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飽和蒸気圧 計算ツール|Tetens式・Wagner式で温度別水蒸気圧・露点・湿度換算

水の飽和蒸気圧(Saturation Vapor Pressure)を、-30〜200℃の温度域で瞬時計算。Tetens式・Wagner式・Antoine式による近似計算に対応し、hPa/mmHg/Pa/atmで換算表示。相対湿度から絶対湿度・露点温度も算出。気象庁の気象観測(WMO推奨式)、IAPWS(国際水・水蒸気性質協会)基準に準拠し、気象・空調・食品工学・冷凍サイクル設計・除湿計算などの実務に対応します。

最終更新:2026-08-05/監修:計算ツールズ編集部

飽和蒸気圧 計算機

計算式と近似式の使い分け

Tetens式(気象分野で標準)

Es = 6.1078 × 10^(7.5T/(237.3+T)) [hPa]

気象庁・WMO(世界気象機関)推奨の実用近似式。-30〜60℃の範囲で誤差0.1%以下と高精度。単純な形で暗算・スプレッドシート計算にも向き、湿度計算・露点計算の標準式として最も広く使われています。氷面用は係数を9.5、b=265.5に変更。

Wagner式(工学計算で高精度)

ln(Es/Pc) = (Tc/T)[a₁τ + a₂τ^1.5 + a₃τ³ + a₄τ^3.5 + a₅τ⁴ + a₆τ^7.5]

τ = 1 - T/Tc。三重点(0.01℃)から臨界点(374℃)までカバー。IAPWS-IF97(産業用国際標準)の基礎式で、蒸気タービン・原子炉・化学プラント設計の高精度計算に使用されます。

Antoine式(化学工学の伝統的手法)

log₁₀(P) = A - B/(T + C)

水では A=8.07131, B=1730.63, C=233.426(1〜100℃, mmHg)。多くの物質のパラメータがDIPPR・NIST・化学便覧に収録されており、蒸留設計・溶媒回収の標準式として使用。

飽和蒸気圧の物理的意味

飽和蒸気圧とは、密閉容器内で液相と気相が動的平衡にあるとき、気相の水蒸気が示す圧力です。温度上昇で分子の運動エネルギーが増し、より多くの分子が液相から気相へ移行するため、蒸気圧は温度と共に急激に上昇します。

基準となる特異点

温度飽和蒸気圧備考
三重点0.01℃6.117 hPa気・液・固が共存(絶対的な物理定点)
氷点0℃6.108 hPa水面基準
室温25℃31.7 hPa実験室基準温度
体温37℃62.8 hPa呼気の水分量
沸点100℃1013.25 hPa1気圧下
臨界点374.15℃22.06 MPa気液の区別消失

Clausius-Clapeyron式による理論的背景

dP/dT = ΔH_vap × P / (RT²)

蒸気圧の温度依存はClausius-Clapeyron式(蒸発熱ΔH_vap = 40.66 kJ/mol at 100℃)から導出でき、Antoine式・Wagner式はこの微分方程式の実験的近似解です。指数関数的な急激な増加を示すのが特徴です。

温度別飽和蒸気圧早見表

気象庁「気象観測の手引き」および理科年表に基づく水の飽和蒸気圧です。

温度℃Es (hPa)Es (mmHg)絶対湿度上限 g/m³
-201.030.770.88
-102.601.952.14
06.114.584.85
58.726.546.79
1012.289.219.39
1517.0512.7912.83
2023.3917.5517.29
2531.6923.7723.02
3042.4631.8630.32
3556.2942.2439.55
4073.8555.4151.14
50123.592.6282.94
60199.4149.6129.8
70311.9234.0197.6
80473.7355.4293.4
90701.3526.2424.1
1001013.25760.0598.0
15047573568
2001555111665

湿度計算(相対・絶対・比湿)

飽和蒸気圧を基準に、様々な湿度指標が定義されます。

相対湿度(RH)

RH(%) = (Ea / Es) × 100

実蒸気圧Eaが飽和蒸気圧Esの何%かを示す最も一般的な指標。50%RH = 気温での飽和量の半分の水蒸気を含む。快適域は40〜60%。低すぎると乾燥、高すぎると結露・カビの原因。

絶対湿度(AH)

AH(g/m³) = 216.7 × Ea / (T + 273.15)

単位体積の空気中に含まれる水蒸気の質量。同じ相対湿度でも気温が違えば絶対湿度は変わり、寒冷地の冬(気温5℃・60%RH → AH 3.3 g/m³)は非常に乾燥しています。

比湿(q)

q = 0.622 × Ea / (P - 0.378 × Ea) [kg/kg]

湿潤空気1 kg中の水蒸気質量。気象学・熱工学で使用。輸送過程でも保存される保存量として便利。単位は g/kg または kg/kg。

混合比(w)

w = 0.622 × Ea / (P - Ea) [kg/kg-dry air]

