CO2濃度制御 換気量 計算ツール|ビル管法1000ppm対応の必要換気量を即算出
在室人数・目標CO2濃度・外気CO2濃度から、建築物衛生法(ビル管法)1000ppm・労働安全衛生事務所則5000ppm・学校保健安全法1500ppmに対応する必要換気量を即算出。CO2発生量M=0.02〜0.04m³/h/人の代謝別内訳、必要換気量30m³/h/人の建築基準法根拠、外気CO2上昇(420ppm+)による設計影響、CO2センサ連動VAV(需要制御換気/DCV)、ASHRAE 62.1・EN 16798-1の国際基準まで、設備設計・保健所立入検査・省エネ実務の現場観点で解説します。
CO2濃度制御 換気量 計算機
計算式と単位系
基本式
Q(m³/h) = M(m³/h/人) × N(人) × 10⁶ ÷ (Ct − Co)(ppm)
Q=必要換気量、M=1人あたりCO2発生量、N=在室人数、Ct=目標CO2濃度、Co=外気CO2濃度。ppmをm³/m³に換算するため10⁶で除しています。
計算例
成人通常事務(M=0.022m³/h/人)、20人、目標1000ppm、外気420ppmの場合:
Q = 0.022 × 20 × 10⁶ ÷ (1000 − 420) = 758 m³/h
1人あたりに換算すると758÷20 ≒ 38 m³/h/人で、建築基準法シックハウス対策条項の30m³/h/人を上回ります。
建築基準法シックハウス対策の30m³/h/人
建築基準法施行令20条の8では、居室の機械換気設備の必要換気量として0.5回/h以上(住宅居室)、または1人あたり30m³/h以上(その他の居室)が定められています。この30m³/h/人という値は、CO2 1000ppm相当の設計値として広く採用されています。
SI単位系
建築設備業界では m³/h(立米/時)が標準ですが、空調機カタログでは L/s、CFM(米国)なども併用されます。1 m³/h = 0.278 L/s = 0.589 CFM の換算です。
法令基準(ビル管法・労安法・学校保健法)
| 法令 | 対象施設 | CO2基準 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 建築物衛生法(ビル管法) | 特定建築物(3,000m²以上) | 1,000ppm以下 | 2ヶ月に1回測定義務 |
| 労働安全衛生法 事務所則 | 事務所 | 1,000ppm以下(推奨5000ppm上限) | 2ヶ月1回測定 |
| 学校保健安全法 | 学校教室 | 1,500ppm以下 | 年1回以上定期検査 |
| 建築基準法シックハウス対策 | 居室 | 30m³/h/人(換気量) | 全居室・24時間換気 |
| ASHRAE 62.1(米国) | 非居住空間 | 1,000ppm(推奨) | OA率+DCVで対応 |
| EN 16798-1(EU) | 非居住空間 | CategoryⅠ:550ppm差、Ⅱ:800ppm差、Ⅲ:1350ppm差 | 外気+CO2差で規定 |
ビル管法の測定と改善命令
3,000m²以上の特定建築物では、2ヶ月に1回のCO2濃度測定が義務化されています。CO2 1000ppmを超えた場合、原因究明と改善が求められ、保健所立入検査の指摘対象となります。連続超過や重大不備の場合、都道府県知事から改善命令が出されるケースもあります。
「特定建築物」の判定
延床面積3,000m²以上(学校は8,000m²以上)の事務所、店舗、旅館、劇場、集会場、興行場、遊技場、図書館、博物館、美術館などが対象。ビル管理法(略称「ビル管法」)の名で広く知られる法律です。
CO2発生量Mの目安
1人あたりのCO2発生量Mは活動量(代謝量)で変わります。空気調和衛生工学会「空気調和・衛生工学便覧」の代表値を示します。
| 活動状態 | 代謝量(met) | CO2発生量 M | 典型場面 |
|---|---|---|---|
| 睡眠 | 0.8 | 0.013 m³/h/人 | 寝室・宿泊 |
| 安静座位 | 1.0 | 0.016 | 読書・会議聴講 |
| 軽作業 | 1.2 | 0.018 | 執務・軽い立ち作業 |
| 通常事務 | 1.4 | 0.022 | PC作業・打合せ |
| 軽度運動 | 2.0 | 0.030 | 教室指導・接客 |
| 中程度作業 | 2.5 | 0.036 | 倉庫作業・清掃 |
| 重作業・運動 | 3.5 | 0.046 | 建設現場・ジム |
年齢別の補正
