社会保険料計算ツール|月給から健保・厚年・雇保・介護の労使負担を即算出
月給と年齢から健康保険(協会けんぽ)・厚生年金・雇用保険・介護保険(40歳以上)の労使折半額を算出。従業員負担・会社負担・総人件費を瞬時に把握。給与計算実務、採用予算策定、社労士による顧問先監査、フリーランス独立時の手取りシミュレーションで頻用される社会保険料を、健康保険法・厚生年金保険法・雇用保険法・介護保険法および協会けんぽの最新料率(東京都基準)を参考に解説します。
社会保険料計算ツール
計算式と前提
基本式
従業員負担 = 標準報酬月額 × (健保率 + 厚年率 + 介護率) ÷ 2 + 標準報酬月額 × 雇保料率(従業員)
会社負担 = 標準報酬月額 × (健保率 + 厚年率 + 介護率) ÷ 2 + 標準報酬月額 × 雇保料率(会社) + 労災率(全額会社)
健康保険・厚生年金・介護保険は労使折半(折半負担)で、労働者と会社が同額を負担します。雇用保険は労使負担割合が異なり、労災保険は全額会社負担です。実務では毎月の給与から控除し、翌月末までに年金事務所・都道府県労働局に納付します。
標準報酬月額とは
実際の月給から算出される「みなし月額」で、健保・厚年の保険料計算の基礎。給与額を50等級(健保)・32等級(厚年)の等級表に当てはめ、決められた「標準報酬月額」を用います。例えば実給与295,000-305,000円なら標準報酬月額300,000円(健保22等級・厚年19等級)として計算します。4月-6月の平均給与から7月1日決定の「定時決定」(算定基礎届)で毎年更新されます。
雇用保険・労災保険の計算基礎
雇用保険は実際の月給(標準報酬月額ではなく)に料率を掛けて計算します。労災保険は全額会社負担で、業種ごとに料率が異なります(事務業0.25%〜建設業12%程度)。
保険料率(2024年 協会けんぽ・東京)
下記は2024年3月〜の協会けんぽ(全国健康保険協会)東京支部の料率です。都道府県ごとに健康保険料率が若干異なり、健保組合独自加入企業ではさらに料率が変わります。
| 保険 | 合計料率 | 従業員負担 | 会社負担 |
|---|---|---|---|
| 健康保険(協会けんぽ・東京) | 9.98% | 4.99% | 4.99% |
| 介護保険(40歳以上) | +1.60% | +0.80% | +0.80% |
| 厚生年金 | 18.30% | 9.15% | 9.15% |
| 雇用保険(一般事業) | 1.55% | 0.60% | 0.95% |
| 雇用保険(農林水産・清酒) | 1.75% | 0.70% | 1.05% |
| 雇用保険(建設事業) | 1.85% | 0.70% | 1.15% |
| 労災保険(全額会社) | 0.25%-12% | 0% | 0.25%-12% |
| 子ども・子育て拠出金(会社のみ) | 0.36% | 0% | 0.36% |
健保料率は都道府県ごとに毎年3月改定、雇用保険料率は毎年4月改定があります。給与計算ソフトの料率テーブルは3月分保険料(4月支給給与)から変更適用するのが実務標準です。
標準報酬月額表(抜粋)
健康保険の標準報酬月額は1-50等級(58,000円〜139万円)、厚生年金は1-32等級(88,000円〜65万円)で規定されています。以下は代表的な等級の抜粋です。
| 健保等級 | 厚年等級 | 標準報酬月額 | 報酬範囲(月給) |
|---|---|---|---|
| 1 | ― | 58,000 | 63,000未満 |
| 5 | 1 | 88,000 | 83,000-93,000 |
| 10 | 6 | 134,000 | 130,000-138,000 |
| 17 | 13 | 220,000 | 210,000-230,000 |
| 22 | 19 | 300,000 | 290,000-310,000 |
| 27 | 24 | 410,000 | 395,000-425,000 |
| 32 | 29 | 560,000 | 545,000-575,000 |
| 36 | 32(上限) | 650,000 | 635,000-665,000 |
| 44 | 32以上 | 950,000 | 935,000-965,000 |
