計算ツール
労働法解雇労基法実務対応

解雇予告手当 計算ツール|労働基準法20条準拠、平均賃金×不足日数で即算

解雇予告手当を、平均賃金・予告日数から労働基準法20条の規定に沿って自動計算。即時解雇なら30日分、10日前予告なら20日分、整理解雇・退職勧奨・不当解雇の相場、割増退職金、労働審判・労働基準監督署への相談方法、厚生労働省・労基署・労働弁護士の公的情報まで、労働者側・使用者側の両視点で網羅。突然の解雇通告を受けた場合の初動対応と、企業側の適法な解雇手続きの両方に対応した実務ツールです。

最終更新:2026-08-05/監修:計算ツールズ編集部

解雇予告手当 計算機

計算式と労基法20条の根拠

基本式

解雇予告手当 = 平均賃金 × (30日 − 予告日数)

労働基準法第20条は、使用者が労働者を解雇する場合、少なくとも30日前に予告するか、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払うことを義務付けています。予告と手当の併用も可能で、例えば10日前予告なら20日分の手当支払いで合法となります。

労働基準法20条の条文趣旨

条文:「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない」

これは労働者に次の職を探す最低限の準備期間を保障するための規定で、違反した使用者は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金(労基法119条)に処されます。手当は原則として解雇と同時に支払わなければならず、遅延した場合は付加金の対象となります。

適用除外の対象

  • 日雇い労働者(1か月継続使用の場合は適用)
  • 2か月以内期間雇用(所定期間内)
  • 季節労働(4か月以内)
  • 試用期間中(採用後14日以内)
  • 天災事変等でやむを得ない場合(労基署認定)
  • 労働者の責に帰すべき事由による解雇(労基署認定)

ただし「労働者の責に帰すべき事由」は極めて限定的で、単なる勤務態度不良や業績不振では認定されません。労働基準監督署長の除外認定を受けなければ、原則30日前予告または手当支払いが必要です。

平均賃金の算定方法

解雇予告手当の基礎となる平均賃金は、労基法12条で定義されます。

平均賃金 = 直前3か月の賃金総額 ÷ 3か月間の暦日数

算入・不算入の項目

項目算入備考
基本給3か月の総額
役職手当・資格手当定期的支給分
残業代・深夜手当実支給分
通勤手当実費相当も算入
賞与(年2回等)×3か月を超える期間で支給
臨時の見舞金×結婚祝金・慶弔金等
実費弁償の出張旅費×実費精算のみ
現物給与(社宅・食事)労働協約で定めた分のみ

最低保障(日給・時給・出来高払いの場合)

日給・時給・出来高払いの労働者は、上記計算では平均賃金が下がりすぎるため、実労働日数給与の60%以上を最低保障する規定があります(労基法12条1項但書)。

最低保障 = 3か月間の賃金総額 ÷ 3か月間の労働日数 × 0.6

月給者の1日換算の目安

実務的な近似として、月給を暦日数(30日)で割った額が平均賃金の目安です。月給30万円なら1日約1万円。ただし正確には過去3か月の実支給額(残業代・手当込み)を暦日数で割る必要があります。

予告日数別の計算パターン

予告日数と支払うべき手当日数の対応表(平均賃金1万円/日の場合)。

予告日数手当日数手当額(1日1万円)備考
0日(即時解雇)30日分300,000円予告なし
5日前25日分250,000円予告不足25日
10日前20日分200,000円予告不足20日
15日前15日分150,000円予告不足15日
20日前10日分100,000円予告不足10日
25日前5日分50,000円予告不足5日
30日前以上0日分0円手当不要

手当は原則解雇と同時に一括払いが必要(労基法上の即時払原則)。分割払いは労働者の同意があれば可能ですが、遅延利息・付加金の対象となる可能性があります。

解雇の4類型と手続き

労働契約法16条・判例法理により、解雇には客観的合理性と社会通念上の相当性が必要。以下4類型のいずれかに該当し、要件を満たさなければ無効となります。

普通解雇(能力不足・勤務不良)

勤務成績不良・業務命令違反・私傷病による労務不能等を理由とする解雇。改善指導・配置転換等の代替手段を尽くしたか、教育機会を与えたかが厳格に問われます。指導記録・改善計画・警告書の書面化が必須。

整理解雇(リストラ)

企業側の経営上の理由による解雇。判例で「4要件」(1)人員削減の必要性(2)解雇回避努力(3)人選の合理性(4)手続きの妥当性 が要求されます。希望退職募集・配置転換・出向を尽くしても回避不能の場合のみ有効。

