水の粘度・動粘度 計算ツール|0-100℃の粘度早見表とレイノルズ数・配管圧損の同時算出
水の粘度・動粘度・密度・レイノルズ数を、温度を入力するだけでVogel式・Kell式により即時計算。0℃から100℃までの温度依存性を1桁精度でカバーし、配管圧損・ポンプ選定・熱交換器伝熱・CIP洗浄乱流化など現場実務の一次判断に対応します。給排水設備・プロセスプラント・食品/医薬品工場・冷凍空調で使う水系の粘度データを、JIS Z 8803・ISO 3104・IAPWS-IF97など公的規格に照らして解説します。
水の粘度・動粘度 計算機
計算式と単位系
粘度・動粘度の関係
動粘度 ν (mm²/s) = 粘度 η (mPa·s) ÷ 密度 ρ (g/cm³)
粘度 η(動的粘性率, Dynamic Viscosity)は流体の内部摩擦を表す物性値で、SI単位はPa·s、実用単位はmPa·s(=センチポアズ cP)。動粘度 ν(Kinematic Viscosity)は粘度を密度で割った値で、単位はmm²/s(=センチストークス cSt)。レイノルズ数計算やナビエ・ストークス方程式に直接使うのは動粘度側です。
Vogel式による近似
η (mPa·s) = exp(-3.7188 + 578.919 / (T + 135)) ※T は℃
本ツールでは0-100℃の常圧水に対してVogel-Fulcher-Tammann式を採用。IAPWS-IF97(水・水蒸気の国際標準物性)との誤差は0.5%以下で、実務のポンプ設計・配管圧損計算・伝熱計算では十分な精度です。
密度と動粘度
ρ (kg/m³) ≒ 999.83952 + 16.945176·T − 0.0079870401·T² − 46.170461×10⁻⁶·T³
水の密度はKell式の簡易多項式で近似。4℃で最大密度1.0000 g/cm³、20℃で0.9982、80℃で0.9718、100℃で0.9584。密度が温度で変わるため、粘度cPと動粘度cStの数値は温度によって微妙にずれます。
レイノルズ数(参考値)
Re = ρvD / η = vD / ν
本ツールは入力欄の配管内径Dと流速vからRe参考値を算出します。円管の完全乱流判定はRe > 4000、層流はRe < 2300が工学の目安。詳細はレイノルズ数と流動区分を参照してください。
水の粘度・動粘度 温度別早見(0-100℃)
常圧・純水の温度別粘度・動粘度・密度データです。IAPWS(International Association for the Properties of Water and Steam)の国際標準物性表に基づく代表値。実務ではこの表を目安に、精密設計時はIAPWS-IF97の全式を参照してください。
| 温度℃ | 粘度 η (mPa·s=cP) | 動粘度 ν (mm²/s=cSt) | 密度 ρ (g/cm³) | 20℃基準比 |
|---|---|---|---|---|
| 0 | 1.792 | 1.792 | 0.9998 | 1.79 |
| 5 | 1.518 | 1.518 | 0.9999 | 1.51 |
| 10 | 1.307 | 1.307 | 0.9997 | 1.30 |
| 15 | 1.138 | 1.140 | 0.9991 | 1.14 |
| 20 | 1.002 | 1.004 | 0.9982 | 1.00(基準) |
| 25 | 0.890 | 0.893 | 0.9971 | 0.89 |
| 30 | 0.798 | 0.802 | 0.9957 | 0.80 |
| 40 | 0.653 | 0.658 | 0.9922 | 0.65 |
| 50 | 0.547 | 0.554 | 0.9881 | 0.55 |
| 60 | 0.467 | 0.475 | 0.9832 | 0.47 |
| 70 | 0.404 | 0.413 | 0.9778 | 0.40 |
| 80 | 0.355 | 0.365 | 0.9718 | 0.35 |
| 90 | 0.315 | 0.326 | 0.9653 | 0.31 |
| 100 | 0.282 | 0.294 | 0.9584 | 0.28 |
20℃を基準に、0℃では1.79倍、40℃で0.65倍、80℃で0.35倍と指数関数的に急変します。夏冬で温度差が大きい冷温水系や、給湯設備・蒸気系のドレンでは、この温度差を無視すると配管圧損計算・ポンプ動力計算が数十%ずれます。
レイノルズ数と流動区分
レイノルズ数(Reynolds Number, Re)は慣性力÷粘性力を表す無次元数で、流れの乱流化・層流化を判定します。水の粘度・動粘度は温度で急変するため、同じ配管・同じ流量でも運転温度によってReが2倍以上変わります。
| レイノルズ数 Re | 流動区分 | 特徴 |
|---|---|---|
