接地抵抗値 計算ツール|A/B/C/D種の許容値・接地線サイズ・年次点検 電技解釈 第17条
電気設備の技術基準の解釈 第17条で規定される接地工事4種別(A種・B種・C種・D種)の許容抵抗値と接地線最小径を即算定。B種は高圧側1線地絡電流(Ig)と中性点接地方式から150÷Ig または 600÷Ig で自動計算。漏電遮断器(RCD)の有無による500Ω緩和特例、土壌抵抗率別の接地棒本数、年次点検、JIS C 0364(IEC 60364)シリーズまで、第一種・第二種電気工事士および電気主任技術者の現場実務を1ページで網羅します。
接地抵抗値 計算機(A/B/C/D種)
計算式と考え方
接地工事4種別 基本式
A種:10 Ω 以下
B種:150 ÷ Ig(Ω以下) ※1秒以内自動遮断は300÷Ig、1秒以内高速遮断は600÷Ig
C種:10 Ω 以下(漏電遮断器付は500 Ω 以下)
D種:100 Ω 以下(漏電遮断器付は500 Ω 以下)
接地工事の許容抵抗値は電気設備の技術基準の解釈(電技解釈) 第17条で規定されます。地絡・漏電が発生したとき、機器の外箱電圧を人体安全域(概ね50V以下)に抑えるとともに、漏電遮断器・過電流保護装置を確実に動作させるための工学的条件を満たす値です。
B種接地の計算例
高圧側1線地絡電流Ig=15A、非接地方式なら:
R = 150 ÷ 15 = 10 Ω 以下
Ig=30A、抵抗接地方式(1秒以内遮断)なら:
R = 600 ÷ 30 = 20 Ω 以下
Igは高圧側の地絡故障で流れる想定電流で、電力会社・電気主任技術者が事前に算定・宣言します。同じB種接地でも高圧側条件で10Ω以下だったり50Ω以下だったりと変動する点が、他の3種別と大きく異なる特徴です。
タッチ電圧・ステップ電圧の観点
接地抵抗が高いと、地絡電流により地表面に電位差が生じ、人体に危険なタッチ電圧・ステップ電圧が発生します。IEC 60479-1では50V/AC・120V/DCが安全限界の目安。接地工事はこの限界を守る第一防波堤です。
接地工事4種別 対応表
電技解釈第17条・第18条・第19条・第29条に基づく4種別の全体像を整理します。
| 種別 | 対象電圧・機器 | 最大抵抗値 | 接地線最小径 | 典型例 |
|---|---|---|---|---|
| A種 | 高圧・特別高圧機器の外箱・鉄台 | 10 Ω 以下 | 2.6mm(5.5sq)以上 | キュービクル、高圧変圧器、進相コンデンサ |
| B種 | 高圧-低圧混触防止(変圧器2次中性点) | 150(300/600)÷Ig Ω | 2.6mm(5.5sq)以上 | 柱上変圧器、キュービクル低圧側中性線 |
| C種 | 300V超 低圧機器の外箱 | 10 Ω 以下(RCD付500 Ω) | 1.6mm(2sq)以上 | 三相400V動力機、大型モータ |
| D種 | 300V以下 低圧機器の外箱 | 100 Ω 以下(RCD付500 Ω) | 1.6mm(2sq)以上 | 家電・エアコン室外機・食洗機・IH・OA機器 |
実務で最も頻出するのはD種(100Ω以下)で、住宅・店舗・オフィスの一般的な低圧機器が対象。三相200V(相間電圧≒220V)はD種で足り、三相400VはC種必要と、電圧レベルで種別が変わる点に注意。
接地線サイズ規定(内線規程・電技解釈)
接地線は地絡電流を安全に大地へ流す導体で、想定電流と機械的強度から最小径が規定されます。
| 種別 | 最小径(軟銅線) | 断面積換算 | 備考 |
|---|---|---|---|
| A種 | 2.6mm 以上 | 5.5sq 以上 | 機械的強度考慮 |
| B種 | 4mm 以上(高圧)/2.6mm(低圧側) | 14sq / 5.5sq | 電流容量+強度 |
| C種 | 1.6mm 以上 | 2sq 以上 | 移動電線は3.5sq可撓性 |
| D種 | 1.6mm 以上 | 2sq 以上 | 移動電線は3.5sq可撓性 |
