計算ツール
はめあい公差

はめあい公差判定|JIS B 0401 穴軸公差からすきま/しまり/中間ばめを即判定

基準寸法と穴公差(H7・H8・H9)・軸公差(g6・h6・k6・p6等)から、はめあいの種別(すきまばめ・中間ばめ・しまりばめ)と最大すきま・最大しまり・すきま/しまりの範囲を即算出。転がり軸受(JIS B 1509)の内外輪、金型ガイドポスト、電動機シャフト、圧入部品、焼ばめ、キー付軸まで、機械設計と保全現場で頻用する公差選定を、応用事例・熱膨張補正・ISO 286互換の視点で網羅解説します。

最終更新:2026-07-30/監修:計算ツールズ編集部

はめあい公差判定ツール

はめあいの基本概念と計算式

穴・軸公差の表記

はめあい表記例:φ30 H7/g6

大文字(H・G等)が穴側公差、小文字(h・g等)が軸側公差、数字(7・6等)が公差等級(IT等級)を示します。JIS B 0401(ISO 286と整合)では、A〜Zのアルファベット記号で公差位置(基準寸法に対する±の偏り)を、IT01〜IT18の数字で公差幅を規定します。

すきま・しまりの計算式

最大すきま = 穴の最大許容寸法 − 軸の最小許容寸法

最小すきま = 穴の最小許容寸法 − 軸の最大許容寸法

最大しまり = 軸の最大許容寸法 − 穴の最小許容寸法(= −最小すきま)

最小しまり = 軸の最小許容寸法 − 穴の最大許容寸法(= −最大すきま)

最小すきまが正ならすきまばめ、最大すきまが負(=最小しまりが正)ならしまりばめ、その中間なら中間ばめ(組立ごとにすきま/しまりが変わる)と判定します。すきまとしまりは符号を反転させただけの同じ量なので、片方が負の値のときはもう一方の呼び方で読みます。

穴基準と軸基準

大文字Hから始まる公差(H6・H7・H8・H9)を「穴の下の偏差=0」の基準として固定し、軸側公差を変えて種別を作り分けるのが穴基準はめあいで、日本の機械設計標準。逆に軸基準は輸入設備や特殊用途で使われます。

3種のはめあい

種別組立後の状態代表的組合せ典型用途
すきまばめ(遊びばめ)常にすきまありH7/f6, H7/g6回転摺動部・すべり軸受
中間ばめ組立時にすきま/しまり変動H7/h6, H7/k6, H7/m6精密位置決め・キー付軸
しまりばめ(締めばめ)常に軸径>穴径・強い固定H7/p6, H7/r6, H7/s6, H7/u6圧入・焼ばめ・軸受内輪

すきまばめは取外し容易・回転・スライド可能、しまりばめは強固な固定・分解困難、中間ばめは位置精度は良いが取外しに軽い力が必要な特性を持ちます。用途と機能に応じて選定します。

JIS B 0401 常用公差表(基準寸法 φ18超〜φ30以下)

下表は φ30 での代表公差値です。基準寸法区分ごとに公差幅は変化しますが、上の計算機は φ3〜φ500 の全13区分の公差値を内蔵しているため、基準寸法を入力すればその区分の値で判定します。

公差記号寸法許容差(μm)穴/軸用途
H60 〜 +13精密軸受
H70 〜 +21一般機械穴・軸受
H80 〜 +33一般構造
H90 〜 +52粗嵌合
f6-20 〜 -33スライド軸(潤滑あり)
g6-7 〜 -20すべり軸受
h6-13 〜 0精密位置決め
js6±6.5対称公差
k6+2 〜 +15軽圧入
m6+8 〜 +21圧入
n6+15 〜 +28強圧入
p6+22 〜 +35ベアリング圧入
r6+28 〜 +41焼ばめ
s6+35 〜 +48強焼ばめ
u6+48 〜 +61超強焼ばめ

