退職金 税金計算|勤続年数別の退職所得控除・所得税・住民税を分離課税で正確に算出する無料シミュレーター
退職金の額面と勤続年数を入力するだけで、退職所得控除・所得税・住民税・復興特別所得税を分離課税方式で正確に算出し、手取り退職金を即時表示します。定年退職・早期退職・役員退職金(勤続5年以下含む)・障害退職にすべて対応。退職金は給与所得と分離課税のため、年末調整・確定申告とは別ロジックで計算されます。
退職金 税金計算ツール
退職所得控除の仕組み
退職金は長年の勤労に対する報奨として、所得税法上で給与所得・事業所得などとは分離課税される特別な扱いを受けます。具体的には3つの優遇措置があります。
- 退職所得控除:勤続年数に応じて大きな控除額が設定されている。20年勤務で800万円、30年勤務で1,500万円、40年勤務で2,200万円が控除される。
- 1/2課税:退職所得控除を引いた残額の「半分だけ」を課税対象とする。実質的に税率が半減する大きな優遇。
- 分離課税:他の所得と合算されないため、累進税率が高く跳ね上がるリスクがない。給与所得が高い人ほどこの効果は大きい。
このため、同じ金額を給与・賞与で受け取るより退職金として受け取るほうが税負担が圧倒的に軽い。早期退職優遇制度(割増退職金)が設計上有利な理由でもあります。
計算式
① 退職所得控除額
勤続20年以下:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
勤続20年超:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20)
障害退職:上記 + 100万円
例:勤続35年なら 800 + 70×(35-20) = 1,850万円。勤続30年なら 800 + 70×10 = 1,500万円。
② 退職所得(課税対象額)
退職所得 = (退職金 − 退職所得控除) × 1/2
※役員かつ勤続5年以下、特定一般従業員(勤続5年以下)の300万円超部分には1/2課税は適用されない(短期退職金の優遇縮小・2022年改正)。
③ 所得税額(分離課税の累進税率)
| 退職所得 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 〜195万円 | 5% | 0円 |
| 195万〜330万円 | 10% | 97,500円 |
| 330万〜695万円 | 20% | 427,500円 |
| 695万〜900万円 | 23% | 636,000円 |
| 900万〜1,800万円 | 33% | 1,536,000円 |
| 1,800万〜4,000万円 | 40% | 2,796,000円 |
| 4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
所得税額には復興特別所得税2.1%が上乗せ(2037年まで)。
④ 住民税
住民税 = 退職所得 × 10%
所得割10%(道府県民税4%・市町村民税6%)。退職金は分離課税のため、均等割は発生しません。
勤続年数別 退職所得控除早見表
| 勤続年数 | 退職所得控除 | 非課税ライン | 退職所得(控除超過1000万) |
|---|---|---|---|
| 5年 | 200万円 | 200万円 | 600万円→課税300万 |
| 10年 | 400万円 | 400万円 | 800万円→課税400万 |
| 15年 | 600万円 | 600万円 | 1,000万円→課税500万 |
| 20年 | 800万円 | 800万円 | 1,200万円→課税600万 |
| 25年 | 1,150万円 | 1,150万円 | 1,550万円→課税775万 |
| 30年 | 1,500万円 | 1,500万円 | 1,900万円→課税950万 |
| 35年 | 1,850万円 | 1,850万円 | 2,250万円→課税1,125万 |
| 40年 | 2,200万円 | 2,200万円 | 2,600万円→課税1,300万 |
| 45年 | 2,550万円 | 2,550万円 | 2,950万円→課税1,475万 |
※非課税ライン:退職金がこの金額以下なら所得税・住民税ともゼロ。
ケーススタディ
① 大企業 定年退職:退職金 2,500万円・勤続38年
退職所得控除:800+70×18 = 2,060万円。退職所得:(2,500-2,060)/2 = 220万円。所得税:220×10%-9.75 = 12.25万円、復興税0.26万円、住民税22万円。税額合計:—。実質税負担率はわずか1.4%程度。手取りは約2,465万円。
② 早期退職割増:退職金 4,000万円・勤続25年
退職所得控除:800+70×5 = 1,150万円。退職所得:(4,000-1,150)/2 = 1,425万円。所得税:1,425×33%-153.6 = 316万円、復興税6.6万円、住民税142.5万円。税額合計:—。手取りは約3,535万円。割増退職金でも十分な節税効果。
③ 中小企業 定年:退職金 1,500万円・勤続40年
退職所得控除:800+70×20 = 2,200万円。退職金が控除以下のため退職所得=0、税金もゼロ。—。長期勤続なら1,500万円程度の退職金は完全非課税で受け取れる。
④ 役員退職金(勤続8年):退職金 5,000万円
勤続5年超のため通常の1/2課税が適用。退職所得控除:40×8 = 320万円。退職所得:(5,000-320)/2 = 2,340万円。所得税:2,340×40%-279.6 = 656.4万円、復興税13.78万円、住民税234万円。税額合計:—。手取りは約4,096万円。
⑤ 短期役員:退職金 2,000万円・勤続3年・役員
役員かつ勤続5年以下のため1/2課税が適用されない(2013年改正)。退職所得控除:40×3 = 120万円。退職所得:2,000-120 = 1,880万円(1/2なし)。所得税:1,880×33%-153.6 = 466.8万円、復興税9.8万円、住民税188万円。税額合計:—。手取りは約1,335万円。
税負担を抑えるコツ
- 「退職所得の受給に関する申告書」を必ず提出:未提出だと退職金額面の20.42%が源泉徴収。後で確定申告すれば還付されるが、手元に入る金額が一時的に減る。
- 退職金と確定拠出年金の併用:iDeCo・企業型DCの一時金受取も「退職所得」扱い。同年に複数受け取ると合算され、退職所得控除の枠を共有することに。退職金から5年以上空けてiDeCo一時金を受け取れば、それぞれの控除枠を別々に使える。
- 退職金 vs 年金型受取の比較:一時金は退職所得(分離課税・1/2優遇)、年金型は雑所得(公的年金等控除あり、ただし他所得と合算)。退職金額・他所得の状況・寿命想定で有利不利が逆転する。多くの場合は一時金の方が手取り総額が多いが、計算が必要。
- 退職時期を年初にする:12月退職と1月退職では、その年の他の給与所得が変わり、住民税・社会保険料の負担が大きく変動。1月退職なら退職金以外の年収が小さく、確定申告で各種控除の効果が大きい。
- 勤続年数の判定は1日単位で繰上げ:勤続19年11ヶ月は「20年」として計算(1年未満は切上げ)。退職日を意識的に調整して20年・30年・40年の節目を超えると、控除額が一気に増える。
よくある質問(FAQ)
退職金には源泉徴収税がかかりますか?
