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切削動力工作機械機械選定切削

切削動力 計算ツール|切込・送り・切削速度・比切削抵抗Kcから正味動力とモータ容量選定

工作機械の切削動力を、切込ap・送りf・切削速度Vc・比切削抵抗Kcから瞬時に計算。SS400/SUS304/A5052/鋳鉄/SKD11/インコネルなど主要材質のKc早見、機械効率補正、主軸トルク推定、モータ容量選定まで、旋盤・フライス・マシニングセンタの現場実務に対応。JIS B 6201や切削加工便覧の考え方に基づき解説します。

最終更新:2026-08-08/監修:計算ツールズ編集部

切削動力 計算機

概要とツールの特徴

切削動力は工作機械選定・工程設計・電力契約・加工原価計算のあらゆる場面で必要となる基本指標です。本ツールは、旋盤・フライス盤・マシニングセンタ共通で使える汎用切削動力計算式を採用し、材質別Kc早見表・機械効率補正・JIS標準モータ容量帯選定を1画面で完結できるよう設計しました。切削速度Vcや送りfの単位混同(mm/rev vs mm/min、m/min vs rpm)を回避できるよう、入力は「毎分送り(mm/min)」に統一しています。

切削動力を過小に見積もれば工具折損・主軸ロック・電気トリップの現場事故に、過大に見積もれば設備投資の無駄・受電契約の過剰支払いにつながります。「正味動力→機械効率補正→JIS標準容量選定→余裕率適用」の実務標準ワークフローで、生産技術・購買・電気設備の三部門が同じ数字で会話できる基準値を提供することが本ツールの目的です。荒-仕上げ工程を分けた最適化、多軸同時稼働時の合計動力、断続切削の瞬間過負荷余裕、インバータ低速域の出力低下(定トルク領域)まで、実務上の落とし穴も本文で解説しています。

計算式と単位系

基本式

正味切削動力 Pc = ap × f × Vc × Kc ÷ 60000 (kW)

切りくず排出量 Q = ap × f × Vc ÷ 1000 (cm³/min)

モータ動力 Pm = Pc ÷ η (kW)

切削動力は単位時間あたりの切りくず生成に要するエネルギーで、切込ap(mm)・送りf(mm/min)・切削速度Vc(m/min)・比切削抵抗Kc(N/mm²)の積を60000で割ってkW値に換算します。分母60000は「N·mm/min → kW」への単位換算係数(60秒×1000W)。実際にモータへ求める動力は、機械の伝達効率η(0.7〜0.85)で正味値を割った値です。

単位換算のポイント

1 kW = 1000 N·m/s = 60000 N·mm/min。海外文献ではHP(馬力)表記も残り、1 HP ≒ 0.7457 kW で換算します。ap・fの単位が mm、Vc が m/min、Kc が N/mm²(=MPa) の組み合わせで、上記式が成立します。

旋削とフライスの違い

旋削では f は「1回転あたりの送り(mm/rev)」、フライスでは「1刃あたりの送り fz × 刃数 × 回転数」で扱われることが多く、単位系の混同が現場ミスの筆頭です。本ツールは「毎分送り mm/min」を入力とし、旋削・フライス共通で使えるようにしています。

比切削抵抗Kcとは

比切削抵抗 Kc(specific cutting force)は、切りくず1mm²を生成するのに必要な切削力(N/mm²=MPa)。材質・工具形状・切削条件で変わりますが、実務では材質ごとの代表値を用いて概算します。厳密には送りが小さいほどKcが増える寸法効果があり、微小切込では文献値の1.5〜2倍になることも。

Kwon-Kienzleの実験式では Kc = Kc1 × h-mc の形をとり、h=切込厚さ、Kc1=基準比切削抵抗、mc=材料指数(0.15〜0.35)で表現されます。正確な計算が必要な場合は工具メーカー(サンドビック・三菱マテリアル・オーエスジー等)のCoroKey・CutData等のデータを参照してください。

