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単位トルク整備機械設計

N·m↔ft·lb↔kgf·m トルク単位変換ツール|整備・設計・6単位対応

トルクの単位を N·m(ニュートンメートル)・ft·lb(ポンドフィート)・kgf·m・kgf·cm・in·lb・dyn·cm間で相互変換。トルクレンチ校正・自動車整備・機械設計・鉄骨締付の現場で使う標準ボルトトルク早見表、JIS/ISO/SAE規格の解説付き。

最終更新:2026-08-05/監修:計算ツールズ編集部

トルク 変換計算機

計算式と単位の定義

基本式

1 N·m = 0.7376 ft·lb = 0.1020 kgf·m
1 ft·lb = 1.3558 N·m = 12 in·lb
1 kgf·m = 9.8067 N·m = 7.233 ft·lb

トルク(力のモーメント)は、力 × 支点からの距離で表される回転力です。SI単位はN·m(ニュートンメートル)で、1 Nの力を支点から1 m離れた点に加えたときの回転力を意味します。仕事の単位ジュール(J)と数値上は同じですが、物理的意味が異なるためトルクではN·mを使います。

換算係数の由来

1 lbf = 4.44822 N、1 ft = 0.3048 m、1 kgf = 9.80665 N(標準重力加速度)。これらの組み合わせで各単位のトルク換算係数が定まります。1 ft·lb = 4.44822 × 0.3048 = 1.35582 N·m1 kgf·m = 9.80665 N·m

SI単位系での位置づけ

SI単位系ではN·mが唯一の正式単位。1999年のNASA火星探査機Mars Climate Orbiter紛失事故(ポンド・フィート単位の推力計算をN·m単位と混同)以降、国際協力プロジェクトでは単位統一が徹底されるようになりました。

トルクと仕事・エネルギーの区別

N·mはトルク(回転力)だけでなく仕事・エネルギーの単位(1 N·m = 1 J)でもあります。同じ次元式ですが、トルクは向きを持つベクトル量、仕事はスカラー量として明確に区別されます。トルク表記でJを使わないのはこのためです。

トルクと軸力の関係

F = T ÷ (K × d)

ボルトの軸力Fは、締付トルクT、ネジ径d、トルク係数K(乾燥で約0.2、潤滑で約0.15)で決まります。100 N·mでM10ボルトの軸力は約50 kN。設計計算では軸力ベースが原則です。

締付方法の種類

トルク法(一般用)・回転角法(内燃機関シリンダーヘッド)・降伏点法(プラスチック域締付)・伸び量法(大型エンジンボルト)の4種類があり、要求精度と用途で選定します。

単位の歴史とSI移行

日本は1959年計量法でkgf系(重力単位系)を採用、1993年新計量法でSI単位(N系)に完全移行しました。1993年以前の古い機械・図面はkgf·mやkgf·cmで表記されており、現場ではN·m換算が日常業務です。

日本の単位変遷

時期標準単位備考
1959年以前各種混在米式・独式・和式
1959〜1992kgf·m / kgf·cm計量法(旧)・工学単位系
1993〜現在N·m(SI)新計量法・国際標準
米国・カナダft·lb / in·lbヤード・ポンド法

換算目安

実務上は「1 kgf·m ≒ 10 N·m」(正確には9.807)で暗算するのが便利。「1 ft·lb ≒ 1.36 N·m」または「N·m × 0.74 ≒ ft·lb」で瞬時に近似できます。

SI併用単位としての位置

SI単位系の導入後もkgf系は工業界に浸透しており、日本では2000年以降も設計図面・整備書・カタログにkgf·m表記が残っていました。現在は法定計量単位からは除外されていますが、旧図面参照や海外文献読解には換算スキルが必須です。

米式単位との併記文化

米国自動車業界(GM・Ford・Chrysler)、航空業界(Boeing・NASA一部)、油田・掘削業界(Halliburton等)では今もft·lb・in·lb表記が主流。国際協力プロジェクトではN·m併記が推奨され、失敗事例からの教訓として単位確認が徹底されています。

身近なトルクの値

用途トルク (N·m)ft·lb
缶飲料の蓋(開封)0.50.37
ペットボトルキャップ10.74
眼鏡のネジ0.05〜0.10.04〜0.07
スマートフォン内部ネジ0.15〜0.30.11〜0.22
PCマザーボードのネジ0.5〜10.37〜0.74
自転車ステム5〜63.7〜4.4
ロードバイク クランクボルト4029.5
ロードバイク ホイールクイックリリース15〜2011〜15
電動ドライバー最大10〜207.4〜14.8
普通自動車のホイールナット103〜12076〜89
大型トラックのホイールナット500〜700369〜516
軽自動車エンジン最大トルク50〜9037〜66
普通自動車エンジン最大トルク150〜400111〜295
大型ディーゼル発電機2,000〜5,0001,475〜3,688
大型船舶エンジン1,000,000〜7,000,000737,562〜5,163,000

