公的年金等控除計算機|年齢×年金収入で控除額・雑所得を即時算出
公的年金等控除を計算する無料電卓。年齢(65歳以上/未満)と年金収入年額を入力すると、雑所得計算後の控除額・雑所得・大まかな所得税相当額を瞬時算出。老齢基礎年金・老齢厚生年金・企業年金・確定拠出年金(年金受取)はすべて「公的年金等」に該当し、給与所得における給与所得控除と同じ「みなし経費」的な性格を持つ所得控除です。2020年改正で頭打ち(上限195.5万円)と高所得者減額が導入され、所得1,000万円超・2,000万円超で控除が段階的に減額される仕組みになりました。国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」(所得税法第35条第2項・第3項)に完全準拠し、扶養親族等申告書の提出有無で源泉徴収税率が変わる論点、遺族年金・障害年金の非課税、iDeCo一時金との併用(退職所得控除)まで実務目線で網羅しています。
公的年金等控除ツール
公的年金等控除とは・計算式
公的年金等控除は年金収入を雑所得として課税する際の特別な控除。65歳以上は最低110万円・65歳未満は最低60万円から、年金額に応じて段階的に拡大します。給与所得における給与所得控除(最低55万円)に相当する「みなし経費」的な位置づけで、年金だけで生活する高齢者の税負担を抑えるための仕組みです。2020年改正で頭打ち195.5万円が導入され、年金収入1,000万円超は控除が固定化。さらに公的年金等以外の所得(給与・不動産・配当等)が1,000万円超の高所得者は控除が10万円減、2,000万円超は20万円減の減額調整が入ります。
【65歳以上・その他所得1,000万円以下】
〜330万:控除 110万円
330万〜410万:年金 × 25% + 27.5万
410万〜770万:年金 × 15% + 68.5万
770万〜1,000万:年金 × 5% + 145.5万
1,000万超:195.5万(頭打ち)
【65歳未満・その他所得1,000万円以下】
〜130万:控除 60万円
130万〜410万:年金 × 25% + 27.5万
410万〜770万:年金 × 15% + 68.5万
770万〜1,000万:年金 × 5% + 145.5万
1,000万超:195.5万(頭打ち)
雑所得 = 年金収入 − 公的年金等控除
例:65歳以上・年金200万円→控除110万→雑所得90万。基礎控除48万+社会保険料控除20万を引くと課税所得22万・所得税5%で約1.1万円。65歳以上・年金400万→控除127.5万→雑所得272.5万で税負担がやや重くなります。
年齢×年金額別の控除額・雑所得早見表
| 年齢 | 年金収入 | 控除額 | 雑所得 |
|---|---|---|---|
| 65歳以上 | 110万 | 110万 | 0円(非課税) |
| 65歳以上 | 200万 | 110万 | 90万円 |
| 65歳以上 | 300万 | 110万 | 190万円 |
| 65歳以上 | 400万 | 127.5万 | 272.5万円 |
| 65歳以上 | 600万 | 158.5万 | 441.5万円 |
| 65歳以上 | 1,000万 | 195.5万 | 804.5万円 |
| 65歳未満 | 60万 | 60万 | 0円(非課税) |
| 65歳未満 | 100万 | 60万 | 40万円 |
| 65歳未満 | 200万 | 77.5万 | 122.5万円 |
| 65歳未満 | 400万 | 127.5万 | 272.5万円 |
出典:国税庁 No.1600「公的年金等の課税関係」/所得税法第35条第2項・第3項
対象になる年金・ならない年金
公的年金等控除の対象は「公的年金等」に該当する年金収入です。老後の生活を支える性格を持つ年金が対象になり、生命保険会社の個人年金や、遺族年金・障害年金といった非課税年金は対象外となります。
| 対象(公的年金等) | 非対象 |
|---|---|
| 老齢基礎年金(国民年金) | 遺族年金(非課税) |
| 老齢厚生年金 | 障害年金(非課税) |
| 老齢共済年金・退職共済年金 | 寡婦年金(非課税) |
| 企業年金(確定給付・厚生年金基金) | 民間の個人年金保険(雑所得別枠) |
| 確定拠出年金(iDeCo・企業型DC)の年金受取 | 確定拠出年金の一時金受取(退職所得) |
| 国民年金基金 | 企業年金の一時金受取(退職所得) |
