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不動産相続税金実務

相続不動産売却税 計算ツール|譲渡所得税・住民税・3000万円特別控除の実務

相続で取得した実家・土地・アパートを売却した際の譲渡所得税・住民税・復興特別所得税を、売却価格・取得費・所有期間から瞬時に算出。5年超所有の長期税率(20.315%)・5年以下短期税率(39.63%)、取得費加算の特例空き家譲渡3000万円特別控除、相続税と譲渡税の関係、確定申告実務まで、国税庁公式資料に基づき解説します。

最終更新:2026-08-02/監修:計算ツールズ編集部

相続不動産売却税 計算機

計算式と税率

基本式

譲渡所得 = 売却価格 − (取得費 + 譲渡費用) − 特別控除

税額 = 譲渡所得 × 税率

不動産の売却益(譲渡所得)には、所得税・復興特別所得税・住民税がかかります。相続不動産の売却では、被相続人(亡くなった方)の取得日と取得費を引き継ぎます。

長期譲渡所得(5年超所有)の税率

合計税率 20.315% = 所得税15% + 復興特別所得税0.315% + 住民税5%

売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば「長期譲渡所得」となり、税率は20.315%。相続不動産は被相続人の取得日から通算するため、多くの場合が長期に該当します。

短期譲渡所得(5年以下所有)の税率

合計税率 39.63% = 所得税30% + 復興特別所得税0.63% + 住民税9%

5年以下は「短期譲渡所得」で税率39.63%。長期の約2倍。被相続人が短期間で取得した不動産(相続直前に購入した等)は短期に該当する可能性があります。

10年超の居住用軽減税率

自分の住まいを10年超所有して売却した場合は、譲渡所得6000万円までの部分に14.21%(所得税10.21%+住民税4%)の軽減税率が適用されます。ただし相続後に居住していない空き家には適用不可。

取得費の計算方法

取得費は「被相続人が購入した際の価格 + 諸費用」で計算します。ただし取得費が不明な場合は、売却価格の5%(概算取得費)を取得費として計上できます。

取得費の種類計算方法備考
実額取得費(判明時)購入価格+諸費用-減価償却売買契約書・領収書が必要
概算取得費(不明時)売却価格 × 5%先祖代々の土地・古い家屋に適用
相続税評価額取得費として使えない要注意(誤解が多い)

取得費に含められる諸費用:

  • 登録免許税、不動産取得税、印紙税
  • 仲介手数料、土地整地費用
  • 建物の改良費用(修繕費除く)
  • 被相続人の相続登記費用(相続時に支払ったもの)

建物部分は、経過年数に応じた減価償却を差し引きます。木造なら33年、鉄骨造なら51年、鉄筋コンクリート造なら70年の耐用年数で計算(非事業用の1.5倍)。

空き家譲渡3000万円特別控除

被相続人の居住用家屋(空き家)を相続し、一定要件を満たして売却した場合、譲渡所得から3000万円を控除できる特例(措法35条3項)。2026年時点で適用期限は2027年12月31日まで(延長の可能性あり)。

適用要件(主要なもの)

  • 被相続人が一人暮らしだったこと(相続開始直前)
  • 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却
  • 売却代金が1億円以下
  • 1981年5月31日以前に建築された家屋(旧耐震)
  • 相続時から売却時まで居住・貸付・事業に使用されていないこと
  • 売却前に耐震リフォームまたは建物解体して売却
  • 相続人3人以上の場合、控除額は各人2000万円まで(2024年改正)

3000万円控除の適用で、譲渡所得が3000万円以下なら税額ゼロ。適用要件が細かいため、事前に税理士・国税庁の相談センターで確認が必須です。

取得費加算の特例(相続税分の取得費加算)

相続税を支払って相続した不動産を、相続開始翌日から3年10ヶ月以内に売却する場合、支払った相続税の一部を取得費に加算できる特例(措法39条)。

加算額 = 相続税額 × (譲渡不動産の相続税評価額 ÷ 相続財産総額)

この特例により譲渡所得が圧縮され、譲渡所得税を減額できます。ただし空き家3000万円特別控除との併用は不可(選択適用)。どちらが得かは個別ケースで比較する必要があります。

建物の減価償却計算

相続不動産に建物が含まれる場合、取得費計算で建物部分の減価償却を差し引く必要があります。非事業用の減価償却率(耐用年数×1.5)を使用。

建物構造耐用年数(非事業用)償却率備考
木造・軽量鉄骨33年0.031戸建て住宅の主流
金属造(骨格材3mm以下)28年0.036プレハブ住宅
金属造(骨格材3〜4mm)40年0.025軽量鉄骨造マンション
金属造(骨格材4mm超)51年0.020重量鉄骨造
鉄筋コンクリート造(RC)70年0.015マンションの主流
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC)70年0.015高層マンション

建物取得費 = 建物購入価格 × (1 − 償却率 × 経過年数)

例: 木造住宅を2000万円で購入し30年経過している場合、建物取得費 = 2000万円 × (1 − 0.031 × 30) = 2000万円 × 0.07 = 140万円 となります。土地は減価償却対象外なので購入価格そのまま。

