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非常用発電機容量選定 計算ツール|負荷kW・力率・始動余裕からBCP用kVA容量を即算出

負荷合計kW・平均力率・始動電流余裕から非常用発電機に必要なkVA容量を即算出。BCP(事業継続計画)の電源設計、UPS/蓄電池との階層構成、消防法・建築基準法の非常電源義務、燃料備蓄設計(A重油・軽油・都市ガス)、72時間BCPガイドライン、モータ始動電流の余裕係数、負荷変動対応、月1回の定期試運転、都市ガス発電機とディーゼル発電機の使い分けまで、電気設計者・BCP担当・防災管理者・データセンター運用者の実務を1画面で完結します。

最終更新:2026-07-30/監修:計算ツールズ編集部

非常用発電機容量選定ツール

入力例と結果の読み方

非常用発電機の容量選定は「必要負荷を停電時に維持するkVA」を求める作業。上のツールに負荷合計(kW)・平均力率・始動電流余裕を入力すると、必要な発電機kVA容量と機種クラスが即算出されます。

典型例として、負荷50kW・力率0.85・始動余裕1.5倍なら、50÷0.85×1.5=約88kVAとなり、中型(常設)クラスの発電機が該当します。

始動電流余裕は、モータ・エレベータ・空調機など始動時に定格電流の5〜7倍の突入電流が流れる負荷が多い場合は2倍以上の余裕を、抵抗負荷(照明・電熱)中心なら1.2倍程度で足ります。

算出したkVA容量は「メーカー標準機種で最も近い上位モデル」を選定するのが実務標準。50kVAクラス、100kVA、150kVA、200kVA、300kVA、500kVA、1000kVAといった標準ラインアップから選びます。

実際の発電機は定格の80%運転が最も効率が良く、常時100%運転は寿命を縮めるため避けます。したがって上記の計算結果に対して、さらに1.25倍程度(80%運転前提)で機種選定する保守的な設計もあります。

計算式と単位系

発電機容量(kVA) = 負荷合計(kW) ÷ 力率 × 始動電流余裕係数

単純容量(kVA) = 負荷合計(kW) ÷ 力率

発電機容量は皮相電力(kVA)で表され、実効電力(kW)を力率で除して算出します。負荷50kW・力率0.85なら単純容量は50÷0.85=58.8kVA、これに始動余裕1.5倍を掛けて88kVA。モータ・空調機など始動時の突入電流を考慮した実務容量です。

力率(Power Factor)は、実効電力(kW)÷皮相電力(kVA)で定義される値。抵抗負荷(白熱電球・電熱器)は力率1.0、モータ・変圧器・蛍光灯・LED照明は0.7〜0.9、進相コンデンサ付きの改善負荷は0.95以上。工場・オフィスの平均力率は0.85前後が標準的な設計値です。

始動電流余裕係数は、発電機が瞬時に許容できる過負荷倍率を反映した安全率。以下が実務目安です。

  • 1.2倍: 抵抗負荷主体(照明・電熱・PC等)
  • 1.5倍: 一般的なオフィス・ビル(モータ少)
  • 2.0倍: 空調機・エレベータ多め
  • 2.5倍: 工場・大型モータ多数
  • 3.0倍: 大型ポンプ・圧縮機の直入始動

用途別 発電機規模一覧

用途負荷合計推奨発電機燃料備蓄(72h)
戸建て住宅BCP3〜5kW3〜10kVA(可搬型)ガソリン30L〜
集合住宅共用15〜30kW30〜50kVA(常設)A重油500L〜
小規模診療所20〜40kW50〜75kVAA重油800L〜
中小オフィスビル50〜100kW100〜150kVAA重油1500L〜
スーパー・コンビニ本部100〜200kW200〜300kVAA重油3000L〜
大型ビル・病院300〜800kW500〜1000kVAA重油8000L〜
工場(中規模)500〜2000kW1000〜3000kVAA重油15000L〜
データセンター1000〜10000kW1500〜15000kVAA重油20000L〜
大型病院・避難所500〜1500kW750〜2000kVAA重油10000L〜

非常用発電機の詳しい解説

非常用発電機は「停電時に重要負荷を維持する予備電源」。UPSと組み合わせて瞬断ゼロ+長時間バックアップの構成が標準です。設置は消防法・建築基準法対応、燃料備蓄(24〜72時間)、定期試運転(月1回)が必須です。日本では東日本大震災(2011年)以降、BCP(事業継続計画)への関心が高まり、企業・自治体の非常用電源整備が加速。データセンター・病院・自治体庁舎では500kVA以上の大型機、コンビニ・スーパー等の一般施設でも50〜100kVAクラスの導入が定着しました。