児童・生徒はMがおおむね成人の70〜85%程度。乳幼児はさらに低くなります。学校保健法1500ppmは、児童のM値を織り込みつつも余裕を持たせた設定です。教室満員時の実測CO2は1500〜2500ppmに達することも多く、換気強化(窓開放5分/時)が推奨されます。
外気CO2上昇の設計影響
産業革命前の外気CO2濃度は約280ppmでした。気象庁観測では、綾里(岩手)で2024年420ppmを突破し、上昇は年々加速しています。IPCC AR6シナリオ(SSP2-4.5)では2050年頃に約500ppmに達する見込みです。
差分縮小による必要換気量増加
目標1000ppm一定でも、外気が350→420→500ppmと上昇すると分母(Ct−Co)が縮み、必要換気量は増加します。
| 外気CO2 | Ct−Co | 20人事務室必要換気量 | 1人あたり |
|---|---|---|---|
| 350ppm | 650 | 677 m³/h | 33.9 |
| 400ppm | 600 | 733 m³/h | 36.7 |
| 420ppm | 580 | 759 m³/h | 37.9 |
| 500ppm | 500 | 880 m³/h | 44.0 |
設備更新時には10〜20%の余裕率を見込んだ設計が望ましく、将来のCO2上昇を先取りする発想が求められます。ZEB(ネットゼロ・エネルギー・ビル)設計でも同様の配慮が推奨されます。
CO2センサ連動VAV(需要制御換気)
DCV(Demand Controlled Ventilation)の基本
従来の換気設計は「満員(定員)時のCO2 1000ppm」で固定風量(CAV)を回すのが一般的でしたが、在室人数は時間帯で大きく変動します。CO2センサで濃度を監視し、風量を自動制御(VAV)することで、無駄な換気による空調エネルギーを削減します。
省エネ効果
執務室・会議室・教室での実測事例では、CAVからDCVへの切替で年間空調エネルギー10〜30%削減の報告があります。特に会議室(占有率10〜40%と変動大)での効果が顕著です。
ハイブリッド運用
MFA(最小外気風量)を確保しつつ、CO2濃度に応じて上乗せするハイブリッド運用が主流。ビル管法1000ppm/学校1500ppmを超えないよう、目標CO2 800〜900ppmでセットポイントを設定し、機械的安全マージンを取る運用です。
センサの精度と設置場所
NDIR(非分散型赤外線)方式の産業用センサが標準。誤差±50ppm、経年ドリフト対策のため定期校正(1年に1回目安)が必要。設置は還気ダクト内または居住域(FL+1.5m)が推奨で、給気口や外気導入口の直近は避けます。
オフィス・学校・会議室での実務
オフィス(ビル管法対応)
3,000m²以上の特定建築物は2ヶ月1回のCO2測定義務。近年のフリーアドレス・ハイブリッドワーク普及で在席率が変動しやすく、DCV導入で快適性と省エネを両立する事例が増加。ワークプレイス管理業(FM)の重要KPIとなっています。
学校教室(コロナ後の換気強化)
文部科学省「学校における新型コロナウイルス感染症対策」で窓開放5分×時/常時開放が推奨。CO2モニターを教室設置し、視覚化でリテラシー教育も兼ねる自治体が増えています。学校保健安全法基準1500ppm超えが常態化していた教室環境の是正が進行中。
会議室・打合せスペース
密閉度が高くCO2蓄積が早い。10人×2時間で1500ppm超えるケースが多く、DCVまたは在席検知型の外気強制導入が必須。ハドルルーム・防音ブース等の小空間ほど問題化しやすい傾向。
飲食店・カラオケボックス
喫煙・飲食・発話でCO2以外(有機臭・水蒸気)も蓄積。ビル管法対象外でも、東京都受動喫煙防止条例や食品衛生法HACCPで換気強化が要請されます。
スポーツジム・スタジオ
運動時のCO2発生量は安静時の3〜5倍(M=0.046)。20人のグループレッスン教室では必要換気量が3,000m³/hを超えることも。冷暖房負荷と換気量のバランス設計が難しく、全熱交換器の活用が有効。
映画館・ホール・地下街
建築物衛生法対象。満員時に1000ppmを維持する換気設計に加え、興行終了時の急激な変動への追従性が課題。CO2連動制御+CO/O2複合センサ導入が主流化しています。
よくある間違い・注意点
- 外気CO2を350ppmと仮定 — 過去の教科書値。現在は420ppm前後、将来500ppmに向かうため、差分縮小で必要換気量が10〜30%増加します。設計時は最新値を採用してください。
- 目標1500ppm設定 — 学校保健法は1500ppmですが、ビル管法・労安法は1000ppmが上限。事務所を1500ppm設計すると違法状態です。