材質別 比切削抵抗Kc 早見表

切削加工便覧・工具メーカー資料に基づく代表的なKc値(送り0.1〜0.4mm/rev想定)です。実測値は工具ジオメトリ・被削材ロットで±20〜30%変動します。

被削材Kc(N/mm²)備考
アルミ純Al(A1050)500〜700低Kc・高速切削
アルミ合金 A5052800汎用アルミ合金
アルミ合金 A70751000ジュラルミン系
マグネシウム合金500発火注意
黄銅 C3604800快削性良好
純銅 C11001400粘り強い
鋳鉄 FC2501400断続切れ
ダクタイル鋳鉄 FCD4501800球状黒鉛
軟鋼 SS4002000汎用炭素鋼
機械構造用鋼 S45C2200調質鋼
合金鋼 SCM4402500クロモリ
ステンレス SUS3043000加工硬化性大
ステンレス SUS3163200耐食用
ステンレス SUS440C3500硬質マルテンサイト
工具鋼 SKD113500金型材
耐熱鋼 SUH6604000耐熱・難削
チタン Ti-6Al-4V2800低熱伝導・工具摩耗大
インコネル 7184500ニッケル基超合金

推奨切削条件の目安(超硬工具)

超硬コーテッド工具(旋削・エンドミル汎用)での推奨切削速度Vcと送りfの目安。荒-仕上げで使い分けます。

被削材Vc荒(m/min)Vc仕上(m/min)f(mm/rev)
アルミ合金300〜500500〜8000.15〜0.30
黄銅200〜300300〜5000.10〜0.25
鋳鉄80〜150150〜2500.15〜0.40
軟鋼 SS400/S45C120〜180180〜3000.15〜0.35
合金鋼(調質)80〜120120〜2000.10〜0.25
ステンレス SUS30480〜120120〜1800.10〜0.20
工具鋼 SKD11(HRC55)30〜6060〜1200.05〜0.15
チタン合金40〜6060〜1000.05〜0.15
インコネル20〜4040〜800.05〜0.12

機械効率とモータ容量選定

正味切削動力Pcにモータから加工点までの伝達効率ηを掛け戻したものがモータ必要動力Pmです。η は以下が目安。

機械種別効率η備考
ベルト駆動旋盤0.70〜0.75Vベルト・平ベルト
ギア駆動旋盤0.75〜0.85歯車減速機
ビルトインスピンドル0.85〜0.92直結・高効率
マシニングセンタ0.80〜0.90サーボモータ直結
研削盤0.70〜0.80砥石駆動

算出したPmに対し、日本国内で入手しやすいJIS標準容量帯(0.75/1.5/2.2/3.7/5.5/7.5/11/15/18.5/22/30/37/45/55kW)から一段上を選定するのが実務標準です。連続切削では余裕率1.2、断続切削(フライス・振動負荷)では1.5を掛けます。

主軸トルクと回転数

切削動力Pcが同じでも、低回転・高トルクか高回転・低トルクかは主軸選定の重要指標。

主軸回転数 n = 1000 × Vc ÷ (π × D) (rpm) ※D=切削径mm

主軸トルク T = 9550 × P ÷ n (N·m)

粗加工の大径旋削・ヘリカルミーリングでは主軸トルクが律速となり、モータ容量に十分な余裕があってもトルク不足で失速することがあります。特にステンレス・インコネル等の難削材では、低速大トルク型の重切削主軸(ギア切替式など)が有利です。

業界・現場での使い方

マシニングセンタ・NC工作機械選定

加工予定の最大切削条件から必要主軸出力を試算し、機械カタログ(BT30/40/50・22〜37kW帯)から選定。同社製の低出力機・高出力機の価格差は数百万円になるため、実加工に必要十分なサイジングが投資最適化のカギ。

旋盤・重切削加工

大径粗削り・ネジ切り・突切りで主軸トルク不足が起きないか事前確認。φ200を超えるSUS材の粗旋削では50Nm以上のトルクが必要になることも。ギア変速式主軸のレンジ選択にも必須の計算。

フライス・エンドミル加工

ヘリカル溝入れ・ポケット荒加工で瞬間切込量が増加する条件を事前検証し、モータ過負荷トリップやツール折損を予防。ハイフィード加工(HFM)や高送り(HSM)では特に重要。

省エネ・電力契約最適化

複数機械の同時稼働ピーク電力算出により、電力デマンド契約の見直し・受電設備容量の最適化。工場全体の切削動力積算は基本料金削減の根拠資料になります。

加工見積・受注審査

顧客図面から想定加工時間×モータ動力×電気単価で電力コスト試算。硬材(SKD11・インコネル)を汎用ラインで加工すると採算割れするケースを事前検知し、下請け専門工場への発注判断に活用。