用途別 標準はめあい選定

はめあい種別典型用途
H7/e7大きなすきま高温スライド部・軽軸受
H7/f6すきま(潤滑スライド)すべり軸受・給油スライド
H7/g6小さなすきま頻繁なスライド・回転軸
H7/h6ゼロすきま着脱可能ピン・位置決め
H7/js6中間(手動組立)キー付軸・スリーブ
H7/k6中間(軽圧入)ボスとキー付軸
H7/m6中間(圧入)プーリー・ハンドル
H7/n6強圧入強い固定を要する部品
H7/p6しまり(軽圧入)ベアリング内輪・軸端
H7/r6しまり(焼ばめ)プーリボス・スプロケット
H7/s6強しまり(焼ばめ)大型カップリング
H7/u6超強しまり圧延ロール・タービン

転がり軸受(JIS B 1509)の内輪-シャフトは通常k5・k6・m6(回転側で圧入)、外輪-ハウジングはH7・H8(すきま)が定石。使用条件(回転数・荷重・温度)により変化します。

熱膨張と焼ばめ・冷やしばめ

熱膨張式

直径変化 Δd = d × α × ΔT

ここで d は基準寸法、α は線膨張係数(炭素鋼で約11.7×10⁻⁶ /K、SUS304で17.3×10⁻⁶ /K、アルミで23.6×10⁻⁶ /K)、ΔT は温度変化。

焼ばめ加熱温度

H7/r6の代表しまり0.03〜0.05mmを与えるためのφ50シャフトの必要加熱温度は、Δd÷(d×α)=0.05÷(50×11.7×10⁻⁶)≈85K。室温+85℃≒110℃で組付け可能。安全率を見て+30℃程度余裕を持たせるのが実務。

冷やしばめ

ドライアイス(-78℃)や液体窒素(-196℃)で軸を冷却し収縮させて挿入。焼ばめより低歪みだが装置設備が必要。ラジアル荷重が大きい場合は焼ばめが優位です。

計算例(φ50 H7/p6 ベアリング内輪嵌合)

公差値の取得(φ30超φ50以下区分)

JIS B 0401 附属書表から、φ50 H7=0〜+25μm、p6=+26〜+42μm。

最大すきま・最小しまりの計算

最大すきま = H7上限(+25) − p6下限(+26) = −1 μm

最小しまり = p6下限(+26) − H7上限(+25) = +1 μm

最大しまり = p6上限(+42) − H7下限(0) = +42 μm

判定

最小しまり=+1μm、最大しまり=+42μmで、常に軸径>穴径となるしまりばめ。1〜42μmの範囲で圧入となり、ベアリング内輪の軸への嵌合として妥当な範囲です。

圧入力の概算

ベアリング鋼の圧入抵抗を摩擦係数μ=0.15と仮定すると、φ50・幅25mm・しまり0.02mmで圧入力約8kN。手押しでは不可能で、ハンドプレスまたは加熱による焼ばめが必要です。

業界・現場での使い方

転がり軸受(ボールベアリング)設計

NSK・SKF等の軸受メーカーは製品カタログで推奨はめあい表を提供。回転側(通常は内輪)は圧入(k5・k6・m6)、固定側(通常は外輪)はすきま(H7・H8)が定石。回転数・荷重方向(内輪回転/外輪回転)・温度で個別選定。

金型・治具ガイドポスト

プレス金型・射出成形金型のガイドポストはH7/g6で高精度スライド、抜き型パンチ穴はH7/js6で位置決め。精密金型では研削仕上げ+ラップ加工で公差保証。

自動車エンジン部品

クランクシャフト-メインベアリング(H7/js6)、ピストンピン-コンロッド(H7/n6)、ピストンピン-ピストン(H7/e7 潤滑スライド)等、機能ごとに最適はめあいが選定されます。エンジンオイル粘度(SAE)・熱膨張(アルミピストン)を加味した設計。

電動機・発電機

ロータシャフト-軸受内輪はk5(高速機)・m5(重負荷機)、ステータ固定はH7/H8。カップリング側は焼ばめ(H7/r6)またはパワーロック使用。JIS B 4801「回転電気機械の共通仕様」で基本規定。

圧延ロール・大型産業機械

圧延機のロールボディ-ネックはu6・x6等の超強しまり(焼ばめ)、圧力を数百MPa超で伝達。大型化に伴い加熱温度・冷却時間の管理が重要で、専門加熱炉が使用されます。