ボルト規格別の標準締付トルク

強度区分(4.8T・8.8T・10.9T・12.9T)とネジ径で標準締付トルクが決まります。JIS B 1083に基づく代表値:

ネジ径強度4.8T (N·m)強度8.8T (N·m)強度10.9T (N·m)強度12.9T (N·m)
M63.9101417
M89.4243441
M1019486781
M123282117140
M1452131187224
M1679200285342
M18110276394473
M20157390557669
M22212527752904
M242706749611153

※値はドライ潤滑・トルク法の目安。実際の締付は設計仕様書・接触部の摩擦係数・ボルトの被覆処理で変わります。

自動車ホイールナット・エンジン整備の標準トルク

ホイールナット

車種トルク (N·m)ft·lb
軽自動車85〜10063〜74
コンパクトカー10376
普通乗用車(トヨタ)10376
SUV(ハイラックス等)110〜13081〜96
輸入車(BMW・ベンツ)110〜14081〜103
1トントラック130〜20096〜148
大型トラック500〜700369〜516

エンジン主要部(普通車)

部位トルク目安 (N·m)
スパークプラグ20〜30
オイルドレンボルト25〜40
タイミングベルトカバー10
シリンダーヘッドボルト60〜90(角度法併用)
コンロッドキャップ40〜60(塑性域)
フライホイール90〜130

トルクレンチの種類と校正

主なタイプ

  • プリセット型:目標トルクをセットし、「カチッ」と音で通知。整備工場の主流。
  • デジタル型:液晶表示。ピーク値保持、複数単位切替、データログ機能付きも。
  • ダイヤル型:文字盤で表示。校正しやすいがピーク保持がない。
  • プレート型:ばね板の撓み量で読取り。低価格・小型精密ボルト向き。

校正の重要性

トルクレンチは年1回の校正が推奨されます(JIS B 4652)。使用後は最低値(プリセット型なら0または最低目盛り)に戻して保管。校正誤差は±4%以内が精度等級A、±6%が等級B。

差込角(ソケットサイズ)

トルクレンチの差込角は1/4インチ(6.35mm)・3/8インチ(9.5mm)・1/2インチ(12.7mm)・3/4インチ(19.05mm)の4種類が主流。1/4は小型(〜30 N·m)、3/8は中型(〜100 N·m)、1/2は自動車整備の主力(〜300 N·m)、3/4は大型トラック・重機用。用途に合わせて選定します。

使用時の注意

トルクレンチは締付専用で、緩め作業には使わないのが原則(内部機構が痛む)。パイプで延長すると実測トルクが狂うため、握り位置は柄の中央を守ります。落下・衝撃で精度低下するため、専用ケース保管が推奨されます。

業界別の応用

自動車整備

ホイールナット、エンジン部品、ブレーキキャリパー、サスペンションのボルト締付。過剰締付でボルト破断、締付不足で走行中の脱落事故。整備手帳・分解整備記録簿に規定トルク値記載。

建設・鉄骨

高力ボルト摩擦接合(HTB)で規定トルク管理。JASS 6・建築基準法対応。回転角法・トルクコントロール法・目視検査。橋梁・鉄塔・建物骨組の安全性を左右。

機械設計

ボルト強度計算、初期締付荷重の設計、疲労寿命の予測。フランジ接合、圧力容器、回転機械のシャフト締結。JIS B 1083準拠。

航空機・宇宙

0.1 N·m精度のデジタル計測、複数ボルトの均等締付順序、ヒステリシス制御。SAE・NASA規格。事故ゼロを目指す高信頼性設計。

自転車・バイク

カーボンフレームは3〜6 N·m、金属フレームは5〜10 N·m。過剰締付でカーボン破損。専用の小型プリセットレンチが必須。

電子機器組立

スマホ・PC・精密機器では0.05〜0.5 N·m。手動プレート型か電動精密ドライバー。過剰締付で基板破損・ネジ穴潰れ。

よくある間違い・注意点

  • 単位取り違え — 100 N·mを100 ft·lbと間違えると1.36倍の締付で破損。ft·lbはN·mより大きい単位と覚える。
  • kgf·mとkgf·cmの混同 — 100 kgf·m と 100 kgf·cm では100倍差。エンジン整備で致命的ミスにつながる。
  • 校正切れのトルクレンチ使用 — 使い込むとバネがヘタリ、実測値が20%以上ずれる。年1回校正推奨。
  • 締付順序無視 — シリンダーヘッド・フランジは対角締めや複数回に分けた段階締めが基本。一気に本締めするとひずみが偏り漏れの原因に。
  • 潤滑剤の考慮忘れ — グリス塗布ボルトは同じトルクでも軸力が1.3〜1.5倍。設計値は乾燥/潤滑の指定を確認。
  • 過剰締付でボルト降伏 — 塑性域を超えるとネジ山破損・軸伸び。強度区分と適正トルクは必ず確認。
  • 「カチッ」音の空振り — プリセット型で音を聞き逃すと連続叩き過剰締付になる。1回音がしたら止める。