電動機・大容量機器では過電流遮断器の定格に応じた接地線サイズを内線規程1350条で規定。20A→2sq、50A→5.5sq、100A→14sq、200A→22sq…と拡大していきます。IV(絶縁ビニル)、CV(架橋ポリエチレン)電線が代表格。
土壌抵抗率と必要接地棒本数
接地抵抗は土壌抵抗率ρ(Ω・m)と接地電極の形状・寸法で決まります。同じ接地棒でも地域・季節で抵抗値が2〜10倍変動する点に注意。
| 土壌 | 抵抗率 Ω・m | 1.5m接地棒1本の目安 Ω |
|---|---|---|
| 沼地・湿地 | 10-50 | 10-30 |
| 粘土質(湿潤) | 50-100 | 30-60 |
| 粘土質(乾燥) | 100-500 | 60-300 |
| 砂質(湿潤) | 500-1,000 | 300-600 |
| 砂利・礫 | 1,000-5,000 | 600-3,000 |
| 岩盤・凍土 | 5,000-10,000+ | 3,000-10,000+ |
接地棒を並列に打つと抵抗値は減少しますが、単純に1/n にはならず、電極間距離が近すぎると相互干渉で効率低下。接地棒同士は電極長の2倍以上離すのが実務原則です。岩盤・乾燥地では、深井戸接地(30m以上)や水平網状(メッシュ)接地、接地抵抗低減剤(ベントナイト系)の活用が定石になります。
接地抵抗の測定方法
電位降下法(3電極法)
接地電極E、電位電極P、電流電極Cの3電極を配置し、E-C間に電流を流し、E-P間の電位差から抵抗を測定する標準法。E-C間の距離は接地電極長の10倍以上、E-P間はE-Cの約62%が測定原則。JIS C 1304に規定。
簡易2電極法
電気工事現場で頻用。既設接地(水道管等)を補助電極として使い、E-P間で測定。精度は電位降下法より劣るが即測に便利。日常点検・完成検査に採用。
クランプ式接地抵抗計
接地線をクランプするだけで測定でき、接地棒抜き取り不要。多重接地系統や既設設備の非破壊測定に威力。マルチ計測器・共立電気計器等が製造。
年次点検の記録義務
電気事業法・保安規程で年1回以上の測定・記録が求められる。自家用電気工作物では電気主任技術者が実施・記録し、経済産業省・電力会社への提出を要する場合がある。
業界・現場での応用
住宅・店舗の新設エアコン工事
エアコン室外機・食洗機・IHクッキングヒーター・エコキュートのD種接地。取付工事と同時に接地棒(1.5m×銅覆鋼棒)を打込み、接地端子台に接続。感震ブレーカー・漏電ブレーカー(30mA/0.1秒)と組み合わせて感電・火災を予防。
工場動力・産業機械
三相400V級の産業機械にC種接地(10Ω以下)を施工。大電流機器では接地線を2箇所以上に分散し、地絡ループを確実に形成。搬送機・工作機械・射出成形機・産業ロボットで頻用。労働安全衛生規則333条による。
高圧受変電設備(キュービクル)
A種(機器外箱10Ω)、B種(変圧器2次中性点)、D種(低圧盤)の全種別を施工する典型現場。電気主任技術者が毎年点検義務。避雷器・断路器・遮断器・進相コンデンサ等の接地系統を統合設計。JIS C 4620キュービクル準拠。
データセンター・IT機器
OA機器・サーバの接地はD種で基本100Ω以下だが、実務は10Ω以下を目指す高信頼性設計。ノイズ電流の逃げ道確保、SPD(サージ保護)動作の確実化、雷サージ対策(等電位ボンディング)を目的とし、JIS A 4201の建築物避雷設備規格も参照します。
太陽光発電・EV充電設備
PVパネル架台のA種/D種接地(高圧連系はA種、低圧はD種)、EV充電スタンドは急速充電(50kW以上)がC種、普通充電はD種。落雷対策・感電予防で厳格な接地施工が求められ、経産省・電気工事士会のガイドラインが参照される。
医療機関・精密機器
ICU・手術室ではJIS T 1022医用室の電気設備基準で「等電位化」を要求。100Ω以下の医用接地を機器・患者ベッド・金物間で共通化し、微小電流(マイクロショック)を防止。医療機器はミクロショック回避のため厳しい漏れ電流管理が必要。
よくある間違い・注意点
