冷媒配管 真空引きの所要時間計算
配管の呼び径・延長・室内機の容積・ポンプの排気速度から、冷媒配管の理論排気時間と実務で確保すべき真空引きの時間を算出します。
冷媒配管 真空引きの所要時間計算ツール
系内の総容積は配管の単位容積×延長+室内機の容積×台数+ホース分0.5Lで求めます。既定値では0.0968L/m×30m+1.2L×4台+0.5L=8.20L。理論排気時間は容積÷排気速度×自然対数(大気圧÷目標真空度)=8.20÷60×ln(101325÷500)=0.7分にすぎません。実務では管内壁の水分脱離が律速となるため、15分+延長0.6分/m+台数3分/台=45分を推奨値とし、真空放置試験は15分を確保します。
配管の呼び径と単位あたりの内容積
| 呼び径 | 内径 | 内容積 |
|---|---|---|
| 2分 9.52mm | 7.92mm | 0.049L/m |
| 3分 12.7mm | 11.1mm | 0.097L/m |
| 4分 15.88mm | 13.88mm | 0.151L/m |
| 5分 19.05mm | 17.05mm | 0.228L/m |
| 8分 25.4mm | 23.4mm | 0.430L/m |
真空度の目安と判断
| 絶対圧 | 状態 | 判断 |
|---|---|---|
| 3000Pa以上 | 引きが浅い | 漏れかポンプ能力の不足を疑う |
| 500Pa前後 | 一般的な到達点 | 放置試験へ進める |
| 133Pa以下 | 水分が抜けた状態 | 低外気温でも安定する |
| 67Pa以下 | 高真空 | デジタル真空計での確認が前提 |
※参考計算です。規格・規程・メーカーの推奨条件は改定されるため、施工前に最新の資料と現場条件を確認してください。
冷媒配管 真空引きの所要時間計算の詳しい解説
真空引きの時間が容積の計算どおりにならないのは、律速になっているのが気体の排出ではなく管内壁に付着した水分の脱離だからです。既定条件の総容積8.20Lをポンプで抜くだけなら1分もかかりません。ところが水は真空下で蒸発するときに潜熱を奪い、管の温度を下げて自らの蒸発速度を落とします。この自己冷却があるため、水分が残った配管では真空計の指針が途中で止まり、そこから下がらない状態が続きます。時間をかける理由は容積ではなく、この脱離のためです。
判断が分かれるのは目標の到達真空度です。連成計で目盛りの端まで振れたことをもって完了とする運用が長く続いてきましたが、連成計の分解能では数千パスカルの差を読み取れません。デジタル真空計を使い500パスカル以下、可能なら133パスカル以下まで引くという考え方が広がっています。一方で短時間の工事では現実的でないという意見もあり、放置試験の時間を長めに取って漏れと水分の残留をまとめて確認する折衷が採られます。
見落とされやすいのはポンプ側の条件です。チャージホースの内径が細く長いと管路抵抗で実効排気速度が半分以下に落ちます。真空ポンプの油が水分を吸って乳化していれば到達真空度そのものが上がってしまい、何時間引いても目標に届きません。逆止弁のないポンプを止めると油が逆流して系内を汚染します。ゲージマニホールドのバルブやコアの抜き忘れも、時間だけが過ぎて真空度が下がらない典型的な原因です。
条件による差も大きく出ます。外気温が10度を下回ると水の蒸発が鈍り、氷点下では凍結して事実上抜けません。冬季の施工では配管を保温するか、時間を1.5倍前後に延ばす配慮が要ります。雨天のなかで配管端部を開放したまま作業した場合は、乾燥時の倍以上を見込むべきです。台数の多いマルチ形では室内機ごとの分岐に水分が滞留しやすく、延長が同じでも単独形より長くかかります。
作業の記録も後の判断材料になります。真空引きの開始と終了の時刻、到達した真空度、放置試験の前後の値を残しておけば、後日に不具合が出たときに施工の問題か機器の問題かの切り分けが早く進みます。冷媒を充填してしまうと真空度の検証はできなくなるため、記録を残せる機会はこの工程しかありません。
業界・現場での使い方
空調設備工事の工程管理
配管延長と台数から真空引きに要する時間を見積もり、試運転までの工程を組みます。
冷媒充填作業の品質管理
放置試験の時間と判定の基準をあらかじめ決め、記録として残す運用に使います。
メンテナンス・冷媒回収後の再充填
既設配管の容積から必要な排気時間を見直し、水分残留による不具合を防ぎます。
施工教育・技能訓練
理論値と実務値の差を数値で示し、時間をかける理由を説明する教材にします。
よくある間違い・注意点
- 連成計の振り切りで完了と判断する — 連成計では数千パスカルの差を読めず、水分が残ったまま完了と誤認します。
- 配管の容積だけで時間を決める — 律速は水分の脱離であり、容積から出る理論値の数十倍の時間が必要になります。
- チャージホースの抵抗を考えない — 内径が細く長いホースでは実効排気速度が半分以下に落ちます。
- ポンプの油の劣化を放置する — 水分を吸って乳化した油では到達真空度が上がり、目標値に届きません。
- 低外気温でも同じ時間で切り上げる — 氷点下では水分が凍結して抜けず、冷媒系内に残留します。
関連する規格・公的資料
- 経済産業省 — 電気事業法・電気設備技術基準
- 資源エネルギー庁 — 電力・省エネルギー
- 日本電気協会 — 内線規程・保安規程
- 日本電気技術規格委員会 — 民間電気技術規格
- 電気設備学会 — 電気設備の技術指針
- 日本電線工業会 — 電線・ケーブル
- 日本電機工業会 — 電気機器
- 日本産業標準調査会 — JIS規格
- 国土交通省 — 公共建築工事標準仕様書
- 日本冷凍空調工業会 — 冷凍空調機器
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。医療・法務・税務の判断は最新の告示・規格および専門家の判断に従ってください。
よくある質問(FAQ)
配管30m・室内機4台のとき何分引けばよいですか?
既定条件では45分が推奨値です。理論排気時間は0.7分ですが、水分の脱離を考えてこの時間を確保します。
真空放置試験は何分必要ですか?
既定条件では15分です。この間に真空度が上昇するようであれば、漏れか水分の残留を疑います。
目標の到達真空度はどの程度にすべきですか?
一般には500パスカル以下、水分の懸念がある場合は133パスカル以下を目安とする考え方が示されています。
外気温が低いときはどうしますか?
10度未満では1.15倍から1.35倍、氷点下では1.6倍に延ばします。配管を保温して温度を上げる方法も有効です。
ポンプの排気速度は大きいほうがよいですか?
理論排気時間は短くなりますが、水分の脱離が律速となる領域では効果が限られます。到達真空度の性能のほうが重要です。
雨天で配管に水が入った可能性があります
既定条件でも68分以上を見込み、真空引きと窒素ブローを組み合わせる方法が採られます。
窒素置換は真空引きの代わりになりますか?
溶接時の酸化防止には有効ですが、水分の除去は真空引きでしか行えません。両者は目的が異なります。
真空引きが不十分だとどうなりますか?
冷媒と冷凍機油が水分と反応して酸やスラッジを生じ、膨張弁の氷結や圧縮機の絶縁劣化につながります。