懲戒解雇(重大な非違行為)

横領・背任・重大なハラスメント・重大な情報漏洩等の犯罪的行為に対する制裁的解雇。就業規則に懲戒事由・種類が明記されていることが前提。退職金不支給・解雇予告手当なし(労基署除外認定必要)の重い処分。

諭旨解雇(懲戒より軽い形)

懲戒解雇相当の非違行為があるが、本人の反省を受け退職届を提出する形で穏便に処理する解雇形態。退職金は一部支給されることが多い。実質は懲戒解雇に近いが、次の転職には響きにくい。

解雇無効の効果

解雇が無効と判断されると、労働契約は継続しているとみなされ、復職+解雇日以降の未払賃金全額支払いが命じられます。判決確定まで1-3年かかる労働審判・裁判では、この間の賃金が積み上がり企業側の負担は数百万〜数千万円規模に達することも。

不当解雇の相場・慰謝料

不当解雇と判断された場合の会社側の負担相場です。労働審判・訴訟の実務データより。

争点相場備考
解雇予告手当30日分労基法違反時は付加金として同額追加も
解雇無効時の未払賃金解雇日〜復職/和解日までの全額労働審判で1-3か月分から積み上がる
慰謝料(不当解雇単独)50-200万円解雇の悪質性で判断
慰謝料(パワハラ伴う)100-500万円パワハラ立証あれば増額
退職金(自己都合水準)1か月分×勤続年数程度会社都合換算で1.5-2倍
付加金(労基署命令)未払金と同額まで裁判所裁量
労働審判の和解金相場年収の6-12か月分復職ではなく金銭解決
裁判での和解金相場年収の12-24か月分訴訟移行時

実務では復職(職場復帰)より金銭解決(退職合意+和解金)で決着する例が9割以上。会社側にとっても係争長期化を避けたいため、労働審判ではまず金銭解決の話し合いが行われます。

退職勧奨・パッケージの実態

企業が解雇の代わりに退職勧奨で合意退職を促す際の「割増退職金」(退職パッケージ)の相場です。

企業タイプ割増額の目安特徴
外資系(IT・金融)年収の6-12か月分厚めのパッケージが業界慣習
大手日本企業(整理解雇時)年収の3-6か月分希望退職募集時
中堅企業(業績悪化)年収の1-3か月分財源制約が大きい
スタートアップ年収の1-3か月分現金余力で変動
公務員・大企業(役職定年)加算率上乗せ(退職金+20-40%)制度化された割増

退職パッケージの構成要素

  • 基本退職金:勤続年数・役職別の会社規定額
  • 割増退職金:合意退職の場合の上乗せ額(年収の3-12か月分)
  • 解雇予告手当相当:30日分の平均賃金
  • 有給休暇買取:残有給日数×日給(退職時のみ買取可)
  • 再就職支援:アウトプレースメント会社利用料(月10-30万円×3-6か月)
  • ストックオプション行使猶予:付与済SOの行使期間延長

退職勧奨拒否時の対応

退職勧奨は労働者側に応じる義務なし。何度も強要すると違法な退職強要(パワハラ)となり、慰謝料請求の対象になります。「解雇されるくらいなら」と焦って合意する必要はなく、条件交渉の余地があります。

解雇通告を受けた際の初動

労働者側の初動対応チェックリスト。

1. 解雇理由証明書の請求

労基法22条で使用者は解雇理由証明書を交付する義務があります。文書で「解雇理由証明書の交付を請求します」と伝え、書面で受領。証明書に虚偽があれば争点化できます。

2. 解雇通告書・関連書類の保管

解雇通告書、就業規則、雇用契約書、直近3か月の給与明細、タイムカード、業務指示メール等を全て保管。労働審判・訴訟で証拠となります。特に解雇理由の根拠となる文書は重要です。

3. 解雇の撤回を求める意思表示

合意退職に応じるとその後争えなくなるため、退職届は絶対に提出しない。「解雇に異議があり撤回を求める」旨を書面で内容証明郵便で送付。撤回しない場合は労働審判の申立てを検討します。

4. 労働基準監督署への相談

解雇予告手当未払い、労基署除外認定違反、賃金未払いは労基署の管轄。ただし解雇の有効性判断は労働審判・裁判の管轄で、労基署では対応しないため使い分けが重要。

5. 労働弁護士・労働組合への相談

日本労働弁護団・法テラス・都道府県の労政事務所で無料相談可。実際の労働審判は労働弁護士の代理人を推奨。着手金10-30万円+成功報酬15-20%が相場ですが、和解金の中から支払い可能。

