計算ツール
健康検査値電解質臨床

血清ナトリウム(Na) 判定ツール|正常値135-145・低Na/高Na・補正Na・血漿浸透圧

血清ナトリウム(Na)値を135-145mEq/Lの正常範囲と照合し、低Na血症・高Na血症の重症度、血糖値による補正Na血漿浸透圧、原因(SIADH・利尿剤・脱水・熱中症)、補正速度の上限(急激補正で浸透圧性脱髄症候群のリスク)を判定。日本内科学会・日本腎臓学会ガイドラインに基づき、外来医療者・受験生・在宅ケアラー向けに解説します。

最終更新:2026-08-05/監修:計算ツールズ編集部

ナトリウム判定 計算機

計算式と基準値

基本式

正常値 Na = 135 〜 145 mEq/L

補正Na = 実測Na + 0.016 × (血糖値 − 100) (高血糖時のKatz補正式)

血漿浸透圧 = 2 × Na + 血糖 ÷ 18 + BUN ÷ 2.8 (mOsm/kg, 概算)

推定水欠乏量(L) = 体重 × 0.6 × (現在Na − 140) ÷ 140

正常値 K = 3.5 〜 5.0 mEq/L

血清K(カリウム)は任意入力です。入力すると低K血症・高K血症の判定を併せて表示します。低Na血症に低K血症(3.0 mEq/L未満)を合併している場合は、Kの補充自体が血清Naを押し上げるため、浸透圧性脱髄症候群(ODS)のリスクが高まります。補正速度上限の欄にその注意を表示します。

ナトリウムは細胞外液の主要陽イオンで、体液量・浸透圧・血圧・神経筋機能を規定します。血清Naは水とNaの比で決まるため、低Na=水過剰、高Na=水欠乏を意味することが多く、直接Naそのものの過不足を示すわけではない点に注意が必要です。

正常値と重症度分類

Na値(mEq/L)分類症状の目安
<115超重症低Na血症けいれん・昏睡・脳浮腫
115-119重症低Na血症意識障害・嘔吐
120-129中等症低Na血症頭痛・悪心・易疲労
130-134軽症低Na血症集中力低下・軽度倦怠
135-145正常
146-149軽症高Na血症口渇・多尿
150-159中等症高Na血症興奮・傾眠
160-169重症高Na血症意識障害・けいれん
≥170超重症高Na血症昏睡・脳出血・死亡

症状は絶対値だけでなく変化速度にも依存。急性(48時間以内)なら軽度でも症状が強く、慢性(48時間超)では130前後でも無症状のケースがあります。

原因別分類

低Na血症の原因

  • SIADH(抗利尿ホルモン不適切分泌症候群) — 中枢神経疾患、肺疾患、悪性腫瘍、SSRI等の薬剤性。
  • 利尿剤過剰(特にサイアザイド) — 高齢女性の外来低Naの最頻原因。
  • 心不全・肝硬変・ネフローゼ — 有効循環血液量低下→AVP分泌増加。
  • 副腎不全 — 副腎皮質ステロイド不足で腎からのNa喪失。
  • 甲状腺機能低下 — 心拍出量低下、AVP感受性増加。
  • 水中毒 — 精神疾患患者の多飲、マラソン選手の水分過剰摂取。
  • 下痢・嘔吐 — Na喪失を上回る水の補給。

高Na血症の原因

  • 水分摂取不足 — 高齢者・寝たきり・意識障害での口渇認識低下。
  • 不感蒸泄増加 — 発熱・熱中症・気道乾燥。
  • 下痢(浸透圧性) — 乳児・経管栄養。
  • 尿崩症(中枢性・腎性) — AVP分泌不全または尿細管応答不全。
  • ループ利尿剤・浸透圧利尿(高血糖・マンニトール)
  • 過剰なNa負荷 — 食塩過剰摂取、高張食塩水静注、誤ったミルク調製。

