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ネジ切り旋盤パス数切削

ネジ切りパス数 計算ツール|旋盤G76サイクル・等量/等面積切込の完全ガイド

旋盤ネジ切り(G32/G76サイクル)のねじ山高さと推奨パス数を、ピッチ・被削材・切込方式から自動算出。旋盤ネジ切りは1回で全ねじ山を切ることは不可能で、複数パスに分けた段階的切込が必須。ISO 68メートルねじ基本山形等量切込と等面積切込の使い分け、CNCプログラム作成、汎用旋盤の切込計画、工具寿命2-3倍改善の実務ノウハウを、加工現場・工程設計者に向けて解説します。

最終更新:2026-07-30/監修:計算ツールズ編集部

ネジ切りパス数(旋盤)ツール

計算式と前提

ねじ山理論高さ

h = P × 0.6134 (ISO 68 メートルねじ基本山形)

Pはピッチ(mm)。ISO 68では基本三角山高さH = P × cos30° × 2 = P × 0.866、実効山高さh = 5H/8 = P × 0.5413が理論値ですが、実加工では丸め上の余裕を含めてh = P × 0.6134が広く使われます。Pitch 1.5mmなら h ≒ 0.92mm、Pitch 2.0mmなら h ≒ 1.23mmです。

等量切込

各パス切込 = h ÷ n

全パスで同じ切込量を割り当てる方式。プログラム簡易で初心者向けですが、後段パスほど切りくず断面積が大きくなり、工具負荷が均一でない欠点があります。汎用旋盤の手動操作でよく使われます。

等面積切込(推奨)

k回目切込深さ dk = h × √(k/n) − h × √((k-1)/n)

各パスの切りくず断面積を一定にする方式。1パス目 h×√(1/n)、2パス目 h×√(2/n)-h×√(1/n)、...、n パス目までを計算。工具負荷が均一化され、工具寿命が2-3倍改善する現代CNCの標準方式です。

ピッチと理論ねじ山高さ

ISO並目・細目のピッチ別ねじ山高さと、代表的ねじ呼び。JIS B 0205-4 / ISO 261 より。

ピッチ P(mm)山高さ h(mm)並目ねじ呼び細目ねじ呼び
0.350.21M2, M2.2
0.50.31M3M6, M8
0.70.43M4M8, M10
0.80.49M5M10, M12
1.00.61M6M12, M14, M16
1.250.77M8M14, M16
1.50.92M10, M12M18, M20, M22, M24
1.751.07M12
2.01.23M14, M16M27, M30
2.51.53M18, M20M36, M39
3.01.84M24, M27M45, M48
3.52.15M30, M33
4.02.45M36, M39

材料別 推奨パス数

被削材の硬さ・粘り・熱伝導で必要なパス数が変わります。工具メーカー(サンドビック・京セラ・三菱マテリアル)推奨値の中間値を採用しています。

被削材推奨パス数(P=1.5)特徴
アルミ(A5052/A6061)6-8切削性良好、切りくず処理注意
真鍮(C3604)6-8快削性、切りくず短小
炭素鋼(S45C/SS400)10-12標準的、面粗度出しやすい
合金鋼(SCM435/SNCM)12-15硬さで負荷大、多パス必要
ステンレス(SUS304/316)12-18加工硬化、熱伝導低、多パス+潤滑必須
ステンレス(SUS440C)15-20高硬度で工具負荷最大
チタン(Ti-6Al-4V)15-20熱伝導極低、化学反応性高
耐熱合金(インコネル)18-25最難削、超硬コート+極低速切削
樹脂(POM/PA)4-6低負荷、切りくず処理注意

大ピッチ(P>2.0)ではさらに2-3パス追加、細ピッチ(P<1.0)ではやや少なめでも可。工具メーカーカタログの推奨値を必ず確認します。

等量切込と等面積切込

等量切込(Constant Depth)

全パスで同じ切込量。プログラム簡易で汎用旋盤・初心者向け。ただし後段パスほど切りくず断面積が2倍・3倍と増え、工具刃先負荷が不均一→摩耗集中→短命化の欠点があります。難削材では欠損リスクも。

等面積切込(Constant Area)

