傷病手当金 計算ツール|病気・ケガでの休業補償を一発算出、うつ病・退職後受給・年金調整対応
病気・ケガで仕事を休んだとき、健康保険から支給される傷病手当金の支給額・期間を即時計算。標準報酬月額の3分の2が最長1年6か月支給されます。うつ病・メンタル不調、退職後の継続受給、傷病手当金と年金・失業手当の調整、非課税・扶養控除の実務ポイントまで、健康保険法・全国健康保険協会(協会けんぽ)・厚生労働省の公的情報に基づき解説します。
傷病手当金 計算機
傷病手当金の計算式
日額 = 直近12か月の標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 2/3
たとえば標準報酬月額30万円なら、30万÷30×2/3=6,667円/日。月額換算で約20万円。最長1年6か月(通算で546日)支給されます。健康保険法第99条に基づく法定給付で、協会けんぽ・健康保険組合いずれの加入者も対象です。
直近12か月に満たない場合
入社1年未満などで直近12か月の実績がない場合は、以下の低いほうが日額算定の基礎になります(2016年4月改定)。
- 被保険者期間の全期間の標準報酬月額の平均額
- 被保険者が加入している健康保険の全被保険者の平均標準報酬月額(協会けんぽ 30万円等)
2022年1月の改正ポイント
2022年1月から支給期間の計算方法が「支給開始から通算1年6か月」に変更されました。以前は「支給開始から暦日1年6か月」で、途中で復職しても期間は消化される仕組みでしたが、現在は実際に支給された日数の通算で1年6か月となり、復職と休業を繰り返しても不利にならなくなりました。
支給される条件
- 業務外の病気・ケガで療養中(業務上は労災保険)
- 仕事に就くことができない状態にある(医師の意見書・診断書必要)
- 連続する3日間(待期期間)を含む4日目以降から支給
- 休業した期間に給与の支払いがない(または手当金額より少ない場合は差額)
「業務外」が要件のため、通勤中の事故や業務中の負傷は労災保険の休業補償給付の対象となり、傷病手当金は支給されません。労災か健康保険かの判定は労働基準監督署または医師の意見が基準になります。
待期期間の考え方
傷病手当金は「連続する3日間の待期期間」を経て、4日目以降の休業日から支給が始まります。この待期期間の3日間には、有給休暇・公休日・土日祝日も含まれます。
待期成立の具体例
| ケース | 待期成立日 | 支給開始日 |
|---|---|---|
| 月-水を連続休業 | 水曜 | 木曜から |
| 金-日を連続休業(土日含む) | 日曜 | 月曜から |
| 月・水・金と飛び飛びで休業 | 成立せず | 連続3日を再度満たす必要 |
| 月-火を有給、水を休業 | 水曜 | 木曜から |
「連続」が要件のため、間に1日でも出勤日を挟むと待期はリセットされます。ただし土日祝日は「就労日ではない」ため待期のカウントに含めても連続扱いになるのがポイントです。
通算1年6か月ルール(2022改正)
2022年1月の健康保険法改正により、傷病手当金の支給期間は「支給を始めた日から通算して1年6か月」に変更されました。この改正の意味は大きく、復職を試みてもすぐ再休業になった場合、以前は最初の休業から1年6か月経過すると打切りでしたが、現在は実際に支給された日数の合計が546日に達するまで受給可能となりました。
改正前と改正後の違い
| ケース | 改正前(暦日通算) | 改正後(支給日通算) |
|---|---|---|
| 連続546日休業 | 546日全額支給 | 546日全額支給(同じ) |
| 6か月休業→3か月復職→再休業 | 残り9か月分のみ | 残り12か月分受給可 |
| 3か月休業→3か月復職→9か月休業 | 残り6か月で打切 | 合計12か月受給可、残り6か月分は繰越可 |
特にうつ病・メンタル不調の再発を繰り返すケースで実質的なメリットが大きい改正でした。ただし復職と休業を繰り返す場合、その都度医師の意見書・事業主の証明が必要になる点に注意です。
退職後の継続受給
退職後も傷病手当金は継続受給可能ですが、以下の要件を全て満たす必要があります。
- 退職日までに継続1年以上の健康保険の被保険者期間があること(任意継続被保険者期間は含まない)
- 退職日時点で傷病手当金を受給しているか、受給可能な状態(待期完了&労務不能)であること
- 退職後も継続して労務不能であること
退職日の出勤に要注意
退職日に出勤すると「退職日時点で労務可能」と判定され、退職後の継続受給ができなくなります。実務ではよく起きる落とし穴で、有給消化や体調不良で欠勤扱いにするなど、退職日の扱いを慎重に設計する必要があります。
受給可能期間
退職後の受給は、在職中からの通算で最大1年6か月まで。転職して他の健康保険に加入しても、同一傷病の受給権は継続します。ただし転職先で加入した健康保険の傷病手当金ではなく、退職前の健康保険からの給付として支給されます。
