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個人再生 計算ツール|最低弁済額・可処分所得・清算価値の3基準と住宅ローン特則の実務ガイド

民事再生法に基づく個人再生後の弁済額を借金総額から即算出。最低弁済額基準・可処分所得の2年分基準・清算価値保障の3つの基準を解説し、小規模個人再生と給与所得者等再生の使い分け、住宅資金特別条項(住宅ローン特則)で自宅を残す方法、弁護士・司法書士費用の相場、自己破産・任意整理との比較まで、債務整理を検討する方向けの実務ガイド。

最終更新:2026-08-08/監修:計算ツールズ編集部

個人再生ツール

個人再生の概要

個人再生は民事再生法(平成11年法律第225号)に基づく債務整理手続の一種。裁判所を通じて借金を大幅に減額し、原則3年(最長5年)で分割弁済することで残債務が免除される制度です。1999年の民事再生法制定時に法人向けに設計された後、2001年施行の改正で個人向けの「小規模個人再生」「給与所得者等再生」が創設されました。

最大の特徴:住宅を残せる

自己破産と異なり、住宅資金特別条項を利用することでマイホームを手放さずに他の借金を減額できます。住宅ローンはそのまま従前通り返済(またはリスケジュール)し、それ以外のカードローン・消費者金融・信販会社・銀行フリーローン・保証債務等を1/5〜1/10に圧縮する仕組みです。

利用要件

  • 個人であること(法人は民事再生手続)
  • 住宅ローンを除く債務総額が5,000万円以下
  • 将来にわたり継続的または反復して収入を得る見込みがあること
  • 返済不能に陥るおそれ(支払不能のおそれ)があること

公務員・会社員・自営業・年金受給者・パート・アルバイトいずれも利用可能。ただし無職・収入見込みがない場合は自己破産の検討となります。

最低弁済額の計算式

債務総額別の法定最低弁済額(民事再生法第231条第2項)

100万円未満 → 全額
100万円以上 500万円未満 → 100万円
500万円以上 1,500万円未満 → 債務総額の1/5
1,500万円以上 3,000万円未満 → 300万円
3,000万円以上 5,000万円以下 → 債務総額の1/10

債務額別の弁済額早見

債務総額最低弁済額減額率3年月額5年月額
100万円100万円0%2.8万円1.7万円
200万円100万円50%2.8万円1.7万円
300万円100万円67%2.8万円1.7万円
500万円100万円80%2.8万円1.7万円
700万円140万円80%3.9万円2.4万円
1,000万円200万円80%5.6万円3.4万円
1,500万円300万円80%8.4万円5.0万円
2,000万円300万円85%8.4万円5.0万円
3,000万円300万円90%8.4万円5.0万円
4,000万円400万円90%11.2万円6.7万円
5,000万円500万円90%14.0万円8.4万円

3年月額は「最低弁済額÷36回」、5年月額は「÷60回」の目安です。ただし後述する清算価値保障・可処分所得基準を上回る額が実際の弁済額となる場合があります。

3つの弁済基準

個人再生の弁済額は、以下の3基準のうち最も高い金額に決定されます。

1. 最低弁済額基準

民事再生法第231条第2項に定められた法定最低額(上記早見表)。債務総額を基に自動的に決まる基本ラインです。

2. 清算価値保障の原則

もし自己破産した場合に債権者へ配当される財産額(清算価値)を下回る弁済計画は認可されない、というルール(民事再生法第174条第2項)。不動産・車・預貯金・生命保険解約返戻金・退職金見込額・株式などの資産合計が清算価値となります。

資産清算価値算入
預貯金残高全額
不動産(住宅以外)時価−抵当権残高
自宅(住宅ローン特則使用時)時価−住宅ローン残高がプラスなら算入
自動車(所有権留保なし)時価(初度登録7年超は0円扱いのケース多い)
生命保険解約返戻金20万円超なら全額
退職金見込額(在職中)1/8を算入(近く退職なら1/4)
有価証券・投資信託時価全額
貸付金・売掛金回収可能額

