kVA・kW・力率 計算ツール|単相・三相の変圧器容量と電流を即時算出・契約電力選定
受変電設備・発電機・UPSのkVA⇔kW⇔A(電流)を、単相・三相200V/400V・力率込みで相互変換。皮相電力・有効電力・無効電力(kVAR)の三角関係、進相コンデンサによる力率改善効果、モーター始動時の突入電流、電力会社との契約電力・基本料金の選定まで、電気工事士・電気主任技術者・施工管理・設備管理の実務目線で解説します。電気事業法・電技解釈・JEC-2200・JIS C 4304など公的規格に照らしたベンチマーク値を掲載しました。
kVA・kW・電流 計算機
計算式(単相・三相)
単相
kVA = V × A ÷ 1000
kW = V × A × cosφ ÷ 1000
A = kVA × 1000 ÷ V
三相
kVA = √3 × V × A ÷ 1000
kW = √3 × V × A × cosφ ÷ 1000
A = kVA × 1000 ÷ (√3 × V)
三相回路では線間電圧と線電流の積に√3(≒1.732)を掛けます。これは3つの相電流のベクトル合成による幾何学的な係数で、電気工事士試験・電験三種の頻出項目です。三相200V回路で50kVAを扱う場合、電流は50,000÷(1.732×200) ≒ 144Aとなり、単相200V回路(250A)の約58%で済む点が三相配電の効率上の優位性です。
電力の三角関係と力率
交流回路では電圧と電流の位相差により、電力に3つの側面が現れます。
皮相電力 S(kVA)² = 有効電力 P(kW)² + 無効電力 Q(kVAR)²
力率 cosφ = P ÷ S = kW ÷ kVA
誘導性負荷(モーター・蛍光灯安定器・変圧器)は電流が電圧より遅れ、容量性負荷(コンデンサ・ケーブル)は進みます。皮相電力=ケーブル・変圧器・遮断器で確保すべき容量、有効電力=実際に仕事に変換される電力、無効電力=電源との間を往復するだけで熱化しない電力、と理解すると設計判断がぶれません。力率が低いほど同じ有効電力でも大きな電流が流れ、機器が過大化・電力損失が増大します。
変圧器標準容量早見表(JIS C 4304 準拠)
日本の油入変圧器・モールド変圧器の標準容量(kVA)と、三相200V/400V/6.6kVでの一次・二次側電流の目安です。
| 容量 kVA | 三相200V 二次電流 | 三相400V 二次電流 | 6.6kV 一次電流 | 主用途 |
|---|---|---|---|---|
| 10 | 29 A | 14 A | 0.87 A | 小規模事業所 |
| 20 | 58 A | 29 A | 1.75 A | 店舗・小規模工場 |
| 30 | 87 A | 43 A | 2.62 A | 小規模工場 |
| 50 | 144 A | 72 A | 4.37 A | 中規模店舗・工場 |
| 75 | 217 A | 108 A | 6.56 A | 中規模ビル |
| 100 | 289 A | 144 A | 8.75 A | 中規模ビル・工場 |
| 150 | 433 A | 217 A | 13.1 A | 大型店舗 |
| 200 | 577 A | 289 A | 17.5 A | 中規模工場 |
| 300 | 866 A | 433 A | 26.2 A | 大規模工場 |
| 500 | 1,443 A | 722 A | 43.7 A | 大規模施設 |
| 750 | 2,165 A | 1,083 A | 65.6 A | 大規模ビル |
| 1000 | 2,887 A | 1,443 A | 87.5 A | 大規模工場・ビル |
| 1500 | 4,330 A | 2,165 A | 131 A | 特別高圧受電の分割 |
| 2000 | 5,774 A | 2,887 A | 175 A | 大型商業施設 |
モーター容量と電流早見表(三相200V・力率0.85・効率0.90)
| モーター kW | 馬力 HP | 定格電流 | 始動電流(DOL) | 推奨ブレーカ |
|---|---|---|---|---|
| 0.4 | 0.5 | 2.0 A | 12 A | 15 A |
| 0.75 | 1 | 3.6 A | 22 A | 15 A |
| 1.5 | 2 | 6.6 A | 40 A | 20 A |
| 2.2 | 3 | 9.4 A | 56 A | 30 A |
| 3.7 | 5 | 15 A | 90 A | 50 A |
| 5.5 | 7.5 | 22 A | 132 A | 75 A |
| 7.5 | 10 | 30 A | 180 A | 100 A |
| 11 | 15 | 42 A | 250 A | 125 A |
