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エンドミル送りフライス切削現場実務

エンドミル送り速度 計算ツール|径・刃数・被削材から回転数N/送りF/1刃送りfz/面粗さRz

フライス加工の3大パラメータ切削速度Vc・1刃送りfz・回転数Nを、エンドミル径と被削材から瞬時に計算。SS400・S45C・SUS304・A5052・SKD11など主要材の推奨Vc/fzプリセット、超硬/ハイス/コート工具の係数、理論面粗さRz、切りくず排出の目安まで対応。金型加工・治具製作・量産切削・試作機械工の現場で頻用される計算式を、JIS B 4110・ISO 8688などの公的規格に照らして解説します。

最終更新:2026-08-08/監修:計算ツールズ編集部

エンドミル送り速度 計算機

計算式と単位系

基本式

回転数 N = Vc × 1000 ÷ (π × D)  (rpm)

送り速度 F = fz × Z × N  (mm/min)

1回転送り fn = Z × fz  (mm/rev)

切削速度Vcは工具外周が被削材に対して切る速度(m/min)。エンドミル径Dと主軸回転数Nから決まります。1刃送りfz(mm/tooth)は1刃が1回転で削り取る量で、被削材と工具メーカーの推奨値から選定。送り速度Fは実際にテーブル(またはZ軸)が動く速度で、CNCのGコード指令値として直接指定します。

理論面粗さ

Rz(理論) ≒ fz² ÷ (8 × R)  (mm)

ノーズRを持つ工具では、1刃送りfzとノーズ半径Rから理論上の残留高さRz(最大高さ粗さ)が近似できます。実際の面粗さは工具振れ・ビビリ・切込みで悪化するため、この式は「これ以上は絶対に良くならない下限」として扱います。JIS B 0601「幾何特性仕様(GPS)-表面性状」で規定。

Vc・fz・Nの3大パラメータ

フライス加工条件はVc(切削速度)・fz(1刃送り)・N(回転数)の三位一体で決まります。役割の違いを整理します。

パラメータ単位役割過大時のリスク
Vc(切削速度)m/min被削材と工具材種で決定工具刃先の熱摩耗・寿命短縮
fz(1刃送り)mm/tooth面粗さと工具寿命のバランス刃欠け・工具折損
N(回転数)rpmVcとDから自動決定マシン主軸の限界超過
F(送り速度)mm/minfz×Z×Nの結果値加工時間・面粗さに影響
ap(軸方向切込み)mm1パスの深さビビリ・工具たわみ
ae(半径方向切込み)mm1パスの幅刃当たり比の増大

実務ではVc→N→fz→F→MRR(材料除去量)の順に決定します。荒加工では工具寿命よりMRR、仕上げでは面粗さと寸法精度優先で条件を切り替えます。

被削材別 切削速度Vc早見(超硬エンドミル基準)

下表は超硬エンドミル(乾式・湿式混在)での目安。工具メーカーカタログ(三菱マテリアル/OSG/日立ツール等)の中央値を採用しています。

被削材Vc m/minfz mm/刃(φ10)備考
マグネシウム合金300-5000.08-0.20発火注意・乾式
A5052/A6061(汎用アルミ)200-3000.05-0.15高速加工可
A7075(超々ジュラルミン)150-2500.05-0.12航空機部材
快削鋼(SUM24L)100-1500.05-0.10切りくず良好
SS400(一般構造用鋼)60-1000.04-0.08汎用
S45C(機械構造用炭素鋼)50-900.04-0.08調質HRC20-30
SCM440(クロモリ)50-800.03-0.07調質後加工
SUS304(オーステナイト系)40-700.03-0.06加工硬化注意
SUS316(耐食)35-600.03-0.05切削油必須
SKD11(冷間ダイス鋼)30-600.02-0.05焼入HRC58-62は50%減
Ti-6Al-4V(チタン合金)30-600.02-0.05大流量クーラント
インコネル71815-400.02-0.04耐熱・低速高送り

径別・被削材別 1刃送りfz早見

φ6/φ10/φ20の超硬エンドミルにおける1刃送りfzの目安。仕上げは表値の1/2、荒加工は上限値を参考にしてください。

被削材φ6 (mm/刃)φ10 (mm/刃)φ20 (mm/刃)
A50520.03-0.080.05-0.150.10-0.25
SS4000.02-0.050.04-0.080.06-0.15
S45C0.02-0.050.04-0.080.06-0.15
SUS3040.015-0.040.03-0.060.05-0.10
SKD110.01-0.030.02-0.050.04-0.08
Ti-6Al-4V0.01-0.030.02-0.050.04-0.08

