・CIP洗浄乱流化など現場実務の一次判断に対応します。給排水設備・プロセスプラント・食品/医薬品工場・冷凍空調で使う水系の粘度データを、JIS Z 8803・ISO 3104・IAPWS-IF97など公的規格に照らして解説します。

最終更新:2026-07-28/監修:計算ツールズ編集部

水の粘度・動粘度 計算機

計算式と単位系

粘度・動粘度の関係

動粘度 ν (mm²/s) = 粘度 η (mPa·s) ÷ 密度 ρ (g/cm³)

粘度 η(動的粘性率, Dynamic Viscosity)は流体の内部摩擦を表す物性値で、SI単位はPa·s、実用単位はmPa·s(=センチポアズ cP)。動粘度 ν(Kinematic Viscosity)は粘度を密度で割った値で、単位はmm²/s(=センチストークス cSt)。レイノルズ数計算やナビエ・ストークス方程式に直接使うのは動粘度側です。

Vogel式による近似

η (mPa·s) = exp(-3.7188 + 578.919 / (T + 135)) ※T は℃

本ツールでは0-100℃の常圧水に対してVogel-Fulcher-Tammann式を採用。IAPWS-IF97(水・水蒸気の国際標準物性)との誤差は0.5%以下で、実務のポンプ設計・配管圧損計算・伝熱計算では十分な精度です。

密度と動粘度

ρ (kg/m³) ≒ 999.83952 + 16.945176·T − 0.0079870401·T² − 46.170461×10⁻⁶·T³

水の密度はKell式の簡易多項式で近似。4℃で最大密度1.0000 g/cm³、20℃で0.9982、80℃で0.9718、100℃で0.9584。密度が温度で変わるため、粘度cPと動粘度cStの数値は温度によって微妙にずれます。

レイノルズ数(参考値)

Re = ρvD / η = vD / ν

本ツールは入力欄の配管内径Dと流速vからRe参考値を算出します。円管の完全乱流判定はRe > 4000、層流はRe < 2300が工学の目安。詳細はレイノルズ数と流動区分を参照してください。

水の粘度・動粘度 温度別早見(0-100℃)

常圧・純水の温度別粘度・動粘度・密度データです。IAPWS(International Association for the Properties of Water and Steam)の国際標準物性表に基づく代表値。実務ではこの表を目安に、精密設計時はIAPWS-IF97の全式を参照してください。

温度℃粘度 η (mPa·s=cP)動粘度 ν (mm²/s=cSt)密度 ρ (g/cm³)20℃基準比
01.7921.7920.99981.79
51.5181.5180.99991.51
101.3071.3070.99971.30
151.1381.1400.99911.14
201.0021.0040.99821.00(基準)
250.8900.8930.99710.89
300.7980.8020.99570.80
400.6530.6580.99220.65
500.5470.5540.98810.55
600.4670.4750.98320.47
700.4040.4130.97780.40
800.3550.3650.97180.35
900.3150.3260.96530.31
1000.2820.2940.95840.28

20℃を基準に、0℃では1.79倍、40℃で0.65倍、80℃で0.35倍と指数関数的に急変します。夏冬で温度差が大きい冷温水系や、給湯設備・蒸気系のドレンでは、この温度差を無視すると配管圧損計算・ポンプ動力計算が数十%ずれます。

レイノルズ数と流動区分

レイノルズ数(Reynolds Number, Re)は慣性力÷粘性力を表す無次元数で、流れの乱流化・層流化を判定します。水の粘度・動粘度は温度で急変するため、同じ配管・同じ流量でも運転温度によってReが2倍以上変わります。

レイノルズ数 Re流動区分特徴
< 2,300層流(Laminar)粘性支配。速度分布は放物線。摩擦係数 λ = 64/Re
2,300 - 4,000遷移域不安定。設計時は避けたい領域
4,000 - 10,000低乱流Blasius式 λ = 0.316/Re^0.25 適用域
10,000 - 10⁵乱流(発達)プラント配管の設計標準域
> 10⁵完全乱流粗さ支配、Moody線図の右側

