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従業員総人件費(会社視点)計算ツール|年収の1.25倍原則と詳細内訳

年収・賞与月数・業種から会社の総人件費を即算出。社会保険料(健康保険/厚生年金/介護保険)、雇用保険、労災保険(業種別料率)、退職金積立、福利厚生費、教育研修費、採用コスト、オフィス関連費まで含めた「1人あたり総負担額」の詳細内訳を表示。年収500万円=総人件費約615-700万円という「1.25倍原則」の根拠を明示し、正社員/契約社員/業務委託への切替の損益分岐点、採用予算の年次計画、経営者の固定費把握を支援します。

最終更新:2026-08-08/監修:計算ツールズ編集部

総人件費(会社視点)計算機

総人件費の計算式と1.25倍原則

基本式

総人件費 = 年収(給与+賞与+諸手当) + 法定福利費 + 法定外福利費 + 教育研修費 + 採用・オフィス関連費

法定福利費 = 社会保険料(会社負担) + 雇用保険料(会社負担) + 労災保険料 + 子ども・子育て拠出金

「1.25倍原則」の根拠

実務では「年収の1.20-1.30倍が会社の総人件費」とざっくり捉えるのが定石です。内訳は以下の通りで、業種・企業規模で振れ幅があります。

  • 社会保険料(健康保険+厚生年金+介護保険): 会社負担 約15.4%(協会けんぽ全国平均)
  • 雇用保険料: 会社負担 0.95%(一般事業・2026年度)
  • 労災保険料: 0.25-0.88%(業種別、全額会社負担)
  • 子ども・子育て拠出金: 0.36%(全額会社負担)
  • 退職金積立: 約5%(勤続20-30年前提の月次積立)
  • 法定外福利費(健康診断・保養所・慶弔金等): 約2%

これらを合計すると年収の 約24-28% が会社の追加負担となり、年収500万円の従業員では総人件費が約615-640万円になります。教育研修費・採用コスト・オフィス関連費まで含めると1.30-1.35倍(650-675万円)に達します。

「会社が払っている実質時給」の計算

年収500万円・年間所定労働時間1,900時間・総人件費625万円の場合、実質時給は3,290円。従業員が受け取る額面時給(約2,630円)より25%高い水準を会社は負担しています。この差額を意識しないと、業務外注/派遣切替の判断で採算誤りが発生します。

法定福利費の詳細内訳

法定福利費は法律で会社側負担が義務付けられており、内訳と料率は以下の通りです(2026年度・協会けんぽ全国平均・一般事業を基準)。

種別会社負担率本人負担率算定基礎
健康保険料約5.00%約5.00%標準報酬月額・標準賞与額
介護保険料(40歳以上)0.90%0.90%標準報酬月額・標準賞与額
厚生年金保険料9.15%9.15%標準報酬月額・標準賞与額
子ども・子育て拠出金0.36%標準報酬月額(会社のみ負担)
雇用保険料(一般事業)0.95%0.60%賃金総額
雇用保険料(建設)1.05%0.70%賃金総額
雇用保険料(農林水産・清酒)1.05%0.70%賃金総額
労災保険料(事務系)0.30%賃金総額(全額会社)
労災保険料(製造)0.50-0.80%賃金総額
労災保険料(建設)0.65-0.88%賃金総額

標準報酬月額の上限(健康保険139万円・厚生年金65万円)を超える高所得者は、社会保険料率が実質下がるため総人件費倍率が低下します。年収3,000万円クラスでは実質1.12-1.15倍程度まで低下します。

2026年度 社会保険料率一覧

協会けんぽの都道府県別料率(2026年3月〜)を代表的な都府県で示します。健康保険料率は都道府県別、介護・厚生年金は全国一律です。

都道府県健康保険料率会社負担分本人負担分
東京都9.98%4.99%4.99%
神奈川県10.02%5.01%5.01%
大阪府10.34%5.17%5.17%
愛知県10.01%5.005%5.005%
福岡県10.35%5.175%5.175%
北海道10.21%5.105%5.105%
沖縄県9.52%(最低)4.76%4.76%
佐賀県10.42%(最高)5.21%5.21%

厚生年金保険料率は全国一律 18.30%(会社/本人 各9.15%)、介護保険料率(40歳以上)は1.80%(会社/本人 各0.90%)で2026年度は据置。組合健保・共済組合はこれと異なる料率が適用されます。

業種別 労災保険料率(抜粋)

労災保険料率は事業の危険度に応じて54業種で個別に設定され、原則3年ごとに見直されます(現行は2024年度改定値)。全額会社負担で、料率が高い建設・林業などでは総人件費が1-2%押し上げられます。