非常用発電機は原動機の種類でディーゼルエンジン・ガスタービン・レシプロガス・燃料電池等に分類されます。国内シェア90%以上がディーゼル発電機で、A重油または軽油を燃料とし、始動から10〜40秒で定格出力に到達、24〜72時間の連続運転が可能です。都市ガス発電機はBCP用としても普及しており、燃料備蓄が不要(都市ガス直結)というメリットの反面、震災時のガス供給停止リスクが課題です。

非常用発電機の運用は「月次点検+年次負荷試験」が実務標準。消防法によると屋内消火栓・スプリンクラー・排煙設備等の防災用非常電源として発電機を設置する場合、月1回の作動点検・年1回の負荷試験(30分・定格の30%以上)が義務化されています。試験結果は消防署への年次報告が必要で、記録の保存期間は3年です。

近年はコジェネレーション(熱電併給)との連携も進んでおり、平時は自家発電+熱回収で電気+温水/蒸気を供給し、停電時にBCP電源として切替えるハイブリッド運用が病院・工場で採用されています。この場合、燃料は都市ガス+LPG備蓄の二系統併用が典型的です。

UPS・蓄電池との階層構成

BCP電源設計では、瞬断・短時間停電・長時間停電を階層的にカバーする「UPS+蓄電池+発電機」の3段構成が標準です。

UPS(無停電電源装置)

瞬時対応(0秒切替)、5〜15分の短時間バックアップ。サーバー・通信機器・重要制御機器の電源保護。

蓄電池システム

15分〜数時間のバックアップ。EDG(非常用発電機)起動までのブリッジ、または長時間停電時の追加バックアップ。

非常用発電機(EDG)

10〜40秒起動、24〜72時間の長時間運転。BCP対応の主力設備、負荷全体の維持。

コジェネ発電機

平時は自家発電・熱回収、停電時はBCP電源。都市ガス+備蓄LPGで冗長化。

データセンターの場合、UPS(バッテリー容量15分)→EDG(72時間運転)の2段構成が典型的。UPSは商用電源が瞬時に途絶えた際の0秒切替、EDGは起動から10〜40秒後に立ち上がるため、UPSがそのブリッジを担います。EDGが定格出力に達したら、UPSは自動的に発電機からの電源で運転を継続、バッテリーは充電モードに切替えます。

病院や自治体庁舎では、より高い信頼性のため「2N冗長構成」(2倍の容量の発電機を2台配置)を採用するケースが多く、1台故障時も残り1台で全負荷維持できる設計になります。

燃料備蓄と72時間BCP

非常用発電機は「燃料備蓄が運転時間の絶対制約」です。ディーゼル発電機の燃費は概ね200〜250g/kWh(A重油換算約0.25L/kWh)で、100kVAクラスの発電機(定格80kW)を72時間フル稼働させると、80×72×0.25=1,440Lの燃料が必要になります。

発電機容量定格出力(80%)24時間燃料72時間燃料
50kVA40kW約240L約720L
100kVA80kW約480L約1,440L
200kVA160kW約960L約2,880L
500kVA400kW約2,400L約7,200L
1000kVA800kW約4,800L約14,400L
3000kVA2400kW約14,400L約43,200L

燃料備蓄には危険物取扱者(乙4類など)の資格と、消防法上の危険物指定数量(A重油:1,000L、軽油:1,000L)を超える場合の届出・保管施設要件が発生します。地下タンク・屋外タンク・簡易タンクなど、備蓄量に応じた保管設備が必要です。

72時間BCP(内閣府ガイドライン推奨)を満たすには、①燃料備蓄の確保、②燃料の劣化管理(A重油は6ヶ月〜1年で入替え)、③補給ルートの確保(燃料販売店との事前契約)、の3点が実務ポイント。大災害時は燃料販売店も被災するため、複数の燃料販売店とのBCP契約が推奨されます。

モータ始動電流の余裕係数

モータ負荷は始動時に定格電流の5〜7倍の突入電流が瞬間的に流れるため、発電機容量選定で最も注意が必要な要素です。始動電流を吸収できないと発電機の電圧・周波数が大きく低下し、他の負荷にも影響します。

直入始動(全電圧始動)

