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緩衝液pH 計算ツール|Henderson-Hasselbalch式・pKa早見・生体緩衝系対応

緩衝液(バッファー)のpHを、酸/共役塩基のmol比とpKaから Henderson-Hasselbalch式で瞬時に計算。酢酸/リン酸/炭酸/クエン酸/Tris/HEPES/PBS等20種主要バッファーのpKa早見表、緩衝能βの有効pH範囲、血液の重炭酸緩衝系(pH7.40)/リン酸緩衝系/タンパク質緩衝系、電気泳動・PCR・細胞培養・食品加工の現場実務に対応します。

最終更新:2026-08-02/監修:計算ツールズ編集部

緩衝液pH 計算機

Henderson-Hasselbalch式の導出

基本式

pH = pKa + log₁₀([A⁻] / [HA])

弱酸 HA の解離平衡 HA ⇌ H⁺ + A⁻ における酸解離定数 Ka = [H⁺][A⁻]/[HA] の両辺の対数をとり、-log₁₀(pKa=-logKa, pH=-log[H⁺])を適用すると、Henderson-Hasselbalch式が得られます。1908年に生化学者Lawrence Josephが臨床化学の実務式として発表しました。

共役酸塩基比とpHの対応

[A⁻]/[HA]比log比pH(pKaからの差)
1:10-1pKa - 1
1:3.16-0.5pKa - 0.5
1:10pKa(等モル点)
3.16:1+0.5pKa + 0.5
10:1+1pKa + 1

実用的な緩衝範囲は pH = pKa ± 1。この範囲を超えると緩衝能が急激に低下します。

厳密式と近似式

Henderson-Hasselbalch式は希薄溶液・イオン強度低・弱酸弱塩基という条件下での近似式です。厳密には活量係数γを乗じる必要があります(pH = pKa + log(γ_A×[A⁻] / γ_HA×[HA]))。生理条件のような高イオン強度では活量補正が有意になります。

主要バッファーのpKa早見表

実験・工業計算で頻用するバッファー系のpKaです。25℃・イオン強度0の値で、実際の使用条件では若干変動します(Good, N.E. 1966 論文値含む)。

バッファーpKa1pKa2pKa3有効pH範囲
塩酸/塩化物-70-2
クエン酸3.134.766.402.5-7.5
ギ酸3.753-5
コハク酸4.215.643.5-6.5
酢酸4.763.7-5.7
MES6.155.5-6.7
ADA6.606.0-7.2
PIPES6.806.1-7.5
MOPS7.206.5-7.9
リン酸(H₂PO₄⁻/HPO₄²⁻)2.157.2012.356.2-8.2
HEPES7.556.8-8.2
Tris(トリス)8.107.0-9.0
Tricine8.157.4-8.8
Bicine8.357.6-9.0
ホウ酸9.248.5-10
CHES9.558.6-10.6
炭酸(H₂CO₃/HCO₃⁻)6.3510.339-11
グリシン(-NH₃⁺/-NH₂)2.349.608.6-10.6
CAPS10.409.7-11.1

緩衝能βと有効pH範囲

緩衝能(バッファー容量)βは、単位pH変化を起こすのに必要な酸・塩基の添加mol量。

β = 2.303 × ([HA]×[A⁻]) / ([HA]+[A⁻])

この式から、緩衝能は[HA]=[A⁻](pH=pKa)で最大、pKa±1を超えると急激に低下することが分かります。実務ではpKa±1の範囲内で緩衝液を設計するのが原則です。

目標pH推奨バッファー調製比[A⁻]/[HA]
pH 4.5酢酸(pKa 4.76)1:2
pH 5.5酢酸(pKa 4.76) or MES(6.15)酢酸5.5:1, MES 1:4.5
pH 6.0MES(pKa 6.15)1:1.4
pH 7.0リン酸(pKa2 7.20) or MOPS(7.20)1:1.6
pH 7.4(生理pH)HEPES(pKa 7.55) or Tris(8.10)HEPES 1.4:1, Tris 5:1
pH 8.0Tris(pKa 8.10)1.26:1
pH 9.0Bicine(pKa 8.35) or ホウ酸(9.24)ホウ酸1:1.7
pH 10.0CHES(pKa 9.55) or 炭酸(10.33)CHES 2.8:1