- C種とD種を混同 — C種=300V超、D種=300V以下。三相200V(相間電圧≒220V)はD種で足り、400VはC種必要。工場改修・設備更新で電圧区分を確認せず旧D種のまま流用すると法令違反になります。
- B種を固定値と誤解 — B種は「150(300/600)÷Ig」で高圧側条件により変動する動的値。標準は5-10Ω程度になりますが、必ずIgを電力会社に確認し、計算根拠を保安規程に記録してください。
- 接地棒1本で100Ω達成前提 — 沼地・粘土地では1本で達成可能でも、岩盤・砂利地・乾燥地では複数本並列でも100Ω達成困難。深井戸接地(30m以上)、水平網状接地、接地抵抗低減剤の検討が必要です。
- 接地端子共用 — A種・B種・C種・D種は原則独立接地。共用は電技解釈第18条(共通接地・統合接地)の要件を満たす場合のみ可能。異なる系統の異常電流が他系統に流れると誤動作・機器損傷の恐れ。
- 接地線の腐食・断線を放置 — 屋外接地棒の錆・雨水侵食で接地線根本が腐食し、実効抵抗が上昇。年次点検の目視・掘削確認、接続部の防食キャップ(絶縁テープ+熱収縮+防食コーティング)が必要。
- コンクリート打込み後の追加接地不可 — 建物完成後に接地棒を追加打込みするのは物理的困難。基礎接地(コンクリート内鉄筋利用)を新築時に必ず計画するのが定石。IEC 60364-5-54に方式が規定。
- 接地抵抗計の校正忘れ — 測定器も精度劣化するため、年1回以上の校正が必要。JCSS(計量標準トレーサビリティ)認定校正機関で校正証明書を取得します。
関連する規格・法令
- 電気事業法・電技解釈 第17条 ― 接地工事4種別の抵抗値・接地線サイズを規定。日本の電気設備工事の基本法。
- 電技解釈 第18条(統合接地)・第19条(共通接地) ― 複数系統接地の統合・共通化の要件。
- 電技解釈 第29条 ― 機械器具の鉄台及び外箱の接地。C/D種の適用範囲を規定。
- 内線規程 JEAC 8001 ― 日本電気協会。接地線サイズ・工法・接地棒仕様の実務詳細。
- JIS C 0364シリーズ ― 建築電気設備(IEC 60364準拠)。国際整合の接地設計指針。
- JIS C 1304 ― 接地抵抗計。測定器の性能・確度要件。
- JIS A 4201 ― 建築物等の雷保護。避雷設備と等電位ボンディング。
- JIS T 1022 ― 医用室の電気設備基準。マイクロショック対策・医用接地。
- 労働安全衛生規則 第333条 ― 移動電線・電動機械器具の接地義務。
- IEC 60479-1 ― 人体の電流影響。安全電圧50V AC・120V DCの根拠。
参考文献・公的資料
接地工事の詳細設計・法令適用は、以下の公的機関・業界団体の一次資料を参照してください。
- 経済産業省 産業保安・安全 ― 電気事業法・電気設備の技術基準・電技解釈の公式運用情報。
- 日本電気協会(JEA) ― 内線規程JEAC 8001、高圧受電設備規程、系統連系規程などの公式発行元。
- 日本産業標準調査会(JISC) ― JIS C 0364(建築電気設備)・JIS C 1304(接地抵抗計)等の索引・閲覧。
- 日本電気工事士協会 ― 電気工事士(第1種・第2種)向け技術情報・法改正解説。
- 日本電気技術規格委員会(JESC) ― JEAC・JESCの電気技術規格の公式運用機関。
- 厚生労働省 職場のあんぜんサイト ― 労働安全衛生規則第333条(接地義務)などの一次情報。
- International Electrotechnical Commission (IEC) ― IEC 60364(建築電気設備)・IEC 60479(人体影響)の国際規格出典。
- 東京電力パワーグリッド 系統連系ハンドブック ― 電力会社側の接地・保護協調ルール。
- 電気技術者試験センター ― 電気工事士・電気主任技術者国家試験の公式情報。過去問で接地問題が頻出。
- 日本電気検査協会 電気安全 ― 保安点検・年次点検の実務ガイドライン。
よくある質問(FAQ)
接地抵抗はなぜ測る必要が?