定格電流の5〜7倍の突入。発電機容量は始動負荷の300〜500%が必要。小型モータ(7.5kW以下)向け。

スター・デルタ始動

始動電流を1/3に低減。中型モータ(11〜37kW)で採用。発電機容量は始動負荷の150〜200%必要。

ソフトスタータ始動

電子的に電圧を徐々に上げ、始動電流を平準化。発電機容量は始動負荷の120〜150%で済む。

インバータ始動(VFD)

周波数制御で始動電流を最小化。発電機容量は定格の110〜130%で足りる。省エネ効果も大。

大型モータの始動時に発電機の許容電圧低下(15%以内)を守るには、①モータ側でソフトスタータ・VFD採用、②始動時に他の負荷を遮断、③発電機容量を大幅に上乗せ、④モータを複数台に分割して段階的に起動、のいずれかで対応します。データセンターのポンプ・空調機、工場の圧縮機・ブロワなど大型モータの始動タイミングを段階的にスケジューリングするのが実務ポイントです。

ディーゼル/ガス発電機の使い分け

非常用発電機の主要方式であるディーゼルエンジン都市ガス/LPGには、それぞれ長所短所があり、施設特性に応じた選定が必要です。

方式長所短所典型用途
ディーゼル(A重油/軽油)燃料備蓄で自律運転、燃費良好NOx/PM排出、騒音・振動データセンター、病院、工場
都市ガス(直結)燃料備蓄不要、低排出、静音ガス供給停止で運転不可オフィスビル、商業施設
LPG(プロパン)燃料備蓄可、都市ガス代替燃料コスト高、備蓄容量制約中小施設、地方施設
ガスタービン大容量・小型、多燃料対応初期コスト高、部分負荷効率低大型発電所、大規模施設
燃料電池超低排出、静音、高効率初期コスト超高、燃料水素課題次世代・実証施設

BCP対応の観点では、震災時に都市ガス供給が停止するリスクを考慮し、ディーゼル発電機+A重油備蓄が最も信頼性の高い構成です。都市ガス発電機を採用する場合は、LPG緊急バックアップとのハイブリッド構成が推奨されます。

業界・現場での使い方

非常用発電機容量計算は、電気設備設計・BCP企画・建築確認申請から保守運用まで、幅広い実務で使われる基礎ツールです。

電気設備設計事務所

新築ビル・工場の電源設計。負荷計算・発電機選定・非常電源系統の詳細設計、消防法・建築基準法適合。

建築設計事務所

建築確認申請時の非常電源計画。ゼネコン・ハウスメーカー・設計事務所の総合連携。

BCP担当・防災管理者

企業のBCP策定。72時間運転を目指す燃料備蓄計画、避難所指定施設の追加電源設計。

データセンター運用

Tier認証(Tier III/IV)取得のための冗長設計。2N構成のEDG配置、月次負荷試験の運用管理。

病院設備管理

手術室・ICU・透析設備の非常電源。UPS+蓄電池+発電機の3段構成、10分以内の負荷復帰要件。

発電機メーカー・販売代理店

顧客向けの容量提案。ヤンマー・デンヨー・北越工業・キャタピラー等のラインアップから最適選定。

よくある間違い・注意点

非常用発電機の容量選定・運用は、規制要件・機械特性・燃料管理の3方向で誤りやすいポイントがあります。

  • 始動電流余裕不足 — モータ多いと2倍以上必要。設計時に負荷リストからモータ台数・容量・始動方式を集計。
  • 燃料備蓄不足 — 72時間対応で数千リットル。地下タンク・屋外タンクの設置スペース確保が計画段階で必要。
  • 力率の想定甘さ — オフィス0.85、工場0.75、実測して調整。進相コンデンサで改善も選択肢。
  • 負荷試験の未実施 — 消防法の年次負荷試験義務違反で行政指導の対象。定格の30%以上×30分の負荷投入試験。
  • 燃料の経年劣化 — A重油は6ヶ月〜1年で酸化・変質。定期的な入替え(燃料販売店と契約)が必要。
  • 排気ガス処理の見落とし — NOx規制対応、大都市は環境影響評価も必要な場合あり。
  • 騒音・振動対策の不足 — 屋内設置は防音・防振の対策必須。周辺住民の苦情対応。
  • ガス供給停止リスクの無視 — 都市ガス発電機は震災時に停止リスク。ディーゼルまたはLPGバックアップの併用。
  • 2N冗長構成の未検討 — Tier III/IV認証、病院、金融機関は2N冗長が事実上必須。
  • 電気主任技術者の未選任 — 出力50kVA以上の自家用電気工作物は電気事業法上、電気主任技術者選任義務。

