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配管ポンプ機械設備現場実務

ポンプ揚程・必要動力 計算ツール|全揚程・効率からkWを即算出、給水/井戸/排水ポンプ選定

ポンプの全揚程・必要動力(水動力・軸動力・電動機出力kW)を、流量・実揚程・配管摩擦損失・ポンプ効率・電動機効率・余裕率から即座に算出。給水・揚水・井戸・排水ポンプの選定に必要な水動力Pw = ρgQH/1000、軸動力Ps = Pw÷η_p、電動機出力Pm = Ps÷η_m×(1+余裕率)の全段階を表示し、JIS標準モーター容量(0.4-200kW)への自動割付、水・油・空気の3種流体対応、NPSH・キャビテーション判定まで一括処理。マンション増圧給水・工場冷却水循環・農業用水揚水・雑排水移送などポンプ選定と省エネ運転の現場で頻用する公的規格に沿って、水道法・建築設備基準・JIS B 8302・JIS C 4210に基づき解説します。

最終更新:2026-07-28/監修:計算ツールズ編集部

ポンプ揚程・動力 計算機

計算式と単位系

基本式(全揚程 → 電動機出力)

全揚程 H = 実揚程 + 摩擦損失 + 残留速度水頭 [m]

水動力 Pw = ρ × g × Q × H ÷ 1000 [kW]

軸動力 Ps = Pw ÷ ポンプ効率 η_p [kW]

電動機出力 Pm = Ps ÷ 電動機効率 η_m × (1 + 余裕率) [kW]

ρ:流体密度(水=1000 kg/m³)、g:重力加速度(9.81 m/s²)、Q:流量[m³/s]、H:全揚程[m]。電動機出力Pmを標準モーター容量(JIS C 4210)に切り上げてポンプ機種を選定するのが実務。

単位換算表

1 kW = 1.36 PS / 1 m³/h = 16.67 L/min = 0.278 L/s
1m水頭 = 9.807 kPa = 0.098 気圧

ポンプメーカーカタログの流量はL/min・m³/h・L/s併記が多く、換算漏れが選定ミスの原因。米国産ポンプではUSGPM・PSI表記なのでSI単位へ換算します。

ポンプ効率と電動機効率

ポンプ効率η_pと電動機効率η_mは、水動力を実際に得るまでのエネルギー損失率を示します。

ポンプ種別ポンプ効率 η_p特徴
渦巻ポンプ(大型)75-85%単段・多段の大流量向け
渦巻ポンプ(小型)50-70%家庭用・給水ブースター
タービンポンプ65-80%深井戸・多段昇圧
水中ポンプ(清水)50-70%雑排水・工事用
渦流ポンプ30-50%小流量・高揚程
プランジャーポンプ85-95%高圧洗浄・薬液注入
電動機容量電動機効率 η_m備考
0.4-1.5 kW75-82%小型・家庭用
2.2-5.5 kW82-88%中型・産業用
7.5-22 kW88-92%汎用効率クラス
30-75 kW92-94%プレミアム効率(IE3)
90 kW以上94-96%スーパープレミアム(IE4)

プレミアム効率(IE3)モーターは2015年以降、日本のトップランナー基準で3.7kW~375kWの三相誘導電動機に適用義務化。買い替え時は必ずIE3以上を選定します。

余裕率の設定基準

実流量・揚程は計算値より大きくなりがちで、経年劣化(配管の汚れによる摩擦増、ポンプ羽根車の磨耗)にも対応するため余裕率を設けます。

用途推奨余裕率理由
一般給水・空調循環15-20%標準的な安全側
マンション増圧給水20-30%ピーク流量変動大
非常用消火ポンプ20%消防法規制準拠
排水・下水移送25-30%異物混入・摩耗
プロセスポンプ(化学)25-35%流体変動・信頼性重視
農業用水・灌漑15%季節変動対応

JIS標準モーター容量

JIS C 4210(低圧三相かご形誘導電動機)で標準化された容量。計算した電動機出力を上位標準容量に切り上げて選定します。

0.2 / 0.4 / 0.75 / 1.5 / 2.2 / 3.7 / 5.5 / 7.5 / 11 / 15 / 18.5 / 22 / 30 / 37 / 45 / 55 / 75 / 90 / 110 / 132 / 160 / 200 kW

例えばPm=6.2 kW → 7.5 kW モーターを選定。中間サイズはコスト・入手性の問題で敬遠されるため、この段階リストが世界的な標準となっています。IEC 60072・NEMA MG1でもほぼ同じサイズ体系。