他制度との調整(年金・失業手当)
年金との調整
同一傷病で障害厚生年金または障害手当金を受給する場合、傷病手当金は「日額換算した年金額との差額のみ」支給されます。年金が傷病手当金より多ければ支給停止です(健康保険法第108条)。障害基礎年金と障害厚生年金の合算で判定し、通常は年金優先になります。
失業手当(基本手当)との関係
雇用保険の失業手当(基本手当)は「働ける状態」が受給要件で、傷病手当金は「働けない状態」が要件のため、両者は同時受給できません。労務不能で退職した場合、失業手当は受給期間延長(最大3年+1年)の手続きで、傷病治癒後に受給を先送りできます。
労災保険との関係
業務上の負傷・疾病は労災保険の対象で、傷病手当金は支給されません。労災の休業補償給付は給付基礎日額の80%(60%+特別支給金20%)で、傷病手当金の2/3より手厚くなります。労災認定を巡っては会社と対立するケースも多く、労働基準監督署への相談が有効です。
税務・扶養・住民税
傷病手当金は非課税
傷病手当金は所得税法第9条により非課税です。確定申告も住民税の算定にも含まれません。所得証明書にも記載されません。同様に出産手当金・育児休業給付金・失業手当も非課税所得です。
配偶者の扶養との関係
非課税所得ではあるものの、健康保険の被扶養者認定における「年収要件(年130万円未満、60歳以上または障害者は180万円未満)」の判定においては、傷病手当金は収入に含めて判定されるのが実務です。日額3,612円以上(130万÷360)なら扶養から外れる可能性があります。
住民税の支払は続く
住民税は前年の所得に対する課税なので、休業中でも支払義務は継続します。退職して普通徴収に切り替わる場合、翌年の住民税納付書に注意。役所に相談すれば分割払い・減免制度の適用が受けられるケースもあります。
申請書類の流れ
傷病手当金の申請書「健康保険傷病手当金支給申請書」は4ページ構成で、被保険者・事業主・療養担当者(医師)の3者による記入が必要です。
申請書の記入者と内容
| ページ | 記入者 | 主な記載内容 |
|---|---|---|
| 1ページ目 | 被保険者 | 氏名、被保険者番号、振込先口座 |
| 2ページ目 | 被保険者 | 申請期間、労務不能理由、他制度の受給状況 |
| 3ページ目 | 事業主 | 勤務状況、給与支給の有無、証明印 |
| 4ページ目 | 療養担当者(医師) | 傷病名、発病年月日、労務不能期間、証明 |
申請から支給までの期間
申請書提出から支給まで、協会けんぽの場合約2〜4週間が目安。健康保険組合では組合の処理能力次第で1〜2週間で処理される場合もあります。書類不備があると再提出でさらに時間がかかるため、記入内容の事前確認が重要です。
初回申請の必要書類
- 傷病手当金支給申請書(4ページ)
- 本人確認書類(マイナンバーカードのコピーまたは免許証等)
- 振込先口座情報
- 退職後の申請は追加で退職証明書・雇用保険受給資格者証
2回目以降の申請
2回目以降は「被保険者記入分」と「療養担当者記入分」のみ提出でOKになる場合が多く、事業主の証明は不要になる健保もあります(健保組合により運用が異なるため確認要)。月ごとにまとめて申請するのが一般的です。
標準報酬月額の詳細
傷病手当金の計算基準となる標準報酬月額は、給与を等級に区分けした金額です。健康保険では第1級(58,000円)から第50級(1,390,000円)まで50等級が設定されています。
標準報酬月額の決定タイミング
- 資格取得時決定 — 入社時の見込み給与から算定
- 定時決定(算定基礎届) — 毎年4〜6月の平均から9月に改定
- 随時改定(月額変更届) — 昇給・降給で2等級以上変動した場合
- 育児休業等終了時改定 — 育休復帰後の給与実態に合わせた改定
賞与の扱い
2016年4月改定以降、賞与も含めた「標準報酬」ベースで日額計算する仕組みに変更されました。ただし賞与は年3回まで、支給の都度標準賞与額として記録されます。長期休業の場合は賞与の扱いを確認しましょう。
健康保険組合と協会けんぽの違い
大企業の健康保険組合(健保組合)は独自の付加給付を設けている場合があり、傷病手当金の給付水準が「標準報酬月額の80%」など、法定の2/3より手厚くなっているケースがあります。組合員は健康保険組合の給付規程を確認しましょう。
標準報酬月額の等級表(抜粋)
| 等級 | 標準報酬月額 | 報酬月額範囲 |
|---|---|---|
| 第1級 | 58,000円 | 〜63,000円 |
| 第17級 | 200,000円 | 195,000〜210,000円 |
| 第22級 | 260,000円 | 250,000〜270,000円 |
| 第25級 | 300,000円 | 290,000〜310,000円 |