| 50(上限) | ― | 1,390,000 | 1,355,000以上 |
厚生年金は32等級(標準報酬月額65万円)で頭打ちのため、月給65万円と200万円の従業員でも厚生年金保険料は同額です。逆に健康保険は50等級(139万円)まで続くため、高収入層では健保のみ保険料が増加します。
40歳到達・介護保険加算
介護保険(第2号被保険者)は40歳の誕生日の前日を含む月から加算されます。給与計算上のポイントは以下の通りです。
40歳到達月の徴収
誕生日が「1日」の場合は前月から加算。「2日以降」の誕生日は誕生日の月から加算。実務では給与ソフトの生年月日設定から自動判定されるが、手計算時は要注意です。40歳到達月は健保・厚年の月額に約1.6%上乗せ(標準報酬30万で従業員負担約2,400円増)。
65歳到達で介護保険料の徴収終了
65歳(第1号被保険者移行)で給与からの介護保険料徴収は終了。以降は市町村から個別に納付書が届き、公的年金からの天引き(特別徴収)または口座振替(普通徴収)で納付します。給与から控除しないため、会社の給与ソフトも自動で切替が必要です。
75歳到達で健康保険は後期高齢者医療
75歳(または65歳以上で一定の障害認定)で健康保険から後期高齢者医療制度に移行。会社の健保徴収は終了し、個別納付に切替。定年再雇用制度で75歳超まで働く場合、給与計算処理の移行タイミングを社労士と確認します。
健保組合独自加算のケース
大企業の健保組合では独自の付加給付や介護保険加算があります。IT・製造業の健保組合では介護保険料率が協会けんぽより低いケース、逆に高齢化が進んだ業種では高いケースがあります。組合パンフレット・料率通知を確認してください。
賞与(標準賞与額)の計算
賞与は「標準賞与額」を基礎に別途計算します。標準賞与額は実際の賞与額を1000円未満切り捨てしたもので、健保150万円/回、厚年150万円/回の上限があります。
賞与保険料 = 標準賞与額 × (健保料率 + 厚年料率 + 介護料率)
例:賞与50万円・40歳以上の場合、標準賞与額500,000円 × (9.98% + 18.30% + 1.60%) = 149,400円が総保険料、労使折半で従業員74,700円・会社74,700円ずつ負担します。年3回超の賞与は「賞与」ではなく「月額」として扱われる規定があるため、賞与制度設計時は要注意です。
業界・現場での使い方
毎月の給与計算
給与ソフト(freee人事労務・マネーフォワード給与・弥生給与・OBC奉行等)の設定確認や、給与明細作成の検算に使用。手取り = 総支給 - 社会保険料 - 所得税 - 住民税 - その他控除。社会保険料は総支給の約15%(従業員負担分)が目安です。
採用時の年間人件費見積り
月給25万円の新卒を採用する場合、総人件費は月給×約1.15倍(会社負担分)+賞与+退職金積立+福利厚生費で、年間概算400-450万円。採用予算策定時にこの計算が必須です。「実質年収」と「総人件費」の乖離を経営層に説明する場面でも活用されます。
社労士・税理士の顧問業務
顧問先の給与計算監査、算定基礎届(4月-6月給与実績提出)、月額変更届(給与2等級以上変動時)、年末調整、電子申請の対応で頻用されます。標準報酬月額の等級判定を誤ると年間で数万円の保険料誤徴収に繋がり、後日の遡及是正が必要になります。
フリーランス独立の手取りシミュレーション
会社員→フリーランス転向時に、国民健康保険+国民年金の負担額と、会社員時代の健保+厚年+介護を比較。前年の総所得が高いほど国民健康保険料が高くなり、想定外の負担増になるケースが多いため、独立前に必ず試算します。
スタートアップの資金繰り
創業直後の給与支払いで、社会保険料の会社負担分を計画に含める。従業員10名・月給30万円平均なら、社会保険料会社負担は月48万円×10名=480万円+子育て拠出金など、年間約6000万円のキャッシュアウトを見込みます。VCへの事業計画書には給与総額の1.15倍で人件費を計上するのが標準です。
退職時・転職時の説明
従業員の退職時に、任意継続被保険者制度(退職後2年間、健保料を全額自己負担で継続可能)や国保切替、失業給付との整合を説明。前年の標準報酬月額が高いと任意継続の方が国保より安いケースがあり、提示のための試算材料になります。