| 15 | 20 | 57 A | 340 A | 175 A |
| 22 | 30 | 82 A | 490 A | 250 A |
| 37 | 50 | 135 A | 810 A | 400 A |
| 55 | 75 | 200 A | 1,200 A | Y-Δ始動推奨 |
| 75 | 100 | 270 A | 1,620 A | Y-Δ始動推奨 |
始動電流は直入れ始動(DOL)時で定格の6倍程度。中大容量ではスター・デルタ始動、ソフトスタータ、インバータ駆動で突入電流を1/3〜1/6に低減します。
機器別力率一覧
| 機器 | 力率 | 特性 |
|---|---|---|
| 白熱電球・電熱器 | 1.00 | 純抵抗負荷 |
| LED照明(PFC回路付) | 0.90〜0.95 | 電子式高力率 |
| LED照明(PFCなし安価品) | 0.50〜0.70 | ライン品質を悪化 |
| 蛍光灯(インバータ式) | 0.85〜0.95 | 電子安定器 |
| 蛍光灯(磁気式安定器) | 0.50〜0.60 | コンデンサ内蔵で0.85まで改善 |
| 誘導電動機(定格負荷) | 0.80〜0.90 | 大容量ほど高い |
| 誘導電動機(軽負荷) | 0.40〜0.60 | 負荷率低下で急落 |
| インバータエアコン | 0.90〜0.98 | インバータ制御で高力率 |
| 電子レンジ | 0.75〜0.90 | マグネトロン負荷 |
| PC・スイッチング電源 | 0.60〜0.95 | PFC回路の有無で大差 |
| 変圧器(無負荷) | 0.10〜0.30 | 励磁電流のみ |
| アーク溶接機 | 0.30〜0.60 | 力率改善器必須 |
進相コンデンサによる力率改善
誘導性負荷が主体の工場・ビルでは、進相コンデンサ(SC)を並列接続することで力率を改善できます。
必要コンデンサ容量 Qc(kVAR)= P × (tan φ₁ − tan φ₂)
例:有効電力100kWで力率0.7(φ₁≒45.6°)を0.95(φ₂≒18.2°)まで改善する場合、Qc = 100 × (1.02 − 0.33) = 69 kVAR。標準品50kVAR+20kVAR、または75kVAR一台で対応。
力率改善のメリット
- 電力会社基本料金の割引(東京電力・関西電力等の高圧契約で力率85%基準、1%ごとに1%の割引/割増)。
- 受変電設備・幹線ケーブルの電流減少で余裕度向上。既存設備での増設余地確保。
- 電圧降下の抑制でモーター・照明の性能安定化。
- ライン損失(i²R損)の削減で年間電力量削減。
ただし過補償(進み力率)になると逆に基本料金が割増になるうえ、フェランチ効果で電圧上昇のリスク。負荷変動に応じた自動力率調整装置(APFC)の導入が中〜大規模施設では標準です。
モーター始動時の突入電流
誘導電動機は始動時にロータ回路が短絡状態のため、定格の5〜7倍の電流(始動電流Is)が流れます。突入電流対策の代表方式:
直入れ始動(DOL)
7.5kW未満の小容量に一般的。ブレーカ・電磁接触器が始動電流に耐えられれば最もシンプル。動力ブレーカは瞬時引外し要素を持ち短時間の突入は許容。
スター・デルタ始動
始動時Y結線→定常時Δ結線に切替。始動電流・始動トルクとも1/3。11〜75kW級で採用が多い伝統的手法で、切替時にトルクショックが出る欠点あり。
リアクトル始動・補償器始動
直列リアクトルまたは単巻変圧器で始動電圧を50〜80%に降下。始動トルクの調整が可能で、ポンプ・送風機に適します。
ソフトスタータ
サイリスタ位相制御で電圧をランプ状に上昇。始動電流・始動トルクを連続可変でき、切替ショックがない。省スペースで11〜200kW級に普及。
インバータ駆動(VVVF)
可変電圧・可変周波数駆動で始動電流を定格以下に抑制。省エネ効果も得られ、現代の主流。回生・力率改善・保護機能が統合される。
コンデンサ始動(単相)
単相誘導電動機の始動用。始動巻線とコンデンサで疑似2相を作り始動トルクを発生。1kW以下のコンプレッサ・ポンプに多用。
契約電力・基本料金の選定
電力会社との契約種別と選定基準の目安です。誤選定は年間数十万円〜数百万円の基本料金差になります。
| 契約種別 | 契約電力目安 | 受電電圧 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 従量電灯B/C | 60A/50kVA未満 | 単相100V/200V | 住宅・小規模店舗 |
| 低圧電力 | 50kW未満 | 三相200V | 小規模事業所の動力用 |
| 高圧小口 | 50〜500kW | 6.6kV | 受変電設備必須・電気主任技術者選任要 |
| 高圧大口 | 500〜2,000kW | 6.6kV | 大規模工場・商業施設 |
