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VDOT 計算ツール|ジャック・ダニエルズ式ランニング能力の数値化・距離別タイム予測とE/M/T/Iペース設定

ランニングのVDOT(ジャック・ダニエルズ式)で、あなたの走力を1つの数字に凝縮。1回のレース結果から1,500m・3,000m・5km・10km・ハーフ・フルマラソンの予測タイムを瞬時に相互変換し、日々のトレーニングで踏むべきEペース(Easy)・Mペース(Marathon)・Tペース(Threshold・乳酸閾値走)・Iペース(Interval・VO2max)・Rペース(Repetition・スピード)を秒単位で算出します。VDOT 30(初心者)から70+(エリート)まで9段階のレベル判定、日本陸上競技連盟(JAAF)・World Athletics(旧IAAF)・国立スポーツ科学センター(JISS)の記録データに基づく世界基準の指標で、科学的マラソントレーニング計画の立案に不可欠なツールです。

最終更新:2026-07-26/監修:計算ツールズ編集部

VDOT 計算機

時間

VDOTとは何か

VDOT(ヴイドット)は、米国のランニングコーチジャック・ダニエルズ博士(Jack Daniels, PhD)が著書『Daniels' Running Formula』で提唱した、ランニング能力を1つの数値に集約した指標です。VO2max(最大酸素摂取量)× ランニングエコノミー(走効率)を近似的に表現し、レース結果から逆算する「疑似VO2max」として世界中のランナーに使われています。

VDOTのメリットは、1つの数字で全距離のポテンシャル予測とトレーニングペース設定が可能な点。例えば5kmで22分00秒(VDOT約50)のランナーは、理論上10kmを45:36、ハーフを1:41:11、フルを3:30:36で走れるはずで、Eペース5:17/km、Mペース4:52/km、Tペース4:29/km、Iペース4:07/kmで練習すべき、と即座に決まります。

ダニエルズは1968年メキシコ五輪で近代五種銀メダル、Nike Athletics West、SUNY Cortlandで長年ヘッドコーチを務めた指導者で、ケニア/エチオピア選手のデータも取り込んで公式を洗練しました。

計算式(Daniels' Formula)

基本式

VO2 = -4.60 + 0.182258 × v + 0.000104 × v²
%VO2max = 0.8 + 0.1894393 × e^(-0.012778×t) + 0.2989558 × e^(-0.1932605×t)
VDOT = VO2 ÷ %VO2max
(v: 分速メートル、t: 分単位のレース時間)

この2式を組み合わせることで、実測レースタイム→ランナーが発揮した酸素摂取量→VDOT値を逆算できます。距離を入れて反復解を求めることで、他の距離の予測タイムも算出可能。

トレーニングペース式

  • Eペース:VDOTの59-74%強度、Eペースの走時間はVDOTから決定
  • Mペース:フルマラソン時のペース=VDOTの75-84%
  • Tペース:乳酸閾値=VDOTの86-88%、20-60分維持できる強度
  • Iペース:VO2max強度=97-100%、3-5分×5-6本
  • Rペース:VDOT超過106-108%、200-400m×10-20本の全力に近い反復

VDOT×距離別タイム早見表

VDOT5km10kmハーフフルレベル
3030:401:03:462:21:044:49:17初心者
3525:5254:001:59:264:16:03ジョギング卒業
4023:3849:241:49:143:46:36市民ランナー
4521:1444:171:38:143:24:57サブ3.5射程
5019:1740:001:28:383:04:36サブ4達成
5517:4236:391:21:142:49:42サブ3.5
6016:2033:551:15:092:37:24サブ3達成
6515:1131:341:09:522:26:46準エリート
7014:1129:301:05:182:17:32エリート
7513:2227:411:01:192:09:24男子日本代表水準
8012:3726:0957:472:02:03世界トップ
8511:5824:4754:441:55:19男子世界記録級

Eペース〜Rペース早見表(分:秒/km)