血漿浸透圧の意義

血漿浸透圧(正常275-295 mOsm/kg)はNa・血糖・BUNの寄与で決まります。低Na血症でも浸透圧が正常/高値なら、偽性低Na(高中性脂肪・高蛋白)や高血糖性(高血糖で水が血管内に移動)の可能性があります。

浸透圧ギャップ

浸透圧ギャップ = 実測浸透圧 − 計算浸透圧

10 mOsm/kg超のギャップはメタノール・エチレングリコール・アルコール中毒を疑うサインです。

こんな場面におすすめ

健康診断の異常値相談

Naの軽度異常(133や148など)がどの程度心配かの参考に。臨床症状・薬剤・食事内容の見直しポイントを把握できます。

高齢者ケア・在宅介護

脱水・熱中症・水分摂取不足の判定に。特に夏場は高Na血症、利尿剤内服中は低Na血症のリスクが高くなります。

マラソン・トライアスロン参加者

持久系スポーツでは水過剰摂取による運動関連低Na血症(EAH)の危険。競技前の摂取量計画に。

臨床看護学生・研修医の学習

正常値・重症度・原因鑑別・補正速度の学習ツール。国家試験・臨床実習の暗記補助に。

糖尿病治療中の高血糖時

血糖200-400 mg/dLでは補正Naが必要。実測Naで安心せず、補正値で真の状態を評価しましょう。

SSRI等の内服中の患者

SSRI・SNRIはSIADHを誘発しやすく、開始2週間以内のNa低下に注意。定期採血フォローを。

補正の原則と危険性

低Na血症の補正上限

慢性低Na血症の補正速度は10 mEq/L/24時間、6 mEq/L/8時間以内が原則。急速補正は浸透圧性脱髄症候群(ODS/CPM)を起こし、脳橋中心髄鞘崩壊による四肢麻痺・嚥下障害・意識障害の後遺症を残します。

急性低Na血症の緊急対応

けいれん・昏睡等の重篤症状があれば3%高張食塩水を100mL/10分静注、症状改善または5mEq/L上昇まで。ICU管理下で頻回採血。

高Na血症の補正上限

慢性高Na血症も10 mEq/L/24時間以内で下げる。急速補正で脳浮腫のリスクがあります。5%ブドウ糖液または経口水分負荷で緩徐に補正。

よくある間違い・注意点

  • Na値だけで診断 — 尿Na・尿浸透圧・体液量評価がなければ原因鑑別できません。血液検査に加えて尿検査も必須。
  • 「低Na=塩分不足」と誤解 — 大半は水過剰(SIADH等)。塩分補給ではなく水制限が第一選択のケースが多い。
  • 急速補正で脱髄症候群 — 慢性低Naの急速上昇でCPM/ODSを起こし後遺症を残す。24時間で10mEq/L以内が絶対原則。
  • 高血糖時の補正Naを忘れる — 血糖500mg/dLでは実測Naに+6〜7mEq/Lの補正が必要。実測だけでは低Naと誤診しがち。
  • マラソン中の水分過剰 — レース中の水/スポーツドリンク過剰摂取で運動関連低Na血症を発症、致死例あり。時速500mL以下を目安に。
  • 高齢者の水分制限 — 心不全等での過度な水制限は脱水・高Na血症を招く。個々の体重・尿量で調整。
  • 乳児のミルク濃度誤り — 粉ミルクを濃く調製すると高Na血症、薄すぎると低Na血症のリスク。指定濃度を守る。

関連ガイドライン

  • 低Na血症診療ガイドライン(欧州) ― European Society of Endocrinology等2014。世界標準の低Na血症診療。
  • 体液・電解質輸液ガイド ― 日本救急医学会・日本集中治療医学会。
  • SIADH診断基準 ― Bartter-Schwartz基準。日本内分泌学会にも準拠。
  • 熱中症診療ガイドライン ― 日本救急医学会。高Na/低Na熱中症の鑑別と補液。
  • 透析患者の電解質管理 ― 日本透析医学会。血液透析Na処方の目安。
  • 小児脱水症診療 ― 日本小児救急医学会。乳児高Na血症の予防と補液計算。