| < 2,300 | 層流(Laminar) | 粘性支配。速度分布は放物線。摩擦係数 λ = 64/Re |
| 2,300 - 4,000 | 遷移域 | 不安定。設計時は避けたい領域 |
| 4,000 - 10,000 | 低乱流 | Blasius式 λ = 0.316/Re^0.25 適用域 |
| 10,000 - 10⁵ | 乱流(発達) | プラント配管の設計標準域 |
| > 10⁵ | 完全乱流 | 粗さ支配、Moody線図の右側 |
典型計算例:内径25mmの給水管に20℃水を1 m/sで流すと Re = 1×0.025×998.2/(1.002×10⁻³) ≈ 24,900 で完全乱流。同じ条件で80℃水にすると密度が0.97、粘度が0.35 cPになりRe ≈ 68,400 と3倍近くになります。CIP洗浄では80℃で乱流化を確保する設計が定石です。
配管圧損への影響
Darcy-Weisbach式による摩擦圧損 ΔP = λ (L/D)(ρv²/2) では、摩擦係数λが粘度(Re)に依存するため、水温変化がそのまま圧損に反映されます。
典型的な温度別ポンプ動力差
冷凍機冷水系(7℃/12℃)
冷水は粘度1.3-1.4 cPで20℃基準の30%増し。同じ流量で圧損も約1.1〜1.2倍、ポンプ必要動力もそれに比例。冷水配管のポンプ選定は20℃前提だと不足するリスクあり。
給水系(15〜25℃)
20℃前後で粘度1.0 cP。設計標準値。給水本管・貯水槽まわりの圧損計算はほぼこの値で問題ない。
給湯・熱交換一次側(55〜80℃)
粘度0.35-0.5 cPで20℃基準の35-55%。同じ流量で圧損は約80-90%まで下がり、乱流もより発達しやすい。ポンプ動力は冷水系より小さくてよい。
ボイラー戻り水・蒸気ドレン(90〜100℃)
粘度0.28-0.32 cPで20℃基準の28-31%。極低粘度でキャビテーション(NPSH不足)リスクが増加。ポンプ吸込側の温度上昇には要注意。
業界での応用
🏢 給排水・空調設備
冷温水配管の圧損計算に動粘度を使用。冷水系(7℃)はν≒1.4、温水系(60℃)はν≒0.48と3倍差。同一配管でも系統温度により必要ポンプ揚程が変わる。冷凍機・空調機の一次冷温水ポンプ選定でJIS B 8622(空冷ヒートポンプチラーユニット)や日本冷凍空調工業会の設計指針を併用。
🏭 プロセスプラント
化学反応器・蒸留塔・熱交換器の総括伝熱係数U算出でRe・Pr(プラントル数)・Nu(ヌセルト数)を評価。粘度は運転温度で0.3〜1.8倍変動するため、入口・出口の対数平均温度で補正するのが定石。API・化学工学協会のシェル&チューブ設計マニュアルに温度依存性の扱い方が規定されている。
🥛 食品・医薬品CIP洗浄
Cleaning-in-Place(定置洗浄)配管では60-80℃洗浄水がRe > 30,000(強乱流)を確保する配管口径・ポンプ選定を行い、フィルム汚れの機械的除去と洗浄薬液の均一分布を両立する。食品衛生法・PMDAのGMP指針で乱流洗浄が要求される。
❄️ 冷凍・空調
ブラインクーラー、氷蓄熱、地中熱ヒートポンプでは水以外の熱媒(エチレングリコール・プロピレングリコール30-50%水溶液)を使うため、専用の粘度データが必要。純水の3-5倍粘度になり、ポンプ動力と伝熱性能を再評価する。
🏊 プール・水処理
プール循環ポンプ、逆浸透膜(RO)供給ポンプ、砂ろ過器の圧損計算に動粘度を使用。日本水道協会(JWWA)の水道施設設計指針では計算温度15℃を基準(ν=1.14 mm²/s)とすることが多い。
⚙️ 熱交換器・凝縮器
殻管型熱交換器・プレート式熱交換器の性能計算でRe・Pr数を求める。特に大温度差(80℃と20℃の熱交換など)では入口/出口で粘度2倍以上異なるため、対数平均温度差(LMTD)方式に加え粘度補正係数(Sieder-Tate補正 (η/ηw)^0.14)を適用する。
海水・不凍液・ブラインとの違い
純水以外の水系流体は粘度が大きく異なります。給湯設備・地中熱・氷蓄熱・海洋設備の設計では専用データを使ってください。
| 流体 | 20℃粘度 mPa·s | 純水比 | 用途 |
|---|---|---|---|
| 純水(20℃) | 1.002 | 1.00 | 基準 |
| 海水(塩分3.5%, 20℃) | 1.078 | 1.08 | 船舶冷却水・海水淡水化 |
| エチレングリコール30%水(20℃) | 2.50 | 2.50 | -15℃対応不凍液 |
| エチレングリコール50%水(20℃) | 5.20 | 5.19 | -35℃対応不凍液 |
| プロピレングリコール40%(20℃) | 5.10 | 5.09 | 食品プラント・地中熱 |
| 塩化カルシウム25%水(20℃) | 3.90 | 3.89 | -30℃対応ブライン |
| 冷凍機低温ブライン(-15℃, EG30%) | 約6.0 | 約6.0 | アイスクリーム・冷凍倉庫 |