漏電時の電流を大地に安全に逃がすため。抵抗が高いと機器外箱に危険電圧が残り感電・火災の恐れ。電気事業法・保安規程で年1回以上の測定・記録義務があります。
D種接地100Ωの根拠は?
漏電時の外箱電圧を安全域(概ね50V以下)に抑える計算値。漏電遮断器(0.5秒以内動作)を併設すれば500Ωまで緩和されます。IEC 60479-1の人体安全電圧規格と整合。
接地棒は何本必要?
土壌抵抗率次第。沼地・湿地なら1.5m接地棒1本で100Ω達成可能。岩盤・乾燥地では複数並列や深井戸接地(30m以上)、接地抵抗低減剤の併用が必要になります。
接地抵抗の測定方法は?
接地抵抗計(アーステスタ)で電位降下法(3電極法)による測定が標準。JIS C 1304規定。既設設備はクランプ式接地抵抗計で非破壊測定可能です。
接地線サイズはどう決める?
種別と機器容量による。A種2.6mm(5.5sq)、B種2.6-4mm、C/D種1.6mm(2sq)以上が基本。過電流遮断器の定格に応じた拡大が内線規程1350条で規定されます。
C種とD種の違いは何?
使用電圧が境目。300V超はC種(10Ω以下)、300V以下はD種(100Ω以下)。三相200Vは相間電圧220V相当でD種、三相400VはC種必要です。
B種接地の抵抗値が変動する理由は?
B種は「150(300/600)÷Ig」で高圧側1線地絡電流Igにより変動する動的値。電力会社が算定・宣言したIgを保安規程に記録し、その都度計算する必要があります。
共通接地は許される?
電技解釈第18条(統合接地)・第19条(共通接地)の要件を満たす場合のみ可能。異常電流の混在による誤動作リスクがあるため、原則は独立接地です。
雷対策の接地は普通の接地でよい?
建築物等の雷保護はJIS A 4201で別体系の設計が求められ、避雷突針・引下げ導線・接地系統・等電位ボンディングを統合します。通常の機器接地とは目的が異なり、10Ω以下が目安。
医療機関の接地は特別?
ICU・手術室はJIS T 1022で「マイクロショック」防止の等電位化を要求。100Ω以下の医用接地を機器・患者ベッド・金物間で共通化します。医用電気機器の漏れ電流管理も厳格。
接地棒の材質は?
銅覆鋼棒(CCR)が主流。φ14mm×1.5mが標準寸法で、耐腐食性と機械的強度を両立。海岸部や酸性土壌では純銅棒・ステンレス棒を使用する事例もあります。JIS C 2818が規格。
接地測定の頻度は?
電気事業法の保安規程で年1回以上が原則。自家用電気工作物では電気主任技術者による点検・記録が義務。工場やビルの規模・危険度に応じて月次点検を実施する事業所もあります。