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外気負荷エンタルピ空調省エネ全熱交換器

外気負荷(エンタルピ差) 計算ツール|換気導入外気の冷暖房負荷kWを即算出

外気導入量と室内外の温湿度エンタルピ差から外気負荷(kW)を即算出。空調設計・省エネ改修・全熱交換器の効果試算・DCV(CO2濃度制御)の省エネ効果評価に対応。冷房負荷全体の20〜40%を占める見落としがちな要素を、湿り空気エンタルピ計算式に基づき正確に評価します。

最終更新:2026-07-30/監修:計算ツールズ編集部

外気負荷(エンタルピ差)ツール

計算式(全熱・顕熱・潜熱)

外気負荷が空調負荷全体に占める比率

建物用途による外気負荷の割合の目安を示します。密度が高い用途ほど換気量が大きく、外気負荷比率も上がります。

外気負荷比率 = 外気負荷 ÷ (顕熱冷房負荷 + 潜熱冷房負荷 + 外気負荷)

一般オフィスで20〜30%、会議室・宴会場で30〜50%、飲食店・厨房で40〜60%、病院・実験室で50〜70%が目安です。全外気運転する手術室は100%が外気負荷になります。

全熱負荷(基本式)

全熱外気負荷 Q(kW) = 外気量(m³/s) × 空気密度 ρ(1.2 kg/m³) × (外気エンタルピ − 室内エンタルピ)(kJ/kg)

湿り空気エンタルピは温度と絶対湿度(または相対湿度)から計算します。夏33℃70%RH → 室内26℃50%RHで約35kJ/kg差、外気1000m³/hでは約12kWの負荷が発生。これは冷房負荷全体の20〜40%を占める大きな要素です。

湿り空気エンタルピの計算

h(kJ/kg) = 1.006 × T + x × (2501 + 1.86 × T)

T = 乾球温度(℃)、x = 絶対湿度(kg/kg乾き空気)。第1項が顕熱(空気の温度変化)、第2項が潜熱(水分の蒸発潜熱)。潜熱項が大きく、絶対湿度が0.001増える(=1g/kg)だけで約2.5kJ/kgエンタルピが上がります。

顕熱・潜熱分離

顕熱負荷 Qs(kW) = 外気量(m³/s) × 1.2 × 1.006 × ΔT

潜熱負荷 QL(kW) = 外気量(m³/s) × 1.2 × 2501 × Δx

機器選定では顕熱・潜熱を分離して評価すると、除湿能力の適正化やデシカント除湿の効果検討ができます。夏期の外気負荷は潜熱が全熱の50〜70%を占めるのが日本の気候特性です。

1人あたり外気導入量の目安

ビル管理法・建築基準法・ASHRAE 62.1に基づく用途別の1人あたり必要外気量。CO2濃度1000ppm以下を維持するのが基本です。

用途m³/h・人根拠
住宅居室30(全体で0.5回/h)建築基準法(シックハウス対策)
一般オフィス25〜30ビル管理法・SHASE-S 102
会議室30〜40密度高い・CO2蓄積対策
飲食店(全席喫煙可)75厚労省ガイドライン
飲食店(禁煙)30〜40ビル管理法
教室(小中高校)25学校環境衛生基準
病院一般病室50医療施設の建築設計指針
病院手術室換気回数15回/h感染対策・全外気運用
ホテル客室30SHASE-S 102
デパート売場10(在館人数密度低い)SHASE-S 102
体育館・ジム50運動時のCO2排出増加