| 特別高圧 | 2,000kW以上 | 22kV/66kV/154kV | 大規模工場・データセンター |
高圧受電では過去1年間の30分デマンドの最大値が契約電力となり、一度更新されると解消まで1年かかります。デマンドコントローラーによる監視・警報・機器の自動停止が投資回収の速い省エネ手段として定着しています。
現場ケーススタディ
電気工事士2種・電験三種の受験対策
単相・三相の電流計算、力率改善コンデンサ容量計算は毎年出題される定番。本ツールで数値を触りながら三角関数の感覚を掴むと計算問題の得点源になります。
施工管理・現場代理人
仮設電源の選定、発電機容量の妥当性チェック、増設時のブレーカ・幹線サイズ検討。突入電流を考慮した実容量の見積もりで停電トラブルを防ぎます。
電気主任技術者(保安管理)
月次デマンドの推移監視、力率実績の集計、コンデンサ設備の劣化診断、保安規程に基づく変圧器の負荷率管理。年次点検の基礎データとして活用。
設備管理・BEMS運用
ビル管理での契約電力最適化、力率改善による基本料金削減、EV充電器増設時の受電容量チェック。省エネ法定期報告の一次データにも利用可能。
発電機・UPS選定
非常用発電機の負荷容量選定、モーター始動時のディップ電圧計算、UPS容量選定。突入電流を考慮しないと発電機停止・UPS過負荷トリップの原因に。
工場・データセンター新設
受変電設備の容量計画、変圧器バンク構成、力率改善設備・高調波対策の全体設計。特別高圧・高圧・低圧の階層構造での容量配分の一次検討に。
よくある間違い・注意点
- kVA=kWと混同:力率0.7の負荷なら100kWの実需要に対して143kVAの受電・幹線容量が必要。混同すると変圧器焼損の原因に。
- 三相の√3忘れ:三相計算で√3を掛け忘れると電流・容量が√3倍(約73%)ずれる。特に一次側電流計算で頻出のミス。
- 始動電流無視の遮断器選定:定格電流ベースでブレーカを選ぶと始動時に瞬時トリップ。始動特性(K曲線・D特性)とモーター容量を照合。
- 力率過補償:進相コンデンサを過大に設置すると軽負荷時に進み力率となり基本料金割増・電圧上昇。自動力率調整装置での動的補償が安全。
- 負荷変動時の力率悪化:モーターは負荷率50%以下で力率が急落。省エネのつもりで軽負荷運転させると力率悪化で逆効果になる場合あり。
- 高調波の無視:インバータ・整流器負荷で高調波電流が発生。進相コンデンサとの共振で焼損事故が発生。直列リアクトル付コンデンサが必須。
- 非常用発電機容量不足:モーター負荷主体の場合、始動時の電圧低下(発電機は変圧器より内部インピーダンスが高い)で始動不能になる。3倍容量余裕が定石。
関連する規格・法令
- 電気事業法 ― 保安規程・電気主任技術者の選任・工事計画届出の根拠法。
- 電気設備の技術基準の解釈(電技解釈) ― 受変電設備・幹線・分岐回路の設計基準。経済産業省。
- JIS C 4304 ― 配電用6kV油入変圧器。標準容量・特性・試験。
- JIS C 4306 ― 配電用モールド変圧器。乾式変圧器の標準規格。
- JIS C 4620 ― キュービクル式高圧受電設備。標準構成の技術要件。
- JEC-2200 ― 電気学会規格 変圧器。国内の技術ベース。
- JIS C 4901 ― 低圧進相コンデンサ。標準容量・試験。
- 内線規程(JEAC 8001) ― 日本電気協会。低圧電路の設計・施工基準。
- 高圧受電設備規程(JEAC 8011) ― 高圧キュービクル・受変電の設計・施工基準。
- 省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律) ― 大規模事業所の定期報告義務。
参考文献・公的資料
- 経済産業省 電気事業法・電気設備の技術基準 ― 電技・電技解釈の一次資料。
- 日本電気技術規格委員会(JESC) ― 電気技術規程・技術基準の共同管理団体。
- 日本電気協会(JEA) ― 内線規程・高圧受電設備規程の発行元。
- 日本産業標準調査会(JISC) ― JIS C 4304等の変圧器・電気設備規格を検索。
- 電気学会(IEEJ) ― JEC規格の発行元。学術・技術基準の中核。
- 国際電気標準会議(IEC) ― IEC 60076変圧器・IEC 60034回転機の国際規格。
- 東京電力エナジーパートナー 高圧・特別高圧料金 ― 力率割引・基本料金の適用ルール。
- 資源エネルギー庁 ― 省エネ法・電力需給・エネルギー統計。
- 日本電機工業会(JEMA) ― 変圧器・モーター・コンデンサ等の業界標準・技術資料。
- 電気技術者試験センター ― 電気工事士・電気主任技術者試験の公式情報。
よくある質問(FAQ)
kVAとkWの違いは?
