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シールドガスMAGTIG溶接

シールドガス流量 計算ツール(MAG/MIG/TIG)|電流別最適流量・月間ガス代・ブローホール防止

溶接電流・ノズル径・溶接法(MAG/MIG/TIG)からシールドガスの最適流量、1時間・月間消費量、月間ガス代目安を即算出。CO2・Ar・MAG20(Ar80%+CO2 20%)・He混合ガスの選定基準、ブローホール(気孔欠陥)・アンダーカット・スパッタを防ぐ最低流量、風防設置・突出し長・チップ距離・待機時ガスセーバーの実務ノウハウを、JIS Z 3253・ISO 14175・労働安全衛生規則の公的規格に基づき解説します。

最終更新:2026-07-30/監修:計算ツールズ編集部

シールドガス流量(MAG/TIG)ツール

計算式・流量目安の考え方

溶接法別の基準式(経験則)

MAG(CO2/MAG20): 15 + 電流I ÷ 25 (L/min)

MIG(Ar100): 12 + I ÷ 28

TIG(Ar100): 8 + I ÷ 40

MAGはCO2の比重(1.98 g/L)による自然沈降が期待でき流量少なめ、TIGはAr(1.78 g/L)の乱流耐性が低く、かつ精密溶接のため電流あたりの必要流量が少ない、という経験式です。日本溶接協会・JIS Z 3253準拠の技術資料に基づく実務値。

ノズル径による下限

最低流量 ≥ ノズル内径(mm) × 0.9 (L/min)

ノズル径16mmなら14.4 L/min以上を最低確保。これ以下だと乱流でシールドが乱れます。逆にノズル径10mmで30 L/min流すと出口流速過大で乱流を招き、大気巻き込みが増加。ノズル径と流量のマッチングが重要です。

ガス密度と沈降特性

CO2は空気より重く(空気比1.53)溶接部に留まりやすい。Arは重く(1.38)沈降性良好、Heは軽く(0.14)上昇するためTIG(上向・立向)で不利。溶接姿勢と使用ガスの組合せで実効シールド性能が変わります。

溶接法別 シールドガス選定

溶接法推奨ガス用途特徴
MAG(半自動)CO2 100%SS400・SM材の一般構造低コスト・深い溶込み・スパッタ多
MAG(半自動)Ar80%+CO2 20%(MAG20)薄板・美観重視・自動化スパッタ少・ビード美麗・コスト中
MIG(半自動)Ar 100%アルミ・銅・チタン非鉄金属の必須ガス
MIG(半自動)Ar+O2 2〜5%SUS薄板アーク安定・ビード濡れ良
TIGAr 100%SUS・チタン・薄板高品質最も一般的なTIGガス
TIGAr+He 25〜75%厚板アルミ・銅高入熱・深溶込み
TIGAr+H2 2〜5%SUSオーステナイトビード濡れ・スピード向上
プラズマAr(パイロット)+Ar/H2(シールド)薄板精密キーホール溶接
ステンレスバックシールドAr 100%裏波・配管突合せ裏面酸化防止・置換必須

電流別 推奨シールドガス流量早見(L/min)

電流(A)MAG(CO2)MAG20MIG(Ar100)TIG(Ar100)推奨ノズル径
501717149φ10
10019191610φ12
15021211712φ14
20023231913φ16
25025252114φ16
30027272315φ18
35029292517φ18
40031312618φ20
50035353021φ22
60039393323φ25

屋外・扇風機・空調風の影響下では上記+20〜30%増加、または風防設置。特にTIGは風速1m/sで欠陥発生します。

ガス起因の代表欠陥と対策

ブローホール(気孔)

ビード表面/内部に見られる球状穴。ガス流量不足・風の影響・突出し長過大・ノズル汚れが原因。対策は流量20〜30%増加、風防設置、ノズル清掃、突出し長15mm以下維持。JIS Z 3104(放射線透過試験)で検出。

ピット(表面気孔)