3. 可処分所得の2年分(給与所得者等再生のみ)

可処分所得 = 手取り年収 − (所得税+住民税+社会保険料) − 政令で定める生活費(1年分)

給与所得者等再生を選ぶ場合のみ、可処分所得の2年分を弁済しなければなりません。この計算は民事再生法施行規則第32条・別表で世帯構成・居住地区別に細かく定められ、単身者で最低生活費は年130〜160万円程度が目安です。可処分所得基準が高くなりがちなため、給与所得者でも小規模個人再生を選ぶケースが実務では約9割を占めています。

小規模個人再生と給与所得者等再生

項目小規模個人再生給与所得者等再生
対象個人事業主・会社員・年金受給者等広く可能会社員・公務員等(給与所得者)に限定
収入要件継続的・反復的な収入見込み安定した給与収入+変動幅が小さい
債権者の同意必要(不同意債権者が過半数or債権額1/2超で不認可)不要
弁済額の基準最低弁済額 or 清算価値のうち高い方+可処分所得2年分の3つ比較で最高額
弁済額の傾向低くなりやすい高くなりやすい
再申立て制限なし7年間再利用不可(前回が給与再生・免責・自己破産)
実務での選択率約90%約10%

大手消費者金融・銀行系は不同意投票をほぼ出さないため、実務では小規模個人再生が第一選択。同意リスクが高い債権者(取引先・親族・保証会社等)が多い場合や、可処分所得が低く弁済額メリットが出る場合に給与所得者等再生を選択します。

住宅ローン特則(住宅資金特別条項)

民事再生法第196条以下に定められた住宅資金特別条項を利用すると、住宅ローンだけは減額せずそのまま従前通り(または一部リスケジュール)返済することで、自宅を残せます。

利用要件

  • 債務者本人が所有し居住する家屋(2戸以上ある場合は主として居住する1戸)
  • 住宅の建設・購入・改良資金の借入(住宅ローン)であること
  • 住宅ローンの抵当権が住宅に設定されていること(2番抵当・追加担保があると要件充足困難)
  • 保証会社の代位弁済から6か月以内の申立て

4つの返済プラン

そのまま型(そのまま弁済型)

住宅ローンの当初契約通りに返済継続。滞納なく返済中の場合の標準形。

期限利益回復型

期限の利益喪失(代位弁済)後に、遅延分を再生計画期間内に分割で追納し、以後は当初契約通り返済。

リスケジュール型

返済期間を最長10年延長(70歳超えないこと)、または一定期間の毎月返済額を減額。ローン総額は減らない。

元本猶予型

再生計画期間中(3〜5年)は住宅ローンの元本返済を猶予し利息のみ支払い、以後にリスケジュール。厳しい経済状況向け。

ただし、不動産に住宅ローン以外の抵当権(事業資金・カードローン・税金差押え等)があると住宅ローン特則は使えません。ペアローン・連帯債務型は共有者側も再生手続に参加するなど設計が複雑化します。

手続の流れ・期間

個人再生の申立てから終結までは通常6か月〜1年を要します。

時期ステップ内容
0〜1か月弁護士相談・受任通知債権調査、受任通知発送で取立て停止
1〜3か月債権調査・書類収集債権額確定、資産・収入証明書類収集
3〜4か月申立て地方裁判所へ再生手続開始申立て
4〜5か月開始決定・個人再生委員選任裁判所が手続開始を決定、東京地裁等では個人再生委員が選任
5〜6か月債権届出・認否債権者からの届出、金額の認否
6〜8か月再生計画案提出弁済額・期間・支払方法を記載した計画案を提出
8〜10か月債権者集会・書面決議小規模再生は書面決議、給与再生は同意不要
10〜12か月認可決定・確定裁判所が再生計画を認可、官報公告
認可後弁済開始原則3年(最長5年)で分割弁済

