計算ツール
デマンド契約電力電気料金省エネ

デマンド値(30分デマンド) 計算ツール|契約電力・月基本料金の実践的最適化

高圧受電の30分デマンド値を、指定30分間の消費電力量から瞬時に算出。実績値契約制で決まる契約電力(直近12ヶ月の最大デマンド値)と、月基本料金への影響を可視化します。ピークカット・ピークシフト・デマンドコントローラー・自家発補完・蓄電池ピークシェーブなど、電気事業法・電気供給約款・経済産業省の電力契約制度に整合した実務施策を、工場・ビル・商業施設・データセンターの現場基準で解説します。

最終更新:2026-08-08/監修:計算ツールズ編集部

デマンド値(30分デマンド) 計算機

計算式と契約制度

基本式

デマンド値 kW = 30分間の消費電力量 kWh × 2

月基本料金 = 契約電力 kW × 単価 円/kW/月 × 力率補正係数

電力会社の取引用計器(スマートメーター含む)は30分ごとに平均電力を測定します。30分の kWh を2倍することで1時間換算の kW(=デマンド値)が得られます。この値の直近12ヶ月の最大値が、高圧受電契約における「契約電力(実績値制)」の基準になります(供給約款による)。

力率補正の仕組み

力率補正係数 = 1 − (実測力率 − 85) × 0.01

電気事業者の供給約款では基準力率85%を境に、力率が1%上がるごとに基本料金1%割引、下がるごとに1%割増となります(高圧・特別高圧共通)。90%達成で5%割引、95%で10%割引、100%で15%割引が一般的な運用です。進相コンデンサ(SC)設置が基本料金削減の王道施策となる根拠です。

契約電力の決まり方(実績値制)

高圧500kW未満の契約は実績値制が原則で、当月と過去11ヶ月(合計12ヶ月)のうち最大デマンド値が翌月からの契約電力になります。1回のピーク超過で1年間高い基本料金が確定する厳しい仕組みで、ピーク管理の投資回収が高い理由でもあります。

実績値制と協議制の違い

契約電力の決定方式は受電容量と契約種別で異なります。実務では以下の3方式を理解しておく必要があります。

方式対象決まり方変更頻度
実績値制高圧500kW未満(業務用電力等)過去12ヶ月の最大30分デマンド毎月自動見直し
協議制高圧500kW以上/特別高圧顧客の負荷設備申請 → 電力会社協議年1回の設備申請時
負荷設備契約低圧・小口業務設備容量合計に係数適用設備変更時のみ

500kW以上の大口需要家は協議制となり、原則として過去実績ではなく契約時申請ベースで契約電力が決定されますが、実運用値が契約電力を超えた場合はペナルティ(超過金)対象となるため、実質的にデマンド管理は必須です。

基本料金単価早見表(高圧・特高)

電力会社・料金プランごとに基本料金単価は異なります。以下は2026年時点の主要電気事業者の高圧業務用電力(夏冬季平均)の目安値です。実際の契約単価は最新の供給約款・特定契約書を参照してください。

契約種別基本料金単価(円/kW/月)備考
低圧電力(動力)約1,100 - 1,40050kW未満、契約電力=負荷設備×係数
高圧業務用(500kW未満)約1,600 - 1,900実績値制、当ツールの標準対象
高圧業務用(500kW以上)約1,500 - 1,800協議制、大口向け割引あり
特別高圧(2000kW以上)約1,300 - 1,700受変電設備を需要家が保有
季時別電力約1,800 - 2,100夏冬季高負荷時間帯単価UP

単価は再エネ賦課金・燃料費調整額を含みません。年間コスト評価時は必ずで総額を確認してください。

デマンド削減効果早見表

基本料金1,650円/kW/月を前提に、デマンド削減量ごとの年間コスト削減効果を試算しました。ピークカット投資の判断材料に使用してください。

デマンド削減量月基本料金削減年間基本料金削減投資回収の目安(500万円投資時)
-5 kW-8,250 円-99,000 円約50年 — 単独では不採算
-10 kW-16,500 円-198,000 円約25年
-20 kW-33,000 円-396,000 円約13年
-30 kW-49,500 円-594,000 円約8.4年
-50 kW-82,500 円-990,000 円約5年 — 採算ライン
-100 kW-165,000 円-1,980,000 円約2.5年 — 好採算
-200 kW-330,000 円-3,960,000 円約1.3年 — 短期回収
-500 kW-825,000 円-9,900,000 円約0.5年 — 大口投資回収