業種労災料率備考
金融・保険・不動産・小売業0.25%最低料率グループ
通信業・放送業0.25%事務系
その他各種事業(飲食・宿泊等)0.30%汎用料率
卸売業・小売業(繊維工業を除く)0.30%
電気機械器具製造業0.25%製造業内では最低
食料品製造業0.60%刃物・機械リスクあり
金属製品製造業0.50%
自動車部品製造0.55%
鉄鋼業0.90%高温・重量物取扱い
建築事業(既設建築物設備工事以外)0.95%建設業標準
道路新設事業1.20%
木材伐出業5.20%労災リスク最高水準

年収別 総人件費早見表

事務系(労災0.3%)・賞与4か月・退職金積立5%・福利厚生2%を前提とした早見表です。

年収社保計雇保労災退職金積立福利厚生総人件費年収比
300万46.2万2.85万0.9万15万6万約371万124%
400万61.6万3.8万1.2万20万8万約495万124%
500万77.0万4.75万1.5万25万10万約618万124%
600万92.4万5.7万1.8万30万12万約742万124%
700万107.8万6.65万2.1万35万14万約866万124%
800万123.2万7.6万2.4万40万16万約989万124%
1,000万140.5万9.5万3.0万50万20万約1,223万122%
1,500万168.0万(上限)14.25万4.5万75万30万約1,792万119%
2,000万168.0万(上限)19.0万6.0万100万40万約2,333万117%
3,000万168.0万(上限)28.5万9.0万150万60万約3,415万114%

年収1,500万円以上では標準報酬月額の上限に達するため、社会保険料の負担倍率が逓減します。高年収層ほど総人件費倍率が下がる構造です。

見えない人件費(採用・教育・オフィス)

法定福利費以外にも、実務上は以下のコストが「1人あたり」に加算されます。中小企業経営では見落とされがちですが、上場企業の有価証券報告書では「1人あたり人件費」として開示される項目です。

採用コスト(1人あたり)

新卒:60-100万円(合同説明会・自社説明会・面接旅費・広告)。中途:80-150万円(人材紹介手数料は年収の30-35%、リファラルは10-30万円)。1人あたり月次コストに換算すると5,000-15,000円/月

教育研修費(年間)

厚生労働省「能力開発基本調査」では正社員1人あたり平均1.7万円/年(2023年度)。大企業では5-10万円/年、外資系IT・コンサルでは30-60万円/年に達するケースも。研修講師派遣・E-learning・書籍・カンファレンス出張費含む。

オフィス関連費

1人あたり年間 60-180万円(オフィス賃料+光熱費+清掃+セキュリティ+複合機+ネットワーク)。都心一等地(六本木・丸の内)では月18-25万円/人、郊外オフィスでは月5-8万円/人。テレワーク主体化で削減可能な費目でもあります。

PC・什器・ソフトウェアライセンス

初期投資30-50万円(PC+モニター+椅子+デスク)、ソフトウェアライセンス年間10-30万円(Office+Adobe+専門ツール)。IT系はSaaS利用料の合算で年間50万円超に達することも。

健康診断・産業医費用

労働安全衛生法66条で定期健康診断は年1回以上義務。1人あたり1-2万円/年。50人以上事業所は産業医契約が義務で月10-20万円が事業所全体でかかります。

退職金・企業年金の実費

ツールの積立率5%は目安で、実際の給付額は勤続20年で500-800万円、35年で1,500-2,000万円が中央値。中退共・確定拠出年金・確定給付企業年金など制度により拠出方法は異なりますが、実質的な会社負担額は月次で年収の3-8%相当です。

雇用形態別 コスト比較

正社員・契約社員・派遣・業務委託で会社負担コストは大きく異なります。「同じ月額報酬」でも実質コストが1.3倍以上変わるケースがあります。

雇用形態社保負担賞与退職金コスト倍率解雇の柔軟性
正社員フルあり(3-6か月)あり1.25-1.35倍制約大(整理解雇4要件)
契約社員(有期)フル制度による制度による1.15-1.25倍期間満了で終了可
パート(週30h以上)フルあり得る制度による1.15-1.25倍契約更新次第
パート(週20h未満)雇用保険のみなしなし1.02-1.08倍柔軟
派遣社員派遣元負担派遣料に含む1.30-1.50倍(派遣料+マージン)契約解除で終了
業務委託(個人事業主)1.00-1.10倍(消費税10%含む)契約更新次第