6. 雇用保険・生活保障の確保

会社都合退職ならハローワークで特定受給資格者として失業給付を7日待期→給付開始(自己都合は2か月待期)。給付日数も会社都合の方が長く(最大330日)。退職理由の記載を「会社都合」で確定させる交渉が重要。

目的別の活用シーン

労働者:解雇通告時の適正額チェック

会社から提示された解雇予告手当が労基法通りか、平均賃金の算定は適正か、勤続年数に見合う退職金かを確認。金額に納得できなければ交渉または労働審判の材料となります。

労働者:退職パッケージの交渉材料

退職勧奨で提示された金額が業界相場と比較して妥当か判断。外資系なら年収6-12か月、日系なら3-6か月が目安。相場より低ければ交渉可能。

使用者:適法な解雇手続きの費用試算

整理解雇・普通解雇を検討する経営者・人事担当が、必要な手当額を事前試算。労基法違反の付加金・訴訟リスク・不当解雇時の未払賃金積み上がりも含めて総額を把握。

使用者:退職勧奨の予算設計

解雇争訟リスクを避けるため退職勧奨で合意退職を目指す場合の、割増退職金・再就職支援費用の予算試算。1人あたりの総費用を把握し、複数人整理時の総額を経営判断に反映。

労働弁護士:相談時の初期試算

労働者からの解雇相談を受けた際、賠償請求可能額の目安を即時算出。着手金・成功報酬の設計、労働審判・訴訟の見通しを説明する材料として活用。

社労士・人事:就業規則見直し

解雇規定・退職金規定を見直す際、実際の解雇コスト・訴訟リスクを可視化。就業規則の懲戒事由・解雇理由の明確化、退職金規程の合理化に反映。

よくある間違い・注意点

  • 「解雇予告手当を払えば自由に解雇できる」と思う — 手当支払いは解雇の適法性とは別問題。労働契約法16条により客観的合理性と社会通念上の相当性がなければ、手当を払っても解雇は無効になります。
  • 試用期間中は自由解雇できると誤認 — 採用後14日を超えれば通常の解雇規制が適用されます。試用期間だからといって理由なく解雇はできず、労働契約法16条の要件を満たす必要があります。
  • 退職届を安易に提出 — 会社から「合意退職の方が円満」と誘導されて退職届を出すと、以降「自ら退職した」扱いになり、解雇無効・不当解雇を争えなくなります。異議ある場合は退職届を出さず、書面で異議を明示してください。
  • 平均賃金の算定を月給÷30日と単純化 — 正確には直前3か月の賃金総額(残業代・手当込み)÷暦日数で算出。残業代が多い月を含めるかで金額が変わり、労働者に有利な数字になることが多いため、労働者側は要確認です。
  • 解雇予告手当と退職金を混同 — 両者は完全に別物。解雇予告手当は労基法上の義務、退職金は就業規則(会社規定)によります。解雇の場合でも退職金規定に沿って会社都合退職として計算される必要があります。
  • 労基署に相談すれば全て解決すると期待 — 労基署が対応するのは労基法違反(未払賃金・未払手当等)のみ。解雇の有効性・慰謝料・復職は労働審判・裁判の管轄で、労基署では判断しません。使い分けを理解して相談先を選んでください。
  • 整理解雇の4要件を知らずに人員削減 — 使用者側が整理解雇を進める際、4要件(必要性・回避努力・人選合理性・手続き)を満たさないと後に無効訴訟されます。希望退職募集・配置転換等の代替手段を尽くした証拠を必ず残してください。

関連法令・制度

  • 労働基準法第20条 ― 解雇予告義務。30日前予告または30日分以上の平均賃金支払いを規定。違反は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金(119条)。
  • 労働基準法第12条 ― 平均賃金の算定方法。直前3か月の賃金総額÷暦日数、日給・時給者は60%最低保障。
  • 労働基準法第22条 ― 解雇理由証明書の交付義務。労働者請求時、7日以内に交付。
  • 労働基準法第23条 ― 労働者退職時の賃金・積立金等の7日以内支払い義務。
  • 労働契約法第16条 ― 解雇の客観的合理性・社会通念上の相当性を欠く解雇は無効。
  • 労働契約法第17条 ― 有期契約労働者の期間中解雇は「やむを得ない事由」が必要(より厳格)。
  • 男女雇用機会均等法第9条 ― 妊娠・出産・育休を理由とする解雇の禁止。
  • 育児介護休業法第10条 ― 育休・介休を理由とする解雇の禁止。
  • 労働組合法第7条 ― 組合活動を理由とする解雇の禁止(不当労働行為)。
  • 労働審判法 ― 個別労働紛争を迅速に解決する制度(原則3回以内の期日で解決)。