外気条件別の外気負荷早見表

外気1,000m³/h・室内条件(夏26℃50%RH・冬22℃40%RH)における外気負荷の目安。全国主要都市の設計用外気条件に対応します。

季節・地域外気温外気湿度負荷 kW/1000m³h備考
夏 東京(TAC 1%)33.9℃63%RH約12設計用夏期
夏 大阪(TAC 1%)34.6℃62%RH約13設計用夏期
夏 那覇(TAC 1%)32.4℃72%RH約13湿度負荷大
夏 札幌(TAC 1%)29.1℃60%RH約6夏冷涼
冬 東京(TAC 1%)-0.1℃52%RH約8設計用冬期
冬 大阪(TAC 1%)0.9℃62%RH約7設計用冬期
冬 札幌(TAC 1%)-9.1℃67%RH約12寒冷地・大負荷
中間期 東京15℃60%RH約2ほぼ負荷なし

※TAC 1% = TAC温度基準の1%超過値、日本の空調設計用外気条件の基本(空気調和・衛生工学会規格)。

全熱交換器の効果

基本原理

全熱交換器は排気と外気を温度(顕熱)+湿度(潜熱)の両方で熱交換する装置。ロータリー式・静止型(紙製エレメント)・膜式などがあり、外気負荷を60〜70%削減できるのが標準的な性能です。

温度効率と湿度効率

方式温度効率湿度効率特徴
ロータリー式75〜85%65〜75%高効率・大型・回転部品あり
静止型(紙エレメント)65〜75%50〜65%簡易・住宅・中小オフィス向け
膜式(高分子膜)75〜85%70〜80%高効率・臭気移動少ない
顕熱型(潜熱交換なし)65〜75%0%温度のみ交換・湿度負荷は削減しない

投資回収の目安

初期投資は500m³/h機で30〜80万円、大型機は数百万円。オフィス・ホテル客室では5〜10年で投資回収可能です。近年のZEB(ゼロエネルギー・ビル)設計では全熱交換器はほぼ必須装備となっています。

DCV(CO2濃度制御)による省エネ

Demand Controlled Ventilation(需要制御換気) = 室内CO2濃度に応じて外気量を自動制御。人が少ない時間帯は外気量を絞り、外気負荷を削減します。

効果と適用例

  • 会議室:予約時間外は最小外気運転で、外気負荷を50〜80%削減
  • ホテル宴会場:閑散期は最小限、満席時は満量で快適性も担保
  • スクール・カンファレンス:時間割で人数変動が大きく、DCV効果が最大
  • オフィス:昼休み・休憩時間帯に外気量削減。年間20〜30%の省エネ実績多数

設計時の注意

CO2センサーは吸気ゾーン(呼吸域)に設置し、ドラフト・還気ダクト付近は避けます。CO2濃度上限は1000ppm(ビル管理法)。閉じ込め感・眠気を防ぐには800ppm以下の運用が推奨されています。

主要都市の設計用外気条件(TAC)

SHASE-S 116に基づく主要都市の設計用外気温湿度(TAC 1%)。空調設備の機器選定・熱源容量算定に使います。

都市夏DB(℃)/湿球冬DB(℃)備考
札幌29.1 / 22.4-9.1寒冷地・冬期高負荷
仙台31.5 / 24.5-3.6東北中央
東京33.9 / 25.9-0.1関東・全国標準
金沢32.6 / 25.5-1.6日本海側
名古屋34.6 / 25.8-1.7中京圏
大阪34.6 / 26.10.9関西
広島33.5 / 25.9-1.2中国地方
福岡33.3 / 26.11.7九州北部
鹿児島33.4 / 26.42.5九州南部
那覇32.4 / 27.113.9亜熱帯・冬温暖

※乾球温度(DB)+湿球温度(WB)の組合わせで湿り空気の状態が定まります。潜熱負荷が大きい沖縄・九州南部は空調機の除湿能力を大きく取る必要があります。

業界・現場での使い方

🏢 空調設計・建築設備

冷暖房負荷計算の主要項目。外気負荷評価で冷凍機・空調機の機器容量を決定します。夏期は冷房負荷の20〜40%、冬期は暖房負荷の30〜50%を占め、外気負荷を過小評価するとピーク時に室内温湿度が保てず快適性クレームに直結します。