各VDOTに対して踏むべき5種のトレーニングペースの目安。Rペースのみ400m秒表記です。

VDOTE (min-max)MTIR(/400m)
307:27-8:146:516:245:532:24
356:36-7:195:535:295:032:03
405:56-6:385:134:524:291:48
455:23-6:034:414:224:021:38
504:56-5:334:153:593:401:30
554:33-5:083:543:393:221:23
604:14-4:463:363:233:061:17
653:57-4:273:213:092:531:12
703:42-4:113:072:562:421:07
753:29-3:562:562:452:321:03

4種の心拍・強度ゾーン

Eペース(Easy・イージー)

会話しながら走れる楽なペース。目的は毛細血管の発達・ミトコンドリア増加・脂肪代謝の向上。心拍65-79%HRmax。全ランニング量の80%以上をこの強度で走る「ポラライズド・トレーニング」がケニア勢の主流。

Mペース(Marathon・マラソン)

フルマラソン目標ペースそのもの。心拍80-89%HRmax。ロング走の後半15-20kmで組み込むと、レース本番の心拍・脚筋への慣れができる。ハーフマラソン練習でも活用。

Tペース(Threshold・乳酸閾値)

乳酸が急激に蓄積し始める境界(LT/OBLA)のペース。心拍85-88%HRmax。20分×1本または5-10分×3-4本で「持久走の上限速度」を引き上げる。VDOT向上に最も効くと言われる王道メニュー。

Iペース(Interval・VO2max)

VO2maxを刺激する高強度インターバル。3-5分×5-6本、レスト2-3分。心拍95-100%HRmax。「800m×5本、5000mレースペース」が代表的メニュー。速筋動員力とスピードを鍛える。

Rペース(Repetition・スピード)

200-400m全力に近い反復走。ATP-CP系エネルギーとフォームの効率化を狙う。400m×10本、レスト等時間ジョグ。乳酸を溜めない代わりに、フォーム崩壊前に切り上げるのがコツ。

ロング走(LSD)

Eペースで90分-2時間30分(フルマラソン準備は3時間まで)。脂肪代謝の最大効率化、精神的な長時間持久力の獲得。週1回組み込むのが基本。長時間走は関節・アキレス腱への負担も高いため、シューズ選びが重要。

VDOTとVO2max・乳酸閾値の関係

VDOTは実験室でのVO2max測定値(呼気ガス分析)にランニングエコノミー(走効率)を加味した「実効的なVO2max」です。同じVO2max 65 ml/kg/minでも、フォーム効率の良いランナーの方がVDOTが高くなる傾向があります。

参考:エリートランナーの実測VO2max

選手VO2max ml/kg/min備考
男子マラソン世界記録級80-85キプチョゲ・ベケレ級
大迫傑(日本記録級)〜80推定
市民サブ3ランナー60-65VDOT約60
市民サブ4ランナー50-55VDOT約50
健康的な非運動男性40-45
健康的な非運動女性33-38

シーン別の活用例

目標タイムから逆算した練習ペース設定

「秋のフルマラソンでサブ3.5を狙う」→VDOT 55が必要→今のVDOTと現状ギャップを把握→Tペース3:39/km、Iペース3:22/kmを日々のポイント練習に組み込む、と計画立案が明確化。

距離間の走力バランスチェック

5kmは20分(VDOT48)で走れるのに10kmは45分(VDOT44)にとどまる、といった場合は「持久力不足」と診断可能。Eペースのロング走頻度を増やす戦略。

ケガ復帰後の練習強度調整

復帰時にVDOTを一時的に3-5落とし、その値で算出したペースで走り出すことで無理な負荷を回避。競技復帰の科学的ロードマップとして使えます。

チーム練習でのペース統一

異なる走力の選手が同じ「Tペース走」をする際、各人のVDOTから個別ペースを算出し、同じ生理学的強度で並走可能に。ケニアの合同練習にも導入。

加齢による走力低下の可視化

年1回、5kmや10kmのレースでVDOTを計測することで、加齢曲線(30-40歳台で年-0.5、50歳以上で年-1.0程度)を追跡可能。生涯ランナー向けの長期指標。