かかります。会社は退職金を支給する際に所得税・住民税を天引きします。「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出していれば適正額が源泉徴収され、確定申告は不要。未提出の場合は退職金額面の20.42%が一律源泉徴収され、後で確定申告で還付請求が必要になります。
勤続年数の数え方は?
入社日から退職日までの暦年数を1年未満切上げで計算。19年6ヶ月は20年、19年1ヶ月でも20年。逆に20年0ヶ月退職と20年6ヶ月退職は同じ「20年」扱い。退職日を1ヶ月延ばすと勤続年数が1年増えて控除額が70万円増えるケースもあるため、退職タイミングは慎重に。
退職金と確定拠出年金の一時金を同年に受け取ったら?
合算されて退職所得として計算されます。退職所得控除の枠は勤続年数とDC加入年数の長い方で算定(重複は除外)。例:勤続35年・DC加入20年なら35年で控除1,850万円。退職金から5年以上空けてDCを一時金受取(4年規定)すれば、控除枠を別々に使えるテクニック。
iDeCoの一時金も退職所得?
はい、iDeCo・企業型DCの一時金受取は退職所得として課税。年金型で受け取れば雑所得(公的年金等控除)に。組み合わせ次第で大きく節税可能。例:iDeCoは70歳一時金、退職金は60歳一時金で15年あけて2回退職所得控除枠を使い切る運用が有名。
退職金 vs 年金型受取はどちらが得?
個別事情により異なる。一般論:
- 一時金有利:退職金が退職所得控除内に収まる、他に所得がない、寿命前に資金活用したい
- 年金型有利:寿命が長い、他所得が少なく公的年金等控除を有効活用できる、計画的に取り崩したい
退職金3,000万円・勤続35年なら一時金で受け取って税ゼロ、超過分のみ年金型というハイブリッド受取も多くの会社で選択可能。
退職金の住民税は前年所得に基づきますか?
いいえ。退職金の住民税は分離課税で当年に課税されます。給与所得の住民税が「前年所得→翌年6月課税」なのと違い、退職金は退職時点で天引き。退職後の住民税負担を心配する必要はありません。
役員退職金の特例ルールとは?
役員かつ勤続5年以下の場合、退職所得計算で1/2課税が適用されない(2013年改正)。これは短期間で多額の退職金を受け取って節税する手法を防ぐためのルール。一般従業員でも勤続5年以下の場合は300万円を超える部分は1/2課税適用外(2022年改正)。
退職金の振込はいつ?
会社の規定によりますが、一般的には退職日から1〜2ヶ月以内。中小企業では退職金共済(中退共)経由なら申請から2ヶ月程度。退職前に経理担当者に振込予定日を確認しておくと、退職後の家計プランが立てやすい。
退職所得控除の最大は?
勤続年数に上限はないため理論上は青天井。例:勤続45年なら 800 + 70×25 = 2,550万円、勤続50年なら2,900万円が退職所得控除。これらは退職所得「控除」であり、これ以下の退職金なら所得税・住民税ともゼロです。
早期退職優遇制度の割増退職金は税優遇あり?
あります。割増退職金も退職所得として通常の退職金と同じ計算。退職所得控除(勤続年数ベース)と1/2課税が適用されるため、給与・賞与で同額を受け取るより圧倒的に手取りが多い。退職金規定の改定で「特別退職金」枠として分離計上される場合もありますが、税法上は同一扱い。
出典・参考資料
- 国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm
- 国税庁「No.2735 同じ年に2か所以上から退職手当等が支払われるとき」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2735.htm
- 国税庁「退職所得の受給に関する申告書」https://www.nta.go.jp/
- 厚生労働省「就労条件総合調査」(退職給付制度・退職金の実態)https://www.mhlw.go.jp/
※当ツールは概算用。役員退職慰労金、確定拠出年金との合算、外国人退職金等の特殊ケースは税理士に相談を。