よくある間違い・注意点
- 40歳到達月の介護保険加算漏れ — 40歳の誕生日前日を含む月から介護保険料が発生します。誕生日「1日」の従業員は前月からの控除が正解。給与ソフトが自動対応していないと保険料未徴収→年金機構から遡及請求される事態になります。
- 賞与を月給と同じ計算で処理 — 賞与は標準賞与額(1000円未満切り捨て)を基礎に、健保150万円/回・厚年150万円/回の上限で計算します。月給の料率をそのまま賞与額に掛けると、上限超の場合に過大徴収に。
- 都道府県ごとの健保料率を無視 — 協会けんぽの健康保険料率は都道府県ごとに異なります(2024年北海道10.21%・東京9.98%・佐賀10.42%等)。本社所在地の都道府県ではなく、従業員の勤務事業所所在地の料率が適用されます。
- 労災保険料を従業員負担に含める — 労災保険は全額会社負担で、従業員給与からの控除は法令違反です。業種ごとに0.25%〜12%まで幅があり、建設・林業・鉱業では総人件費を大きく圧迫します。
- 算定基礎届の対象月ミス — 標準報酬月額の定時決定は4月・5月・6月支給の給与の平均を用います(支給月ベース)。稼働月ベースと混同するミスが多発します。
- 試用期間中は社会保険未加入で誤運用 — 試用期間中でも常勤・週30時間以上勤務なら初日から健保・厚年加入義務があります。入社2週間後から社会保険適用開始の誤運用は労働局の指導対象になります。
- 扶養家族の健保料計算 — 従業員本人が加入すれば、その健康保険で扶養家族の医療費は無料でカバーされます(健保料は本人分のみ)。扶養家族分の追加料金は発生しない点を経営層・従業員に誤って伝えないよう注意。
関連する法令・規格
- 健康保険法 ― 健康保険の適用事業所、被保険者資格、標準報酬月額、保険料率、給付内容を規定する基本法。
- 厚生年金保険法 ― 厚生年金の被保険者資格、標準報酬月額(上限65万円=32等級)、保険料率(18.30%固定)、老齢/障害/遺族年金の給付規定。
- 介護保険法 ― 40歳以上の第2号被保険者・65歳以上の第1号被保険者の区分、保険料徴収方法、介護サービス給付を規定。
- 雇用保険法 ― 雇用保険の被保険者資格、失業給付、育児休業給付、教育訓練給付の規定。労使折半でない料率設計が特徴。
- 労働者災害補償保険法(労災保険法) ― 業務災害・通勤災害の補償、全額会社負担、業種別料率の規定。
- 子ども・子育て支援法 ― 事業主負担の子ども・子育て拠出金(2024年 0.36%)の徴収根拠。
- 船員保険法 ― 船員は健保・厚年ではなく船員保険という別体系。海運業界のみ適用。
- 公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律 ― 短時間労働者の適用拡大(2016年10月・2022年10月・2024年10月改正)の根拠法。
参考文献・公的資料
正確な保険料率・標準報酬月額・法改正情報を確認したい場合は、以下の公的機関の一次資料を参照してください。
- 厚生労働省 ― 社会保険制度の所管官庁。健康保険法・厚生年金保険法・介護保険法・雇用保険法の法令解釈、料率改定告示、統計情報。
- 協会けんぽ(全国健康保険協会) ― 中小企業の健康保険の運営主体。都道府県別料率、標準報酬月額表、給付内容を公開。
- 日本年金機構 ― 厚生年金保険料の徴収、算定基礎届・月額変更届の様式、電子申請の窓口。
- 東京労働局 ― 雇用保険・労災保険の申請受付、料率通知、事業所届出の窓口(各都道府県労働局)。
- 政府広報オンライン 年金・社会保険 ― 一般向けの制度解説、法改正の啓発情報。
- 全国社会保険労務士会連合会 ― 社労士業界団体。実務Q&A・法改正情報・研修情報。
- 国税庁 源泉徴収税額表 ― 給与所得の所得税源泉徴収税額表。社会保険料控除後の課税所得から計算。
- 全国健康保険協会 健康保険組合連合会(健保連) ― 大企業健保組合の連合体。組合独自料率の情報。
- 労働政策研究・研修機構(JILPT) ― 労働経済・社会保険に関する研究レポート・統計データ。
よくある質問(FAQ)
月給30万・40歳未満の従業員負担は約いくら?