| 第30級 | 410,000円 | 395,000〜425,000円 |
| 第35級 | 560,000円 | 545,000〜575,000円 |
| 第50級(上限) | 1,390,000円 | 1,355,000円〜 |
参考: 日本年金機構「厚生年金保険の標準報酬月額と標準賞与額」および協会けんぽ「都道府県別保険料額表」で最新の等級表を確認できます。
現場での活用シーン
労務担当・人事部
従業員の休職相談を受けた際、傷病手当金の受給可能額を試算し、社内の休職制度(有給消化→傷病手当金→無給休職)の設計と合わせて説明。退職判断時の支給期間シミュレーションも可能。
休職中・休職予定の労働者
休職中の生活費見通しを立てる。給付日額と月次固定費(家賃・保険・住宅ローン)を比較し、預貯金の取崩し計画を作成。長期化に備えた家計プラン設計に活用できます。
社労士・産業医
クライアント企業の休職相談、復職支援計画の作成時に。退職後継続受給の要件確認、他制度との調整案内の一次資料として使えます。
メンタルクリニック・カウンセラー
うつ病・適応障害等で休職を検討する患者への、経済的な安心材料としての情報提供。「休んでも収入がある程度確保される」ことを可視化することで、療養に専念する意思決定を後押しできます。
ファイナンシャルプランナー
顧客の万一の休業リスクに備えた資金計画・保険設計。傷病手当金でカバーできる範囲と、就業不能保険で補完する範囲の切り分けを提案する材料に。
労働組合・従業員代表
会社の休職規程との整合性確認、上乗せ給付の交渉材料に。傷病手当金だけでは足りない期間・金額を可視化し、企業の休業補償制度の充実を求める根拠として活用できます。
よくある間違い・注意点
- 待期3日が連続でない — 有給や病欠を挟んで飛び飛びに休むと待期が成立しません。連続3日の休業を確保するのが第一歩です。
- 退職日に出勤してしまう — 退職日の出勤で「退職日時点で労務可能」と判定され、退職後の継続受給ができなくなる典型的な失敗パターン。退職日は必ず休業扱いにしましょう。
- 年金・失業手当との重複受給 — 障害厚生年金との重複は差額調整、失業手当とは同時受給不可。手続き漏れで返還請求されるケースが頻発します。
- 会社からの給与を無申告 — 傷病手当金申請書の会社証明欄で虚偽記載すると不正受給。会社からの見舞金・欠勤中給与も正直に申告し、手当金から差し引いてください。
- 健康保険の扶養判定を誤解 — 「傷病手当金は非課税だから収入ゼロ扱い」は誤り。健康保険の扶養(年130万円要件)には収入としてカウントされます。
- 受給前に任意継続に切り替える — 退職時に協会けんぽの任意継続被保険者になると、その期間は「継続1年以上の被保険者期間」にカウントされません。退職後継続受給を狙う場合は要件確認を忘れずに。
- 労災案件を傷病手当金で処理 — 業務上の負傷なのに労災申請せず傷病手当金で処理すると、給付水準が下がる(2/3 vs 80%)のに加え、療養補償・障害補償を受けられないリスクがあります。
関連法令・制度
- 健康保険法 第99条 ― 傷病手当金の支給要件・給付内容の基本条文。
- 健康保険法 第102条 ― 出産手当金の規定(傷病手当金の姉妹制度)。
- 健康保険法 第104条 ― 退職後の傷病手当金継続給付の要件。
- 健康保険法 第108条 ― 障害厚生年金・老齢厚生年金との調整規定。
- 労働者災害補償保険法 第14条 ― 労災の休業補償給付。傷病手当金との適用区分の根拠。
- 雇用保険法 第20条 ― 失業手当の受給期間延長。傷病中の後回し受給の根拠。
- 所得税法 第9条第1項第3号 ― 傷病手当金の非課税規定。
- 2022年1月改正 ― 支給期間の通算化(暦日→通算日数)。健康保険法の改正条項。
参考文献・公的資料
傷病手当金の正確な情報は以下の公的機関の一次資料で確認してください。
- 全国健康保険協会(協会けんぽ) 傷病手当金 ― 傷病手当金の公式解説と申請書ダウンロードページ。
- 厚生労働省 医療保険制度 ― 健康保険法・国民健康保険法の公式情報。
- 協会けんぽ 資格喪失後の継続給付 ― 退職後の継続受給要件の公式解説。
- 厚生労働省 労災補償 ― 労災保険との適用区分の公式情報。
- ハローワーク 雇用保険手続き ― 失業手当の受給期間延長申請の公式情報。
- 国税庁 給与所得 ― 傷病手当金の非課税規定の税務解説。
- 日本年金機構 障害年金 ― 傷病手当金と障害厚生年金の調整に関する情報。
- 厚生労働省 労働者向け情報 ― 休業補償・労災保険・雇用保険の総合案内。
- 労働政策研究・研修機構(JILPT) ― 労働経済統計、休職・復職の中立的研究データ。
- 厚生労働省 治療と仕事の両立支援 ― 病気治療と職業生活の両立支援の公式ページ。
よくある質問(FAQ)
うつ病・メンタル不調でも対象?