実際にはピーク削減施策の複合効果(電力量料金削減、蓄電池補助金、脱炭素インセンティブ)を加味すると、投資回収期間はさらに短縮されます。

力率割引・割増の仕組み

力率(Power Factor, PF)とは有効電力/皮相電力の比で、電力会社の設備をどれだけ効率的に使えているかの指標です。低い力率は電力会社の変圧器・送電線を余分に占有するため、基本料金にペナルティ(割増)がかかります。

力率別 基本料金補正

力率補正係数月基本料金への影響(100kW時)
60%1.25(25%割増)+41,250 円/月
70%1.15(15%割増)+24,750 円/月
80%1.05(5%割増)+8,250 円/月
85%(基準)1.000(基準)
90%0.95(5%割引)-8,250 円/月
95%0.90(10%割引)-16,500 円/月
100%0.85(15%割引)-24,750 円/月

力率改善の手段

誘導性負荷(モーター・変圧器・蛍光灯安定器)は遅れ力率になるため、進相コンデンサ(SC)で無効電力を打ち消し、力率100%に近づけます。単相・三相・自動力率調整装置(APFR)などタイプがあり、負荷特性で選定します。具体的な容量計算は力率改善コンデンサ容量ツールを参照してください。

ピークカット・シフトの具体策

デマンド削減の手法は大きく分けて「使用時間の移動(シフト)」と「使用量そのものの削減(カット)」の2種類があります。

時間シフト施策

  • 製造工程の朝晩振り分け — プレス機・溶解炉など高負荷工程を昼ピーク時間帯から夜間へ移動
  • 蓄熱空調(氷蓄熱・水蓄熱) — 夜間電力で製氷し昼間の冷房に活用
  • 蓄電池ピークシェーブ — 深夜充電/昼間放電、リチウムイオン電池活用が主流化
  • 電気給湯器の夜間沸き上げ — エコキュート/ヒートポンプ給湯機の夜間深夜運転

ピークカット施策

  • 空調温度緩和 — 夏28℃冬20℃で消費電力10-15%減、クールビズ・ウォームビズと連動
  • 照明LED化 — 消費電力40-60%減、投資回収3-5年
  • 高効率モーター(IE3/IE4)化 — 更新時に電力3-8%減
  • インバータ制御(VVVF) — ポンプ・ファンで20-40%減
  • 需給調整契約(DR) — 電力広域機関/資源エネルギー庁のデマンドレスポンス市場参画で報酬受取

デマンドコントローラー活用

デマンドコントローラーは30分デマンド値をリアルタイム監視し、契約超過前に警報・自動負荷制御する装置です。導入は基本料金削減施策の王道で、投資回収3-5年、成功事例では電気代15-25%削減されます。

目標デマンド設定機能

過去12ヶ月最大値の90-95%を目標値に設定。この値超過が予測されると警報。事務所内音声アナウンス「デマンド予告 警報」で使用者に手動対応を促します。

自動負荷制御

目標値超過予測時に、あらかじめ設定した優先順位で自動的に負荷遮断。1段階目は装飾照明・自販機、2段階目は空調1系統、3段階目は生産設備という順で階層制御し、業務影響を最小化します。

時限予測制御

30分区間の残り時間(例:あと5分)と現在の使用電力から、区間末端の30分デマンド予測値を計算。予測値が目標超過なら制御開始。開始時刻からの累積で判定する30分デマンドの性質を利用した最適制御です。

クラウド遠隔監視

電力会社スマートメーターBルート連携で、Web/スマホから複数拠点の30分デマンドをリアルタイム監視。エネマネ担当者不在時もアラート通知で対応可能。ESCO事業・省エネコンサル会社が提供する主要ソリューション。

データ分析・レポート

時間帯別・曜日別・季節別のデマンド傾向をCSV/PDF出力。省エネ法定期報告書、CDP気候変動開示、SBT承認書類の基礎データとしても活用。BEMS(Building Energy Management System)と統合されるケースも多い。

導入コストと補助金

本体+設置で50-300万円(規模により)。経済産業省「省エネルギー投資促進支援事業(省エネ補助金)」や環境省の脱炭素関連補助金で30-50%補助適用可能。事業計画策定時に必ず補助金枠を確認してください。

業界での応用

工場エネルギー管理

プレス・溶解・電解・押出成形など重負荷工程のピーク管理。日本鉄鋼連盟・日本自動車工業会・電気事業連合会のガイドラインに沿って、需給調整契約(DR)報酬獲得も含めた総合的な電力ポートフォリオを構築。省エネ法(エネルギー使用合理化)の定期報告義務対応。

商業ビル・オフィス

テナント貸室と共用部の按分計算、共用部空調・照明・エレベーターのピーク管理。BEMS/EMSと連動し、テナント別使用量請求(サブメーター課金)まで対応。ビル・エネルギー・マネジメント・システム(BEMS)導入で15-30%削減の実績。