典型計算例:内径25mmの給水管に20℃水を1 m/sで流すと Re = 1×0.025×998.2/(1.002×10⁻³) ≈ 24,900 で完全乱流。同じ条件で80℃水にすると密度が0.97、粘度が0.35 cPになりRe ≈ 68,400 と3倍近くになります。CIP洗浄では80℃で乱流化を確保する設計が定石です。

配管圧損への影響

Darcy-Weisbach式による摩擦圧損 ΔP = λ (L/D)(ρv²/2) では、摩擦係数λが粘度(Re)に依存するため、水温変化がそのまま圧損に反映されます。

典型的な温度別ポンプ動力差

冷凍機冷水系(7℃/12℃)

冷水は粘度1.3-1.4 cPで20℃基準の30%増し。同じ流量で圧損も約1.1〜1.2倍、ポンプ必要動力もそれに比例。冷水配管のポンプ選定は20℃前提だと不足するリスクあり。

給水系(15〜25℃)

20℃前後で粘度1.0 cP。設計標準値。給水本管・貯水槽まわりの圧損計算はほぼこの値で問題ない。

給湯・熱交換一次側(55〜80℃)

粘度0.35-0.5 cPで20℃基準の35-55%。同じ流量で圧損は約80-90%まで下がり、乱流もより発達しやすい。ポンプ動力は冷水系より小さくてよい。

ボイラー戻り水・蒸気ドレン(90〜100℃)

粘度0.28-0.32 cPで20℃基準の28-31%。極低粘度でキャビテーション(NPSH不足)リスクが増加。ポンプ吸込側の温度上昇には要注意。

業界での応用

🏢 給排水・空調設備

冷温水配管の圧損計算に動粘度を使用。冷水系(7℃)はν≒1.4、温水系(60℃)はν≒0.48と3倍差。同一配管でも系統温度により必要ポンプ揚程が変わる。冷凍機・空調機の一次冷温水ポンプ選定でJIS B 8622(空冷ヒートポンプチラーユニット)や日本冷凍空調工業会の設計指針を併用。

🏭 プロセスプラント

化学反応器・蒸留塔・熱交換器の総括伝熱係数U算出でRe・Pr(プラントル数)・Nu(ヌセルト数)を評価。粘度は運転温度で0.3〜1.8倍変動するため、入口・出口の対数平均温度で補正するのが定石。API・化学工学協会のシェル&チューブ設計マニュアルに温度依存性の扱い方が規定されている。

🥛 食品・医薬品CIP洗浄

Cleaning-in-Place(定置洗浄)配管では60-80℃洗浄水がRe > 30,000(強乱流)を確保する配管口径・ポンプ選定を行い、フィルム汚れの機械的除去と洗浄薬液の均一分布を両立する。食品衛生法・PMDAのGMP指針で乱流洗浄が要求される。

❄️ 冷凍・空調

ブラインクーラー、氷蓄熱、地中熱ヒートポンプでは水以外の熱媒(エチレングリコール・プロピレングリコール30-50%水溶液)を使うため、専用の粘度データが必要。純水の3-5倍粘度になり、ポンプ動力と伝熱性能を再評価する。

🏊 プール・水処理

プール循環ポンプ、逆浸透膜(RO)供給ポンプ、砂ろ過器の圧損計算に動粘度を使用。日本水道協会(JWWA)の水道施設設計指針では計算温度15℃を基準(ν=1.14 mm²/s)とすることが多い。

⚙️ 熱交換器・凝縮器

殻管型熱交換器・プレート式熱交換器の性能計算でRe・Pr数を求める。特に大温度差(80℃と20℃の熱交換など)では入口/出口で粘度2倍以上異なるため、対数平均温度差(LMTD)方式に加え粘度補正係数(Sieder-Tate補正 (η/ηw)^0.14)を適用する。