受任通知発送後は債権者からの取立て・督促が停止され、生活が落ち着いた状態で手続を進められます。この間は返済も停止するため、その分を再生後の弁済原資として積立てるのが実務です(通称「トレーニング積立」)。

費用・弁護士報酬相場

費用項目金額目安備考
裁判所予納金(申立手数料等)1〜3万円官報公告費用13,000円程度含む
個人再生委員報酬15〜25万円東京地裁等で選任される場合。分割納付可
弁護士費用(住宅なし)30〜50万円着手金+報酬。分割払対応が一般的
弁護士費用(住宅ローン特則あり)40〜60万円特則付加で+10-15万円
司法書士費用30〜40万円簡裁代理権のみ。地方裁判所での代理はできない
合計目安45〜85万円手続開始から認可決定まで

弁護士費用は多くの事務所が受任時から分割払い(6〜12回)に対応。受任通知で返済が止まる期間中に積立てることで、生活を圧迫せず支払えます。法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助を利用すれば立替払い(月5,000-10,000円分納)も可能です。

他の債務整理との比較

項目任意整理個人再生自己破産
減額幅将来利息カットのみ(元本残存)1/5〜1/10圧縮原則全額免除
返済期間3〜5年3〜5年免除のため返済なし
住宅維持可能住宅ローン特則で可能原則不可(処分)
職業制限なしなし手続中に一部制限(警備員・保険外交員等)
官報掲載なしありあり
信用情報登録5年5-10年5-10年
手続費用20-40万円45-85万円30-60万円
免責不許可事由なし基本なし浪費・ギャンブル等で免責不許可の可能性

選択の目安: 借金300万円以下+安定収入なら任意整理、住宅を残しつつ大幅減額したいなら個人再生、収入不安定・返済見込みなしなら自己破産。免責不許可事由がある場合は個人再生の方が確実です。

デメリット・注意点

  • 信用情報(ブラックリスト)への登録 — CIC/JICC/KSCの信用情報機関に「異動」情報として5〜10年登録。新規のカード・ローン・住宅ローン契約、賃貸保証審査などで影響。
  • 官報公告 — 政府発行の官報に住所・氏名が掲載。ヤミ金業者が官報から名簿化する事例あり、DM・営業電話に注意。
  • 連帯保証人への請求 — 保証人の主債務は減額されず、保証人に一括請求が及ぶ。保証人がいる場合は事前相談・別途対応が必要。
  • 再生計画認可後の返済 — 認可後の弁済を2か月以上滞納すると再生計画が取消され、減額前の債務が復活する可能性。ハードシップ免責は例外的。
  • 資産の処分 — 住宅ローン特則を使わない住宅、投資用不動産、株式、高額な動産は清算価値として弁済額を押し上げる要因に。
  • 手続中の借入禁止 — 申立て後の新規借入・クレジット利用は原則不可。生活費の管理計画を事前に立てる必要。
  • 過払い金の調査 — 2010年6月以前の消費者金融取引には過払い金が発生している可能性。個人再生前に返還請求すべきか弁護士と相談。

参考文献・公的資料

個人再生・債務整理に関する正確な情報は、以下の公的機関・専門機関の資料を参照してください。

※本ページの計算結果および解説は民事再生法の基本ルールに基づく参考情報です。実際の弁済額・手続適否・提出書類・裁判所運用は事案の個別事情、居住地の裁判所運用、保有資産の評価、可処分所得の細部計算、債権者構成、住宅ローン契約内容によって変動します。手続の可否・最適な選択肢の判断は、弁護士(全国の弁護士会・法テラス経由)または認定司法書士に必ず個別相談してください。無料相談を実施している法律事務所や法テラス(日本司法支援センター)も活用できます。

よくある質問(FAQ)

住宅は残せる?