ビード表面の小さな穴。母材表面の油・水分・錆・塗料が原因になることが多く、シールドガス改善だけでは解決しないケースも。母材をワイヤーブラシで清掃、脱脂を徹底。

アンダーカット

ビード脇の母材が溶け落ちて溝状になる欠陥。電流過大・トーチ角度不良・シールドガスの品質(Ar比率不足)が原因。ガスによってはウィービング幅の再設定も必要。

スパッタ多発

特にCO2 100%で顕著。MAG20(Ar80%+CO2 20%)に変更するとスパッタ大幅減、清掃工数削減。ワイヤー突出し長10〜15mm、電圧・電流の適正化(短絡モード→スプレー移行)も併せて調整。

タングステン酸化(TIG)

Ar流量不足でタングステン電極が空気に触れ、青紫〜黒色に変色。寿命1/5に短縮。研磨し直しでも根本解決せず、流量再設定・後流ガス(ポストフロー)3〜5秒確保が必要。

裏面酸化(SUS配管)

SUS突合せ溶接の裏面が青紫色に酸化。裏波溶接ではバックシールド(裏面Ar置換)必須で、酸素濃度100ppm以下まで置換してから溶接開始。医薬品配管ではJIS G 3459やISO 15612に厳格な酸化色ランク基準あり。

ガスコスト削減の実務

1本あたりのガス価格目安(2026年)

ガス種容量価格目安単価
CO2液化30kg(15,000L)3,500円0.23円/L
MAG20(Ar80+CO2 20)7m³(7,000L)4,800円0.69円/L
Ar 100%7m³(7,000L)5,600円0.80円/L
Ar 100% 液化170L(液)=約130m³50,000円0.38円/L
He 100%7m³25,000円3.57円/L

削減施策

ガスセーバー(先行/遅れガス制御)で待機時流量オフ・アークオン時のみ供給→30%削減、②圧力調整器の精度再点検、逆火防止装置に併設した流量計で実流量管理、③液化Ar切替で0.80→0.38円/Lへコスト半減(月間使用500m³以上の工場向け)、④MAG20→CO2切替可能な用途は切替で年間コスト半減、⑤ワイヤー突出し長最適化で電流あたりのガス消費最小化。

月間コスト試算(MAG 200A/日8時間/月20日)

推奨流量23 L/min × 60分 × 8時間 × 20日 = 220,800 L/月。CO2なら50,800円/月、MAG20なら152,000円、Arなら177,000円。ガスセーバー導入で30%削減=CO2で年間18万円、Arで年間64万円のコスト削減効果があります。

業界・現場での使い方

鉄工所・鉄骨製作

SS400・SM490の一般構造用でMAG溶接大量使用。CO2ガス消費量管理が原価の3〜5%。ロボット化案件はセーバー活用でガス代半減。JIS Z 3841(半自動溶接技能者)資格者が実務主体。

SUS配管製作(食品・製薬)

TIGアルゴン100%+バックシールドで高品質溶接。特に医薬品GMP対応・食品HACCP対応の配管は溶接部の裏波品質と酸化色ランクが検査対象。ガス代がプロジェクトコストの5〜10%を占めます。

自動車ボディ・シャシー

ロボット溶接での安定シールドガス供給。MAG20主流でスパッタ最小化。生産ライン内の流量計・ガス圧センサーで異常自動検知、品質不良の連続発生を防止。

アルミ製品(サッシ・車両)

アルミMIG(Ar100)またはTIG(Ar+He)。厚板は入熱確保のためHe混合(25〜50%)で溶込み深さ改善。ガス代高い(He 3.57円/L)ため厳密な流量管理と設備固定化が経済性の鍵。

造船・橋梁の大型構造

片面溶接大電流400〜500Aが多く、ノズル径大(φ22〜25)+高流量35〜40 L/min。大電流サブマージアーク(SAW)併用でガス+フラックス管理。JIS Z 3841/Z 3821溶接施工要領書(WPS)必須。

屋外現場(建築鉄骨・プラント)

風速1m/s以上で欠陥発生リスク急上昇。風防設置・流量30%増・タープテント風下溶接が現場ルール。JIS Z 3841技能者検定でも「屋外条件」評価が別枠。

電流・電圧・速度の実務パラメータ

MAG/MIG半自動の板厚別電流・電圧・溶接速度の目安です。JIS Z 3841技能者検定・日本溶接協会技術資料に基づく実務推奨値。

板厚(mm)ワイヤー径電流(A)電圧(V)速度(cm/min)
1.6φ0.980〜12018〜2035〜45
2.3φ0.9110〜15020〜2235〜45
3.2φ1.0140〜18022〜2530〜40
4.5φ1.2170〜22024〜2730〜40
6.0φ1.2200〜26026〜3025〜35
9.0φ1.2〜1.4250〜32028〜3225〜35
12.0φ1.4280〜36030〜3420〜30
16.0φ1.6320〜40032〜3620〜30
19.0以上φ1.6350〜45034〜3815〜25(多層盛)