乾燥空気1 kg当たりの水蒸気質量。空調設計の湿り空気線図(サイクロメトリックチャート)の縦軸で使用。

露点温度と結露予測

露点(Dew Point)は、その空気の水蒸気量が飽和になる温度。空気を冷却して露点以下になると結露が発生します。

Magnus式(露点計算)

Td = (b × α) / (a - α)  α = ln(RH/100) + (a × T) / (b + T)

a=17.625, b=243.04(0〜60℃)。25℃・60%RHなら露点 16.7℃。冷たいガラス表面が16.7℃を下回ると水滴が生じます。

結露が生じやすい環境

冬場の窓ガラス

室温20℃・湿度60%(露点12℃)で窓表面が5℃なら結露発生。断熱ガラス(Low-E複層)で表面温度を10℃以上に維持すれば防止可能。

冷蔵庫内壁の霜

庫内5℃・湿度80%で扉開閉時に暖かい外気(30℃・60%RH、露点22℃)が流入すると、内壁で結露→凍結(霜)。頻繁な開閉で悪化。

データセンター空調

サーバー吸気側は22±2℃・50%RH(露点11℃)が推奨値(ASHRAE TC 9.9)。低すぎれば静電気、高すぎれば結露・機器故障。

食品保管庫

0〜5℃の冷蔵庫で霜取り時期は、庫内表面と食品表面の温度差を露点未満に抑える設計が必要。真空パック・脱酸素剤で対策。

産業応用

気象観測・予報

気温・湿度観測から露点・不快指数・降水確率を計算。気象庁アメダス・気象台の観測データはWMO推奨のTetens式で算出。台風進路予測にも湿潤大気の熱力学が反映されます。

空調・除湿設計

湿り空気線図(サイクロメトリックチャート)に基づき、冷房・暖房・除湿の必要熱量を計算。オフィスビルの熱負荷計算では、飽和蒸気圧に基づく潜熱・顕熱バランスが基礎。

食品乾燥・冷凍

米の乾燥・パスタ製造・冷凍食品の霜対策で蒸気圧管理。フリーズドライは氷の三重点(0.01℃・6.117 hPa)以下で昇華させる工程で、蒸気圧計算が必須です。

蒸気タービン・原子力

火力発電・原子力発電の主蒸気は600℃・25 MPa域で運用。IAPWS-IF97による高精度蒸気表(Wagner式ベース)が設計基準。効率0.1%改善が年間数億円の燃料節減に。

塗装・印刷

塗料の乾燥・インキの定着は露点と温湿度に強く依存。相対湿度85%以上では塗膜白化・接着不良のリスク。湿度管理された環境が高品質塗装の条件です。

半導体・電子工業

クリーンルームの湿度管理は結露(=製品不良)・静電気(=ESD破壊)の両方を防ぐバランス設計。ドライエア(露点-70℃以下)の窒素パージ工程で蒸気圧計算が必須。

他物質の蒸気圧(20℃)

物質飽和蒸気圧 (hPa)沸点 (℃)
水 H₂O23.4100
エタノール58.878.4
メタノール12864.7
アセトン24556.1
ジエチルエーテル58634.6
ベンゼン10180.1
トルエン29110.6
ヘキサン16268.7
水銀0.0016356.7
プロパン8360-42.1

よくある間違い・注意点

  • 相対湿度と絶対湿度の混同 — 同じ湿度60%でも気温5℃と35℃では絶対水分量が10倍近く違います。エアコン設定や乾燥対策では絶対湿度で判断するのが正確。
  • 近似式の適用範囲外使用 — Tetens式は-30〜60℃、Antoine式は1〜100℃が精度保証範囲。範囲外では10%以上の誤差が出ます。高温はWagner式を推奨。
  • 気圧の影響を無視 — 標高が高い場所(富士山頂-460 hPa)では沸点が下がる(88℃)。総圧-水蒸気圧-空気分圧のバランスに注意。
  • 氷面と水面の蒸気圧差 — 0℃以下では過冷却水と氷で蒸気圧が異なり、気象・食品乾燥では使い分けが必要。氷面用Tetens式は係数が異なります。
  • 不純物の効果 — 溶質を含む水溶液は蒸気圧降下(ラウールの法則)を起こし、純水値より低くなります。海水は塩分3.5%で約2%低下。
  • 湿度計の校正 — 電気式湿度計は経時変化しやすく、年1回の校正必須。塩基準法(飽和塩水溶液の平衡RH)による校正が推奨。

関連する規格・国際基準

  • WMO(世界気象機関)ガイドNo.8 ― 気象観測の国際標準。Tetens式による湿度計算を採用。
  • IAPWS-IF97 ― 国際水・水蒸気性質協会が策定する産業用水蒸気表の基準式。Wagner式ベース。
  • JIS Z 8806 ― 湿度-測定方法。相対湿度・絶対湿度・露点温度の測定手順。
  • JIS Z 8703 ― 試験場所の標準状態。20℃・65%RHの標準環境の規定。
  • JIS B 8623 ― 湿度計。乾湿球湿度計・電気式湿度計の校正基準。
  • ASHRAE Fundamentals ― 米国暖房冷凍空調技術者協会の湿り空気線図基準。
  • ISO 7726 ― 熱環境の物理量測定。労働環境の湿度管理基準。
  • 気象業務法(気象庁) ― 気象観測・予報の国内法。湿度観測の技術基準を含む。