工具材種別 補正係数

Vc/fzは工具材種で大きく変わります。同じ被削材でも下記の係数で調整してください。

工具材種Vc係数fz係数特徴
ハイス(SKH51/HSS)×0.4-0.5×0.8低コスト・靭性◎
コバルトハイス(SKH55)×0.5-0.6×0.9耐熱ハイス
超硬(K10/P30)×1.0(基準)×1.0汎用超硬
コーテッド超硬(TiN/TiAlN)×1.3-1.8×1.1汎用鋼で寿命2-3倍
DLCコート×1.5×1.2非鉄・アルミ用
CBN(立方晶窒化ホウ素)×2.0-3.0×0.5-0.8焼入鋼専用
ダイヤ(PCD)×3.0-5.0×1.0アルミ・複合材専用

理論面粗さRzの求め方

フライス仕上げの理論粗さは、ノーズRを持つ工具では下記近似式で概算できます。

Rz(μm) ≒ fz² ÷ (8 × R) × 1000

例:fz=0.05mm、ノーズR=0.4mmの場合、Rz ≒ 0.05²/(8×0.4)×1000 = 0.78 μm。JIS B 0031で規定された面性状パラメータで、機械加工図面の面精度指示に直結します。実際の面粗さは工具振れ(±3-10μm)、ビビリ、被削材の弾性回復で理論値の1.5-3倍になるのが一般的です。

面粗さと1刃送りの目安

粗さ指示fz上限(ノーズR0.4)用途
Rz 25(粗い)0.28mm荒加工・素材形状出し
Rz 12.5(中)0.20mm中仕上げ・下地
Rz 6.3(細)0.14mm一般仕上げ・機能面
Rz 3.2(細)0.10mm摺動面・シール面
Rz 1.6(精密)0.07mm精密機構部品
Rz 0.8(超精密)0.05mm光学・計測部品

切りくず厚さと排出

フライス加工では1刃が接触する角度で切りくず厚さが変化します。平均切りくず厚hmは半径方向切込みae・エンドミル径D・fzで決まり、hm=fz×√(ae/D)の関係(サイドカット時)。ae/Dが小さい高速加工(HSM)では、fzを大きくしても実切りくず厚は薄いため、工具寿命を延ばしながら高送りを実現できます。

切りくず排出の目安

切りくず色は加工温度の指標。銀白色〜わら色は適正、青紫は過熱、褐色は工具寿命末期。エンドミルの溝(フルート)容積を超える切りくずは詰まりを引き起こし、刃欠け・折損の原因になります。深彫加工では2-3D周期でリトラクトして排出する運用が定番です。

工具寿命の考え方(Taylor式)

切削工具の寿命は、切削速度Vcとの関係でF. W. Taylor(1907)が定式化しました。

Vc × T^n = C (Taylor式)

Vc:切削速度(m/min)、T:工具寿命(min)、n:工具材種指数、C:定数。工具材種別のn値は、ハイス0.10-0.15、超硬0.20-0.30、コーテッド超硬0.25-0.35、セラミック0.4-0.5、CBN 0.5-0.7。n値が大きいほど、高速切削時の寿命低下が緩やかで高能率加工に向きます。

寿命と加工個数の関係

Vc変更寿命変化(超硬n=0.25)加工能率変化
Vc +10%寿命 -36%加工時間 -9%
Vc +20%寿命 -58%加工時間 -17%
Vc -10%寿命 +52%加工時間 +11%
Vc -20%寿命 +138%加工時間 +25%

実務では「工具コスト+加工時間コスト」の合計最小点を狙います。高精度・少量ロット試作ではVcを推奨値上限まで、量産ではVc中央値〜下限で寿命重視の運用が定番。

業界・工程別の応用

金型加工(プラ・プレス)

複雑3D形状の荒→中仕上げ→仕上げのステップ切削。ボールエンドミル+高速主軸(HSK/2万rpm以上)で、fz=0.05mm前後の高送り・浅切込みで滑らかな曲面を得ます。SKD11・NAK80・HPM38等が主対象。

治具・冶具製作(単品試作)

SS400/S45Cの角穴・溝・座ぐりを高速で仕上げる。φ6-φ20の超硬エンドミル・コーテッド超硬を工程集約で使い分け、CAMのアダプティブ加工(AWP)で工具寿命を延ばす運用が主流。