| 厚生年金基金の年金給付 | 厚生年金基金の一時金給付(退職所得) |
| 過去の勤務先からの外国年金(一定要件) | 個人年金保険の一時金受取(一時所得) |
遺族年金・障害年金は所得税法第9条第1項第3号により非課税。確定申告書にも記載不要。
高所得者の減額調整(2020年改正)
2020年(令和2年)分から、公的年金等以外の所得金額が高い人は公的年金等控除額が減額される仕組みが導入されました。年金以外に事業所得・不動産所得・給与所得・配当所得等が多い高所得者を対象にした課税強化です。
| 公的年金等以外の所得 | 控除額の調整 |
|---|---|
| 1,000万円以下 | 調整なし(通常の控除額) |
| 1,000万円超〜2,000万円以下 | 控除額から 10万円 減額 |
| 2,000万円超 | 控除額から 20万円 減額 |
例:65歳以上・年金200万+不動産所得1,200万の人 → 通常の控除110万から10万減の100万に。雑所得は100万に増え、所得税・住民税が数万円上振れします。年金以外の所得が多い富裕層・不動産オーナー・現役社長型のリタイア層は特に注意。
iDeCo・退職金との併用戦略
iDeCo・企業型DC・小規模企業共済の受取方法は「年金」「一時金」「併用」の3択で、選び方で税負担が大きく変わります。年金受取は公的年金等控除、一時金受取は退職所得控除という別枠の控除を使えるのがポイント。両方の控除枠を最大限使うために、一部を一時金・残りを年金で受け取る「併用」が節税上有利になるケースが多くあります。
| 受取方法 | 適用控除 | 特徴 |
|---|---|---|
| 全額一時金 | 退職所得控除(勤続年数×40万〜70万) | 会社の退職金と合算で枠を超えると重課税 |
| 全額年金 | 公的年金等控除(最低110万) | 公的年金と合算で控除枠内なら非課税可 |
| 一時金+年金の併用 | 両方の控除枠 | 控除枠を分散でき節税上最も柔軟 |
例:会社の退職金1,500万+iDeCo500万を全額一時金で受け取ると退職所得控除超過で数十万円の課税。iDeCo分を年金化して10年で50万×10回に分割すれば、公的年金と合わせて110万枠内に収まり実質非課税にできる場合があります。ただしiDeCoの一時金受取と会社の退職金の受取タイミングを離す「5年ルール」等の制約に注意(詳細は退職金税金計算ツールで試算可)。
扶養親族等申告書と源泉徴収
年金からは所得税が「源泉徴収」で天引きされます。天引き税率は扶養親族等申告書を提出しているかで大きく変わり、未提出だと不利な高税率が適用されます。
| 提出状況 | 源泉徴収税率 | 備考 |
|---|---|---|
| 扶養親族等申告書 提出済 | 5.105%(復興特別込) | 各種控除相当を差し引いた額に対して |
| 未提出 | 10.21%(復興特別込) | 控除なしで一律課税 |
日本年金機構から毎年10月頃に扶養親族等申告書が郵送されます。提出しないと源泉徴収税率が倍近くに跳ね上がり、還付を受けるまで手取りが減少。ただし未提出でも確定申告すれば精算されるため、税額自体が損になるわけではありません(キャッシュフローの問題)。日本年金機構の公式サイトから電子申告も可能です。
シーン別の使い方
年金受給者の生活パターン別に、公的年金等控除の適用と実際の税負担を可視化。夫婦世帯なら夫と妻でそれぞれ別に年金雑所得を計算し、最後に世帯合算で家計負担を把握します。年金+α(給与・不動産・配当等)の複合パターンは高所得者減額の対象になりやすいため、税務署か税理士への事前相談が推奨されます。
年金だけで暮らす65歳以上
年金200万・65歳以上→控除110万→雑所得90万。基礎控除48万・社会保険料控除20万で課税所得22万・所得税1.1万円。住民税と合わせて年3〜5万円の負担で済む。夫婦2人分で年10万円弱の税負担。
年金+パート収入
年金180万+パート80万の65歳以上→年金雑所得70万+給与所得25万=合計95万。基礎控除48万で課税所得47万・所得税2.4万円。「働きながら年金」の税負担モデル。
年金+不動産オーナー
年金250万+不動産所得1,200万の65歳以上→高所得者減額で控除100万に。雑所得150万+不動産1,200万で高税率適用。減額調整の直撃を受けるパターン。
65歳未満の障害・遺族受給者