参考文献・公的資料

※本ページの計算結果は、選択した近似式の適用範囲内で理論値を示すものです。工学設計・気象観測・法定計量に使用する場合は、IAPWS-IF97準拠の水蒸気表または気象庁公式データを優先してください。特に高温・高圧域(超臨界水など)、極低温、多成分系(海水・食塩水など)ではラウールの法則・実測データによる補正が必要です。

よくある質問(FAQ)

沸騰する条件は?

飽和蒸気圧が外気圧と等しくなる温度で沸騰します。1気圧(1013 hPa)なら水は100℃、富士山頂(標高3776 m、約620 hPa)では約88℃で沸騰。圧力鍋(2気圧)では120℃、真空調理器(0.1気圧)では45℃で沸騰します。

湿度計算はどう行う?

相対湿度(%RH) = 実蒸気圧 Ea ÷ 飽和蒸気圧 Es × 100。25℃・湿度60%なら、Es=31.7 hPa、Ea=19.0 hPa。絶対湿度は Ea × 216.7 / (T+273.15) [g/m³] で計算。湿度計は乾湿球温度差または電気容量変化を測定します。

Tetens式とWagner式の使い分けは?

Tetens式は気象・生活分野(-30〜60℃)で標準。単純式で高精度。Wagner式は工学設計(0〜370℃)で高精度。ボイラー・タービン・化学プラント。Antoine式は他物質でパラメータが揃うため化学工学(蒸留設計)の伝統手法。

露点温度とは?

水蒸気を含む空気を冷やしていくとき、水蒸気が凝結し始める温度。25℃・湿度60%の空気なら露点は16.7℃。空気を露点以下に冷やすと結露発生。冬場の窓ガラス・冷たい水滴の物理現象の根拠です。

絶対湿度と相対湿度の違いは?

絶対湿度は空気1 m³中の水蒸気質量(g/m³)。相対湿度は飽和量に対する割合(%RH)。冬場の5℃・60%RHは絶対湿度3.3 g/m³で非常に乾燥、夏場の30℃・60%RHは絶対湿度18 g/m³で湿潤。エアコン除湿の効率評価には絶対湿度が有用です。

圧力鍋で調理時間短縮の理由は?

圧力2気圧では飽和蒸気圧との平衡が120℃に上昇し、調理温度が20℃高まります。反応速度は温度10℃上昇で約2倍(アレニウス則)なので、20℃差なら4倍速。煮豆・シチューの時間が1/4に短縮される物理的根拠です。

結露を防ぐには?

換気で室内水蒸気を排出、②断熱で窓・壁の表面温度を露点以上に維持、③除湿で絶対湿度を下げる、の3手段。冬場の結露は室温20℃・湿度60%だと露点12℃、窓表面が5℃なら発生。断熱窓なら10℃維持で防止可能。

フリーズドライの原理は?

凍結試料を三重点(0.01℃・6.117 hPa)以下の低温低圧に置くと、氷が液体を経ずに直接気化(昇華)。組織構造を保ったまま脱水でき、インスタントコーヒー・非常食・医薬品保存に応用。装置圧力は通常0.05〜1 hPa(-40℃相当の飽和蒸気圧)で運用。

湿度計の校正は必要?

電気式湿度計は経時変化しやすく年1回の校正推奨。塩基準法(飽和塩水溶液の平衡湿度、KCl 20℃で84.3%RH、NaCl 20℃で75.5%RH)による自主校正が実用的。工業用は認証標準物質を持つNMIJ・民間校正機関で1点あたり数千円〜。

海水の蒸気圧は淡水と同じ?

塩分3.5%の海水はラウールの法則により約2%低い蒸気圧。20℃の海水はEs≒22.9 hPa(淡水23.4 hPaより2%低い)。海面からの蒸発が淡水面より少ないため、海洋の水循環モデリングでは補正が必要です。

データセンターの湿度管理は?

ASHRAE TC 9.9推奨のサーバー吸気は22±2℃・40〜60%RH(露点9〜15℃)。低湿度は静電気(ESD破壊)、高湿度は結露・腐食のリスク。近年は許容範囲拡大の潮流もあるが、露点上限15℃は堅守されています。

湿球温度と露点温度の違いは?

湿球温度は湿ったガーゼで包んだ温度計の示す温度(蒸発による冷却を含む)。露点温度は空気を冷却して結露する温度。同一空気で湿球温度 > 露点温度で、両者の差から相対湿度を算出できます。熱中症指標(WBGT)は湿球温度が主成分。