マラソン当日ペース戦略

VDOTから算出したMペースをネットタイムペーサーとして本番設定。前半-3秒/km、後半+3秒/kmのイーブンで押し切る「ネガティブスプリット」がサブ3.5以上の完走率を上げます。

週間トレーニングメニュー例(サブ3.5=VDOT55を目指す市民ランナー)

曜日メニュー距離ペース
休養
Iペース800m×5(レスト3分ジョグ)12km(WU/CD含む)3:22/km
Eペースジョグ8km5:00/km
Tペース20分走10km3:39/km
Eペースジョグ or 休養6km5:00/km
Eペースジョグ10km4:45/km
ロング走(後半15kmはMペース)25-30km4:45→3:54/km
月間走行距離目安280-320km

ダニエルズは初心者〜市民ランナーへの助言として「Eペースの走行量を全体の70-80%に保つ」ことを強調。強度の高いポイント練習は週2回まで。

よくある間違い・注意点

  • Eペースを速く走りすぎる — 「イージーラン=会話できる楽な走り」が原則。心拍が上がりすぎると回復ラン本来の目的(脂肪代謝・毛細血管発達)が失われ、疲労が蓄積してポイント練習が失敗します。
  • VDOTを短期間で急上昇させようとする — 生理学的にはVDOT向上には最低4-6週間必要。「先週50、今週55」という予測は非現実的で、無理な高強度で故障リスクが跳ね上がります。
  • フル未経験者がフル予測タイムを鵜呑み — VDOTは距離適応の経験を織り込まない指標。フル初心者はスタミナ切れ・脚攣り等でVDOT予測の10-15%遅くなるのが常。初回は「完走目標」で。
  • 季節・気温補正の欠如 — 気温25℃以上ではフルマラソンで5-10%タイム悪化。VDOT予測を目標にすると夏場のレースで失敗します。冬季のPRを基準にすべき。
  • ペースを厳守しすぎる — 心拍・主観的疲労と乖離するペースの厳格遵守は逆効果。体調・気温・睡眠でその日の実力は±3-5%変動するのが正常。
  • Iペースをやりすぎる — VO2maxインターバルは週1回が上限。連日行うと交感神経疲労で走力が逆に低下する(オーバートレーニング症候群)。
  • ケイデンス無視のフォーム — VDOTだけを追うと接地時間・ストライドの効率化を見落とし、伸びしろが枯れます。180spm前後を目標にケイデンス測定計と併用を推奨。

参考文献・公的資料

VDOT・ランニングトレーニングのより正確な情報は、以下の書籍・公的機関の資料を参照してください。

※VDOT予測タイムは理論値であり、実際のレース結果はコース高低差・気温・湿度・風速・体調・栄養補給で±10%以上変動します。マラソン等の高強度・長時間運動は循環器系への負担が大きいため、心疾患・高血圧・糖尿病等の既往症がある方は必ず事前に医師の運動許可を得てください。オーバートレーニング症候群を避けるため、週1-2日の完全休養日を確保し、疲労蓄積時は練習強度を下げる判断を優先してください。

よくある質問(FAQ)

VDOTとVO2maxは同じ?

厳密には異なります。VO2max(最大酸素摂取量)は実験室で呼気ガス分析装置で計測する生理学的指標(ml/kg/min)。VDOTはレース結果から逆算した疑似的VO2maxで、ランニングエコノミー(走効率)も加味されています。実測VO2maxが同じでもフォーム効率の良いランナーはVDOTが高くなる傾向があり、実走能力の予測にはVDOTが優れています。

VDOTはどの距離のレースから計算すべき?

5km・10kmが最も精度が高いとされます(酸素供給系の飽和距離)。ハーフ・フルは筋グリコーゲン枯渇・脱水などの要因が加わりVDOTが下振れしやすい。1500mも精度が良いですが、初心者・中級者ではスピード不足で下振れも。週1のTペース走10km前後のタイムが最も現実的な走力を反映すると言われます。

VDOTはどのくらいのペースで向上する?