海水・不凍液・ブラインとの違い

純水以外の水系流体は粘度が大きく異なります。給湯設備・地中熱・氷蓄熱・海洋設備の設計では専用データを使ってください。

流体20℃粘度 mPa·s純水比用途
純水(20℃)1.0021.00基準
海水(塩分3.5%, 20℃)1.0781.08船舶冷却水・海水淡水化
エチレングリコール30%水(20℃)2.502.50-15℃対応不凍液
エチレングリコール50%水(20℃)5.205.19-35℃対応不凍液
プロピレングリコール40%(20℃)5.105.09食品プラント・地中熱
塩化カルシウム25%水(20℃)3.903.89-30℃対応ブライン
冷凍機低温ブライン(-15℃, EG30%)約6.0約6.0アイスクリーム・冷凍倉庫

不凍液・ブラインでは同じポンプ・同じ配管でも純水系の2〜6倍の圧損になり、乱流化に要する流速も1.5〜2.5倍必要になります。設計段階で「純水データを流用しない」ことが重要です。オイル粘度SAEページも参照してください。

よくある間違い・注意点

  • 20℃固定で全温度計算 — 冷凍機水(-5℃ブライン)や高温水(90℃)は20℃基準と粘度が3〜6倍違う。系統ごとの運転温度で必ず読み替える。冷水系用ポンプを20℃前提で選定すると流量不足になる。
  • 粘度cPと動粘度cStを混同 — cP(=mPa·s)は絶対粘度、cSt(=mm²/s)は動粘度(=cP÷密度)。水はρ≒1なので数値が近いが、油(ρ=0.85)や塩水(ρ=1.03)ではρが変わり、cP/cStの数値が乖離。単位表記は必ず明記する。
  • 海水・不凍液も同じと仮定 — 海水は水より約8%粘度が高い、エチレングリコール50%は水の約5倍。専用の粘度データを使わないと配管圧損が大幅にずれる。
  • レイノルズ数の遷移域で設計 — Re 2,300-4,000は不安定領域で、流れが層流と乱流を行き来し伝熱係数・圧損が予測困難。設計時は完全乱流域(Re > 4,000、実用ではRe > 10,000)を狙う。
  • 単位系ミス — 動粘度cSt(=mm²/s)とm²/sの換算は1 cSt = 10⁻⁶ m²/s。SI単位系のm²/sで計算する場合は10⁶で割る。
  • 圧力・気泡混入を無視 — 大気圧近くで温度が飽和蒸気温度に近づくと気泡が発生(キャビテーション)し、実効粘度・密度が変化。ポンプ吸込側のNPSH計算と併せて評価する。

関連する規格・法令

  • JIS Z 8803 ― 液体の粘度測定方法。毛管粘度計・回転粘度計・落球粘度計等の測定手順。日本国内の粘度測定の基本規格。
  • JIS K 2283 ― 原油及び石油製品-動粘度試験方法及び粘度指数算出方法。石油系の動粘度測定に。
  • ISO 3104 ― Petroleum products — Transparent and opaque liquids — Determination of kinematic viscosity。国際標準の動粘度測定手順。
  • ISO 3105 ― Glass capillary kinematic viscometers — Specifications and operating instructions。毛管粘度計の国際仕様。
  • ASTM D445 ― Standard Test Method for Kinematic Viscosity of Transparent and Opaque Liquids。米国の動粘度測定標準。
  • IAPWS-IF97 ― International Association for the Properties of Water and Steam Industrial Formulation 1997。水・水蒸気の国際標準物性式。粘度・密度・熱伝導率の高精度式を規定。
  • ASHRAE Handbook ― Fundamentals章に水系流体の物性表を収録。空調設計の国際標準。
  • 日本冷凍空調工業会(JRAIA)冷水配管設計指針 ― 冷温水配管の温度別粘度・圧損計算の実務指針。

参考文献・公的資料

より精密な粘度データや温度依存性の詳細式は、以下の公的機関・学協会の資料を参照してください。

※本ページの粘度・動粘度計算値はVogel式・Kell式による近似値で、常圧・純水の0-100℃範囲を対象とします。取引・証明・公式報告・重要設備の設計計算に用いる場合は、上記の公的機関(IAPWS・NIST・NMIJ等)の一次資料および認証標準物質(CRM)による校正済み測定器での実測結果を優先してください。特に化学プラント・食品/医薬品工場の設計計算では、有資格者(技術士・化学工学技術者等)の判断を仰いでください。

よくある質問(FAQ)

20℃の水の粘度は?