緩衝液の調製手順

方法1: 酸+共役塩基の混合

酢酸緩衝液pH 5.0(50mM)なら: pH=pKa+log([A⁻]/[HA]) → 5.0=4.76+log([A⁻]/[HA]) → log比=0.24 → [A⁻]/[HA]=1.74。50mM総濃度で酢酸ナトリウム32mM+酢酸18mMを1L水に溶解→pH校正。

方法2: 弱酸+強塩基滴定

酢酸を溶解→NaOHを滴下してpH校正。実験室では簡便な方法。強塩基は生成する塩化物量に注意します。

方法3: 市販既製バッファーの使用

PBS(リン酸緩衝生理食塩水)・Tris-HCl・HEPES-NaOH等の市販済品を採用。細胞培養・電気泳動・PCR用途では既製品が推奨(ロット間ばらつきが小さい)。

校正

調製後はpH計で必ず校正し、必要なら少量の酸/塩基で調整。JIS Z 8802「pH測定方法」に基づき、標準液(pH4.01・6.86・9.18)で3点校正したpH計を使用します。

生体緩衝系(血液・細胞内)

ヒト血液のpHは7.35-7.45という極めて狭い範囲に維持されます。これを支えるのが以下の3系統の緩衝機構です。

緩衝系主要成分寄与率
重炭酸緩衝系H₂CO₃/HCO₃⁻(pKa2 6.35)約65%(血漿)
リン酸緩衝系H₂PO₄⁻/HPO₄²⁻(pKa2 7.20)約5%(細胞内優位)
タンパク質緩衝系ヘモグロビン、アルブミン約30%

pH<7.35がアシドーシス、pH>7.45がアルカローシス、いずれも危険な状態。呼吸(CO₂排出)と腎機能(HCO₃⁻再吸収)が動的に調節し、血液pHを恒常性維持しています。麻酔・救急医療では動脈血ガス分析(pH・PaCO₂・HCO₃⁻)がバイタルサインの一つです。

計算例(具体的な調製)

例1: 酢酸緩衝液 pH 5.00, 100 mM, 1L

Henderson-Hasselbalch式: 5.00 = 4.76 + log([A⁻]/[HA]) → log比 = 0.24 → [A⁻]/[HA] = 1.74。総濃度100mMなら [HA]=36.5mM、[A⁻]=63.5mM。酢酸(60.05g/mol)を2.19g、酢酸ナトリウム3水和物(136.1g/mol)を8.64gを水で1Lに定容。pH計で最終校正します。

例2: リン酸緩衝液 pH 7.40, 50 mM, 500mL

pKa2 = 7.20を使用: 7.40 = 7.20 + log([HPO₄²⁻]/[H₂PO₄⁻]) → 比 = 1.585。総50mMなら [H₂PO₄⁻]=19.3mM、[HPO₄²⁻]=30.7mM。NaH₂PO₄・H₂O(138.0)を1.33g、Na₂HPO₄・12H₂O(358.1)を5.50gを水で500mLに定容。

例3: Tris-HCl緩衝液 pH 8.00, 100 mM, 1L(25℃)

pKa=8.10: 8.00=8.10+log([Tris]/[Tris·HCl]) → 比=0.794。総100mMなら [Tris]=44.3mM、[Tris·HCl]=55.7mM。Tris塩基(121.14g/mol)を5.36g、HCl(1M)を55.7mLを水で1Lに定容。使用温度で必ずpH校正(Trisは温度依存が大きいため)。

例4: HEPES緩衝液 pH 7.40, 25 mM, 500mL(細胞培養用)

pKa=7.55: 7.40=7.55+log([A⁻]/[HA]) → 比=0.708。総25mMなら [HA]=14.6mM、[A⁻]=10.4mM。HEPES(238.3g/mol)を2.98gを水400mLに溶解、NaOH(1M)で pH 7.40に調整、水で500mLに定容。無菌濾過後4℃保管。