関連規格・法令

  • JIS B 1083 ― ねじ締付け通則。締付トルク値・角度法・軸力法の指針。
  • JIS B 4652 ― 手動式トルクツール(トルクレンチ)。精度等級と校正手順を規定。
  • ISO 6789 ― Assembly tools for screws and nuts — Hand torque tools。トルクレンチ国際規格。
  • SAE J429 ― 米国のボルト強度規格。SAEグレード2/5/8等の呼称。
  • ASTM A325 / A490 ― 米国の高力ボルト規格。橋梁・鉄骨用途。
  • JASS 6(日本建築学会) ― 鉄骨工事標準仕様書。高力ボルト摩擦接合の締付管理。
  • 建築基準法 ― 鉄骨造建物の構造安全性。ボルト締付は法定検査対象。
  • 道路運送車両法・自動車整備事業 ― 分解整備記録簿への締付トルク記載義務。

参考文献・公的資料

正確なトルク値・規格詳細は、以下の公的機関・団体資料を参照してください。

※本ページの標準締付トルク値は代表的な目安であり、実際の締付管理は各設計仕様書・メーカー整備要領書・機械設計計算書に従ってください。ホイールナット等の安全に関わる作業は、正しく校正されたトルクレンチで行い、疑問がある場合は自動車整備士等の有資格者に依頼してください。過剰締付・締付不足は事故・故障の原因となります。

よくある質問(FAQ)

N·mとft·lbの換算方法は?

1 N·m = 0.7376 ft·lb1 ft·lb = 1.3558 N·m。100 N·mなら約74 ft·lb。ざっくり暗算するなら「ft·lb × 1.4 ≒ N·m」「N·m × 0.74 ≒ ft·lb」で近似できる。

kgf·mからN·mに換算するには?

1 kgf·m = 9.80665 N·m。実務上は「1 kgf·m ≒ 10 N·m」で暗算。旧図面(1993年以前)のkgf·m表記はほぼこの換算で対応可能。

ホイールナットの適正トルクは?

普通乗用車で103〜120 N·m(76〜89 ft·lb)が一般的。軽自動車で85〜100 N·m、大型トラックで500〜700 N·m。車種ごとの取扱説明書・整備要領書に規定値あり。

トルクレンチはなぜ校正が必要?

使用回数に応じてバネがヘタリ、実測値がずれてくる。年1回の校正がJIS B 4652推奨。校正機関で±4%以内(精度等級A)か確認。使用後は最低値に戻して保管。

「カチッ」と音がしたら締付終わり?

プリセット型トルクレンチの場合、1回カチッと鳴った時点で規定トルク到達、それ以上締めない。連続叩きで過剰締付・破損原因に。デジタル型は数値表示、ダイヤル型は針位置で確認。

グリスを塗ったボルトのトルクは?

潤滑ボルトは同じトルクでも軸力が1.3〜1.5倍に増える。設計仕様書に「乾燥」「グリス」「オイル」の指定があるため必ず確認。指定がなければ乾燥前提で計算。

M12ボルトの標準トルクは?

強度区分で異なる。強度4.8Tで32 N·m、8.8Tで82 N·m、10.9Tで117 N·m、12.9Tで140 N·m。JIS B 1083基準。実際は設計仕様書優先。

プリセット型とデジタル型どちらが良い?

整備現場はプリセット型が主流(安価・堅牢)。研究・精密作業はデジタル型(0.1 N·m単位・データ記録可)が優れる。用途と予算で選択。

締付順序はなぜ重要?

シリンダーヘッドやフランジは対角締め・段階締めが必須。一気に本締めするとひずみが偏り、シール漏れ・部品変形の原因になる。順序と回数は設計指示書に明記。

カーボン自転車フレームのトルクは?

カーボン破損防止のため3〜6 N·mと低め。金属フレームは5〜10 N·m。専用の小型プリセットレンチで管理し、決してスパナや六角レンチで感覚締付しない。

トルクレンチの精度等級とは?

JIS B 4652で規定。等級A(±4%)等級B(±6%)。工業計測では等級A、一般整備では等級Bが目安。校正証明書付きの製品を選ぶ。

米国車の整備でft·lb単位が出てきたら?

米国車・輸入車の整備マニュアルはft·lb表記が多い。ft·lb × 1.36 ≒ N·mで換算。トルクレンチの単位切替機能(デジタル型なら液晶切替)を活用すれば作業がスムーズ。