典型ケース別 税額シミュレーション

ケース売却価格取得費控除税額
実家売却(取得費判明・長期)3000万円2000万円なし約200万円
実家売却(取得費不明・長期)3000万円150万円(5%)なし約579万円
空き家特例適用(長期)3000万円150万円3000万円0円
空き家特例適用(長期)5000万円250万円3000万円約355万円
取得費加算適用(長期)5000万円2000万円+加算500万円なし約508万円
短期売却(5年以下)3000万円150万円なし約1130万円
大型物件(長期)1億円500万円なし約1930万円

取得費の判明有無、特例適用の可否、所有期間で税額が大きく変わります。売却前に必ず税理士に相談し、複数のシナリオを試算してから決断してください。

相続から売却までの流れ

1. 相続発生・遺産分割協議(1〜3ヶ月)

被相続人の死亡届、法定相続人の確定、遺産分割協議書の作成。誰が不動産を相続するかを決定。相続人全員の同意が必要です。

2. 相続登記(3〜6ヶ月・2024年から義務化)

法務局で相続による所有権移転登記を行います。2024年4月から3年以内の登記が義務化(過料10万円)。売却前に完了必須。

3. 相続税申告・納付(10ヶ月以内)

相続財産が基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人数)を超える場合、相続開始日から10ヶ月以内に申告・納付。取得費加算特例の適用可否がここで決まります。

4. 売却活動・売買契約(3〜6ヶ月)

不動産仲介業者に査定依頼、媒介契約(専属専任・専任・一般)、購入希望者との売買契約。空き家特例の3年期限を意識して逆算スケジュール管理を。

5. 引渡・決済(1ヶ月)

登記移転、代金決済、物件引渡し。この日が「譲渡日」となり、翌年の確定申告対象。

6. 確定申告(翌年2/16〜3/15)

売却翌年の確定申告で譲渡所得税を申告・納付。必要書類: 売買契約書(取得時・売却時)、譲渡費用領収書、住民票(空き家特例時は住民票除票)、相続関係書類等。

売却時の諸費用の内訳

不動産売却では譲渡所得税以外にも多くの費用がかかります。譲渡費用として取得費と同様に控除できるものと、控除対象外のものがあるので注意が必要です。

費用項目金額目安譲渡費用
仲介手数料売却価格×3%+6万円+税○対象
印紙税(売買契約書)1〜6万円(価格別)○対象
登記費用(抵当権抹消)1〜3万円△(売主負担時)
測量費用30〜80万円○対象
境界確定費用30〜100万円○対象
解体費用坪3〜5万円○対象(3000万円控除時に必須のケースあり)
耐震リフォーム費100〜300万円○対象(3000万円控除条件)
ハウスクリーニング5〜20万円×対象外
引越し費用5〜30万円×対象外
住宅ローン一括返済手数料1〜5万円×対象外

譲渡費用として認められる支出は「その譲渡のために直接要した費用」に限られます。ハウスクリーニング・引越し等は生活のための費用と見なされ譲渡費用に含められません。

使い方・活用シーン

相続実家の売却検討

親から相続した実家を売却するかリフォームして貸すか、税額試算で判断材料に。3000万円控除の期限(相続後3年)も同時管理。

取得費不明ケースの試算

戦前・戦後に取得した先祖代々の土地は取得費不明が多く、概算取得費(5%)適用で税額が高額に。事前試算で資金計画を。

相続人複数での税負担配分

共有名義の不動産売却では、各相続人が持分に応じて譲渡所得を按分。税負担配分と手取り試算を各自別々に計算。

特例併用可否の比較

取得費加算特例と3000万円控除は併用不可。どちらが有利かをシミュレートし、税理士と相談する前の情報収集に。

よくある間違い・注意点

  • 相続税評価額を取得費と誤解 — 相続税申告時の「相続税評価額」は取得費ではありません。取得費は被相続人が購入した時の実際価格。相続税評価額を取得費と誤ると、譲渡所得が過少計算され、税務調査で追徴課税されます。
  • 売却タイミングの管理不足 — 空き家3000万円控除は「相続開始日から3年経過する日の属する年の12月31日」までに売却必須。3年ギリギリでは仲介期間で間に合わないケースが多く、2〜2.5年で売却完了を目指すべき。
  • 取得費書類の紛失 — 被相続人が数十年前に購入した契約書・領収書が見つからない場合、概算取得費5%適用で税額が数百万円増加。物置・仏壇の書類を徹底捜索するか、抵当権情報から購入価格を推定する方法も。
  • 減価償却の失念 — 建物部分は経過年数分の減価償却を差し引く必要があります。木造33年、RC造70年で、購入から30年経過なら建物取得費の90%以上が減価償却済。
  • 相続登記の未実施で売却できず — 2024年から相続登記が義務化(3年以内)。未登記のままでは売買契約が締結できず、相続人全員の合意と登記完了が売却の前提。
  • 短期譲渡と長期譲渡の判定ミス — 判定は「売却年の1月1日時点」の所有期間。年末に売却すれば5年になるが、年始売却では4年で短期扱いになるケースも。年末調整の視点で判断。
  • 空き家特例の要件見落とし — 一人暮らし要件、1981年以前建築、耐震リフォームか解体、貸付・事業使用なし、等の要件すべてを満たす必要。1つでも欠けると3000万円控除が使えません。
  • 確定申告の失念 — 譲渡所得は給与所得と分離課税でも申告必須。無申告加算税15%・延滞税・重加算税35%等のペナルティが重い。特例適用時も必ず申告が必要です。