例5: PBS(リン酸緩衝生理食塩水), pH 7.40, 1L

市販PBSタブレット1錠(生理浸透圧対応)を1L超純水に溶解→pH 7.40が得られる簡便法。手作りするなら NaCl 8.0g、KCl 0.2g、Na₂HPO₄ 1.44g、KH₂PO₄ 0.24g を水1Lに溶解し、必要ならHClでpH微調整。細胞培養・抗体希釈・組織固定に汎用。

シーン別活用例

細胞培養(pH7.4維持)

培地(DMEM・RPMI等)にHEPES(pKa 7.55)を10-25mM添加し、CO₂インキュベータ外でもpH維持。細胞は狭いpH範囲でしか生存できず、緩衝液設計が実験成否を左右します。

電気泳動(SDS-PAGE・アガロース)

Tris-Glycine系(pH 8.3)、Tris-Acetate-EDTA(TAE, pH 8.3)、Tris-Borate-EDTA(TBE, pH 8.3)など、電気泳動用バッファーは通電時のジュール熱でpHが変動しにくい設計。生化学・分子生物学の必須試薬です。

PCR・分子生物学

PCR反応バッファー(pH 8.3 at 25℃、Taqポリメラーゼ最適)、逆転写反応(pH 8.3)、制限酵素反応(酵素ごとに規定)。市販キット付属バッファーがロット間ばらつきなく便利です。

食品加工(醤油・味噌・清涼飲料)

清涼飲料のクエン酸緩衝(pH 3.5)、味噌熟成のリン酸緩衝、醤油の発酵管理など、pH管理は微生物制御と味の両面で重要。食品衛生法・JAS法に基づく品質管理項目です。

製薬・医薬品製剤

点眼薬・注射液は生理pH(7.0-7.4)に緩衝、内服液は薬物安定性に応じた最適pHに設計。日本薬局方が製剤ごとの緩衝要求を規定しています。

水質・環境モニタリング

河川水・工場排水のpH測定にpH校正バッファー(4.01・6.86・9.18)を使用。水質汚濁防止法排水基準(pH5.8-8.6)への適合確認に日常使用されます。

よくある間違い・注意点

  • pKaから±1以上離れた設計 — 緩衝能βは pH=pKaで最大、pKa±1を超えると急激に低下。pH 4.0を酢酸(pKa 4.76)で作るのは可能だが、pH 3.0では緩衝能不足。適切なバッファーへの変更を検討します。
  • 温度依存を無視 — Trisは温度で大きくpKaが変わる(0℃で8.85、25℃で8.10、37℃で7.72)。冷蔵庫調製→37℃使用ではpHが変わるため、使用温度で校正が必須です。
  • イオン強度による活量補正忘れ — 高塩濃度(1M以上)ではHenderson-Hasselbalch式の近似が破綻し、活量係数γによる補正が必要です。
  • 希釈による緩衝能低下 — 10倍希釈でも緩衝能は10分の1、しかしpH自体は理論上変わりません(比率一定)。ただしCO₂溶解等の外乱で実測pHは徐々にずれます。
  • CO₂吸収によるpH変動 — 塩基性バッファーは大気CO₂を吸収してpHが低下(炭酸生成)。密閉保管+使用時のみ開栓が原則です。
  • 金属イオン汚染 — リン酸バッファーはCa²⁺・Mg²⁺と沈殿(リン酸カルシウム)を作りやすく、細胞培養での沈殿トラブルの原因。EDTA添加または別バッファー選択を検討します。
  • 細胞毒性のあるバッファー選択 — 一部のGoodバッファー(HEPES等)は高濃度で細胞増殖阻害。細胞実験では10-25mM以下の低濃度で使用します。

実験・分析ノウハウ

1. pKa選択のルール

目標pHに最も近いpKaを持つバッファーを選ぶ(pKa±1以内)。pH 7.4なら HEPES(pKa 7.55)またはPIPES(6.80)、リン酸2段目(7.20)が候補。細胞培養ならHEPES、電気泳動ならリン酸、生化学一般ならTrisと使い分けます。

2. 温度補正を忘れずに

Tris・炭酸系は温度依存が大きい。Trisは25℃基準のpKaが0.03/℃低下(37℃では-0.36)。冷蔵調製→37℃使用ではpH 0.4ズレます。使用温度で必ず校正、実験温度と一致させてください。