ハウジング-スリーブ(工作機械)

NC工作機械の主軸ハウジング-スリーブはH6/js5で1μm精度の中間ばめ。研削・ラップ・手仕上げで公差保証し、組立時に手押しで挿入可能な精度を確保。組立後の熱膨張影響も計算。

IT公差等級と加工精度

JIS B 0401のIT公差等級と対応する実用加工方法・寸法許容差の目安(基準寸法φ30区分)です。

IT等級公差幅(μm)実用加工方法用途例
IT01〜IT40.6〜4研削・ラップ・ホーニングゲージ・精密軸受
IT59研削・精密ブローチ精密ボールベアリング穴
IT613研削・精密旋盤高精度嵌合部
IT721精密旋盤・研削一般機械の嵌合部(H7)
IT833汎用旋盤(仕上げ)普通嵌合(H8)
IT952汎用旋盤・フライス粗嵌合(H9)
IT1084汎用旋盤・型鍛造非嵌合寸法
IT11〜13130〜330プレス・型鍛造・溶接粗加工品
IT14〜18520〜3300鋳造・粗断ちラフ加工

IT等級と加工方法・コストは強く相関します。IT6以上の精密公差では研削・ラップ工程が必要で、加工費が汎用旋盤の3〜5倍程度に増加します。設計時に「必要最低限の等級」を選定することが重要です。

よくある間違い・注意点

  • 公差が緩すぎる ― 軸受のはめあいをH8/f7等広くすると回転時ガタツキ・振動発生。異音・寿命低下の原因。JIS B 1509「転がり軸受の主要寸法」の推奨表を参照。
  • しまりが過大 ― H7/u6等の超強しまりを軸径φ100mm超に適用すると、圧入時の応力が降伏点を超えて塑性変形。軸径変形・軸受損傷。加熱温度・冷却制御必須。
  • 熱膨張の未考慮 ― 60℃以上に上昇する熱機・エンジンでは、アルミ(α=23.6μm/m/K)-鋼(11.7)の膨張差でしまりばめがすきまばめに変化。温度域ごとの膨張補正必須。
  • ISO 286との差異見落とし ― JIS B 0401と ISO 286はほぼ同一だが、A/B/C等の一部微差あり。輸入部品の交換時は原規格で確認。
  • 公差記号の書き違い ― H(穴)とh(軸)を混同するミスが図面で頻発。大文字が穴、小文字が軸と厳格に区別すること。
  • 加工精度の見誤り ― H6・k5等の精密公差は研削仕上げ必須。旋盤仕上げでは達成困難で、加工方法から公差選定を検討する必要があります。
  • 表面粗さの指定漏れ ― 公差だけでなく表面粗さ(Ra)も指定必須。H7穴はRa 0.8〜1.6μm、k6軸はRa 0.4〜0.8μm程度が実用目安。

関連する規格・法令

  • JIS B 0401-1 ― 製品の幾何特性仕様(GPS) - 長さに関わるサイズ公差のISO コード方式 - 第1部:サイズ公差、寸法差及びはめあいの基礎。
  • JIS B 0401-2 ― 穴及び軸の寸法許容差の表。常用のH穴・軸(fからu6等)の許容差を規定。
  • JIS B 1509 ― 転がり軸受-主要寸法・許容差。軸受の穴・軸への推奨はめあい表を含む。
  • JIS B 0405 ― 普通公差 - 個々に公差の指示がない長さ寸法及び角度寸法に対する公差。図面に公差記号なしの場合の適用。
  • JIS B 0601 ― 表面粗さの表示・測定方法。公差と併用する表面性状の規定。
  • ISO 286-1 ― Geometrical product specifications (GPS)-ISO code system for tolerances on linear sizes。国際規格。
  • ISO 286-2 ― 穴・軸の許容差表。ISO国際規格の公差値表。
  • DIN 7157 ― Passtoleranzen(はめあい公差)。ドイツ規格、欧州設計で頻用。
  • ANSI B4.2 ― Preferred Metric Limits and Fits。米国規格、ISO 286と整合。

参考文献・公的資料

はめあい公差設計のより詳細な情報は、以下の公的機関・学会・メーカーの資料を参照してください。

※本ページの計算結果および公差データは JIS B 0401 の一般情報に基づく参考選定です。実際の設計・製作にあたっては、最新のJIS規格・軸受メーカー技術資料および装置固有の運転条件(温度・振動・繰返し)を考慮し、有資格の機械設計技術者による検証を経てください。安全にかかわる用途では、日本機械学会「機械設計便覧」等の詳細計算・強度検証が必須です。

よくある質問(FAQ)

30mm H7p6のしまりは?