切削条件見直し・改善提案

Vc・fを1.2倍に上げて動力とサイクルタイムの変化を試算。増速による工具寿命短縮とサイクルタイム短縮の経済性比較で、最適条件を科学的に選定できます。

典型ケーススタディ(切削動力の計算例)

ケース1: SS400軸物旋削(粗加工)

φ80 SS400丸棒の外径粗旋削、ap=3mm、f=0.3mm/rev、n=400rpm(Vc≒100m/min)。毎分送りf=120mm/min、P=3×120×100×2000÷60000=1.2kW正味。機械効率75%で必要モータ動力1.6kW→2.2kW機以上で対応可能。

ケース2: SUS304薄肉部品(仕上げ)

ap=0.5mm、f=100mm/min、Vc=120m/min、Kc=3000(SUS)。P=0.5×100×120×3000÷60000=0.3kW。仕上げは小動力だが、Kcが送り0.1mm/rev以下では文献値の1.5倍(4500N/mm²)想定で余裕を取ります。

ケース3: マシニングセンタでのS45Cポケット荒加工

φ16 4枚刃エンドミル、ap=5mm、fz=0.08mm/刃、n=2000rpm、Vc≒100m/min。毎分送りf=fz×z×n=640mm/min。P=5×640×100×2200÷60000=11.7kW正味。断続切削余裕率1.5で必要動力17.5kW→18.5kWまたは22kW主軸

ケース4: インコネル718重切削(難削材)

ap=2mm、f=80mm/min、Vc=30m/min、Kc=4500。P=2×80×30×4500÷60000=0.36kW正味。動力は小さいが切削速度制約と工具寿命(通常鋼の1/5〜1/10)から、生産性はSS400比で1/5〜1/10。低速大トルク主軸+高圧クーラント必須。

ケース5: アルミA5052高速加工(HSM)

ap=1mm、f=3000mm/min、Vc=800m/min、Kc=800。P=1×3000×800×800÷60000=32kW正味。動力大きいがサイクル短縮による経済性大。主軸回転数24000rpm対応の高速マシニングが必要。

ケース6: 大径旋削(舶用軸受け・LR保証品)

φ1000 SNCM鋼材、ap=8mm、f=0.5mm/rev、n=30rpm(Vc≒94m/min)。f=15mm/min、P=8×15×94×2500÷60000=4.7kW正味。低回転のため主軸トルクT=9550×4.7÷30=1500N·mの重切削。ギア変速式重切削主軸が必要。

よくある間違い・注意点

  • 機械効率を無視してモータ選定 — 正味動力=モータ動力で選ぶとηで実質2〜3割不足。ベルト駆動旋盤では正味の1.4倍、マシニングセンタでも1.2倍を最低ラインに。
  • Kcを固定値で使用 — 送りが小さい微小切込ではKcが1.5〜2倍(寸法効果)に。仕上げ加工では文献Kcの1.5倍程度を見込むのが安全です。
  • 工具摩耗の考慮漏れ — 摩耗が進んだ刃では切削力が新品の1.3〜1.5倍。工具寿命末期でも動力不足を起こさないよう余裕率1.5倍を推奨。
  • 断続切削の衝撃負荷 — フライス加工では瞬間的な最大トルクが平均の2〜3倍。カタログの連続定格ではなく短時間過負荷耐性(15分定格・S6運転)で判定を。
  • 主軸出力とモータ出力の混同 — マシニングセンタのスペック表は主軸出力を記載。減速機構がある機械ではモータ側の値と一致しません。カタログの効率η計算も要確認。
  • 低回転域の出力低下(定トルク領域) — インバータ駆動では基底速度以下で出力低下(定トルク特性)。大径粗加工の低rpm使用時は実出力が定格の1/3〜1/2に下がることを想定に入れてください。
  • クーラント・切りくず排出負荷 — 実運転ではクーラントポンプ・チャッキング・軸送りも消費電力に加算。切削動力単独で受電容量計算せず、機械カタログの全負荷値で判定してください。

関連する規格・法令

  • JIS B 6201 ― 一般用旋盤の受入検査及び精度検査。旋盤の主軸動力・精度規格。
  • JIS B 6336 ― マシニングセンタの検査試験方法。切削精度・熱変位・剛性の規格。
  • JIS B 4110 ― 工具寿命試験方法(旋削)。Kc実測・工具評価の基準。
  • ISO 3685 ― Tool-life testing with single-point turning tools。国際標準の工具寿命試験。
  • JIS B 0170 ― 数値制御工作機械 座標軸及び運動の記号。NC制御軸表記の統一。
  • 電気事業法・工場立地法 ― 500kW以上の高圧受電設備は電気主任技術者の選任必須。切削動力積算による契約電力設計。
  • 労働安全衛生法(機械等の譲渡等に係る規制) ― 工作機械の安全カバー・非常停止・光電センサの設置義務。切削動力ではなく安全側の規制。