電流大→溶込み深、電圧大→ビード幅広、速度大→溶込み浅・ビード細。この3要素と入熱量(J/mm)の関係を理解して、シールドガス流量とセットで最適点を探ります。

よくある間違い・注意点

  • 流量計と実流量のズレ — フローメーター上流の圧力(Ar 0.2〜0.3 MPa)が変わると実流量が変動。定期的に流量計校正・圧力調整器点検を。特にボンベ交換直後は初期圧力高くて流量過多になりがち。
  • 流量過多で経済性悪化 — 25 L/minで十分な条件で40 L/min流している例が現場で多い。適正流量+10%程度のマージン、それ以上は無駄。乱流でむしろ大気巻き込みの逆効果。
  • 屋外強風でも標準流量 — 風速1m/s超で乱流→気孔多発。風防または流量30%増、風速3m/s超なら中断が原則。
  • ノズル径細くて流速大 — φ10ノズル+30 L/minは出口流速4 m/s超で乱流。φ14〜16が標準。ノズル径×0.9〜1.5倍流量帯が安定範囲。
  • 後流ガス(ポストフロー)0秒 — TIGでビード温度が下がるまでガス供給継続しないと酸化。3〜5秒(電流あたり0.1〜0.2秒/A)確保。
  • ワイヤー突出し長過大 — MAGで突出し長20mm超は電気抵抗発熱でワイヤー先端の予熱→シールド不足で気孔発生。10〜15mmが標準、大電流で15〜20mm。
  • ガスホース内の空気残留を溶接開始時に流出させない — 待機後の初期3〜5秒はガス純度が低い(前ガス機能で解消可能)。溶接開始直後の欠陥は「ホース内空気」を疑う。

関連する規格・法令

  • JIS Z 3253 ― 溶接用及び熱切断用ガス。CO2・Ar・Ar+CO2混合・He・O2・H2の純度規格と識別色を規定する国内標準。
  • ISO 14175 ― Welding consumables — Gases and gas mixtures for fusion welding and allied processes。溶接用ガスの国際規格。
  • JIS Z 3841 ― 半自動溶接技能者評価試験の方法及び判定基準。半自動(MAG/MIG)技能者資格の基準。
  • JIS Z 3821 ― 手溶接技能者評価試験の方法及び判定基準。TIG含む手溶接資格の基準。
  • JIS Z 3104 ― 鋼溶接継手の放射線透過試験方法。ブローホール・気孔欠陥の検出手順。
  • JIS Z 3841 技能者検定 ― 溶接施工要領書(WPS)・溶接施工法確認記録(PQR)の作成標準。
  • 労働安全衛生規則 261条〜265条 ― アーク溶接等の作業(有害光線・粉じん)への安全管理義務。
  • 高圧ガス保安法 ― 高圧ガスの容器・保管・移動の規制。溶接ガス管理の一次法令。
  • 労働安全衛生法 特定化学物質等障害予防規則 ― 溶接ヒュームの有害物対策(2021年新規定)。
  • ISO 15612 ― 溶接施工要領書と施工法確認の国際規格。

参考文献・公的資料

溶接技術・ガス選定・法規制の最新情報は、以下の公的機関・学会・業界団体の一次資料を参照してください。

※本ページの流量目安は経験式に基づく参考値です。実際の溶接施工では、母材の材質・板厚・開先形状・溶接姿勢・気象条件(風速・湿度)・要求品質(JIS/AWS/ISO等の適用規格)により最適流量が変わります。特に医薬品・食品・原子力・航空機・圧力容器の溶接は、溶接施工要領書(WPS)による品質管理と有資格技能者(JIS Z 3841/Z 3821)による施工が法定要件です。屋外・強風下や有害物取扱職場での溶接は、労働安全衛生規則・特定化学物質等障害予防規則(溶接ヒューム)・高圧ガス保安法への確実な適合が必要で、安全衛生責任者・作業主任者の管理下で実施してください。

よくある質問(FAQ)

MAG 200Aのガス流量は?