アルミ量産切削(自動車・電子)

A5052・A6061・ADC12ダイキャストのCNC量産。DLCコート・PCDエンドミルでVc=300-500m/min、送り速度10,000mm/min超のハイスループット加工。切りくず処理と溶着防止のためエマルジョン系切削液を大量供給。

ステンレス薄板加工(食品・医療)

SUS304/316の切削で加工硬化を避けるため、Vc=40-60m/min・fz=0.03-0.05mmで一定送りを維持。加工中断は硬化を招くため連続切削を厳守。TiAlNコートで工具寿命を確保。

チタン・耐熱合金(航空宇宙)

Ti-6Al-4V・インコネル718は熱伝導率が低く、切削熱が工具に集中しやすい。Vc=30-60m/min・fz=0.02-0.05mmを厳守し、高圧クーラント(70bar以上)で刃先冷却。トロコイド加工で1刃あたり負荷を平準化。

樹脂・複合材(GFRP/CFRP)

樹脂は溶着・バリ、CFRPは繊維の毛羽立ちが課題。特殊ダイヤコートやニック付エンドミルを使用し、高RPM・低fz(0.02-0.04mm)で仕上げます。工具寿命は炭素繊維で数百穴と短命。

よくある間違い・注意点

  • 刃数を無視して送りFを算出 — F=N×fz(1刃分)と勘違いすると、4枚刃では実送りが1/4になり過小送り→ビビリ・こすれ加工に。必ずF=N×Z×fzで計算。
  • Vcをそのまま入力材変更で流用 — SS400の80m/minでSUS304を切ると焼付きが発生。被削材ごとにVcを再設定してください。
  • ハイス工具に超硬条件を適用 — ハイスは超硬の40-50%のVcが上限。カタログの工具材種を必ず確認。
  • マシン主軸の最大回転数超過 — 汎用マシニングは8,000-15,000rpmが多い。φ3以下の超硬でVc計算するとNが桁外れになるため、実マシン限界に頭打ちさせる運用が必要。
  • ノーズRを0mm(コーナー鋭角)で理論粗さ計算 — 分母が0で発散。実工具のカタログ値(標準R0.2-1.0mm)を入力。
  • 切削油(クーラント)の効果を無視した条件設定 — 湿式ではVcを20-30%、fzを10-15%上げられます。乾式のカタログ値を湿式で使うと過小加工に。
  • ae(半径方向切込み)を考慮しない — フルカット(ae=D)と浅切込み(ae=0.1D)ではfzを2-3倍変えられるため、切込み条件を明示して選定。

関連する規格・法規

  • JIS B 4110 ― エンドミル。エンドミル(ソリッド・スロー)の寸法、材種記号、性能試験の基本規格。
  • JIS B 4053 ― 超硬工具材種の分類(P/M/K/N/S/H)。被削材グループとの対応が定義。
  • JIS B 0601 ― 幾何特性仕様(GPS)-表面性状。Ra/Rz等のパラメータ定義。
  • JIS B 0031 ― 製図における表面性状の指示方法。加工面の記号ルール。
  • ISO 8688-2 ― Tool life testing in milling - Part 2: End milling。エンドミルの寿命試験手順。
  • ISO 3685 ― Tool-life testing with single-point turning tools(旋削寿命試験の国際基準)。
  • ISO 513 ― 切削工具の分類と用途表示(P/M/K/N/S/H)。ISO材種記号の元規格。
  • 労働安全衛生規則 第107条 ― 機械類の運転中の危険防止(切削加工中の巻き込まれ防止・保護具)。

参考文献・公的資料

より詳細な切削条件、工具寿命、被削材特性、面粗さ規格を確認したい場合は下記公的機関・学会・工具メーカー技術資料を参照してください。

※本ページの計算結果および推奨条件は超硬エンドミル・乾式/湿式混在の一般的な目安です。工具メーカーの最新カタログ推奨値、実使用マシンの主軸・剛性能力、被削材ロット差、切削油種別により最適条件は変動します。量産・重要部品加工では、必ず工具メーカー技術サポートおよび実切削テストで最終条件を確定してください。労働安全衛生法上の保護具着用、機械の非常停止確認も遵守してください。

よくある質問(FAQ)

φ10mm・4刃・SS400の推奨条件は?