健保9.98%×半分=14,970円、厚年18.30%×半分=27,450円、雇保0.60%=1,800円で、合計約44,220円(標準報酬月額30万円ベース)。40歳以上は介護保険1.60%×半分=2,400円が加算され約46,620円になります。所得税・住民税は別途控除されます。
介護保険はいつから引かれますか?
40歳の誕生日の前日を含む月から加算開始。誕生日「1日」の従業員は前月分から加算になる点が実務では特に間違いやすいポイントです。給与ソフトの自動判定を必ず確認してください。65歳到達で給与徴収は終了し、以降は市町村から個別納付になります。
賞与の社会保険料はどう計算しますか?
賞与額を1000円未満切り捨てた「標準賞与額」に、月給と同じ料率を掛けて計算。健保150万円/回・厚年150万円/回の上限があります。労使折半は月給と同じ。年3回超の賞与は「月額」扱いになる規定があるため、四半期賞与制度は注意が必要です。
健保料率が都道府県で違うのはなぜ?
協会けんぽの健保料率は都道府県別の医療費実績に基づき年1回見直しされるため。医療費が高い地域(佐賀・北海道等)は料率が高く、低い地域(新潟・長野等)は低くなります。従業員の勤務事業所所在地の料率が適用されます。
労災保険はなぜ従業員負担がないの?
労災保険は労働者災害補償責任を会社が負うという労働基準法の規定に基づき、全額会社負担が法令要件です。業種別料率は0.25%(事務職)〜12%(林業)まで幅広く、危険業種では総人件費への影響が大きくなります。
標準報酬月額はいつ決まりますか?
入社時は「資格取得時決定」、毎年7月1日時点は「定時決定」(4月-6月給与の平均)、給与が2等級以上変動した時は「随時改定」(月額変更届)で更新されます。定時決定分は9月分保険料(10月支給給与)から反映されます。
短時間労働者はいつから加入義務?
週20時間以上勤務・月給8.8万円以上・2ヶ月超雇用見込み・学生でない場合、従業員数51人以上の企業で加入義務(2024年10月拡大)。将来的にはさらに拡大予定です。加入すれば厚生年金の受給資格が育ち老後年金額が増えるメリットもあります。
会社員から独立するとどう変わる?
健保→国民健康保険、厚年→国民年金に切替。国保料は前年所得次第で会社員時代の健保料より高くなるケースが多く、想定外の負担増になりがち。退職後2年間は「任意継続被保険者制度」で健保に残る選択もあり、事前試算が重要です。
厚生年金の上限はいくら?
厚生年金は32等級(標準報酬月額65万円)で頭打ち。月給65万円と200万円の従業員でも厚生年金保険料は同額。逆に健康保険は50等級(139万円)まで続くため、高収入層では健保のみ料率が実質的に増加します。
雇用保険の料率はいつ変わる?
毎年4月改定が原則。雇用情勢(失業率・雇用保険財政)に応じて厚労省が告示。2022年10月には途中改定もあり、給与ソフトの4月分保険料テーブル更新が必須です。事務ミス頻発ポイントの1つです。
役員報酬にも社会保険料はかかる?
常勤役員は社会保険適用で、報酬に応じて健保・厚年が発生します。非常勤役員(月数回の出社のみ)は適用外のケースが多いですが、判定は年金事務所の裁量が大きく、迷う場合は事前照会が確実です。
会社員の総人件費の目安は?
月給の約1.15倍(社会保険会社負担分)+賞与+退職金積立+福利厚生費。月給30万円なら年間人件費は約480-560万円が目安。採用予算・事業計画では給与総額×1.30〜1.50の総人件費係数を用いるケースが多くあります。