正社員vs業務委託の損益分岐

年収500万円の正社員(総人件費約620万円)を業務委託化した場合、月額報酬52万円(年間624万円)+消費税で受託者側の税抜報酬は同水準になります。ただし業務委託は労働法上の指揮命令ができず、業務時間・場所・進め方への指示が制約されるため、単純な人件費削減目的での偽装請負には注意が必要です(職業安定法44条・労働者派遣法違反リスク)。

業種・立場別の使い方

採用計画・人事予算策定

新規採用N人×年収平均×1.25倍で年間予算試算。3年後・5年後の昇給を織り込んだ長期人件費計画にも活用。求人票の年収提示額は総人件費ベースで逆算する。

経営者・CFO

固定費把握・キャッシュフロー計画。人件費は売上比 30-50%(業種による)の主要固定費で、業績変動時の削減余地・雇用形態多様化(業務委託・パート活用)の判断根拠に。

スタートアップ・シード期

資金調達額から採用可能人数を逆算。年収600万円のシニアエンジニア5名採用=年間3,700万円のバーン。ラウンド前後の予算ランウェイ計算に必須。

M&A・DD(デューデリジェンス)

買収対象企業の1人あたり人件費と業界平均の乖離、退職金債務(数年後の支給予定額)の把握に。特に事業譲渡型M&Aでは労働契約承継の要否と総人件費インパクトを試算する。

労働生産性分析

1人あたり売上・粗利÷総人件費で労働生産性を測定。上場企業の有価証券報告書「1人あたり人件費」と比較し、自社の生産性水準を業界平均と比較。

アウトソーシング判断

特定業務(経理・IT運用・カスタマーサポート)を内製vs外注する損益分岐点算定。総人件費×人月×工数の内製コストと、BPO事業者の見積を比較。

よくある間違い・注意点

  • 「年収=人件費」で計算 — 最も多い誤り。社会保険・雇用保険・労災・退職金積立・福利厚生を全て見落とすと、実際の予算より20-30%不足します。中小企業の資金繰り破綻の一因。
  • 賞与を給与に含めない — 賞与にも社会保険料がかかります(標準賞与額)。夏冬各2か月支給なら年間4か月分が算定漏れになりがち。給与提示時は必ず「年収=月給×12+賞与」で表現。
  • 労災料率を業種平均で計算 — 建設・林業・鉄鋼は事務系の3-15倍。業種別料率を厚労省告示で必ず確認しないと、労働保険料の年度更新時に大幅な追徴が発生します。
  • 退職金債務を無視 — 退職金制度がある企業は、退職給付会計(退職給付債務)として貸借対照表に負債計上義務あり。積立不足は財務体質悪化の要因。
  • 採用コストを見落とす — 人材紹介経由の中途採用は年収の30-35%が紹介手数料。年収600万円の採用で180-210万円の一時費用が発生します。定着率が低いと採算悪化。
  • 役員報酬と混同 — 役員は雇用保険・労災の対象外(兼務役員除く)。健康保険・厚生年金は加入するため、単純な倍率適用ではなく個別計算が必要です。
  • 業務委託化で偽装請負 — 単なるコスト削減目的で正社員を業務委託に切替、業務指示を継続すると偽装請負として労働局から是正勧告。過去に遡って労働者性認定+社保加入義務が発生します。

関連する規格・法令

  • 健康保険法・厚生年金保険法 ― 社会保険料の算定基礎・料率・標準報酬月額の上限を規定。会社と本人が折半負担する原則。
  • 労働保険の保険料の徴収等に関する法律(徴収法) ― 雇用保険料・労災保険料の徴収・年度更新手続きの根拠法。労働保険番号の付与・料率区分もここで定められます。
  • 労働基準法 第89条 ― 就業規則の記載義務。退職手当・臨時賃金(賞与)の規程はここに記載する必要があります。
  • 労働安全衛生法 第66条 ― 定期健康診断の実施義務。50人以上事業所は産業医選任義務(第13条)、ストレスチェック実施義務(第66条の10)も加わります。
  • 退職給付会計基準(企業会計基準第26号) ― 退職給付債務・年金資産の会計処理。上場企業・一定規模以上の企業に適用。
  • 職業安定法 第44条 / 労働者派遣法 ― 業務委託と労働者派遣・偽装請負の境界を規定。実態が「指揮命令下の労働」であれば労働者性が認定されます。
  • 子ども・子育て支援法 ― 子ども・子育て拠出金(旧児童手当拠出金)の徴収根拠。全額会社負担で0.36%(2026年度)。

参考文献・公的資料

最新の料率・法令改正情報は以下の公的機関の一次資料を参照してください。

※本ページの計算結果は、公表されている料率・統計に基づく参考値です。実際の総人件費は各企業の給与規程・退職金規程・福利厚生制度・業種別労災料率により変動します。予算策定・会計処理・M&A評価など具体的な財務判断が必要な場合は、社会保険労務士・税理士・公認会計士などの専門家に相談してください。特に労働保険の年度更新時の料率区分誤認は追徴金の対象となります。

よくある質問(FAQ)

年収500万円の総人件費はいくら?