♻️ 省エネ改修(ESCO事業)

既築ビルの空調更新で、全熱交換器の後付け導入効果を試算。既設熱源負荷の20〜30%削減事例が多く、CO2排出量削減とESG評価向上にも寄与します。ZEBラベル取得を目指す事業に必須の要素です。

🌱 IEQ(室内環境品質)向上

CO2濃度管理と両立させた外気量最適化。WELL認証・ウェルビーイングオフィス設計では、生産性向上の観点からCO2濃度800ppm以下・湿度40〜60%を目標とし、外気量を増やしつつ全熱交換器で負荷を抑える設計が定石です。

🖥️ データセンター(DC)

DCでは主に排熱処理が課題だが、電気室・オペレータ室は換気外気負荷が発生。全外気運転(オールアウト)の外気冷房(フリークーリング)は年間PUE改善に大きく寄与し、外気エンタルピ試算がフリークーリング可能時間の推定に使われます。

🏥 病院・診療施設

感染症対策で全外気運転や高換気回数が求められる用途。手術室は15回/h、感染症病棟は12回/hが標準で、外気負荷は一般病室の5〜10倍。エネルギー消費と感染対策の両立が課題です。

🍽️ 飲食店・厨房

厨房は排気風量が大きく、その分の補給外気(給気)負荷が発生。焼肉店・中華料理店では換気風量2000m³/h超が普通で、夏期の空調負荷が跳ね上がる原因になります。

よくある間違い・注意点

  • 外気負荷を無視して機器選定 — 冷房負荷の20〜40%が外気分。無視するとピーク時に室内が保てない機器容量不足に。設計時は外気負荷を必ず含めます。
  • 全熱交換器の効果を100%と想定 — 温度効率70〜85%、湿度効率50〜70%が実効値。過大評価すると省エネ効果が実績を下回ります。
  • CO2濃度基準を無視した外気削減 — 外気削減で電気代は下がっても、CO2 1500ppm超えると生産性が10〜30%低下(ハーバード大研究)。快適性と省エネのバランスが重要です。
  • 顕熱・潜熱の分離を無視 — 夏期は潜熱が全熱の50〜70%を占めるため、除湿能力の適正化・デシカント併用検討が省エネに大きく効きます。
  • 設計用外気条件(TAC)の使用ミス — 気象データの最大値(TAC 0%)で設計すると過大機器に。年8760時間中のTAC 1%〜5%が経済的な設計基準です。
  • 導入外気量の過剰 — 「換気は多いほど良い」は誤り。ビル管理法基準(25〜30 m³/h・人)を大幅に超えると省エネ・湿度制御の両面で不利。
  • 全熱交換器のバイパス(中間期)を忘れる — 中間期(春秋)は外気そのものが快適なので、全熱交換器を通すと逆効果。バイパスダンパを設計に組み込むのが標準です。

関連する規格・法規

  • ビル管理法(建築物における衛生的環境の確保に関する法律) ― CO2 1000ppm以下、相対湿度40〜70%、温度17〜28℃、浮遊粉じん0.15mg/㎥以下等。
  • 建築基準法 第28条の2 / 施行令20条の8 ― 居室の機械換気設備の義務(シックハウス対策)。0.5回/h以上。
  • SHASE-S 102 換気設備の設計・施工基準 ― 用途別の必要換気量・機械換気の設計標準。
  • SHASE-S 116 空気調和設備の設計基準 ― 空調負荷計算の標準手法、外気条件(TAC)基準。
  • ASHRAE Standard 62.1 Ventilation for Acceptable Indoor Air Quality ― 米国の換気設計基準。用途別必要外気量。
  • ASHRAE Standard 90.1 Energy Standard for Buildings ― 建物のエネルギー効率基準。全熱交換器・DCVの適用要件。
  • 建築物省エネ法・省エネ基準 ― 一次エネルギー消費量計算での外気負荷評価。ZEB要件。
  • 労働安全衛生法 事務所衛生基準規則 ― 事務所の温湿度・換気の努力基準(2022年5月改正)。