参考文献・公的資料

解雇・退職に関する詳細情報は、以下の公的機関の資料を参照してください。

※本ページの計算結果は労働基準法・労働契約法の原則的規定に基づく概算値です。実際の解雇・退職手続きは、個別の雇用契約・就業規則・労働協約・過去の判例により異なる可能性があります。解雇通告を受けた場合、または解雇を検討する場合は、必ず労働弁護士・社会保険労務士・労働基準監督署等の専門家に相談の上、対応してください。本ツールでの計算結果を根拠とする金銭請求・支払拒否等の実務対応の責任は負いかねます。

よくある質問(FAQ)

30日前予告があれば解雇予告手当は不要?

労基法20条上は、解雇日の30日以上前に予告すれば手当支払いは不要。ただし解雇自体の適法性は別問題で、労働契約法16条の要件(客観的合理性・社会通念上の相当性)を満たす必要があります。予告さえすれば自由に解雇できるわけではありません。

解雇予告手当を払わないとどうなる?

労基法119条により6か月以下の懲役または30万円以下の罰金。加えて労働者は付加金(未払金と同額まで)を請求可能。労基署からの是正勧告・立入検査の対象にもなり、企業の信用毀損リスクが大きい違法行為です。

試用期間中でも解雇予告手当は必要?

採用後14日を超えれば必要です(労基法21条)。試用期間だからといって自由解雇はできません。14日以内の解雇でも、正当な理由(能力・素行の重大問題)が必要で、単なる「合わない」では労働契約法16条の要件を満たしません。

整理解雇の割増退職金はいくら?

企業タイプにより差があり、外資系は年収の6-12か月分、日系大手は3-6か月、中堅は1-3か月が相場。希望退職募集時は割増を上乗せするのが一般的。金額に不満な場合は交渉・拒否も可能です。

不当解雇された場合の相談先は?

解雇有効性を争うなら労働弁護士・法テラス・日本労働弁護団。労基法違反(未払手当・賃金)は労働基準監督署。すぐには決めず、まず無料相談を受けてから方針を決定するのが賢明です。

退職勧奨は拒否できる?

拒否可能です。退職勧奨は労働者の合意が必要で、応じる法的義務はありません。何度も強要すると違法な退職強要(パワハラ)となり、慰謝料請求の対象。焦って退職届を出さず、条件が合わなければ拒否してください。

解雇と退職の違いは?

解雇は使用者の一方的な意思表示、退職は労働者の意思表示または合意退職。退職届を出した場合は「自己都合退職」扱いで解雇予告手当は発生せず、失業給付も2か月の待期期間が発生します。「解雇通告」に対しては退職届を出さないのが原則です。

不当解雇の慰謝料はいくら?

単独の不当解雇なら50-200万円、パワハラ・差別・執拗な嫌がらせを伴う場合は100-500万円が相場。加えて解雇無効の場合、解雇日以降の未払賃金全額(月給×係争月数)も請求可能です。

労働審判はどれくらいの期間?

労働審判は原則3回以内の期日で解決する制度で、申立から審判まで平均2-4か月。訴訟に比べ短期・低費用。異議申立てがあれば通常訴訟に移行し、1-3年の長期化も。多くは労働審判段階で和解成立します。

解雇された時の失業給付は?

会社都合退職(解雇)なら特定受給資格者として認定され、7日の待期後に給付開始(自己都合は2か月待期)。給付日数も長く90-330日。国民健康保険料の減免も対象になるため、離職票の退職理由記載を確認してください。

懲戒解雇でも解雇予告手当は必要?

労基署の除外認定を受けた場合のみ不要です。除外認定は、労働者の責に帰すべき重大な非違行為(横領・背任・重大な情報漏洩等)に限られ、単なる勤務不良では認定されません。認定なしで手当不支給とすると労基法違反となります。

妊娠中や育休中の解雇は?

男女雇用機会均等法9条・育児介護休業法10条により絶対的に禁止。「業績悪化」等の理由でも無効です。妊娠・出産・育休を理由とする解雇は、慰謝料額も高額(200-500万円)になる傾向があります。