初心者〜中級者で月0.5-1.0ポイントが現実的な向上速度。半年で3-6ポイント、1年で5-10ポイントの向上は良好。VDOT 60以上のアッパーレンジでは年1-2ポイントも困難になり、才能・体格・遺伝の壁が現れます。プラトー(停滞)は数ヶ月続くのが普通。

フルマラソン初挑戦でVDOT予測タイムを目標にしていい?

初回は絶対にダメ。VDOTはあくまで「潜在能力」であって、フルマラソンには脚筋持久力・栄養補給・ペース配分・メンタルなど短距離では鍛えられない要素があります。初フルはVDOT予測の10-20%遅いペースで完走を優先し、2回目以降からVDOTを目安に。

Eペースが遅く感じるのは正常?

正常です。「これで練習になっているのか」と不安になる遅さこそがEペース。ダニエルズは「ハーフや5000mのタイムを縮めたい人ほど、Eペースを守れない」と警告。心拍数65-79%を保ち、完全に会話しながら走れる強度が理想。ケニア・エチオピア勢のイージーは4:00/km以下ですが、彼らのVDOTが80台だから相対的にEペース。

ジャック・ダニエルズは誰?

1933年生まれ、米国ランニングコーチのレジェンド。1968年メキシコ五輪近代五種銀メダル、Oklahoma州立大PhD(スポーツ生理学)。SUNY Cortlandで長年ヘッドコーチ、Runner's WorldでCoach of the Yearに複数回選出。著書『Daniels' Running Formula』は世界中のランナーのバイブル。日本語版も第4版まで翻訳出版済み。

心拍計とVDOTのどちらでペース管理すべき?

両方併用が最強。ペース=絶対値、心拍=その日の主観負荷。気温・湿度・体調で心拍は簡単に±10-15bpm変動するため、暑い日は「Tペース走なのに心拍95%HRmax」といった状態になります。その場合はペースを緩めて心拍を優先すべきです。

ケイデンス(ピッチ)はVDOTに関係する?

間接的に関係。ケイデンス180spm前後がランニングエコノミー最大の目安(Daniels調査による)。170以下はストライド過大でオーバーストライド(踵着地・接地時間長)、190以上は加速時の効率向上と重心移動効率化が期待できます。Garmin/Polar/Coros等の腕時計で常時測定可能。

厚底シューズはVDOT向上に有効?

有効です。Nike Vaporfly/Alphafly、Adidas Adios Proなど反発材(カーボンプレート+超軽量PEBAフォーム)がランニングエコノミーを4-5%向上させるとの学術研究(Barnesら)。ただしトレーニングの質を代替するものではなく、レース用として使うのが基本。World Athleticsの新規制で厚さ40mm以下等の制限。

年齢によるVDOT低下は?

30-40代で年-0.5、50代以降で年-1.0程度が生理学的な自然低下。ただし継続的なトレーニングで70代でVDOT 50以上を維持する市民ランナーも多数実在。ロング走の頻度・強度を維持できれば、下降カーブは大きく緩やかになります。マスターズ大会での年齢別記録は励みに。

女性のVDOT基準は同じ?

男女で同じVDOTならタイム予測は同じですが、平均的なVDOT値は男女差があります。Gulati式(女性HRmax = 206 - 0.88×年齢)のように女性向け補正が別途あります。世界記録差からは、女性の同世代平均VDOTは男性の-3〜-5程度が目安ですが、個人差の方が大きいため参考値程度に。

マラソン練習に週何回走るべき?

サブ4目標なら週3-4回・月100-150km、サブ3.5目標なら週4-5回・月200-280km、サブ3目標なら週5-6回・月280-350kmが目安。「量より質より継続」が最重要で、故障で3ヶ月休むより週3回1年続けた人のほうが伸びます。ロング走(90分-2.5時間)は週1回組み込むこと。