15+200÷25=23 L/minが経験式による標準値。実務では20〜25 L/minのレンジで運用します。ノズル径16mm前提。屋外や大電流でスパッタ多発時は+3〜5 L/min増量。逆に自動化ラインで安定条件が確立していれば18〜20 L/minまで下げてコスト削減可能。

MAGとMIGのシールドガスの違いは?

MAG(Metal Active Gas)は活性ガス(CO2 100%またはMAG20=Ar80%+CO2 20%)を使用し、鉄鋼系に対応。MIG(Metal Inert Gas)は不活性ガス(Ar 100%)で、アルミ・銅・チタン等の非鉄金属や高品質SUSに対応。両者は使用ワイヤー・電源設定も微妙に異なります。

TIGでArをケチるとどうなる?

タングステン電極が空気(酸素・窒素)に触れて青紫〜黒色に酸化、寿命が1/5に短縮。ビード表面も酸化色付着(SUSでは青紫の変色)で外観不良。ポストフロー(後流ガス)を必ず3〜5秒確保することが重要です。

ガス代削減の実務策は?

①ガスセーバー(先行/遅れガス制御)導入で待機時流量オフ→30%削減、②液化Ar切替でm³単価半減、③MAG20→CO2切替可能な用途は切替でコスト半減、④適正流量への見直し(過剰流量停止)、⑤ワイヤー突出し長最適化、⑥風防設置で流量増を回避。

屋外溶接で気孔が出るのは?

風速1m/s以上で乱流によりシールドガスが吹き飛ばされ、大気(酸素・窒素)を巻き込むためです。対策は風防・タープ設置、流量30%増加、風速3m/s以上なら中止。JIS Z 3841技能者検定でも屋外条件は別枠評価。

ノズル径と流量のマッチングは?

ノズル内径(mm)×0.9〜1.5倍が最適流量帯。φ16なら14〜24 L/min。φ10で30 L/min流すと出口流速4m/s超で乱流、φ22で15 L/min流すと逆に流速不足でシールド範囲が狭くなる。ノズル径選定は電流(=溶接部の大きさ)に応じます。

CO2 100%とMAG20どちらが良い?

コスト重視・厚板・深溶込みが必要ならCO2 100%。スパッタ少・薄板・美観重視・自動化ラインならMAG20(Ar80%+CO2 20%)。MAG20はCO2の3倍程度のガス代ですが、清掃工数・仕上げ工数を含むトータルコストで有利になるケースが多い。

Ar+H2 5%は何に使う?

SUS(オーステナイト系)TIG溶接の高速化・ビード濡れ性改善用。水素の還元効果でビード外観が美麗、施工速度10〜20%アップ。ただし炭素鋼・二相ステンレス・チタンでは水素脆化を招くため使用禁止。医薬品配管でも要注意です。

裏波溶接のバックシールドとは?

SUS配管突合せ溶接で、裏面の酸化を防ぐためにAr等の不活性ガスで裏面を置換する技法。置換完了(酸素濃度100ppm以下)を確認してから溶接開始します。医薬品配管ではJIS G 3459やISO 15612に厳格な酸化色ランク(6段階)の品質基準あり。

He混合ガスはどんなときに使う?

厚板アルミ・銅の高入熱・深溶込みが必要な場合。Ar+He 25〜75%混合で電圧が高くなり(He→高電圧化)、入熱が増大。ただしHeは3.57円/L と高価(Arの4.5倍)、供給量限界もあり、コスト・調達面で使用範囲は限定的です。

ワイヤー突出し長の適正値は?

MAG/MIG半自動で10〜15mmが標準、大電流300A超では15〜20mm。20mm超は電気抵抗発熱でワイヤー先端が予熱→シールド不足で気孔発生。逆に5mm以下はチップ焼損・ノズル詰まりのリスク。トーチ角度もあわせて調整します。

溶接ヒュームの規制は?

2021年に労働安全衛生法「特定化学物質等障害予防規則」で溶接ヒュームが追加規制対象に。屋内溶接作業は個人ばく露測定と換気対策(全体換気・局所排気)が義務化。マンガン濃度0.05 mg/m³以下のばく露基準あり。特に閉所・タンク内溶接は要注意。