参考文献・公的資料

※本ツールはNa値の解釈支援を目的とした概算判定で、医療診断・治療方針決定に代わるものではありません。血清Na値異常時は必ず主治医・救急医療機関を受診してください。補正には体液量評価・尿検査・薬剤歴・原疾患の把握が必要で、独自判断による塩分摂取・水分制限は危険です。特に意識障害・けいれん・激しい嘔吐・脱水症状を伴う場合は緊急受診してください。

よくある質問(FAQ)

低Na血症の原因は?

SIADH(抗利尿ホルモン過剰)、サイアザイド系利尿剤過剰、心不全・肝硬変・ネフローゼ、副腎不全、甲状腺機能低下、水中毒、下痢・嘔吐など多岐にわたります。外来では利尿剤過剰とSIADHが最頻。SSRI・SNRIも要注意薬剤です。

高Na血症の原因は?

水分摂取不足(高齢者・意識障害)、発熱・熱中症、下痢、尿崩症、浸透圧利尿(高血糖)、過剰なNa負荷(食塩・輸液)など。高齢者では口渇認識低下による水摂取不足が特に多い原因です。

症状はどんなもの?

低Naでは頭痛・悪心・意識障害・けいれん、高Naでは口渇・興奮・傾眠・けいれん。急性(48時間以内)は軽度でも症状強く、慢性は無症状のことも多いため注意が必要です。

正常値は?

血清Na135〜145 mEq/Lが正常範囲。130-134は軽症低Na、146-149は軽症高Na、120未満または160超は入院加療が必要な重症域です。

補正速度の上限は?

慢性低Naでは10 mEq/L/24時間、6 mEq/L/8時間以内が原則。急速補正で浸透圧性脱髄症候群(ODS/CPM)を起こし、四肢麻痺・嚥下障害の後遺症を残します。急性なら緊急補正可。

高血糖時のNa補正は?

Katz補正式で実測Na + 0.016×(血糖-100)。血糖500mg/dLなら+6.4mEq/L、血糖1000mg/dLなら+14mEq/L加算。実測だけでは低Naと誤診しがちなので必ず補正Naで評価します。

SIADHの診断基準は?

①正常/低い血漿浸透圧、②不適切に濃縮された尿(尿浸透圧>100)、③循環血液量正常、④尿Na>40mEq/L、⑤甲状腺・副腎機能正常、⑥利尿剤未使用の6項目(Bartter-Schwartz基準)。

マラソン中の低Na血症は?

運動関連低Na血症(EAH)は水分過剰摂取が主因。時速500mL以下、体重減少3%以内を目安に。ゴール後の意識障害・けいれんは低Na血症を疑い救急対応が必要です。

塩分摂取の目安は?

厚労省2025基準で成人男性7.5g/日未満、女性6.5g/日未満、WHOは5g/日未満を推奨。日本人平均は10g前後で過剰。高血圧・慢性腎臓病では6g/日未満が推奨されます。

熱中症で塩は必要?

大量発汗時はNa喪失があるため水だけでなく塩分補給が必要。ただし過剰な塩分は逆に高Na血症のリスク。0.1-0.2%食塩水またはORSが推奨されます。

高齢者の脱水対策は?

体重×30-40mL/日の水分を目安に、こまめな摂取を促す。口渇認識が低下しているため「喉が渇いた」と感じる前の予防的摂取が重要。尿量・尿色チェックも指標。

子供のNa異常は?

乳児では粉ミルク濃度誤り(濃すぎて高Na、薄すぎて低Na)、下痢による脱水が主な原因。指定濃度でのミルク調製、下痢時のORS補水が基本。急性重症は緊急受診を。