参考文献・公的資料

外気負荷計算・換気設計の詳細は以下の一次資料を参照してください。

※本ページの計算結果は概算値です。実際の空調設計・法令適用は最新のJIS/SHASE規格および所轄官庁の判断、建築設備士・建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)・空調衛生設備設計者の判断に従ってください。TAC設計用外気条件の詳細値は「空気調和・衛生工学便覧」を参照してください。

よくある質問(FAQ)

外気1000m³/hで何kW負荷?

夏標準条件(外気33℃70%RH・室内26℃50%RH)で約12kW、冬標準条件(外気0℃50%RH・室内22℃40%RH)で約8kW。全熱交換器を導入すれば1/3〜1/2に削減できます。

全熱交換器の効果は?

温度効率70〜85%、湿度効率50〜70%が実効値。外気負荷を60〜70%削減できます。投資回収は5〜10年、ZEB(ゼロエネルギー・ビル)設計ではほぼ必須装備です。

CO2濃度センサー制御(DCV)とは?

Demand Controlled Ventilation。室内CO2濃度に応じて外気量を自動制御する省エネ手法。会議室・スタジオ・宴会場のように人数変動が大きい用途で有効で、年間20〜80%の省エネ実績があります。

外気負荷削減の順位は?

コスト効率順に、①全熱交換器 ②DCV制御 ③外気量最適化(過剰換気の抑制) ④デシカント除湿 ⑤外気冷房(フリークーリング) ⑥地中熱利用。全熱交換器は最初に検討すべき投資です。

顕熱と潜熱、どちらが大きい?

日本の夏期は潜熱が全熱の50〜70%を占めます(高湿度の気候特性)。冬期は逆に顕熱が主。夏期対策としては除湿能力(潜熱処理)の適正化が省エネのカギです。

外気導入量はどう決まる?

用途別・在館人数から算出します。オフィスは25〜30 m³/h・人、会議室は30〜40、飲食店(全席喫煙可)は75、病室は50。ビル管理法・SHASE-S 102の推奨値を基準にCO2濃度1000ppm以下を維持します。

設計用外気条件(TAC)とは?

Technical Advisory Committee温度基準。気象データを統計処理し、超過確率1%〜5%を設計値とする慣習。TAC 1%(年間8760時間中の1%超過)が経済的な空調設計の標準です。

外気冷房(フリークーリング)とは?

中間期・冬期に外気エンタルピが室内より低い時、外気を直接取り込んで冷房に使う省エネ手法。データセンターで年間PUE1.2以下を実現する主要技術。外気ダンパ・CO2センサー・エンタルピセンサーで自動制御します。

厨房の外気負荷は?

厨房排気量2000m³/h(標準的中華料理店)なら夏の外気負荷は約25kW。飲食店の空調負荷が大きくなる主因です。給気を厨房用ハイベル型ダンパで直接吹き出す設計が省エネ・快適性の両立に効きます。

全熱交換器を切るタイミングは?

中間期(外気20℃前後・湿度低い)は外気そのものが快適で、全熱交換器を通すと逆に室内側の暑い空気で外気を暖めてしまいます。外気エンタルピ<室内エンタルピの時にバイパスするのが省エネの要諦です。

換気量が多いほど良い?

×。過剰換気は外気負荷を増やし電気代とCO2排出を増加させます。ビル管理法基準(25〜30 m³/h・人)を大幅に超える必要はありません。目的は室内空気質(IAQ)の維持で、CO2 800〜1000ppmを目安に最適化します。

コロナ禍で必要換気量が増えた?

厚労省ガイドラインでは基本的にビル管理法基準の維持で十分とされ、換気量を大幅に増やす必要はないとされています。ただし窓開け換気を併用する場合は、外気負荷増加分の空調容量に留意が必要です。