超硬エンドミル・湿式想定でVc=80m/min → N≒2,546rpm、fz=0.05mm/刃 → F≒509mm/minが目安。コーテッド超硬(TiAlN)なら約1.3倍(N≒3,300rpm、F≒700mm/min)、ハイスなら約半分(N≒1,270rpm、F≒250mm/min)が実務レンジです。

切削速度Vc・1刃送りfz・回転数Nの関係は?

Vcは被削材と工具材種で決まる工具外周速度(m/min)、Nはエンドミル径Dから逆算する主軸回転数(rpm)、fzは1刃で削る量(mm/刃)。送り速度F=fz×Z×N(mm/min)がCNCの実指令値です。VcとfzはメーカーカタログとJIS規格の推奨レンジから、Nは主軸性能で頭打ちさせて決定します。

コーテッド超硬とハイスの条件差は?

コーテッド超硬(TiN/TiAlN)は無コート超硬の1.3-1.8倍のVc、ハイスは超硬の40-50%のVcが上限。fz(1刃送り)は工具材種による差は小さいですが、ハイスは靭性が高いため加工硬化材で有利。汎用鋼・アルミはコーテッド超硬、深彫や難削材の粗加工はハイスと使い分けます。

fzを大きくすると何が起こる?

加工時間は短縮しますが、切削抵抗と工具負荷が増加し、刃欠け・工具折損・面粗さ悪化・ビビリのリスクが上がります。難削材(SUS316・チタン・インコネル)では推奨レンジ上限を絶対に超えないでください。荒加工は上限、仕上げは下限に近い値が実務の定番です。

面粗さRzの計算式は?

ノーズRを持つ工具ではRz(μm) ≒ fz²/(8R) × 1000で近似。例:fz=0.05mm・R=0.4mmでRz≒0.78μm。JIS B 0601に定義された最大高さ粗さの理論下限で、実測値は工具振れ・ビビリで1.5-3倍になります。図面のRz指示から逆算してfz上限を決めるのが仕上げ工程の定石です。

ステンレスSUS304の加工が難しい理由は?

SUS304は加工硬化性が強く、低速切削で表層が硬化して工具寿命を極端に縮めます。Vc=40-70m/min・fz=0.03-0.06mmを厳守し、加工中断を避けて連続切削するのが基本。TiAlNコートエンドミルと極圧添加切削油の組み合わせで工具寿命が2-3倍改善します。

アルミ加工のポイントは?

アルミは高Vc(200-500m/min)・高fz(0.1mm前後)で高能率加工が可能ですが、刃先への溶着(構成刃先)がバリ・寸法不良の原因になります。DLCコートやPCDエンドミル、大流量水溶性クーラントで溶着防止。フルート数は少ない方(2-3枚刃)が切りくず排出に有利です。

金型加工での高速主軸(HSK)条件は?

プラスチック金型のSKD11やNAK80では、φ6ボールエンドミル・HSK主軸2-4万rpmでVc=200-400m/min、fz=0.05mm、切込みap=0.05-0.1mmの浅切込み高送り加工が主流。CAM側でアダプティブクリアリングを使うと工具寿命が3-5倍改善します。

切削油(クーラント)は必須?

アルミの高速加工ではミストか大流量水溶性が推奨、鋼の一般加工では水溶性エマルジョン、SUSやチタン等の難削材では極圧添加剤入りが必須。マグネシウム合金は水と反応するため乾式または専用油。乾式加工可能なDLC/TiAlNコート工具の登場で乾式化が進んでいます。

マシン主軸のRPM上限に達したら?

計算N値がマシン最大回転数を超える場合はマシン上限で頭打ち。そのVc実質値でfzを再選定し、送りFを再計算します。逆にトルク不足の場合はfzを下げ、切込みapを浅くして負荷を分散。CNC制御は上限を超えた指令を無視するため、意図せず低速加工になっている場合があります。

荒加工と仕上げのfzの使い分けは?

荒加工は表値の上限(fz=0.08-0.15mm)でMRR優先、中仕上げは中央値(fz=0.05mm)、仕上げは下限(fz=0.02-0.05mm)で面粗さ優先。仕上げ代0.1-0.5mmを残して工程を分離するのが金型・治具の定番。仕上げ工具は別番号(荒用は別工具)にして寿命管理します。

切りくず色で判断できることは?

銀白〜わら色は適正、青紫は過熱(Vc過大かクーラント不足)、褐色〜黒は工具寿命末期。SS400/S45Cの加工でわら色が理想、SUSは薄い青まで許容。切りくず色は最も簡単な条件チェック手段で、10-15分ごとに目視確認する運用が現場の基本です。