3. イオン強度の設計

電気泳動・電気化学測定ではイオン強度I=0.1〜0.15 Mが標準。KCl・NaClで調整、高すぎる(>0.5M)と細胞毒性・タンパク質沈殿の懸念。低すぎる(<0.01M)と緩衝能不足になります。

4. 微生物汚染対策

4℃保管でも1-3ヶ月で細菌・カビが発生することがある。NaN₃ 0.02%添加または0.22μmフィルター濾過で無菌化。細胞培養用は必ず滅菌・無菌濾過して使用します。

5. pH計の管理

pH電極はKCl 3M保存液に浸漬保管、乾燥厳禁。標準液(pH 4.01・6.86・9.18)で毎日始業時に2〜3点校正、スロープ95-102%を確認。老朽電極(2年以上)は交換が推奨されます。

6. 用途別バッファー選択の指針

細胞培養→HEPES/Bicarbonate、DNA/RNA→Tris-EDTA、タンパク質精製→リン酸/Tris、電気泳動→TAE/TBE(DNA)/Tris-Glycine(SDS-PAGE)、酵素反応→キット付属推奨バッファー。市販既製品はロット間ばらつきが小さく、精密実験に有利です。

関連する規格・法令

  • JIS Z 8802 ― pH測定方法。pH計の校正手順・標準液・精度規定。
  • JIS K 0050 ― 化学分析方法通則。緩衝液調製・pH計使用の共通ルール。
  • 日本薬局方 ― 医薬品製剤のpH規定・緩衝液の公式処方。
  • 食品衛生法 食品添加物公定書 ― 食品用緩衝剤(クエン酸・リン酸塩)の規格。
  • ISO 10523 ― Water quality - Determination of pH(水質のpH測定国際規格)。
  • IUPAC Recommendations ― pH測定・活量・緩衝液の国際定義。
  • 水質汚濁防止法 排水基準 ― 工場排水pH5.8-8.6の法定基準。

緩衝液の科学史

Henderson-Hasselbalch式(1908年・1917年)

米国の生化学者ローレンス・ジョセフ・ヘンダーソン(1878-1942)が1908年に緩衝液のpH計算式を導出、その後デンマークのカール・ハッセルバルヒ(1874-1962)が1917年に対数形式に整理し、現在のHenderson-Hasselbalch式が完成。血液pH研究の基礎方程式として、臨床化学・生化学に不可欠となりました。

血液緩衝系の解明(20世紀前半)

1910年代に重炭酸緩衝系(H₂CO₃/HCO₃⁻)、リン酸緩衝系、ヘモグロビン緩衝系の3系統が明らかにされ、生体の pH恒常性メカニズムが解明。呼吸性・代謝性のアシドーシス/アルカローシスの臨床診断が可能になりました。

Goodバッファーの開発(1966年)

米国の生化学者ノーマン・グッド(N.E. Good)が生体系向けに設計された12種類のバッファー(MES・PIPES・MOPS・HEPES・Tricine・CHES等)を発表。膜不透過性・金属無キレート・細胞低毒性・生理pH範囲の要件を満たし、細胞生物学・生化学実験の必需品となりました。

pH計の発展(1934年〜)

米国のアーノルド・ベックマンが1934年に世界初の商用pH計を開発、レモン農家の柑橘酸性度測定用途で発売。以後、電気化学測定の標準ツールとして、現代の細胞培養・臨床検査・水質管理の基盤となりました。

PBS(リン酸緩衝生理食塩水)の定着

1970年代に細胞培養・組織学の標準洗浄液として市販化、以後Sigma-Aldrich・ThermoFisher等が市販キットを製造。生化学実験室で最も汎用されるバッファーとなり、抗体希釈・組織固定・DNA/RNA精製に不可欠です。

現代の応用

PCR・シーケンス・タンパク質結晶化・電気泳動・免疫染色など、現代分子生物学・バイオ医薬品開発の全プロセスで緩衝液が使用されています。近年はCRISPRゲノム編集・mRNAワクチン製造でもGood系バッファーが標準採用されています。