- CO2発生量M=0.02一律 — 活動レベルで倍以上変わります。ジム・工場・教室ではMを大きく取り、居住・会議室では0.018〜0.022が標準です。
- 建基法30m³/h/人を絶対値と誤解 — 30m³/h/人はCt=1000ppm、Co=350ppm、M=0.02の想定に基づく設計値。前提が変われば必要換気量は変わります。
- 換気回数(回/h)と換気量(m³/h)の混同 — 建築基準法住宅は0.5回/h、非住宅居室は30m³/h/人。混用すると2〜3倍の誤差になります。
- 全熱交換器の隔測性(EA→OA混入) — 一部の全熱交換器は排気(EA)→給気(OA)への混入が5〜10%あり、必要換気量を上乗せする必要があります。カタログのAHRIレーティングで確認を。
- CO2センサの経年ドリフト — NDIRセンサでも1年で±50〜100ppm誤差が生じます。定期校正しないと過剰換気(エネルギー浪費)または過小換気(法令違反)の原因に。
- 感染症対策で無闇に外気100% — コロナ禍で一時見られた対応。空調エネルギー激増と加湿・除湿負荷増、結露リスクを招きます。目的別に、CO2・粒子(PM2.5)・微生物(菌類)を分けて対策すべき。
関連する規格・法令
- 建築物衛生法(建築物における衛生的環境の確保に関する法律) ― 特定建築物のCO2 1000ppm以下、温湿度、粉じん等の空気環境基準。
- 労働安全衛生法 事務所衛生基準規則 ― 事務所のCO2 1000ppm以下、労働者用の環境基準。
- 学校保健安全法 学校環境衛生基準 ― 学校教室のCO2 1500ppm以下、年1回以上定期検査。
- 建築基準法施行令 第20条の8 ― シックハウス対策として住宅居室0.5回/h、非住宅居室30m³/h/人の機械換気設備義務。
- JIS A 1454 ― 換気量測定方法。特定建築物の定期測定に採用。
- JIS B 7981 ― 二酸化炭素自動計測器。NDIRセンサの性能要件。
- ASHRAE Standard 62.1 ― Ventilation for Acceptable Indoor Air Quality。米国の換気設計標準、DCVの規定を含む。
- ISO 16000-26 ― 室内空気-Part 26:二酸化炭素の自動測定。
- EN 16798-1(欧州) ― Energy performance of buildings - Ventilation for buildings。CO2差分ベースのカテゴリ規定。
参考文献・公的資料
CO2濃度制御・換気設計・室内空気質について、以下の公的機関・学会の資料を参照してください。
- 厚生労働省 建築物衛生法 ― 特定建築物の空気環境管理基準、CO2 1000ppmの公式解説。
- 中央労働災害防止協会 事務所衛生基準規則 ― 労働安全衛生法に基づく事務所のCO2基準。
- 文部科学省 学校環境衛生管理マニュアル ― 学校保健安全法に基づく教室の換気・CO2基準。
- 国土交通省 シックハウス対策(建築基準法) ― 全居室24時間換気・化学物質規制の公式資料。
- 気象庁 大気中CO2濃度 ― 綾里(岩手)・南鳥島・与那国島の観測データ。外気CO2の実測値。
- 産業技術総合研究所 計量標準総合センター(NMIJ) ― CO2ガスの計量標準と認証標準物質。
- 空気調和・衛生工学会(SHASE) ― 「空気調和・衛生工学便覧」「HASS基準」等の実務標準。
- 日本産業標準調査会(JISC) ― JIS A 1454、JIS B 7981など換気関連規格の索引。
- ASHRAE Standard 62.1 ― 米国の換気設計標準規格。DCV規定を含む国際参考基準。
- WHO Roadmap to improve and ensure good indoor ventilation ― COVID-19以降の室内換気改善のWHO指針。
よくある質問(FAQ)
20人・目標1000ppm・外気420ppmの必要換気量は?
成人通常事務(M=0.022m³/h/人)前提で 約758 m³/h。1人あたり38m³/h、建築基準法30m³/h/人を上回る適正水準です。
なぜCO2 1000ppmが基準?
CO2そのものが1000ppmで有害となるわけではなく、室内空気の汚染度合いの指標としてCO2が使われます。人の呼気・体臭・粉じん等の総合的な汚染指標として、1000ppmが快適性と実務的な設計値のバランスから選ばれています。労安法での急性影響上限は5000ppmです。
外気CO2が上がると必要換気量はどうなる?