遺族年金・障害年金は非課税のため公的年金等控除は不要。老齢年金だけを課税対象として集計。60歳台前半に繰上げ受給した場合も同じ扱い。
iDeCo年金受取者
iDeCoを10年分割で年60万受取+公的年金150万→合計年金収入210万・65歳以上→控除110万→雑所得100万。iDeCo単体でも公的年金等控除の対象。
企業年金・厚生年金基金
企業年金150万+公的年金100万=250万・65歳以上→控除110万→雑所得140万。企業年金も公的年金等に含まれるため合算集計する。
よくある勘違い
1. 「年金110万まで非課税」は65歳以上限定
65歳未満は控除60万円までしか非課税にならない。60〜64歳で早期退職後に年金を繰上げ受給した人は要注意。60歳台前半の特別支給老齢厚生年金も同じルール。
2. 遺族年金・障害年金は集計に含めない
遺族年金・障害年金は非課税のため公的年金等控除の計算に含めない。所得税・住民税・国保料の算定でも所得ゼロ扱い。確定申告不要(他所得あれば要)。
3. iDeCo一時金は退職所得控除の枠
iDeCoを一時金で受け取る場合は退職所得控除(勤続年数×40万〜70万)が適用。年金受取(公的年金等控除)と混同しない。会社の退職金と時期をずらす「5年ルール」で控除枠を最大化可能。
4. 個人年金保険は「雑所得(公的年金等以外)」
生命保険会社の個人年金保険は「公的年金等以外の雑所得」として別枠計算。必要経費(払込保険料)を差し引いた額が雑所得になる。公的年金等控除は使えない。
5. 扶養親族等申告書は毎年提出が必要
10月頃に日本年金機構から郵送される申告書は毎年提出必須。未提出だと源泉徴収税率が10.21%に上がり手取り減少。控除自体は確定申告で精算できるが、キャッシュフロー悪化。
6. 年金1,000万超は控除が固定195.5万
年金収入1,000万円超は控除が頭打ち195.5万円で固定。それ以上年金が増えても控除は増えない。厚生年金基金や企業年金の高額受給者は税負担が急増する。
7. 「他の所得」に給与所得も含まれる
高所得者減額の判定における「公的年金等以外の所得」には、給与所得・事業所得・不動産所得・配当所得すべてが含まれる。年金+高給与のシニア役員は減額調整の対象になりやすい。役員退任後もインセンティブ報酬が残るケースは特に注意。
8. 65歳到達年の切替を見落とす
65歳到達年度は「12月31日時点の年齢」で判定するが、日本年金機構の源泉徴収は誕生月から自動切替される。確定申告と源泉徴収の年齢判定が微妙にずれる可能性がある。差分は確定申告で精算されるため最終税額は正しくなるが、月次のキャッシュフローは要注意。
9. 年金+確定申告不要制度の落とし穴
年金400万以下+他所得20万以下で確定申告不要だが、医療費控除・寄附金控除・住宅ローン控除で還付を受けるには申告必須。「不要制度」を使って還付を取り逃す高齢者が多い。年間5〜10万円の還付機会損失もあり得る。
参考リンク・公的資料
- 国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係 — 控除計算の公式基準
- 国税庁 No.1610 個人年金の課税関係 — 民間個人年金との違い
- 国税庁 No.1420 退職金を受け取った場合 — iDeCo一時金・退職所得控除
- 日本年金機構 — 源泉徴収票・扶養親族等申告書
- 日本年金機構 扶養親族等申告書 — 提出方法と効果
- 厚生労働省 年金制度 — 制度全体像
- iDeCo公式サイト — 受取時の税制
- e-Tax — 確定申告・還付申告
- GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人) — 年金運用状況
- 金融広報中央委員会 — 老後のマネープラン
本ツールは公的年金等控除・雑所得の概算計算です。実際の税額は基礎控除・社会保険料控除・扶養控除・配偶者控除・医療費控除・住宅ローン控除等の各種所得控除・税額控除と、住民税・国民健康保険料・介護保険料の計算と密接に関わります。特に高所得者減額調整は他所得の集計次第で結果が変わるため、詳細は税務署・税理士へご相談ください。iDeCo・企業年金・退職金の受取タイミングは「5年ルール」等の複雑な論点があり、受取前に必ず金融機関・税理士へ相談することを推奨します。国税庁・日本年金機構の公表資料と本ツールの計算結果に差異がある場合は公式資料が優先されます。
よくある質問(FAQ)
年金200万円なら所得税はいくら?
