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単位機械工学ボルトJIS

ボルトトルク計算機|M3-M36×強度区分4.8/8.8/10.9/12.9の推奨締付トルク

ボルト締付トルクを、M3〜M36の呼び径・強度区分(4.8/8.8/10.9/12.9)・トルク係数から瞬時に算出。JIS B 1083「ねじの締付け通則」、JIS B 1071「トルク係数試験方法」に準拠し、軸力・許容範囲・角度法補正まで対応。鉄鋼・ステンレス・アルミ・チタン40材質の早見表、自動車JIS D 0301、建築BCJ・SS400、電力・化学プラントの締付管理基準、トルクレンチ校正まで網羅します。

最終更新:2026-08-08/監修:計算ツールズ編集部

ボルト締付トルク計算ツール

計算式と物理背景

基本式

T = K × F × d

T:締付トルク(N·m)、K:トルク係数(無次元)、F:軸力(N)、d:ねじ呼び径(m)。JIS B 1083「ねじの締付け通則」で規定される最も基本的な式です。

軸力の計算

F = σ × As =(保証荷重応力 × 締付率)× 有効断面積

σは応力(N/mm²)、Asはねじの有効断面積(JIS B 1082 附属表)。保証荷重(Proof Load)に対する締付率70%が機械標準です。90%以上に上げると降伏応力を超え塑性域に入るため、繰返し使用や振動下では危険。

有効断面積 As(並目ねじ)

MAs (mm²)MAs (mm²)MAs (mm²)
M35.03M1284.3M24353
M48.78M14115M27459
M514.2M16157M30561
M620.1M18192M33694
M836.6M20245M36817
M1058.0M22303

強度区分の意味

ISO 898-1/JIS B 1051 に基づく強度区分表示。数字の意味を理解することが締付トルク計算の起点です。

強度区分引張強さ σB降伏点 σy主用途
4.6400 N/mm²240 N/mm²DIY・低荷重
4.8400 N/mm²320 N/mm²SS400相当・一般
5.8500 N/mm²400 N/mm²中負荷用
6.8600 N/mm²480 N/mm²中強度機械部品
8.8800 N/mm²640 N/mm²機械標準・自動車
10.91000 N/mm²900 N/mm²建築高力・産業機械
12.91200 N/mm²1080 N/mm²工作機械・工具

「10.9」の意味 ― 引張強さ 10 = 1000 MPa、降伏比 0.9(=900 MPa)。同じ M12 でも 8.8 と 10.9 でトルクが1.4倍違うため、必ずボルト頭部の刻印を確認してください。

トルク係数Kの選び方

K は摩擦条件で0.10〜0.35まで変動し、締付トルクに直接同じ倍率で影響します。JIS B 1071 に測定方法規定あり。

ねじ・座面条件K目安備考
MoS₂グリス塗布0.10-0.12航空機・レース仕様
スピンドル油潤滑0.13-0.15精密機器
機械油塗布0.15-0.18一般機械
三価クロメート処理0.17-0.22自動車部品
乾燥・無処理(標準)0.20JIS B 1083 デフォルト
亜鉛メッキ0.20-0.25建材・電気設備
ステンレス同士0.25-0.35かじり注意
赤錆発生0.30-0.50締付NG(要交換)

ステンレスは要注意 ― SUS304同士の締付では焼付き(かじり)が発生し、K が0.35以上に急上昇することがあります。専用の焼付き防止剤(銅ペースト等)が必要です。

推奨トルク早見表(K=0.20・締付率70%)

JIS B 1083 に基づく標準締付トルク。単位はすべて N·m。

M4.88.810.912.9
M30.51.31.82.2
M41.13.04.15.0
M52.26.08.410.0
M63.810.414.617.5
M89.2253643
M1018507285
M123286125145
M1451135200235
M1680210310360
M18110300425500
M20155420600700
M22210570820960
M2427072010501230
M27400108015501800
M30540145021002450
M33735197028503330
M36950253036604280

材質別補正表

ボルト強度区分だけでなく、母材側の強度・熱膨張・電食条件で締付トルクを調整します。

母材推奨強度区分K目安特記事項
SS400(一般構造用鋼)4.8-8.80.20建築標準
S45C(機械構造用炭素鋼)8.8-10.90.18-0.20機械標準
SCM440(クロモリ鋼)10.9-12.90.15-0.18高強度部品
SUS304(ステンレス)A2-70(ステンレス強度)0.25-0.35焼付き注意
SUS316(耐食ステンレス)A4-700.25-0.35海水・化学
A5052(アルミ合金)4.8-6.80.18母材ネジ山破損注意
A60614.8-8.80.18ヘリサート推奨
チタン Ti-6Al-4V専用チタンボルト0.20電食・熱膨張差注意
マグネシウム合金4.8-6.80.15電食対策必須
FRP・CFRP4.8-8.80.20座金必須・締付率50%以下
木材(構造材)4.80.20建築基準法SD規定に従う

