トラバース閉合差・閉合比の計算
【ご注意】このページの計算結果・情報は参考値です。正確性・最新性は保証できません。税務・法務・お金・設計・施工・安全などに関わる判断は、公式の資料と専門家の確認のうえ、ご自身の責任で行ってください。免責事項
測点数と観測内角の合計から角閉合差と許容範囲を、座標閉合差と全測線長から位置閉合差・閉合比を求め、合否と配分量を表示します。閉合トラバースの精度点検と調整計算の準備に使います。
トラバース閉合差・閉合比の計算ツール
計算式
n 角形の内角の理論和は (n−2)×180° で、観測した内角の合計との差が角閉合差です。既定値の5点では理論和 540° に対し観測合計 539.9950°(539°59′42″)なので、角閉合差は −18.0″。許容範囲は K×√n で、K=20″ なら 20×√5=44.7″ となり許容内です。閉合差は各内角に等配分し、1点あたり +3.6″ を加えます。
座標を計算して出発点に戻ったときの座標の食い違いが座標閉合差で、位置閉合差 e=√(ΔX²+ΔY²)=√(0.035²+0.028²)=0.0448m、閉合比=e/ΣS=0.0448/850=1/18,964 です。許容 1/5,000 より良いので合格で、コンパス法則では各測線長に比例して −ΔX/ΣS=−0.0412mm/m、−ΔY/ΣS=+0.0329mm/m を配分します。
角閉合差の許容係数 K の目安(K×√n ″)
| 目的・級の例 | K の目安 | n=5 での許容 | n=10 での許容 |
|---|---|---|---|
| 基準点測量の上位級(トータルステーション・対回観測) | 10″ | 22″ | 32″ |
| 基準点測量の中位級 | 15〜20″ | 34〜45″ | 47〜63″ |
| 細部・用地の多角測量 | 30″ | 67″ | 95″ |
| 簡易な多角・現況測量 | 60″ | 134″ | 190″ |
※実際の許容値は公共測量作業規程の準則の該当表(級・観測方法ごと)で確認してください。上の値は計算の目安です。
閉合比の目安
| 閉合比 | 用途の目安 | ΣS=850m での位置閉合差 |
|---|---|---|
| 1/50,000 以上 | 上位の基準点測量 | 17mm 以下 |
| 1/20,000 | 基準点測量・登記の多角測量 | 43mm |
| 1/10,000 | 用地測量・工事の基準点 | 85mm |
| 1/5,000 | 細部測量・現況測量 | 170mm |
| 1/1,000 | 簡易な測量・下見 | 850mm |
閉合差の配分方法
| 方法 | 配分の考え方 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| コンパス法則(ボーディッチ法) | 測線長に比例して座標閉合差を配分 | 測角と測距の精度が同程度(トータルステーション) |
| トランシット法則 | 座標差(緯距・経距)の大きさに比例して配分 | 測角の精度が測距より高い場合 |
| 最小二乗法(網平均) | 観測方程式で全体を同時に調整 | 結合・網状のトラバース、基準点測量 |
※本ツールは計算式による参考計算です。公共測量・登記測量の成果は、公共測量作業規程の準則および国土地理院の公式計算・成果に従ってください。
トラバース閉合差・閉合比の計算の詳しい解説
トラバース測量は、既知点から出発して角と距離を順に測り、多角形の各点の座標を求める方法です。出発点に戻る閉合トラバースでは、幾何学的に成り立つはずの条件、すなわち内角の和が (n−2)×180° になること、座標を一周計算すると出発点の座標に戻ることの2つで観測の良否を点検できます。この2つの条件からのずれが角閉合差と座標閉合差で、許容範囲に収まっていれば観測値を調整して座標を確定し、超えていれば再測します。測ってから計算するまでの間に精度を数字で判断できるのが、閉合トラバースの最大の利点です。
角閉合差の許容は測点数の平方根に比例させます。測角の誤差は各点で独立に生じるので、n 点ぶん積み上がった誤差の標準偏差は √n に比例するからです。係数 K は使う器械と観測方法で決まり、対回観測をするトータルステーションでは 10〜20″、簡易な観測では 30〜60″ が目安です。公共測量では作業規程の準則に級ごとの許容値が表として定められているので、実務の判定はその表に従います。許容内なら閉合差を各角に等配分するのが基本で、これは各角の観測精度が等しいという前提に立った処理です。
角を調整したら各測線の方位角を順に求め、距離と掛けて座標差を出し、一周足したものが座標閉合差です。角の調整が済んでいても測距の誤差や角の残差で座標は完全には戻らず、その食い違いの大きさ(位置閉合差)を全測線長で割った閉合比が精度の指標になります。1/10,000 なら 1km 歩いて 10cm のずれという意味で、数字が大きいほど精度が高いことを表します。閉合比の許容も目的で変わり、基準点測量では 1/20,000 以上、細部測量では 1/5,000 程度が目安です。
座標閉合差の配分には、測線長に比例させるコンパス法則がよく使われます。トータルステーションでは測角と測距の精度が釣り合っているという前提で、長い測線ほど大きな誤差を含むと考えて配分する方法です。補正率は −ΔX/ΣS、−ΔY/ΣS で、各測線の座標差にその測線長を掛けた補正を加えます。測角の精度が測距より明らかに高い場合はトランシット法則、結合トラバースや網状の観測では最小二乗法による網平均が使われますが、閉合トラバース1本ならコンパス法則で十分です。