データセンター

ITラック電力+空調電力の合計デマンド管理。PUE(Power Usage Effectiveness)改善と同時に契約電力最適化。JDCC(日本データセンター協会)ガイドラインに基づき、UPS・非常用発電機・蓄電池構成で契約電力ピークを平準化。

病院・福祉施設

ライフラインとして電力供給停止が許されない現場のため、非常用発電機併用でピークカット。医療法・建築基準法に基づく非常電源設備を平常時のピークシェーブに活用する「BCP兼省エネ」設計が普及。

スーパー・小売店

冷凍冷蔵ショーケース・空調・照明が主要負荷。営業時間中の来客ピークと電力ピークが一致するため、需要抑制の余地は限定的だが、開店前・閉店後の設備プレヒート/プレクール時間シフトで数kW削減可能。

ESCO・省エネコンサル

デマンド削減額をベースに投資回収シェア契約(ESCO Guaranteed Savings Contract)を提案。日本ESCO推進協議会(JAESCO)のスキームに基づき、初期投資ゼロで顧客に導入する事業モデルの中核ツール。

よくある間違い・注意点

  • 瞬時値とデマンド値の混同 — 30分デマンドは平均値。瞬時kW計の値が140kWでも、他の時間帯で低ければ30分平均は100kW未満に収まります。逆に、瞬時120kWが30分継続すれば120kWデマンドとなります。監視画面表示の意味を必ず確認してください。
  • 契約電力ぎりぎり運用の危険性 — 1回でも超過すると翌月から12ヶ月間、その値が契約電力となります。100kW契約で110kW記録の場合、年間で(10kW×1,650円×12ヶ月)=198,000円の追加基本料金が確定。5-10%の余裕を持った運用が必須です。
  • 休日・祝日運転開始時のピーク未管理 — 月曜朝一の設備立ち上げ、空調突入電流、冷凍機起動突入で瞬発的にデマンドが跳ね上がるケース。順次起動プログラム(段階起動)で分散させます。
  • 力率対策なしでデマンド削減のみ実施 — 進相コンデンサ未設置で力率80%だと基本料金5%割増。デマンド削減とセットで力率改善も検討することが、投資対効果最大化の鉄則です。
  • デマンドコントローラー放置運用 — 導入後の設定値見直し・優先順位変更を怠り、季節変動や設備更新で効果が薄れるケース。四半期ごとのパラメータ最適化が推奨されます。
  • スマートメーターの30分値と検針票の乖離 — 検針票の「最大需要電力」は各月ごとの最大30分デマンドで、当月値のみ表示。過去12ヶ月最大は電力会社問合せかBルート情報取得が必要です。
  • 再エネ賦課金・燃料費調整の影響を忘れる — 基本料金削減額と別に、電力量料金(kWh単価)も削減されます。年間試算時は kWh 削減 × 電力量単価 も加算してください。

関連する規格・法令

  • 電気事業法 ― 一般送配電事業者(旧一般電気事業者)の供給約款、契約電力算定要領の法的根拠。経済産業省資源エネルギー庁が所管。
  • 電気事業者による供給約款 ― 東京電力パワーグリッド、関西電力送配電など各社の実績値制・協議制・力率割引の具体規定。契約電力算定要領も参照。
  • 省エネルギー法(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律) ― 特定事業者(年間1,500kL以上原油換算)の定期報告義務、中長期計画提出。デマンド管理データが基礎資料。
  • JIS C 1216 電力量計 ― 取引・証明用電力量計の性能・精度規格。30分デマンド値測定の基準器。
  • JIS C 4306 高圧受電設備 ― キュービクル式高圧受電設備の設計・施工・保安基準。
  • 電気設備の技術基準(電技解釈) ― 経済産業省令。受変電設備・保安点検の基準。
  • 電力広域的運営推進機関(OCCTO)ルール ― 需給調整契約(DR)の商品要件、能力登録手順。

参考文献・公的資料

デマンド管理・契約電力最適化の詳細情報は、以下の公的機関・業界団体の資料を参照してください。

※本ページの計算結果および契約単価は概算値です。実際の電気料金契約・料金体系は、契約先電力会社の最新の供給約款・特定契約書に従ってください。特に500kW以上の協議制契約、需給調整契約(DR)への参加、省エネ法対応の定期報告書等の法令対応業務では、電気主任技術者(電気事業法選任義務)・エネルギー管理士(省エネ法選任義務)・省エネコンサルタント等の有資格者の判断を仰いでください。

よくある質問(FAQ)

デマンド値と契約電力の違いは?