異種金属の組み合わせ(例:アルミ母材+ステンレスボルト)では電食(ガルバニック腐食)のリスクがあり、絶縁ワッシャ・防食処理が必要です。

トルク単位換算

JISは N·m ですが、旧単位や海外規格では kgf·cm、ft·lb、in·lb 表記があります。

単位換算用途
1 N·m10.20 kgf·cmSI・JIS 標準
1 N·m0.7376 ft·lb米国・自動車
1 N·m8.851 in·lb米国・航空機小径
1 kgf·m9.807 N·m旧JIS・整備手帳
1 kgf·cm0.0980665 N·m自転車・精密機器
1 ft·lb1.356 N·m米国自動車整備
1 in·oz0.007062 N·m電子機器・時計

業界別締付管理基準

自動車(JIS D 0301)

ホイールナット M12/M14 で 100〜130 N·m、シリンダーヘッドは角度法(塑性域締付)。整備業界ではメーカー整備手帳の値を最優先します。国土交通省の車検基準にも準拠。

建築(鉄骨・BCJ)

高力ボルトM20 F10T(強度区分10.9相当)で標準締付軸力165 kN、トルク480〜510 N·m。国交省告示・建築基準法適合品を使用。BCJ・国交省の第三者検査必須。

電力プラント

発電所配管フランジはASME B16.5準拠でボルト材質・締付順序・トルク値がすべて図面指示。原発関連はさらに追加規制。日本電気工業会(JEMA)・JEAG 基準あり。

化学プラント

配管フランジ締付はHPI(高圧ガス保安法)対象。労安法プラント安全評価基準に基づく締付順序(対角十字→周方向)と再締付管理が義務化。

航空機(AS/AN規格)

NAS/AN規格の航空機ボルトは強度区分の代わりに材質・処理コードで管理。トルク値はメーカー整備マニュアル(AMM)のみが唯一の正解。校正済みトルクレンチ必須。

鉄道車両(JIS E 4204)

台車・ブレーキ関連は保守周期が定められた重要保安部品。指示トルクの±5%以内の厳しい管理が求められ、JR・私鉄各社で追加規定があります。

トルクレンチと校正

トルクレンチの種類

  • プリセット型(クリック式) ― 設定値到達で「カチッ」と音・触感で通知。整備業界の標準機。
  • 直読式(プレート型・ダイヤル型) ― 目視で数値確認。校正検査用に使う。
  • デジタル式 ― 電子表示。ピーク値記録・データ通信可能。品質管理向け。
  • アングル式(角度法) ― トルク+角度で塑性域締付。ヘッドボルト・産業機械用。
  • 油圧式(大径用) ― M30以上の高トルク領域。橋梁・大型プラント用。

校正周期

JIS B 4652「トルクレンチ」・JIS B 4650「トルク計」で校正管理が規定されています。年1回の校正が業界標準。ISO 9001認証工場では校正証明書付き機器のみ使用可能。

よくある間違い・注意点

  • 潤滑・乾燥を無視して同じトルクで締める — 潤滑油塗布時のトルクを乾燥時と同じ値で締めると、軸力が20〜30%過大になりボルト降伏のリスク。オイル塗布時はK=0.15〜0.18で再計算してください。
  • 強度区分刻印を確認しない — 見た目が同じでもM12 4.8とM12 10.9では締付トルクが3倍違います。必ずボルト頭部の刻印(4.8/8.8/10.9等)を確認。
  • 並目・細目を混同 — 同じ M12 でも並目(1.75ピッチ)と細目(1.5ピッチ)で有効断面積・締付トルクが異なります。JIS B 0205(並目)・B 0207(細目)を参照。
  • ワッシャ・座金を省略 — 平座金は面圧を分散し軸力の安定化に必須。省略すると母材陥没で軸力が損失します。JIS B 1256参照。
  • 締付後の再締めなし — 熱膨張・振動・座面クリープで軸力は初期の70〜85%に低下。重要部位は24時間後・1週間後の再締付が推奨されます。
  • ステンレス同士でグリスを塗らない — SUS304同士は焼付き(かじり)が発生し、途中で回らなくなります。専用の銅ペースト・二硫化モリブデングリスを使用。
  • アルミ母材にM4以下を高トルク締付 — 小径ボルトでアルミねじ山が破損。ヘリサート(リコイル)でスチール製ねじ山を挿入する対策が定石です。
  • 使い古しトルクレンチで新品同様の精度を期待 — トルクレンチは校正切れで±30%誤差が出る例も。年1回の校正が必須です。