用途別ポンプ選定シーン

マンション増圧給水ポンプ

受水槽なし・直圧給水では、市水圧+ブースターポンプで各戸の水栓圧力(100-300kPa)を確保。50戸マンションで流量300-500L/min・全揚程40-50m・電動機出力3.7-5.5kW程度が目安。省エネ法・水道法・水槽衛生管理から近年は増圧直結給水が主流。

戸建て井戸ポンプ・浅井戸

水位10m以下の浅井戸なら陸上ポンプで揚水可能。流量30-60L/min・全揚程20-30m・電動機出力0.4-0.75kW。10m超は水中ポンプ(沈水式)が必須で、電動機と羽根車を一体化した構造で高効率運転。

工場冷却水循環ポンプ

射出成型機・工作機械の冷却水循環では、流量50-500L/min・全揚程15-30m・電動機出力1.5-11kW。24時間連続運転のため、インバータ制御と省エネモーター(IE3)の組合せで年間電気代を30-40%削減できる事例多数。

汚水・雑排水移送ポンプ

地下ピット・トイレ排水の強制排水では、水中式のノンクロッグ・グラインダー付ポンプで20-50mmの固形物を通過。流量100-300L/min・全揚程5-15m・電動機出力0.75-3.7kW。予備機を含む複数台構成が定石。

スプリンクラー消火ポンプ

消防法・危険物法に基づく非常用ポンプ。末端ヘッドで規定圧力(100kPa以上)×放水量から流量を算定し、非常用電源との組合せで信頼性を確保。予備ポンプ・自動起動制御が必須で、年1回の性能試験義務あり。

プール・浴槽循環ろ過ポンプ

浴槽水量に対して1時間で1-2回転させる循環量が目安。旅館・スパでは流量200-2000L/min・全揚程10-20m・電動機出力1.5-15kW。厚労省「レジオネラ症を予防するために必要な措置」に基づき定期的なろ材洗浄・保守が必要。

ポンプの種類と特性

種類特徴典型用途
渦巻ポンプ(単段)汎用・大流量・低〜中揚程給水・空調・冷却塔
渦巻ポンプ(多段)高揚程・小〜中流量高層マンション給水
タービンポンプ深井戸・軸方向長い深井戸揚水・地下水
水中ポンプ水没設置・小型・静音排水・工事・井戸
渦流ポンプ小流量・高圧・自吸あり家庭用・散水
プランジャーポンプ超高圧・小流量・脈動あり高圧洗浄・薬液注入
ダイヤフラムポンプスラッジ・薬品対応薬品定量注入・空気圧
ギヤポンプ高粘度・オイル対応油圧・潤滑油

NPSHとキャビテーション

NPSH(Net Positive Suction Head:正味吸込ヘッド)はポンプ吸込口で液体が気化しない余裕圧力の指標。有効NPSH(NPSHa)が必要NPSH(NPSHr)を下回るとキャビテーション発生。

NPSHa = (大気圧 − 飽和蒸気圧)/(ρg) − 吸込揚程 − 吸込側損失

実務ではNPSHa ≧ NPSHr + 0.5-1.0mの余裕を確保します。温水(80℃以上)や高地では飽和蒸気圧が上昇・大気圧が低下するため要注意。詳細は配管圧力損失計算と併用して吸込側損失を評価します。

省エネ運転(インバータ・並列運転)

インバータ(VFD)制御

ポンプの必要流量が時間変動する用途では、モーター回転数を絞ることで動力が回転数の3乗で低下します(親和則)。70%回転時に動力34%、50%で12.5%まで削減。回収期間2-3年の投資対効果で、ZEB・省エネ大賞受賞事例多数。

並列・直列運転

並列運転は流量倍増(揚程同じ)、直列運転は揚程倍増(流量同じ)。マンション給水では小型ポンプ複数台の台数制御運転で必要台数のみ稼働し、省エネと予備機能を両立するのが定番。

プレミアム効率モーター

IE3効率クラスへの更新で、電動機損失を10-15%削減。日本のトップランナー制度で3.7-375kWの三相かご形誘導電動機は義務化済み。IE4(スーパープレミアム)は非強制ですが、大容量では年間電気代削減効果で更新が進んでいます。