不凍液・ブラインでは同じポンプ・同じ配管でも純水系の2〜6倍の圧損になり、乱流化に要する流速も1.5〜2.5倍必要になります。設計段階で「純水データを流用しない」ことが重要です。オイル粘度SAEページも参照してください。
よくある間違い・注意点
- 20℃固定で全温度計算 — 冷凍機水(-5℃ブライン)や高温水(90℃)は20℃基準と粘度が3〜6倍違う。系統ごとの運転温度で必ず読み替える。冷水系用ポンプを20℃前提で選定すると流量不足になる。
- 粘度cPと動粘度cStを混同 — cP(=mPa·s)は絶対粘度、cSt(=mm²/s)は動粘度(=cP÷密度)。水はρ≒1なので数値が近いが、油(ρ=0.85)や塩水(ρ=1.03)ではρが変わり、cP/cStの数値が乖離。単位表記は必ず明記する。
- 海水・不凍液も同じと仮定 — 海水は水より約8%粘度が高い、エチレングリコール50%は水の約5倍。専用の粘度データを使わないと配管圧損が大幅にずれる。
- レイノルズ数の遷移域で設計 — Re 2,300-4,000は不安定領域で、流れが層流と乱流を行き来し伝熱係数・圧損が予測困難。設計時は完全乱流域(Re > 4,000、実用ではRe > 10,000)を狙う。
- 単位系ミス — 動粘度cSt(=mm²/s)とm²/sの換算は1 cSt = 10⁻⁶ m²/s。SI単位系のm²/sで計算する場合は10⁶で割る。
- 圧力・気泡混入を無視 — 大気圧近くで温度が飽和蒸気温度に近づくと気泡が発生(キャビテーション)し、実効粘度・密度が変化。ポンプ吸込側のNPSH計算と併せて評価する。
関連する規格・法令
- JIS Z 8803 ― 液体の粘度測定方法。毛管粘度計・回転粘度計・落球粘度計等の測定手順。日本国内の粘度測定の基本規格。
- JIS K 2283 ― 原油及び石油製品-動粘度試験方法及び粘度指数算出方法。石油系の動粘度測定に。
- ISO 3104 ― Petroleum products — Transparent and opaque liquids — Determination of kinematic viscosity。国際標準の動粘度測定手順。
- ISO 3105 ― Glass capillary kinematic viscometers — Specifications and operating instructions。毛管粘度計の国際仕様。
- ASTM D445 ― Standard Test Method for Kinematic Viscosity of Transparent and Opaque Liquids。米国の動粘度測定標準。
- IAPWS-IF97 ― International Association for the Properties of Water and Steam Industrial Formulation 1997。水・水蒸気の国際標準物性式。粘度・密度・熱伝導率の高精度式を規定。
- ASHRAE Handbook ― Fundamentals章に水系流体の物性表を収録。空調設計の国際標準。
- 日本冷凍空調工業会(JRAIA)冷水配管設計指針 ― 冷温水配管の温度別粘度・圧損計算の実務指針。
参考文献・公的資料
より精密な粘度データや温度依存性の詳細式は、以下の公的機関・学協会の資料を参照してください。
- IAPWS(International Association for the Properties of Water and Steam) ― 水・水蒸気の国際標準物性を管理する組織。IF97式・粘度式・熱伝導率式など全ての公式一次資料を無料公開。
- NIST Chemistry WebBook(米国立標準技術研究所) ― 温度・圧力を指定して水の物性値(密度・粘度・熱伝導率)を無料検索できるオンラインデータベース。
- 産業技術総合研究所 計量標準総合センター(NMIJ) ― 日本の国家計量標準を管理する機関。粘度標準液の認証標準物質(CRM)を頒布。
- 日本産業標準調査会(JISC) ― JIS Z 8803、JIS K 2283など粘度測定関連規格の公式索引。
- ISO国際標準化機構 ― ISO 3104、ISO 3105など粘度測定の国際規格。
- ASTM International ― ASTM D445(動粘度)、D2270(粘度指数)等の米国標準規格。
- ASHRAE Handbook ― 空調・冷凍分野の国際標準。Fundamentals章に水系物性表。
- 公益社団法人 日本冷凍空調学会 ― 冷凍・空調・熱工学の技術文献。ブライン粘度データも収録。
- 公益社団法人 日本水道協会(JWWA) ― 水道施設設計指針で冷温水系の粘度・流量計算の実務基準。
- 公益社団法人 化学工学会 ― 化学工学便覧・伝熱工学資料。プロセスプラント設計の一次資料。
よくある質問(FAQ)
20℃の水の粘度は?