関連する規格・法規

非常用発電機・BCP電源に関わる主要な国内法規・規格を整理します。

  • 消防法 ― 屋内消火栓・スプリンクラー・非常照明等の非常電源設置義務。年次負荷試験と作動点検の要件。
  • 建築基準法 ― 非常用エレベータ・排煙設備等の非常電源要件。建築確認申請での適合確認。
  • 電気事業法 ― 自家用電気工作物(出力50kVA以上)の設置・運用規則、電気主任技術者選任義務。
  • JIS B 8014 ― 内燃機関駆動発電装置の性能・試験方法。ディーゼル発電機の基本規格。
  • JIS B 8041 ― 陸用ディーゼル機関の性能試験方法。燃費・出力の測定基準。
  • JEAC 8001 ― 内線規程。自家発電設備の設計・施工・保守の民間規格。
  • NAS基準 ― 自家発電設備の性能証明書発行基準。全国自家発電設備協議会の民間基準。
  • 災害対策基本法 ― 指定避難所の非常電源整備の努力義務。72時間BCPの推奨。
  • 大気汚染防止法 ― NOx・SOx・PMの排出規制。都市部の発電機設置で環境影響評価。

※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。実際の設計・施工・法令適用は最新の告示・規格および所轄消防署・自治体の判断に従ってください。

参考文献・公的資料

非常用発電機・BCP電源の一次情報は、以下の公的機関・業界団体を参照してください。

※本ページの計算結果は概算です。実際の非常用発電機設計は、①負荷リストの精密集計、②始動シーケンスのシミュレーション、③燃料備蓄の消防法適合、④環境影響評価、⑤保守運用計画、を考慮した専門技術者による詳細設計が必要です。設計・施工は電気設備設計事務所・電気工事業者、法令適合は所轄消防署・自治体の指導に従ってください。

よくある質問(FAQ)

50kW負荷の発電機は?

力率0.85・始動余裕1.5倍で50÷0.85×1.5=約88kVA。メーカー標準ラインアップから100kVAクラスを選定するのが実務標準です。

燃料備蓄はどのくらい必要?

72時間BCP対応が推奨。100kVAクラス(80kW定格)で72時間フル運転なら約1,440LのA重油。地下タンク・屋外タンクの設置スペース確保が計画段階で必要です。

UPSと発電機の役割分担は?

UPSは瞬時対応(0秒切替)+5〜15分バックアップ、発電機は10〜40秒起動+24〜72時間の長時間運転。UPS→発電機の階層構成でシームレスな電源維持を実現します。

ディーゼル vs 都市ガスどちらが良い?

BCP信頼性はディーゼル+燃料備蓄が有利(震災時のガス供給停止リスク回避)。都市ガス発電機は環境負荷・静音性で優位、LPGバックアップと併用推奨。

月次点検・年次負荷試験の要件は?

消防法の非常電源として使う場合、①月1回の作動点検(始動・停止確認)、②年1回の負荷試験(定格の30%以上×30分)。試験結果は消防署への年次報告、3年間保存。

電気主任技術者は必要?

出力50kVA以上の自家用電気工作物は電気事業法上、電気主任技術者選任義務。第三種電気主任技術者(500kVA未満)で対応可能。外部委託(電気保安協会等)も可。

大型モータの始動に発電機容量はどれだけ必要?

直入始動(全電圧)は負荷の3〜5倍、スター・デルタ始動は1.5〜2倍、ソフトスタータは1.2〜1.5倍、VFDインバータは1.1〜1.3倍。適切な始動方式の選定で発電機容量を最適化します。

2N冗長構成とは?

必要容量の2倍の発電機を2台配置し、1台故障時も残り1台で全負荷維持できる冗長構成。データセンターTier III/IV、大型病院、金融機関で採用される高信頼設計です。

コジェネと非常用発電機の違いは?

コジェネは平時に電気+熱を供給する自家発電、非常用は停電時のみ運転。コジェネを停電時にBCP電源として切替えるハイブリッド運用も可能です。

可搬型発電機と常設型はどう違う?

可搬型(3〜30kVA)はガソリン/LPG燃料、キャスター付きで移動可能、戸建て・工事現場向け。常設型(30kVA以上)はディーゼル/都市ガス、屋内外に恒常設置、ビル・工場向け。BCP用途は原則として常設型を選定します。

導入コストの目安は?

50kVAクラスで200〜300万円、100kVAで350〜500万円、300kVAで800〜1,200万円、1000kVAで2,000〜3,000万円が本体価格の目安。これに設置工事(基礎・防音・排気・燃料タンク)で+30〜50%が総投資額です。