対象になります。医師の診断書があれば心因性疾患・適応障害・うつ病なども支給対象。傷病手当金の申請理由として「精神疾患」は実は最も多いカテゴリの一つで、労務不能の判定は主治医の意見書に基づきます。休養に専念することが早期回復への近道であり、経済的な安心を得るためにも積極的に活用しましょう。
退職後ももらえる?
はい、条件付きで継続受給できます。①退職時に継続1年以上の被保険者期間がある、②退職日時点で受給中もしくは受給可能な状態、③退職後も継続して労務不能、の3要件をすべて満たせば、在職期間と通算で最大1年6か月受給可能です。退職日に出勤すると要件を満たさなくなるため要注意。
申請のタイミングは?
4日目以降の支給対象日が経過した後にまとめて申請可能。月単位でまとめて申請するのが一般的(生活費が必要なら毎月申請も可)。健康保険組合または協会けんぽの専用申請書に、被保険者記入欄・事業主記入欄・療養担当者(医師)記入欄の3つの記載が必要で、それぞれ本人・会社・医師に依頼します。
確定申告は必要?
傷病手当金は所得税法上の非課税所得です。確定申告も住民税の算定にも含まれません。同様に出産手当金・育児休業給付金・失業手当も非課税。ただし住民税は前年所得に対する課税なので、休業前の年の分は支払義務が継続します。
いくらもらえる?
目安は標準報酬月額の3分の2。日額は「標準報酬月額÷30×2/3」で、月額30万円なら日額6,667円、月20万円換算。標準報酬月額は上限139万円(第50級)、日額に上限があります。会社から見舞金や欠勤中給与がある場合は、その額を差し引いた差額が支給されます。
待期期間3日はどう数える?
連続する3日間を「初めての休業日を1日目として」カウント。有給休暇・公休日・土日祝日も含めることができます。ただし飛び飛びに休むと連続にならず待期が成立しません。月-水を連続休業なら水曜で待期完了、木曜から支給開始が典型です。
支給期間はどれくらい?
通算1年6か月(546日)が最長。2022年1月から支給日通算に変わり、復職と休業を繰り返しても実際に支給された日数の合計で判定されるようになりました。うつ病の再発などで復職・再休業を繰り返すケースで実質的なメリットが大きい改正でした。
失業手当と両方もらえる?
いいえ、失業手当は「働ける状態」、傷病手当金は「働けない状態」が要件のため同時受給できません。労務不能で退職した場合、失業手当は受給期間延長(最大3年+1年)の手続きで、傷病治癒後に受給を先送りできます。ハローワークで延長申請しましょう。
障害年金との調整は?
同一傷病で障害厚生年金または障害手当金を受給する場合、傷病手当金は差額のみ支給。年金が傷病手当金より多ければ支給停止です(健康保険法第108条)。障害基礎年金と障害厚生年金の合算で判定し、通常は年金優先になります。
家族の健康保険の扶養に入れる?
非課税所得ですが、健康保険の被扶養者認定における「年収130万円未満」の判定には収入としてカウントされるのが実務。日額3,612円(130万÷360)以上なら扶養から外れる可能性があります。判定基準は健康保険組合により差があるため、被扶養者となる予定の家族の保険組合に確認しましょう。
労災との違いは?
労災は業務上・通勤中の負傷、傷病手当金は業務外の負傷が対象で、両者は排他関係です。労災の休業補償給付は給付基礎日額の80%(60%+特別支給金20%)で、傷病手当金の2/3より手厚くなります。労災案件を傷病手当金で処理すると給付水準が下がるうえ療養補償も受けられません。
個人事業主・フリーランスは対象?
基本的に対象外です。傷病手当金は健康保険(協会けんぽ・組合健保)加入者の給付で、国民健康保険には傷病手当金制度がありません(コロナ禍で一時的に給付した自治体はありましたが原則廃止)。個人事業主は民間の就業不能保険での補完を検討しましょう。