閉合差が許容を超えたときは、どこに誤りがあるかを推定してから再測します。角閉合差だけが大きければ特定の角の読み違い、座標閉合差だけが大きく方向が特定の測線と平行なら、その測線の距離の誤り(プリズム定数や単位の取り違え)が疑われます。座標閉合差の方向がどの測線とも合わないときは複数の誤差が混ざっているので、全体の再測が確実です。閉合差が許容内でも異常に小さすぎる場合は、観測値を後から書き換えていないか、点検の意味を失っていないかを疑う姿勢も必要です。
別の条件での計算例
8点の閉合トラバースで内角の合計が 1,080°00′40″ だったとします。理論和は (8−2)×180°=1,080° なので角閉合差は +40″、K=20″ なら許容は 20×√8=56.6″ で合格、各内角から 5″ ずつ引いて調整します。座標を一周計算して ΔX=−0.062m、ΔY=+0.045m、全測線長 1,530m なら位置閉合差は √(0.062²+0.045²)=0.0766m、閉合比は 1,530/0.0766=1/19,971 で、用地測量の目安 1/10,000 を満たします。コンパス法則の補正率は +0.0405mm/m と −0.0294mm/m で、例えば長さ 210m の測線には ΔX に +8.5mm、ΔY に −6.2mm の補正が入ります。閉合差の方向(南東寄りに 0.077m)が特定の測線と平行なら、その測線の距離を先に疑うのが再測の順序です。
業界・現場での使い方
基準点測量の精度点検
観測直後に角閉合差と閉合比を出し、許容内であることを確かめてから平均計算に進みます。
用地・境界の多角測量
登記に使う座標の精度を閉合比で示し、成果簿に記録します。
工事基準点の設置
現場内に閉合トラバースを組んで基準点を増やし、閉合比で構造物の精度要求を満たすか判断します。
再測の判断・原因の切り分け
閉合差の大きさと方向から、角の読み違いか距離の誤りかを推定して再測範囲を絞ります。
よくある間違い・注意点
- 外角と内角を混ぜて合計する — 内角の理論和は (n−2)×180°、外角なら (n+2)×180° です。どちらで観測したかを揃えます。
- 許容を √n に比例させない — 測角誤差は点数の平方根で積み上がります。定数の許容では点数の多いトラバースを不当に厳しく判定します。
- 角を調整せずに座標閉合差を出す — 角閉合差を配分してから方位角を計算しないと、座標閉合差が角の誤差を含んで大きく出ます。
- 閉合比の分母が小さいほど良いと思う — 1/M の M が大きいほど精度が高いことを表します。1/20,000 は 1/5,000 より良い精度です。
- 閉合差が小さすぎる観測を疑わない — 許容内でも不自然に小さい場合は、観測値の書き換えや点検の形骸化を疑います。
関連する規格・公的資料
- 国土地理院 — 基準点成果・ジオイドモデル・平面直角座標系の告示と解説
- 国土地理院 測量計算サイト — 緯度経度と平面直角座標の換算・ジオイド高の公式計算サービス
- 公共測量作業規程の準則(国土地理院) — 基準点測量・水準測量の方法と許容範囲
- e-Gov 法令検索(測量法・測量法施行令) — 測量法と、平面直角座標系を定める施行令
- 日本測量協会 — 測量技術の普及と測量士・測量士補の教育
- 日本測量調査技術協会 — 測量技術者の団体。技術資料と研修
- 日本測地学会 — 測地学・ジオイド・座標系の学術団体
- 国土交通省 — 道路構造令と公共測量の制度
- 土木学会 — 土木工学の学術資料
- 産業技術総合研究所 計量標準総合センター — 長さ・角度の国家計量標準
- 日本産業標準調査会(JISC) — JIS B 7912(測量機器)などの規格
- 国際測地学協会(IAG) — GRS80 楕円体などの国際的な測地基準
- 公共測量作業規程の準則(基準点測量の許容範囲) — 級ごとの角閉合差・閉合比の許容値
- 不動産登記規則・登記事務取扱(多角測量の精度) — 筆界点の位置精度の基準
- JIS B 7912-3(セオドライトの現場試験) — 測角精度の確認方法
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。医療・法務・税務の判断は最新の告示・規格および専門家の判断に従ってください。
よくある質問(FAQ)
角閉合差はどう求めますか?
観測内角の合計から (n−2)×180° を引きます。既定値では 539.9950°−540°=−18.0″ です。
許容範囲はどう決まりますか?
K×√n ″ で、K は器械と方法で 10〜60″ です。既定値の K=20″・5点では 44.7″ です。
閉合差はどう配分しますか?
角は各内角に等配分(既定値では+3.6″ずつ)、座標は測線長に比例するコンパス法則で配分します。
閉合比とは何ですか?
位置閉合差を全測線長で割った値を 1/M で表したものです。既定値では 1/18,964 です。
閉合比はどのくらいで合格ですか?
基準点測量で 1/20,000 以上、用地で 1/10,000、細部測量で 1/5,000 が目安です。実際は作業規程の準則に従います。
コンパス法則の補正率とは?
−ΔX/ΣS と −ΔY/ΣS で、各測線の長さにこの率を掛けた値を座標差に加えます。
閉合差が許容を超えたらどうしますか?
大きさと方向から原因を推定して再測します。特定の測線と平行なら距離、角だけ大きければ測角の誤りを疑います。
結合トラバースにも使えますか?
角閉合差は既知方位角の差、座標閉合差は到達点の既知座標との差に読み替えれば同じ計算です。
トランシット法則との違いは?
コンパス法則は測線長に比例、トランシット法則は座標差の大きさに比例して配分します。トータルステーションではコンパス法則が一般的です。