各パスの切りくず断面積を一定にする方式。1パス目が最大切込で以降徐々に減少。工具負荷が均一化し、寿命2-3倍改善+仕上げ面粗度向上の効果あり。CNC旋盤の標準方式で、G76サイクル指令で自動化されます。

ラジアル(垂直)切込

工具を主軸に垂直にX方向のみ切込む方式。両側刃で切削するため負荷大・熱発生大。細ピッチ・低負荷向け。

フランク(斜め)切込

ねじ山フランク角に沿ってX+Z合成方向に切込む方式。片側刃のみ切削で負荷分散・切りくず排出改善。大ピッチ・難削材で推奨されます。

ジグザグ切込

フランク切込の応用で、左右交互に切込を分配。両フランクを均一に消耗させ工具寿命最大化。CNCの高機能サイクル(G76 P タイプ指定)で対応。

最終スプリング切込

最終パス以降、切込0mmで数回パスを追加する方式。工具・機械のたわみを戻し、ねじ山寸法精度と面粗度を確保します。仕上げの定番テクニック。

G76サイクル指令の解説(FANUC系)

CNC旋盤ネジ切りの主流である複合ネジ切りサイクル指令。FANUC 30i/0i系での標準構文を示します。

G76 P__ Q__ R__;
G76 X__ Z__ R__ P__ Q__ F__;

1行目:仕上げ回数・面取り量・角度、2行目:最終X座標・Z座標・テーパー量・山高さ・1パス目切込・ピッチ、を指定。パス数と切込配分はNC制御装置が自動計算するため、加工者は目標値のみ指定すれば済みます。

G32(単純ネジ切り)

1パスずつ手動で切込を指定する原始的指令。汎用性はあるが、パス数分の指令記述が必要で長いプログラムに。教育用または特殊ねじで使用。

G92(単純ネジ切りサイクル)

1パスの往復動作を1指令にまとめた基本サイクル。パス数分繰り返し記述するのが基本で、G76より原始的ですが直感的です。

G76(複合ネジ切りサイクル)

最も高機能。2行の指令だけで全パスを自動計算。等面積切込・仕上げ回数・面取り量・切込方向(片フランク/両フランク)をパラメータで指定できます。現代CNC旋盤の標準。

OSP(オークマ)・MSX(森精機)

各メーカー独自のカスタムサイクルもあります。G76相当機能に加え、切りくず処理・スパーク切込などの拡張機能を持つ場合が。マシンマニュアル参照が必須です。

ネジ切り工具と刃物の選定

ネジ切り工具はスローアウェイチップ(SIC)方式が現代CNC旋盤の主流。用途・ピッチ・材料で適切な工具を選びます。

チップ形状特徴推奨用途
フルプロフィールチップ山形全体を切削、精度高い1ピッチ専用、大量生産
VプロフィールチップV形刃で複数ピッチ対応汎用・多品種少量
マルチトゥースチップ複数刃で1パス多切込大量生産・時短
ロー式ねじ切りチェイサーくし刃状で1動作完結汎用旋盤・仕上げ用
ダイス(内ねじ切り)タップ状で片方向切削小径・タップより高精度

コーティングはPVD-TiN・TiAlN・DLC等が主流。難削材(SUS/チタン/インコネル)にはTiAlN+特殊表面処理が推奨、アルミ・銅にはDLC(非親和性)が有効です。

業界・現場での使い方

CNC旋盤ネジ切り(量産)

G76サイクルでのパス数・切込指定。工程書に「G76 P020060 Q100 R150」形式でパラメータ記載。段取り時に材料・ピッチが変わっても、パス数入替えのみで対応可能。

汎用旋盤(単品加工・治具)

手動送りでのねじ切り時、パス表を工程書に添付。ハンドル操作での切込量を「0.20→0.15→0.10→0.05→0.03」のように事前計画。試作・治具製作で活用します。

多品種少量生産

ピッチ・材料の組合わせが多岐にわたる現場で、パス表を即座に参照。特急案件でも段取り時間短縮に貢献。工程管理担当者と機械オペレータの共通認識用資料に。

金型・治具部品

M18-M48程度の大ピッチねじが多く、パス数15-25の長サイクルに。等面積切込での寿命改善効果が最も大きい領域です。

配管継手(パイプねじ)