kVAは皮相電力(電圧×電流でケーブル・変圧器・遮断器で確保すべき容量)、kWは有効電力(実際に仕事に変換される電力)。関係式はkW = kVA × 力率。電源容量の選定はkVA、機器の消費電力比較はkWで行います。
変圧器選定で気をつけることは?
負荷合計kVAに対して20〜30%の余裕を持たせるのが基本。負荷40kVAなら50kVA変圧器を選定。突入電流(モーター始動時の5〜7倍電流)、将来の負荷増設余地、力率改善効果を考慮。中大容量では複数バンクに分けて片肺運転時の容量確保も検討します。
力率改善の効果は?
力率を0.7→0.95に改善すると、同じ有効電力でも必要kVAが約26%減少。電力会社の基本料金(力率85%基準で1%あたり1%の割引/割増)が下がり、ケーブル・変圧器の余裕度が増し、電力損失も低減。投資回収は1〜3年が一般的です。
単相200Vと三相200Vはどう違う?
単相200Vは2線+接地、三相200Vは3線+接地。同じ200V基準でも三相は√3倍効率で電力を送れ、モーターも回転磁界で始動トルクが得られる。大容量の動力機器は三相、家庭用は単相が主流です。
三相の√3はどこから来る?
3つの相電流のベクトル合成による幾何学的な係数。線間電圧と相電圧、線電流と相電流の関係にsin60°×2=√3が現れます。式の暗記でなく、電圧ベクトル図を描くと直感的に理解できます。
発電機の容量はkVAで表示されるのはなぜ?
発電機の内部インピーダンス・巻線発熱・遮断器保護は電流ベース(皮相電力)で決まるため、力率を含まないkVAが正式表示。負荷の力率を掛けて実有効電力(kW)を求める運用になります。
デマンドとは?
30分間の平均電力使用量。高圧契約では過去1年間のデマンド最大値が契約電力になり、基本料金の算定基礎に。一度更新されると解消まで12ヶ月かかるため、監視・警報・自動停止での抑制が重要です。
力率が100%(1.0)を超えることはある?
物理的にはあり得ません。力率は電圧と電流の位相差cosφで最大1。ただし遅れ・進みの区別があり、進相コンデンサ設置で「進み力率」となる場合、電力会社の料金体系では割増対象になることがあります。
モーターの始動電流はなぜ大きい?
始動時はロータ(回転子)が停止しており逆起電力がゼロのため、巻線に定格の5〜7倍の電流が流れます。回転が上がると逆起電力が発生して電流が減少。この特性を理解しないと遮断器選定・電圧降下計算で失敗します。
インバータエアコンの力率が高いのはなぜ?
インバータのコンバータ部にPFC(力率改善回路)が組み込まれ、電流波形を正弦波に近づけているため。定格運転で0.95以上を達成します。省エネと配電線品質の両立で家庭用でも標準搭載になっています。
高調波は力率と関係ある?
関係あります。厳密には力率=基本波の変位力率×歪み率で、高調波が多いと歪み率が低下し総合力率が下がります。JIS C 61000-3-2で機器の高調波電流が規制され、大電力ユーザには「高調波抑制対策ガイドライン」が適用されます。
UPSの容量選定で注意すべき点は?
負荷合計に対して30〜50%の余裕を確保し、力率0.8基準で選定。PCサーバなどPFC電源の力率0.95〜1.0が多いためkVA≒kW前提でも問題ない一方、旧型負荷では乖離が大きくなります。バッテリー寿命は3〜5年で計画的な更新が必須。