関連する法令・制度

  • 租税特別措置法35条3項(空き家特例) ― 被相続人居住用家屋の3000万円特別控除の根拠法。
  • 租税特別措置法39条(取得費加算) ― 相続税の取得費加算特例の根拠法。
  • 所得税法33条(譲渡所得) ― 譲渡所得の計算方法の基本規定。
  • 所得税法38条(取得費) ― 取得費の範囲を規定。
  • 不動産登記法(2024年改正) ― 相続登記の義務化(3年以内、過料10万円)。
  • 相続税法 ― 相続税の計算・申告・納付。基礎控除(3000万+600万×法定相続人数)。
  • 民法(相続編) ― 法定相続分・遺留分・遺産分割協議の法的枠組み。
  • 復興特別所得税 ― 東日本大震災復興財源のため所得税額の2.1%が加算(2013〜2037年)。

参考文献・公的資料

より正確な税額計算・特例適用要件は、以下の公的機関の資料を参照してください。

※本ページで算出される税額は概算です。実際の税額は取得費の詳細・特例適用要件の充足・相続税納付状況等で変動します。相続不動産の売却は税額が数百万〜数千万円になるケースも多く、必ず税理士・不動産鑑定士・司法書士など有資格者に相談し、国税庁公式資料・最新税制改正情報に基づいた申告を行ってください。特に空き家3000万円特別控除・取得費加算特例の適用は要件が複雑で、事前確認を強く推奨します。

よくある質問(FAQ)

相続不動産の売却で税金はかかる?

売却益(譲渡所得)にかかります。相続時にすでに相続税を支払っていても、売却時の譲渡所得税は別途課税されるため、二重課税の緩和として取得費加算の特例があります。売却益がなければ税金はかかりません。

取得費が不明な場合はどうする?

売却価格の5%を概算取得費として計上できます。ただし譲渡所得が大きくなるため税額が高額に。契約書・領収書は必ず被相続人の書類を徹底捜索してください。抵当権情報から購入価格を推定する方法もあります。

空き家3000万円控除の要件は?

1)被相続人が一人暮らし、2)相続後3年以内の売却、3)売却代金1億円以下、4)1981年以前建築、5)相続後未使用、6)耐震リフォームか解体して売却、が主な要件。1つでも欠けると使えません。

所有期間は被相続人からカウント?

はい。相続で取得した不動産は、被相続人の取得日から所有期間をカウントします。多くの相続不動産は長期譲渡(5年超、20.315%)に該当します。

取得費加算と3000万円控除は併用できる?

できません。選択適用で、どちらが有利かは個別ケースで比較必要。取得費加算は相続税を多く支払ったケースで有利、3000万円控除は取得費が低い(古い実家)ケースで有利になりやすい傾向。

共有名義で相続した不動産の税額は?

各相続人の持分割合に応じて譲渡所得を按分し、各自が確定申告。特例適用も各自別々に判定します。空き家特例3000万円は2024年改正で3人以上の相続人だと各2000万円に減額されます。

相続登記しないと売却できない?

できません。売却には相続登記(所有権移転登記)が必須。2024年から3年以内の登記が義務化されたため、売却予定の有無に関わらず速やかに登記すべきです。

相続不動産を賃貸に出してから売却するとどうなる?

賃貸に出した時点で「非事業用→事業用」に切り替わり、空き家特例3000万円控除の適用対象外になります。相続後に売却するか賃貸するかは早期に決断すべきです。

確定申告はいつ、どこで?

売却翌年の2月16日〜3月15日、最寄りの税務署。特例適用の場合は追加書類が必要(住民票除票・被相続人の戸籍・耐震改修証明書等)。e-Taxでのオンライン申告も可能。

相続不動産の売却損は他の所得と通算できる?

できません。不動産の譲渡所得は分離課税で、給与所得・事業所得等との損益通算は不可。同じ年の他の不動産譲渡益との内部通算のみ可能です。

売買契約書を紛失した場合は?

取得費の証明ができない場合、概算取得費(売却価格の5%)適用となります。ただし、住宅ローン契約書・抵当権設定情報・登記識別情報等から購入価格を証明できるケースもあり、税理士に相談を。

相続税と譲渡所得税の関係は?

相続時: 相続税評価額に対して相続税(基礎控除超過分)。売却時: 売却益に対して譲渡所得税。両方かかりますが、相続税を支払った場合は取得費加算特例で譲渡所得税を減額可能(3年10ヶ月以内の売却)。