参考文献・公的資料

切削理論・条件表・工具データは以下の公的機関・工具メーカーの一次資料を参照するのが確実です。

※本ページの計算結果および材質別Kc値は概算値であり、工具ジオメトリ・被削材ロット・切削条件により実測値は±20〜30%変動します。工作機械の選定・購入判断、生産設備の投資判断、電力受電契約の見直し等の重要用途には、必ず工具メーカーのCoroKey等の実データおよび機械メーカー技術者の判断を仰いでください。設備の安全性は労働安全衛生法に基づく点検・電気主任技術者の判断が最優先です。

よくある質問(FAQ)

ap3mm × f200mm/min × Vc100m/min × SS400での動力は?

P = 3 × 200 × 100 × 2000 ÷ 60000 = 2.0 kW(正味)。機械効率70%を見込むと必要モータ動力は約2.9kW。JIS標準容量から3.7kWモータを選定します。

比切削抵抗Kcはどう決めれば良い?

実務ではメーカーカタログ・切削加工便覧の材質別代表値を使い、送りが小さい仕上げ加工では1.5倍程度を見込みます。精密計算が必要な場合はKienzle式 Kc=Kc1×h-mc で送り依存性を考慮します。

SS400とSUS304で必要動力はどれくらい違う?

Kcが2000→3000となるため、同一切削条件で1.5倍の動力が必要です。加工硬化性も高いため実際はさらに2割増を見込むのが安全。

機械効率ηの参考値は?

ベルト駆動旋盤で0.70〜0.75、ギア駆動で0.75〜0.85、マシニングセンタ(サーボ直結)で0.80〜0.90、ビルトインスピンドルで0.85〜0.92が目安。研削盤は0.70〜0.80です。

切りくず排出量Qと動力の関係は?

P = Q × Kc(単位系換算後)。同じ材料なら動力はQに比例し、単位切りくず生成に消費する電力(比エネルギー)は材質固有値。ステンレスは軟鋼の1.5倍、インコネルは2倍以上のエネルギーを要します。

主軸トルクが不足するとどうなる?

回転数が落ちて切削速度が想定より下がり、加工硬化・工具摩耗・振動が悪化。最悪、工具折損や主軸ロックに至ります。大径旋削・重切削では回転数ではなくトルク値で判定を。

インバータで低速回転させると動力は?

ベースレンジ(通常60Hz)以下では出力が線形に低下(定トルク領域)。カタログ定格の出力は基底速度以上で発生する値のため、低rpm使用時は実出力を1/3〜1/2で見積もる必要があります。

フライスの1刃あたり送りfzと本ツールの関係は?

フライスでは f(mm/min) = fz(mm/刃) × 刃数z × 回転数n(rpm) で毎分送りを求め、本ツールに入力してください。旋削は f(mm/min) = 送りf(mm/rev) × n(rpm)。

断続切削(フライス)ではモータ選定に何倍の余裕を持たせる?

連続切削で1.2倍、断続切削で1.5倍が業界慣習。ヘリカル溝入れ・ポケット底面などの瞬間過負荷が発生する加工では2倍を見込むことも。カタログの短時間過負荷定格(S6運転)を確認してください。

難削材(インコネル・チタン)の実務ポイントは?

Kcが高く工具摩耗も早いため、低速大トルク主軸+湿式高圧クーラント+コート超硬工具の組合せが定石。切削速度をむやみに上げず、送り増加でMRRを稼ぐアプローチが有効です。

電気代の試算に使える?

「モータ動力(kW)×稼働時間(h)×電気単価(円/kWh)」で概算できます。ただし待機電力・補機動力(クーラント・エアブロー)を含む実消費は、カタログ全負荷値または実測値を使うのが正確。

複数刃・多軸加工での動力積算は?

同時切削している刃・スピンドルの動力を単純加算します。多軸マシニング・ガングチャック・ヘッド交換式では、最大同時稼働条件で受電容量を判定してください。