差分(Ct−Co)が縮小するため必要換気量が増加します。外気350→420ppmで約12%増、350→500ppmで約30%増。設備更新時は将来上昇を織り込んで10〜20%余裕率を見込む設計が推奨されます。
ビル管法と労安法・学校保健法の違いは?
ビル管法(3,000m²以上の特定建築物)と労安法(事務所)は1000ppm、学校保健法は1500ppmと基準が異なります。学校児童のCO2発生量は成人の70〜85%程度であることを織り込みつつ、余裕を持たせた設定です。ただしコロナ以降の窓開放推奨で実効値は下がっています。
DCV(需要制御換気)の省エネ効果は?
会議室・執務室では10〜30%の年間空調エネルギー削減が実測報告されています。特に在席率が時間帯で大きく変動する空間で効果大。ASHRAE 62.1でも推奨される制御方式です。
建築基準法の30m³/h/人はどこから来た?
CO2発生量M=0.02m³/h/人、目標CO2 1000ppm、外気350ppmを前提とした設計値。外気CO2上昇や活動量の高い空間では30m³/h/人では不足するケースがあり、実測ベースの再設計が推奨されます。
換気回数と換気量は同じ?
異なります。換気回数(回/h)=風量÷室容積、換気量(m³/h)=風量そのもの。建築基準法住宅は0.5回/h、非住宅居室は30m³/h/人。両者を混同すると2〜3倍の設計誤差を起こします。
CO2センサの精度と校正周期は?
NDIR方式で誤差±50ppm、経年ドリフトのため1年に1回の校正推奨。ビル管法の定期測定は校正済みの基準器で行う必要があります。校正未実施のセンサでの制御運転は、過剰換気(エネルギー浪費)や過小換気(法令違反)の原因になります。
換気だけでは感染症対策として不十分?
換気はエアロゾル濃度の希釈に有効ですが、飛沫の直接感染は防げません。マスク・座席配置・換気・清掃の組み合わせが必要。CO2 1000ppm以下維持は最低条件で、コロナ禍では600〜800ppm目標で運用する施設も増えました。
全熱交換器導入で必要換気量は減る?
いいえ、必要換気量は同じですが、熱回収により空調エネルギーが50〜80%削減されます。冬期・夏期の外気導入負荷を大幅に減らせるため、大規模建築での標準装備となっています。ただし、EA→OAの微量混入(2〜10%)があるため、汚染質の高い排気には注意。
教室の窓開放は何分で足りる?
文部科学省・厚労省ガイドラインでは、40人教室で休み時間5〜10分の窓全開を推奨。CO2 2000ppm→800ppm程度まで下がります。冬期は暖房負荷とのバランスで対角窓15cm常時開放+休み時間全開が現実解です。
外気導入量と換気量は同じ?
基本的に同じですが、循環方式(還気+外気)の設備では、外気導入量(OA)+還気量(RA)=給気量(SA)の内訳になります。CO2希釈に効くのは外気導入量のみで、還気だけを増やしてもCO2は下がりません。DCV制御ではOAダンパー開度が制御対象です。
実務ケーススタディ
ケースA:オフィスビルのDCV改修
延床5,000㎡・在席150名の特定建築物。CAV運転で年間空調電力450MWh→CO2センサ連動DCVに更新後325MWh(28%削減)。年間電気代削減350万円、CO2排出削減45t。投資回収期間3.8年で完了。ビル管法測定値も800〜950ppmで安定運用。
ケースB:小学校教室の窓開放運用
40人教室、対角窓15cm常時開放+休み時間5分全開でCO2 1000〜1300ppmに維持。冬期は暖房負荷が20%増となるものの、CO2濃度は学校保健法1500ppm以内をクリア。CO2モニター視覚化により、教員・児童ともに空気質意識が向上。
ケースC:貸会議室のCO2見える化サービス
50室の貸会議室運営で、各室にIoT型CO2モニターを設置。1500ppm超過でスタッフに自動通知、外気強制導入または窓開放を案内。顧客満足度が向上し、リピート率が15%増。差別化サービスとして時間単価200円上乗せに成功。
ケースD:飲食店(個室焼肉)の換気強化
密閉個室10室の焼肉店で、CO2+CO複合センサ設置。焼肉時の燃焼CO2上乗せを織り込み、目標CO2 900ppmで換気強制運転。ロースター真上の局所排気+個室全体換気の二段構えで、コロナ対策と法令遵守を両立。1500ppmを超えることなく運用中です。