事務系・賞与4か月・退職金積立5%・福利厚生2%の標準ケースで約618万円/年(年収の1.24倍)。内訳は社会保険料77万円+雇用保険4.75万円+労災1.5万円+退職金積立25万円+福利厚生費10万円。採用コスト・オフィス関連費まで含めると約680-720万円(1.36-1.44倍)まで拡大します。

「1.25倍原則」は業種によって変わる?

変わります。事務系(労災0.3%)では1.24倍、製造業(労災0.6%)で1.25倍、建設業(労災0.95%)で1.26倍。労災料率の高い林業・鉱業では1.30倍を超えます。また退職金制度の有無・福利厚生の充実度で±5-10%の振れ幅があります。

高年収者ほど倍率が下がる理由は?

健康保険・厚生年金には標準報酬月額の上限があります(健康保険139万円・厚生年金65万円)。これを超える年収分には社会保険料がかからないため、年収1,500万円以上では実質倍率が1.17-1.20倍まで低下、年収3,000万円では約1.14倍まで下がります。

賞与にも社会保険料はかかりますか?

かかります。「標準賞与額」として社会保険料の算定基礎に含まれ、賞与額の約15.4%が会社負担・約14.4%が本人負担となります。ただし健康保険は年間573万円・厚生年金は月次150万円の賞与額上限があります。

役員報酬にも同じ倍率が適用されますか?

いいえ。役員は労災保険・雇用保険の対象外(兼務役員除く)。健康保険・厚生年金は加入するため、役員報酬に対する会社負担は約15.4%(社保のみ)+子ども・子育て拠出金0.36%。総人件費倍率は1.16-1.18倍程度になります。

業務委託にすればコスト削減できますか?

額面上は削減可能ですが、注意点あり。(1)業務指揮命令ができない、(2)偽装請負リスク、(3)消費税10%を含めた総支払額での比較が必要、(4)ノウハウ蓄積・機密保持の課題。単純なコスト削減目的での正社員→委託化は、労働局から偽装請負として是正勧告を受けるリスクがあります。

採用コストは総人件費に含める?

会計上は「採用初年度の費用」として計上(法定福利費とは別勘定)。ただし予算計画上は「1人あたり」に含めて考えるのが実務的。中途採用で紹介手数料が年収の30-35%かかるケースでは、初年度の実質人件費が1.6-1.7倍まで膨らむ計算です。

退職金積立5%は適正水準?

目安として妥当。勤続20年で年収5か月分(約200万円)、35年で年収20-25か月分(約1,000-1,300万円)の退職金給付を賄うには、月次で年収の3-8%の積立が必要。中退共・確定拠出年金・確定給付企業年金など制度により拠出額は異なりますが、5%が業界平均に近い水準です。

福利厚生費に何が含まれる?

法定外福利費として、健康診断(法定+人間ドック補助)、慶弔金、保養所・提携施設利用補助、社員旅行、財形貯蓄補助、団体生命保険、社宅・寮の運営費、社員食堂補助、通勤手当(非課税限度超過分)などが含まれます。日本経団連調査で従業員1人あたり月平均約24,000円(2022年度)。

テレワーク導入で人件費は減らせる?

削減可能な費目はオフィス関連費(1人あたり月5-15万円)。ただし在宅勤務手当(月10,000-30,000円)、IT環境整備補助、光熱費補助などが新規発生するため、実質削減幅は月5-8万円程度。人件費本体(給与・社保)は変わりません。

労働生産性の目安は?

「1人あたり付加価値額(粗利)」を総人件費で割った比率が労働分配率で、日本平均は50-55%(製造業45%、サービス業60-70%)。労働分配率が70%超は経営効率悪化のサイン。総人件費の1.5-2.0倍の付加価値を稼ぐ設計が経営健全性の目安です。

非正規社員のコストは正社員の何割?

パート(週20h未満)は社会保険加入義務なしで年収の約1.02-1.08倍(=ほぼ賃金のみ)。派遣社員は派遣料+マージンで直雇用より30-50%高くなるケースあり(ただし採用・教育・退職金負担なし)。総合的にはケースバイケースの試算が必要です。