デマンド値は30分ごとに測定される平均電力(kW)で、当月のリアルタイム実測値。契約電力は過去12ヶ月の最大デマンド値(実績値制の場合)で、翌月の基本料金算定基礎になります。当月120kW記録なら、その後1年間は契約電力120kWで基本料金が課金されます。

なぜ「30分」で測るのか?

電気事業法・電気事業者による供給約款で「30分間の平均電力」と規定されているためです。国際的にも15-30分区間の平均電力(Interval Demand)が標準で、瞬時ピークではなく持続的な負荷こそ電力インフラに影響を与えるという考えに基づきます。日本ではスマートメーター普及で30分値が電力会社から自動取得可能です。

デマンドを下げると本当に得?

大いに得です。基本料金1,650円/kW/月として、10kW削減で年間198,000円、50kW削減で990,000円、100kW削減で1,980,000円の削減効果。デマンドコントローラー投資300万円でも100kW削減できれば1.5年で回収。加えて力率改善で追加5-15%削減、電力量料金(kWh)削減も同時に得られます。

デマンドコントローラーの費用対効果は?

本体+施工で50-300万円(受電容量により)。中規模工場・ビル(契約電力200-500kW)で導入時、年間電気代の10-20%(200-500万円/年)を削減する事例が多く、投資回収期間は2-5年。経済産業省の省エネ補助金・環境省の脱炭素補助金で30-50%補助が受けられれば回収期間はさらに半減します。

過去何年間のデマンドが契約電力に影響する?

原則直近12ヶ月です。当月と過去11ヶ月のうち最大値が翌月契約電力となり、13ヶ月目に落ちて過去のピークが消える仕組み。つまり1回のピークを我慢すれば12ヶ月後には料金が下がる可能性もあります。長期の投資判断ではこの12ヶ月ローリング仕様を理解した上でシミュレーションしてください。

力率と基本料金の関係は?

基準力率85%を境に、力率が1%上がるごとに基本料金1%割引、下がると1%割増。90%で5%割引、95%で10%割引、100%で15%割引。誘導電動機や変圧器等の遅れ力率負荷が多い施設では進相コンデンサ(SC)設置で95-100%を目指すのが定石で、投資回収1-3年の高効率施策です。

500kW以上の大口需要家はデマンド管理不要?

不要ではありません。500kW以上は協議制で契約電力が事前決定されますが、実運用値が契約電力を超過するとペナルティ(超過金)が発生。また、需給調整契約(DR)報酬獲得のためにも精密な負荷制御が必要です。特別高圧2000kW以上でも同様にデマンド最適化のインセンティブは大きいです。

蓄電池でピークシェーブは可能?

可能です。深夜(夜間電力)で充電、昼間ピーク時に放電することで、契約電力ピークをカット。リチウムイオン電池のkWh単価が下がった2020年代以降、事業性が改善。経産省「蓄電池補助金」・環境省「脱炭素蓄電池補助金」で50%程度の補助適用可能。300kWhクラスで4,000万円投資、年間300-500万円削減の事例あり。

需給調整契約(DR)とは?

電力広域機関(OCCTO)が運営する電力需要制御サービスの取引市場。事業者が「一定量kWの負荷抑制」を約束し、需給ひっ迫時に指令に応じて負荷カットすると報酬が支払われます。年間数百万円〜数千万円の副収入となり、大口需要家・アグリゲーター経由の中小需要家双方が参画可能。

スマートメーターのBルート情報とは?

電力会社のスマートメーターから需要家側へ30分ごとの検針値をリアルタイム提供する仕組み。電力会社に申請することで無料利用可能。デマンドコントローラー・BEMS・HEMS(家庭用)に連携すれば、リアルタイム見える化と自動制御が実現します。

デマンド超過警報が鳴った時の対処法は?

1) 空調温度緩和(冷房設定+2℃/暖房-2℃)、2) 装飾照明・自販機停止、3) 生産設備の一時停止(順次)、4) 事務所エレベーター1台停止、の順序で対応。事前に「負荷制御優先順位表」を作成し関係者に周知しておくことが重要です。停止した設備の再起動時には突入電流に注意し、時間差起動で次のピーク発生を防止します。

省エネ法の定期報告とデマンドデータの関係は?

年間エネルギー使用量1,500kL(原油換算)以上の特定事業者は省エネ法定期報告書を毎年7月末までに提出義務。デマンドコントローラーで蓄積した30分値・時刻別データは、報告書「エネルギー消費原単位」算定の基礎データとして活用可能。CDP気候変動情報開示、TCFD開示、SBT(Science-Based Targets)認証取得の基礎資料にもなります。