65歳以上なら控除110万→雑所得90万。基礎控除48万+社会保険料控除(国保・介護保険)20万を差し引くと課税所得22万で所得税5%=1.1万円。住民税10%で2.2万円。合計約3.3万円/年。65歳未満なら控除77.5万→雑所得122.5万でやや税負担増。
扶養親族等申告書とは?提出しないとどうなる?
年金からの源泉徴収税率を決める申告書。提出済なら5.105%、未提出なら10.21%と倍近い差。年金180万×10%=18万源泉徴収されると手取り月1.5万減。ただし確定申告で精算可能。10月頃に日本年金機構から郵送されるので必ず返送。
iDeCo一時金と公的年金の関係は?
iDeCoの一時金受取は退職所得控除、年金受取は公的年金等控除と別枠。会社の退職金と重複するiDeCo一時金は控除枠を圧迫するため、iDeCoを年金化して10年分割にすると公的年金と合算し公的年金等控除枠内に収められる場合あり。5年ルール活用も含め税理士相談推奨。
遺族年金・障害年金にも控除は必要?
遺族年金・障害年金は所得税法第9条により非課税のため控除計算は不要。確定申告書にも記載しない。老齢年金だけを集計対象にする。老齢年金+遺族年金の受給者は老齢分だけで課税判定。
年金250万円の人の手取りは?
65歳以上・年金250万→控除110万→雑所得140万。基礎控除48万+国保介護保険30万+医療費控除等で課税所得60万前後。所得税5%=3万+住民税10%=6万=計9万。手取りは241万前後(月20万)。介護保険料の天引きにも注意。
米国SS(社会保障年金)は対象?
外国年金も公的年金等控除対象となる場合あり。日米社会保障協定の適用や「公的年金等」該当性の判定で個別に確認が必要。米国SSはドル受取のため為替換算+外国税額控除も併用検討。国税庁または国際税務に強い税理士へ相談推奨。
企業年金も控除対象?
確定給付企業年金・厚生年金基金・確定拠出年金の年金受取・国民年金基金はすべて公的年金等控除の対象。老齢基礎年金+老齢厚生年金+企業年金+iDeCo年金を合算して1つの「年金収入」として控除計算。企業年金の一時金受取は退職所得別枠。
年金と給与の両方ある場合の計算は?
65歳以上・年金180万+パート80万→年金雑所得70万+給与所得25万=合計95万。基礎控除48万で課税所得47万・所得税2.4万+住民税4.7万=計7.1万。年金と給与は控除・所得計算がそれぞれ別で、最後に合算して所得税・住民税を算定。
高所得者減額の10万円減はいつ発動する?
「公的年金等以外の所得」が1,000万円超で控除10万減、2,000万円超で20万減。給与・事業・不動産・配当がここに含まれる。年金250万+不動産所得1,200万の人は控除110万→100万に減額。役員報酬+年金の現役シニアも要注意。
公的年金等控除と基礎控除は併用可?
併用可能。年金雑所得を計算する時点で公的年金等控除を適用し、その後の課税所得計算時に基礎控除48万を追加控除。医療費控除・社会保険料控除・生命保険料控除等の他の所得控除もすべて併用可。
65歳到達年度の控除はどう計算?
その年の12月31日時点の年齢で判定。11月に65歳になった人はその年から「65歳以上」の控除110万が適用。1月生まれ・12月生まれで大きな差は生まれないが、境界年度は源泉徴収と確定申告の突合で調整。
年金の確定申告は必要?
年金収入400万円以下かつ他所得20万円以下なら「確定申告不要制度」で申告義務なし。ただし医療費控除・寄附金控除(ふるさと納税)で還付を受けたい場合は自主申告。住民税は別途申告必要な場合あり(自治体による)。
65歳になった年の控除はどうなる?
その年の12月31日時点で65歳ならその年から控除110万円が適用される。5月生まれで11月に65歳になる人はその年全体で110万控除。ただし源泉徴収は誕生月から自動切替されるため、月次と年次で微妙にずれる可能性があり、確定申告で最終精算されます。
加給年金・振替加算は控除対象?
加給年金(配偶者加給)・振替加算も公的年金等控除の対象。老齢厚生年金の一部として扱われ、通常の年金と合算して控除計算。加給年金は年約39万円(子加算含む)、振替加算は年約1〜22万円。年金額に上乗せして雑所得を算定します。