住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を利用することで、マイホームを手放さずに他の借金を減額できます。要件は債務者本人所有・居住用の1戸、住宅の抵当権が住宅ローンのみ、代位弁済から6か月以内の申立てなど。住宅ローン以外の抵当権(事業資金・税金差押え)があると利用不可なので事前確認が必須です。

小規模個人再生と給与所得者等再生の違いは?

小規模個人再生は債権者の同意(過半数の消極的同意)が必要ですが弁済額が低くなりやすい。給与所得者等再生は債権者同意不要ですが「可処分所得の2年分」も基準に加わるため弁済額が高くなりやすい。実務では約9割が小規模個人再生を選択しています。

信用情報の影響は何年?

CIC(クレジット・信販系)は再生手続開始から5年間、JICC(消費者金融系)は5年、KSC(銀行系)は10年間「異動」情報として登録されます。この期間中は新規クレジットカード発行、ローン契約、住宅ローン、賃貸保証審査、携帯電話の分割購入等で影響が出ます。

借金の一部だけ整理できる?

個人再生は全債務が対象で、一部債権者だけ除外することはできません(住宅ローン特則を除く)。「保証人に迷惑をかけたくないから連帯保証付きの借金は除外」といった選択的整理は不可。任意整理なら債権者選択が可能ですが、平等原則により多くの弁護士は推奨しません。

借金の総額に何が含まれる?

クレジットカードキャッシング・消費者金融・銀行カードローン・信販会社ローン・自動車ローン(所有権留保付き)・奨学金・親族からの借入・保証債務・買掛金・未払税金・未払家賃等ほぼ全ての債務。住宅ローンは特則利用時のみ別枠。税金・養育費・罰金・不法行為債務(悪意)は再生後も免責されません。

再生後に返済できなくなったら?

2か月以上の滞納で再生計画取消し→減額前の債務復活のリスク。ただしハードシップ免責(民事再生法第235条)という救済制度があり、計画弁済の3/4以上を履行し、病気・失業・災害等の責めなき事情で残額弁済困難な場合に裁判所が免責を認めます。適用例は少数ですが最後の砦。

個人事業主でも利用できる?

可能です。個人事業主は小規模個人再生で申立て。ただし事業継続に必要な仕入先・従業員給与も債務として組み込む必要があり、事業用資産(店舗・機械・車両)は清算価値算入。事業性資金の借入が多い場合は個人版の民事再生手続を検討することもあります。

ギャンブル・浪費で作った借金でも利用可能?

可能です。個人再生には自己破産のような免責不許可事由がありません。ギャンブル・浪費・投資失敗が原因でも減額対象。この点で自己破産より柔軟です。ただし将来的な返済継続能力(継続的収入)は必要条件で、生活再建の意欲・家計改善策も裁判所に説明します。

弁護士費用はどれくらい?

住宅なしで30〜50万円、住宅ローン特則付きで40〜60万円が相場。裁判所予納金・個人再生委員報酬(15-25万円)を含めた総額は45〜85万円程度。多くの事務所が受任時から6〜12回の分割払いに対応。法テラスの民事法律扶助を利用すれば立替払い(月5,000-10,000円分納)も可能です。

会社にバレる?

会社の借入(社内融資・共済会)がなければ原則バレません。給与差押えは受任通知で停止するため、給与から天引きされることもなし。ただし官報公告があるため、金融関係の職場や信用調査業務の職場では発覚リスクゼロではありません。心配な場合は事前に弁護士に相談を。

連帯保証人がいる場合はどうなる?

主債務者(あなた)の減額決定は保証人には及ばず、保証人には一括請求が行きます。親・配偶者・友人が保証人の場合、その方も同時に債務整理を検討する必要が生じることも。事前に保証人と相談し、家族で最適な整理方法を弁護士と協議してください。

過払い金がある場合は?

2010年6月18日以前の消費者金融取引には利息制限法超過利息(過払い金)が発生している可能性。個人再生申立て前に過払い金返還請求すべきかを弁護士が判断します。過払い金で債務が消滅すれば個人再生自体が不要になるケースも。まず借入履歴の開示から着手します。