約1.002 mPa·s(=cP)、動粘度 約1.004 mm²/s(=cSt)、密度0.9982 g/cm³。工学計算の常温基準値として広く使われ、多くの物性表で20℃データが基準になっています。
温度で粘度がどれだけ変わる?
20℃基準で、0℃で約1.79倍、40℃で約0.65倍、60℃で0.47倍、80℃で0.35倍、100℃で0.28倍。指数関数的に急激な減少カーブを描き、温度差が大きいほど設計に大きく影響します。
cPとPa·sの関係は?
1 Pa·s = 1000 mPa·s = 1000 cP。水は0.001 Pa·s = 1 mPa·s = 1 cP がおおよその20℃値。SI単位ではPa·sが正式ですが、実用計算ではmPa·s(cP)が広く使われます。
レイノルズ数で層流と乱流の境界は?
円管流れでは、Re < 2,300 は層流、2,300-4,000 は遷移域、Re > 4,000 で乱流。設計上は不安定な遷移域を避け、完全乱流域(Re > 10,000)を狙うのが定石です。
冷凍機の-5℃ブラインでも計算できる?
本ツールは0-100℃の純水専用です。ブラインは通常エチレングリコール30-50%水溶液で、20℃で純水の2.5-5倍、-15℃では約6-8倍の粘度になります。冷凍空調学会・ASHRAE Handbookのブライン物性表を参照してください。
Vogel式ってどんな式?
Vogel-Fulcher-Tammann式:η = exp(A + B/(T-T₀))の形で、温度依存粘度を精度良く表現する経験式。水の場合A=-3.7188、B=578.919、T₀=-135℃で0-100℃をカバーします。IAPWS-IF97との誤差は0.5%以下。
海水は水と粘度が違う?
海水(塩分3.5%)は20℃で約1.078 mPa·s、純水の約1.08倍。船舶冷却・海水淡水化・海洋観測ではこの差を考慮する必要があります。塩分濃度・温度で変わるため、専用データが必要です。
配管圧損計算にはどの粘度を使う?
Darcy-Weisbach式では動粘度ν(cSt)が必要。Re = vD/ν でレイノルズ数を計算し、Moody線図または経験式(Colebrook式・Swamee-Jain式)で摩擦係数λを求めます。運転温度での粘度を必ず使ってください。
熱交換器の伝熱計算で粘度はどう使う?
プラントル数 Pr = cp·η/k、レイノルズ数 Re = ρvD/η、ヌセルト数 Nu を経由して総括伝熱係数を求めます。大温度差の場合はSieder-Tate補正 (η_bulk/η_wall)^0.14 で壁面近傍粘度差を考慮します。
粘度測定はどうやる?
JIS Z 8803規定の毛管粘度計(オストワルド・ウベローデ)、回転粘度計(B型・E型)、落球粘度計、振動式粘度計が代表的。動粘度は毛管式で±0.1%精度、粘度は回転式で±1%精度が一般的。校正には粘度標準液(NMIJ CRM)を使用。
CIP洗浄で乱流化が重要な理由は?
食品/医薬品プラントのCIP(定置洗浄)では、洗浄液が乱流域(Re > 30,000)で流れることで機械的な壁面剥離力とアルカリ・酸の化学作用が両立し、バイオフィルム除去が可能になります。80℃・流速1.5m/s以上が業界標準。
不凍液(グリコール水)の粘度は?
エチレングリコール30%水で20℃粘度2.5 mPa·s(純水の2.5倍)、50%水で5.2 mPa·s(純水の5.2倍)。冷凍機ブラインでは低温で更に粘度が上がり、-15℃でEG30%水は約6 mPa·s。ポンプ動力と伝熱性能の再評価が必須です。