参考文献・公的資料

より正確なpKaデータや詳細な調製手順は、以下の公的機関の資料を参照してください。

※本ページの計算結果は希薄溶液におけるHenderson-Hasselbalch式の近似値です。高イオン強度・高濃度・特殊温度条件下では活量補正・実測校正が必要です。医薬品製造・臨床検査・食品製造など法令対応の分析では、必ず上記公的機関の一次資料および認証標準物質(CRM)による校正済みpH計を使用し、有資格者(薬剤師・臨床検査技師・食品衛生管理者等)の判断を仰いでください。

よくある質問(FAQ)

Henderson-Hasselbalch式とは?

pH = pKa + log([A⁻]/[HA])。弱酸HAとその共役塩基A⁻から成る緩衝液のpHを計算する式で、1908年にLawrence Josephが臨床化学の実用式として発表。生化学・分析化学の基礎方程式です。

pKaと緩衝能の関係は?

緩衝能βは pH=pKaで最大、pKa±1を超えると急激に低下します。pH 4.5の緩衝液には酢酸(pKa 4.76)、pH 7.0にはリン酸2段目(pKa2 7.20)またはMOPS(pKa 7.20)が最適です。

PBS(リン酸緩衝生理食塩水)とは?

リン酸塩(NaH₂PO₄/Na₂HPO₄)で pH 7.4(生理pH)に緩衝し、137mM NaCl・2.7mM KClで生理浸透圧に合わせた溶液。細胞洗浄・抗体希釈・組織固定など生化学・細胞培養で最も汎用される緩衝液です。

Tris緩衝液の注意点は?

Trisは温度でpKaが大きく変わる(0℃で8.85、25℃で8.10、37℃で7.72)。冷蔵調製→37℃使用ではpH 0.5以上ズレます。金属イオンとキレート形成する性質もあり、金属を扱う実験ではHEPES等の代替が推奨されます。

HEPESが細胞培養に使われる理由は?

Goodバッファー(1966年N.E.Goodが提唱)の一つで、pKa 7.55が生理pH 7.4に近く、Ca²⁺と沈殿しない・膜透過性がない・金属キレート性がない等の理由から細胞培養に理想的。10-25mM添加でCO₂インキュベータ外の作業でもpH維持できます。

血液のpH(7.35-7.45)はどう維持?

重炭酸緩衝系(H₂CO₃/HCO₃⁻ 約65%)、リン酸緩衝系(約5%)、タンパク質緩衝系(ヘモグロビン等 約30%)の3系統。呼吸(CO₂排出)と腎機能(HCO₃⁻再吸収)が動的に調節し、恒常性維持します。

緩衝液の濃度はどう決める?

目的に応じて選択。細胞培養は10-25mM、電気泳動は50-100mM、pH校正液は分析グレード。濃度が高いほど緩衝能が高いが、細胞毒性・イオン強度上昇のトレードオフがあります。

調製したバッファーはどのくらい保管できる?

4℃冷蔵で1-3ヶ月が目安。CO₂吸収・微生物汚染でpHが徐々に変動するため、精密実験では毎回新調製またはpH校正後使用が原則。長期保管はNaN₃ 0.02%添加(微生物抑制)。

pH計の校正はどう行う?

JIS Z 8802準拠のpH標準液(pH 4.01・6.86・9.18)で3点校正。電極スロープが95-102%の範囲内なら合格。使用前・週次・月次のいずれかで実施し、記録簿で品質管理します。

Goodバッファーとは?

1966年N.E.Goodが発表した、生体系向けに設計された緩衝液群(MES・PIPES・MOPS・HEPES・Tricine・CHES等)。膜透過性がない、金属キレート性がない、pKaが生理pH範囲、細胞毒性が低い等の特徴を持ちます。

2価酸(リン酸・炭酸等)の緩衝は?

リン酸はpKa1 2.15・pKa2 7.20・pKa3 12.35の3段解離。生理pH緩衝はpKa2の 7.20を使い、H₂PO₄⁻/HPO₄²⁻の比で調製。炭酸はpKa1 6.35・pKa2 10.33で、血液緩衝はpKa1を主に使用します。

希釈すると緩衝液のpHは変わる?

厳密には変わりません(比率が同じなら理論pHも同じ)。ただし緩衝能βは薄めた比率で低下し、CO₂吸収等の外乱でpHが徐々にずれます。目安として10倍希釈以上は再校正推奨です。