Rc/PT/G等のテーパーねじや平行ねじ。G76のR指令でテーパー量指定し1サイクルで加工完了。ISO 228・JIS B 0202/0203規格対応。

耐熱合金部品(航空・発電)

インコネル・ワスパロイ等の最難削材のねじ切り。パス数25以上+等面積+極低速+超硬コート工具。工具単価が高いため、寿命最大化が経営指標に直結します。

よくある間違い・注意点

  • 材料関係なくパス数一定 — アルミなら6パスで済むところをSUS並で15パス→加工時間3倍。または、SUSをアルミ並で6パス→工具欠損・面粗度不良。被削材別のパス数選定が必須です。
  • 等量切込のみで難削材加工 — SUS・チタンで等量切込を使うと後段パスの負荷集中で工具欠損リスク大。等面積切込採用でリスク大幅低減できます。
  • 最終パスで大切込 — 仕上げは0.05mm以下の微切込+スプリング切込に。最終パスで大切込するとねじ山面粗度悪化・寸法精度不良。
  • G76指令の1パス目切込を過大に — 1パス目切込は理論値以内(等面積で h×√(1/n))が上限。これを超えると工具欠損の直接原因。CNCが自動計算する場合はパラメータ確認します。
  • 切削油量不足で難削材加工 — SUS・チタン・インコネルは切削油大量投入が必須。油量不足で凝着・熱膨張・工具短命の三重苦。
  • 工具刃先角度と山角度の不一致 — メートル並目60°、Whitworth 55°、UN 60°、パイプNPT 60°など。指令ピッチだけでなく刃先角度も規格に合わせる必要があります。
  • 下穴・逃げ溝(アンダーカット)の欠落 — おねじ切りではワーク端に逃げ溝を掘っておかないと工具退避時にねじ山を傷つけます。ねじ切り前工程での準備が必要です。

関連する規格・法令

  • JIS B 0205-1〜4 メートルねじ ― メートルねじ(並目・細目)の呼び径・ピッチ・基本山形の日本産業規格。ねじ切り加工の根本規格。
  • ISO 68-1 ISO general purpose screw threads-Basic profile ― メートルねじの基本山形の国際規格。JIS B 0205の元。
  • ISO 261 ISO general purpose metric screw threads-General plan ― メートルねじの呼び径・ピッチの標準組合わせ。
  • JIS B 0202 管用平行ねじ / JIS B 0203 管用テーパねじ ― パイプねじの規格。Rc/Rp/PT/PS等の記号と寸法。
  • ISO 228 パイプ用平行ねじ ― G規格の国際標準。JIS B 0202の元。
  • ANSI/ASME B1.1 Unified Inch Screw Threads ― 米国規格のUN・UNC・UNFねじ。北米向け輸出案件で参照。
  • JIS B 0209 メートル細目ねじの許容限界寸法及び公差 ― ねじ精度等級(6H/6g等)の規定。ねじゲージ検査の根拠。

参考文献・公的資料

ねじ規格・切削理論・CNC加工の詳細は、以下の公的機関・業界団体の資料を参照してください。

※本ページの計算値はISO 68メートルねじ基本山形の理論値および工具メーカー推奨値の中間値です。実際の加工条件は、被削材の切削性データ、使用工具(コーティング・チップ形状)、機械剛性、CNC制御装置の仕様で変動します。工具メーカーカタログ・機械マニュアルの推奨値、および初品加工での試し切り結果を優先してください。難削材(SUS・チタン・インコネル)の加工では、経験ある加工者・工程設計者の判断が不可欠です。

よくある質問(FAQ)

ピッチ1.5mmのねじ山高さは?

ISO 68メートル並目基準で h = 1.5 × 0.6134 ≒ 0.92mm。厳密理論値のh = P × 5/8 × cos30° × 2 ≒ 0.812mm より、実加工の余裕を含めた値です。工程管理では0.92mm(または0.94mm)が広く使われます。

SUSでパス数少ないとどうなる?

1パスあたりの切込量が過大となり、工具刃先欠損・面粗度悪化・寸法精度不良を招きます。SUS304のP=1.5でパス数8以下は危険域で、12-15パスが実務標準。加工時間はやや延びますが結果的に工具寿命+段取り時間の総コストは削減できます。

等面積切込のメリットは?