φ18超φ30以下のH7=0〜+21μm、p6=+22〜+35μm。最小しまり=p6の下限22−H7の上限21=1μm(実質はほぼゼロ)、最大しまり=p6の上限35−H7の下限0=35μm。1〜35μmの範囲で圧入となり、ベアリング内輪の軸への嵌合として使用します。

H7/g6とH7/h6の違いは?

H7/g6は常にすきまがあるすきまばめ(g6が−側の公差なので必ずすきま)。H7/h6は0付近の中間ばめ(h6が0以下の公差で偶然すきまも0もあり得る)。回転摺動部はg6、位置決め着脱ピンはh6が定石です。

軸受はめあいの決め方は?

ボールベアリング等の転がり軸受はメーカー(NSK・SKF・NTN・KOYO等)が推奨はめあい表を公開しています。回転側(通常内輪)はk5・k6・m6(軽圧入)、固定側(通常外輪)はH7・H8(すきまばめ)が標準。回転数・荷重・温度で調整。

公差がゆるすぎるとどうなる?

軸受・回転部にH8/f7などゆるいすきまばめを使うと、運転中にガタツキ・振動・偏心・異音が発生し、軸受寿命が半減以下に短縮する場合があります。JIS B 1509推奨表の範囲を守ることが必須。

しまりが過大だと?

H7/u6等の超強しまりを大径軸(φ100以上)に無理に適用すると、圧入時の応力が降伏点を超えて軸径塑性変形・穴側割れが発生。加熱温度制御と冷却時間管理が必要で、大型部品は焼ばめが標準です。

焼ばめとは?

穴側部品を加熱膨張させて軸を挿入し、冷却で強固に固定する組立方式。H7/r6・s6・u6のしまりばめで使用。Δd=d×α×ΔTで必要加熱温度を計算し、通常は+30℃程度の安全率を上乗せ。専用電気炉・誘導加熱で加熱します。

ISO 286とJIS B 0401の関係は?

JIS B 0401はISO 286を採用して整合化された規格で、公差記号・値ともほぼ同一。1998年改訂で完全な整合化が達成されました。輸入部品との照合時にもJIS表がそのまま使えます。

穴基準と軸基準の違いは?

穴基準(大文字H系列を基準)は日本の機械設計標準で、加工が難しい穴側を固定し軸を調整する考え方。軸基準(小文字h系列を基準)は市販軸(丸鋼)をそのまま使う場合や輸入設備で使用。混在させると錯乱するので図面で明記。

温度による膨張影響は?

アルミ(α=23.6μm/m/K)と炭素鋼(11.7)を組合わせるエンジン部品では、100℃上昇でφ100mmシャフトが炭素鋼で+117μm、アルミで+236μm膨張し約120μmの差が生じます。しまりばめが緩んですきまばめに変化。設計時に運転温度域での公差変化を確認必須。

加工精度と公差の関係は?

IT6等級はRa 0.4μm(研削)、IT7はRa 0.8μm(精密旋盤)、IT8はRa 1.6μm(汎用旋盤)が実用限界の目安。指定公差より粗い加工方法では公差が満たせないので、加工方法の選択と公差選定は連動して行います。

普通公差(JIS B 0405)とは?

図面に公差記号(H7・k6等)が明示されていない寸法に自動適用されるデフォルト公差。中級m(medium)を使うのが一般的で、φ30なら±0.2mm程度。精密寸法は必ず個別に公差指示することが原則です。

キー付軸に適用するはめあいは?

キー付軸のボス-軸間はH7/js6・H7/k6(中間ばめ)が定番。キー溝がある側面をキー材(JIS B 1301)で固定し、円周方向のトルクはキー、径方向の位置決めははめあい公差で担保します。