関連するJIS・ISO規格

  • JIS B 1083 ― ねじの締付け通則。締付トルク・軸力の計算式、締付管理方法の基準。
  • JIS B 1071 ― 締結用部品-ボルト、小ねじ及び植込みボルトのトルク係数試験方法。
  • JIS B 1051 ― 炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質-ボルト、小ねじ及び植込みボルト。強度区分の規定。
  • JIS B 1082 ― ねじの有効断面積及び保証荷重、破断荷重。
  • JIS B 4652 ― トルクレンチ。プリセット・直読式の精度規定。
  • JIS B 4650 ― トルク計。校正用機器の規定。
  • ISO 898-1 ― Mechanical properties of fasteners made of carbon steel and alloy steel. 強度区分の国際規格。
  • ISO 16047 ― Fasteners – Torque/clamp force testing.
  • DIN 267 ― ドイツ規格。欧州機械の設計標準。
  • JIS D 0301 ― 自動車用締付ボルトの締付方法。整備業界標準。
  • 建築基準法・BCJ ― 鉄骨造の高力ボルト締付管理(国交省告示)。

参考資料・公的機関

※本ページの計算値は JIS B 1083 に基づく理論値です。実際の設計・施工では、必ずメーカー整備マニュアル・図面指示・建築告示・機種別サービス手帳を優先してください。塑性域締付(角度法)を要する用途、特殊環境(高温・低温・高圧・海水)下では追加補正が必要です。重要部位の締付は有資格者(機械保全技能士・自動車整備士・建築鉄骨鳶技能士等)による作業を推奨します。

よくある質問(FAQ)

トルクレンチは必須?

重要部位では必須。自動車整備・鉄骨組立・プラント配管ではJIS/建築基準法/労安法により校正済みトルクレンチの使用が義務化されています。DIY用の非重要部位はスパナで手感覚締付でも可ですが、緩み・過大締付リスクを承知した上で使用してください。

オイルを塗ると変わる?

変わります。トルク係数Kが0.20から0.15〜0.18に下がるため、同じ軸力を得るためのトルク値は20〜30%減らす必要があります。逆に乾燥時の値のまま塗油して締めると、軸力が過大になりボルト降伏の原因に。

カチッと音がなるトルクはどう使う?

プリセット型(クリック式)トルクレンチの設定値到達合図です。それ以上回すと過大トルクとなるため、音が出た瞬間に手を離します。連続で「カチカチ」と回すのは間違いで、1回1締付が原則。

強度区分の見分け方は?

ボルト頭部の刻印を確認。「4.8」「8.8」「10.9」「12.9」と数字が打刻されているのが強度区分。プラス「メーカー刻印」もあります。刻印なしのボルトは強度不明のため重要部位には使用不可です。

ステンレスボルトの締付は?

強度区分の代わりにA2-70/A4-80等(材質-最小引張強度×10)で表示。SUS304同士は焼付き(かじり)が発生しやすく、専用焼付き防止剤(銅ペースト等)が必要。トルク値は同径鉄ボルトの70〜80%が目安。

アルミ・チタンは?

アルミ合金母材はねじ山破損リスクがあるため、締付トルクを鉄より20〜30%減らすかヘリサート(リコイル)でスチール製ねじ山を挿入します。チタンは電食対策(絶縁ワッシャ)と熱膨張差を考慮した設計が必要。

塑性域締付(角度法)とは?

初期トルクで着座させた後、指定角度(例:90°)追加回転させる方法。トルク法より均一な軸力が得られる利点があります。自動車のシリンダーヘッドボルト、産業機械の主軸ボルト等の重要部位で採用。ISO 16047参照。

ボルトの再使用は可能?

強度区分8.8以下・弾性域締付なら再使用可能ですが、10.9以上の高力ボルト・塑性域締付ボルト1回限りの使い切りが原則。建築鉄骨の高力ボルトは再使用禁止(BCJ規定)。

締付後の緩み対策は?

ダブルナット、②ばね座金・皿座金、③スプリングピン・割ピン、④接着剤(ロックタイト等)、⑤ハードロックナット(緩み止めナット)、⑥スチール系スタッドボルト熱間締付 の6手法。用途・振動条件で選定します。

トルクレンチの校正周期は?

JIS B 4652 では明確な周期規定はありませんが、年1回の校正が業界標準。ISO 9001認証工場・整備工場では校正証明書付き機器の年次校正が必須。使用頻度が高い場合は6ヶ月ごとの校正も。

締付順序はなぜ重要?

フランジ等の複数ボルト締付では、対角十字→周方向の順で3回に分けて(初期30%→60%→100%)締め上げます。片締めするとガスケット・シール面が偏変形し、漏れ・座屈の原因になります。ASME B16.5に順序図あり。

DIYで注意することは?

①強度区分刻印確認、②潤滑条件明確化、③目安トルクの70〜90%までで様子見、④重要部位は必ずトルクレンチ使用、⑤ステンレスは焼付き防止剤塗布、⑥再締付を1週間後に実施。自転車・オートバイのブレーキ・ステム等の保安部品は必ず整備手帳の値で。