各パスの工具負荷を均一化することで工具寿命2-3倍改善+仕上げ面粗度向上。難削材(SUS・チタン)ほど効果大で、CNC旋盤では標準採用。等量切込より複雑ですが、G76指令で自動化されるため加工者の負担はありません。

G76サイクル指令の使い方は?

2行構文で(1)仕上げ回数・面取り・角度、(2)最終X・Z座標・山高さ・1パス目切込・ピッチ、を指定するだけ。パス数と切込配分はNC制御装置が自動計算。FANUC・オークマ・森精機など主要CNCメーカーで対応(細部の書式は要確認)。

等量切込と等面積切込、どちらを選ぶ?

CNC旋盤+難削材→等面積切込(G76自動)、汎用旋盤+アルミ・鋼→等量切込(手動送り簡易)が基本。等面積は工具寿命重視、等量は操作容易性重視のトレードオフです。

ねじ切り前の下穴・下削り径はどう決める?

おねじの場合、外径をねじ呼び径 -0.1〜-0.2mm程度に下削りするのが標準。めねじの場合、下穴径は「呼び径-ピッチ」が目安(M10×P1.5なら下穴8.5mm)。JIS B 0209の許容限界寸法内で調整します。

スプリング切込とは?

最終パス以降、切込0mmで数回パスを追加する仕上げテクニック。工具・機械のたわみが徐々に戻り、ねじ山寸法精度と面粗度が向上します。G76指令の仕上げ回数(P指令の最初の2桁)で指定できます。

ねじ切り工具の耐久性は?

被削材・切込方式で大きく変動。アルミなら数千パス、SUSは数百パス、インコネルは数十パスが目安。等面積切込と適正な切削速度・切削油で寿命延長。工具寿命の予測はテイラー式または工具メーカー実測値で。

片フランク切込と両フランク切込の違いは?

片フランク=フランク切込で、フランク角に沿った斜め切込。片側刃のみ使用で負荷分散・切りくず排出改善。両フランク=ラジアル切込で、垂直切込両側刃使用で切りくず絡み+熱発生大。難削材は片フランク推奨。

ピッチ変更ねじ(可変ピッチ)は対応可能?

G34(可変ピッチねじ切り)指令で対応可能なCNCがあります。ボールねじや特殊アクチュエータ用途で使用。設計者との事前協議が必要な特殊加工です。

面取り(チャンファ)はどう付ける?

G76サイクルのP指令2桁目で面取り量を指定(例:P020060で0.2倍ピッチの面取り)。または、ねじ切り前後の別工程で面取り加工。ねじ端部の欠けリスク低減・組立性改善のため通常45°×0.5-1mmが標準です。

ネジゲージによる検査基準は?

JIS B 0209の許容限界寸法に基づき、通り側ゲージ(GO)は入る・止まり側ゲージ(NOGO)は止まる、を確認。並目6H/6g、細目6H/6gが標準で、精密ねじは4H/4hを使用します。

計算例:M12×P1.75 SUS304加工

前提:M12並目(P=1.75mm)、被削材SUS304、CNC旋盤G76サイクル、等面積切込。

ねじ山高さ:h = 1.75 × 0.6134 = 1.073 mm

推奨パス数:SUS304でP=1.75の中間ピッチのため、15パスを採用。

1パス目切込(等面積):1.073 × √(1/15) = 0.277 mm

2パス目切込:1.073 × √(2/15) - 0.277 = 0.115 mm。

最終15パス目切込:1.073 × (√(15/15) - √(14/15)) = 1.073 × (1 - 0.966) = 0.036 mm(仕上げ用微小切込)。

G76指令例:
G76 P020060 Q100 R0.030;
G76 X10.16 Z-20 R0 P1073 Q277 F1.75;
(P=仕上げ2回+面取り0.6倍+角度60°、Q=最小切込0.10mm、R=最終仕上げ代0.030mm、山高さ1.073mm、1パス目切込0.277mm、ピッチ1.75mm)

切削条件:切削速度80m/min(SUS向け低速)、電源正極性、切削油大量投入。工具はTiAlNコートフルプロフィールチップ推奨。