約1.002 mPa·s(=cP)、動粘度 約1.004 mm²/s(=cSt)、密度0.9982 g/cm³。工学計算の常温基準値として広く使われ、多くの物性表で20℃データが基準になっています。

温度で粘度がどれだけ変わる?

20℃基準で、0℃で約1.79倍、40℃で約0.65倍、60℃で0.47倍、80℃で0.35倍、100℃で0.28倍。指数関数的に急激な減少カーブを描き、温度差が大きいほど設計に大きく影響します。

cPとPa·sの関係は?

1 Pa·s = 1000 mPa·s = 1000 cP。水は0.001 Pa·s = 1 mPa·s = 1 cP がおおよその20℃値。SI単位ではPa·sが正式ですが、実用計算ではmPa·s(cP)が広く使われます。

レイノルズ数で層流と乱流の境界は?

円管流れでは、Re < 2,300 は層流、2,300-4,000 は遷移域、Re > 4,000 で乱流。設計上は不安定な遷移域を避け、完全乱流域(Re > 10,000)を狙うのが定石です。

冷凍機の-5℃ブラインでも計算できる?

本ツールは0-100℃の純水専用です。ブラインは通常エチレングリコール30-50%水溶液で、20℃で純水の2.5-5倍、-15℃では約6-8倍の粘度になります。冷凍空調学会・ASHRAE Handbookのブライン物性表を参照してください。

Vogel式ってどんな式?

Vogel-Fulcher-Tammann式:η = exp(A + B/(T-T₀))の形で、温度依存粘度を精度良く表現する経験式。水の場合A=-3.7188、B=578.919、T₀=-135℃で0-100℃をカバーします。IAPWS-IF97との誤差は0.5%以下。

海水は水と粘度が違う?

海水(塩分3.5%)は20℃で約1.078 mPa·s、純水の約1.08倍。船舶冷却・海水淡水化・海洋観測ではこの差を考慮する必要があります。塩分濃度・温度で変わるため、専用データが必要です。

配管圧損計算にはどの粘度を使う?

Darcy-Weisbach式では動粘度ν(cSt)が必要。Re = vD/ν でレイノルズ数を計算し、Moody線図または経験式(Colebrook式・Swamee-Jain式)で摩擦係数λを求めます。運転温度での粘度を必ず使ってください。

熱交換器の伝熱計算で粘度はどう使う?

プラントル数 Pr = cp·η/k、レイノルズ数 Re = ρvD/η、ヌセルト数 Nu を経由して総括伝熱係数を求めます。大温度差の場合はSieder-Tate補正 (η_bulk/η_wall)^0.14 で壁面近傍粘度差を考慮します。

粘度測定はどうやる?

JIS Z 8803規定の毛管粘度計(オストワルド・ウベローデ)、回転粘度計(B型・E型)、落球粘度計、振動式粘度計が代表的。動粘度は毛管式で±0.1%精度、粘度は回転式で±1%精度が一般的。校正には粘度標準液(NMIJ CRM)を使用。

CIP洗浄で乱流化が重要な理由は?

食品/医薬品プラントのCIP(定置洗浄)では、洗浄液が乱流域(Re > 30,000)で流れることで機械的な壁面剥離力とアルカリ・酸の化学作用が両立し、バイオフィルム除去が可能になります。80℃・流速1.5m/s以上が業界標準。

不凍液(グリコール水)の粘度は?

エチレングリコール30%水で20℃粘度2.5 mPa·s(純水の2.5倍)、50%水で5.2 mPa·s(純水の5.2倍)。冷凍機ブラインでは低温で更に粘度が上がり、-15℃でEG30%水は約6 mPa·s。ポンプ動力と伝熱性能の再評価が必須です。