よくある間違い・注意点

  • 単位換算のミス — 流量Q_lpm(L/min)をm³/sに換算する際「÷60000」を忘れる。水動力の桁が1000倍ずれます。ツール利用時はL/min入力欄をそのまま使用推奨。
  • 実揚程だけで計算 — 摩擦損失と残留速度水頭を忘れる。特に長距離配管では摩擦損失が実揚程を超えることもあり、必ず配管圧力損失と合算して計算します。
  • 効率を100%と仮定 — 水動力=軸動力=電動機出力として計算するとポンプが動かないor焼損。ポンプ効率60-75%、電動機効率85-92%を必ず適用。
  • 余裕率0%で選定 — 経年劣化・水位変動・実流量ばらつきに対応できず、10年後に更新が必要に。安全側の20-30%は投資対効果からも合理的。
  • NPSH無視 — 吸込側の設計を怠るとキャビテーションで羽根車が損傷し、寿命が半減。特に温水・高地・長い吸込配管では要注意。
  • ウォーターハンマー未対策 — ポンプの急停止時に配管衝撃圧が発生し、破裂事故の原因に。緩閉止バルブ・空気室・アキュムレータで緩和します。

関連する規格・法令

  • JIS B 8302 ― ポンプの試験方法。全揚程・軸動力・効率の測定手順を規定する日本の標準。
  • JIS C 4210 ― 一般用低圧三相かご形誘導電動機(プレミアム効率クラス)。標準容量・効率クラスIE3の要件を規定。
  • 省エネ法(エネルギー使用の合理化等に関する法律) ― 経済産業省。トップランナー制度で三相誘導電動機のIE3効率を義務化。
  • 水道法・給水装置構造基準 ― 厚生労働省。給水ポンプ・受水槽・増圧ポンプの技術基準。
  • 建築基準法・建築設備 ― ポンプ・給排水設備の建築設計上の要件。
  • 消防法・消防設備規則 ― 屋内消火栓・スプリンクラーの非常用ポンプの性能要件。
  • 下水道法・排水設備基準 ― 汚水・雑排水ポンプの設計基準。
  • SHASE-S 206 ― 給排水衛生設備規準・同解説。空調衛生工学会の民間基準。
  • ISO 9906 ― Rotodynamic pumps – Hydraulic performance acceptance tests. ポンプ性能試験の国際規格。
  • IEC 60034 / NEMA MG1 ― 電動機の効率クラス(IE1-IE4)を規定する国際規格。

参考文献・公的資料

より詳細なポンプ選定基準や効率規格を確認したい場合は、以下の公的機関・業界団体の資料を参照してください。

※本ページの計算結果は概算値です。実際のポンプ選定・据付・配管設計には、水道法・消防法・建築基準法・省エネ法などの該当法令と、SHASE-S・JIS・製造メーカーカタログの一次資料を優先してください。特に消火ポンプ・受水槽ポンプ・自家発電機併用の非常用ポンプでは、有資格者(管工事施工管理技士・建築設備士・給水装置工事主任技術者・電気主任技術者等)による設計・監理と、所轄消防・自治体の届出・承認が必要です。事故防止のためNPSH・ウォーターハンマー・ドライラン保護を必ず検討してください。

よくある質問(FAQ)

余裕率はなぜ必要?

実流量・揚程は計算値より大きくなることが多く、経年劣化(配管の汚れによる摩擦増、ポンプ羽根車磨耗)にも対応するため。一般用は20%、重要設備は30%以上を推奨。マンション給水・工場冷却・下水移送はピーク時の想定不足で頻繁にトラブルとなるため、実務では最低20%は確保します。

井戸ポンプの選定で注意することは?

吸込揚程は大気圧の物理限界で理論上10m以下ですが、空気漏れ・標高補正で実用は7-8mが限界。深い井戸はピストンポンプor水中ポンプ(沈水式)を選定します。水質検査・砂噛み対策・凍結対策も必須で、給水装置工事主任技術者の設計が推奨されます。

並列・直列ポンプ運転は?

並列運転は流量倍増(揚程同じ)、直列運転は揚程倍増(流量同じ)。マンション給水では小型ポンプ複数台の並列運転で省エネ運用が定番で、必要台数のみ稼働する台数制御運転で電気代を30-40%削減できるケースが多いです。故障時の予備機能も確保できます。

ポンプ効率は最大効率点だけ見ればよい?

いいえ、実運転域全体を検討します。カタログの効率曲線は最大効率点(BEP)付近が最も高いですが、実運転はBEPからずれることが多く、大幅にずれると軸受寿命短縮・キャビテーション発生。BEPの70-120%範囲での運転が推奨されます。

インバータ制御の効果は?

親和則により動力は回転数の3乗で変化。70%回転で動力34%、50%で12.5%まで削減可能。時間変動する用途(給水・空調・冷却水)では2-3年で投資回収できるケースが多く、省エネ大賞受賞事例も多数。ZEB化・SDGs対応の重点項目です。

NPSHとは何?

Net Positive Suction Head(正味吸込ヘッド)。ポンプ吸込口で液体が気化しない余裕圧力の指標。有効NPSH(NPSHa)が必要NPSH(NPSHr)を下回るとキャビテーション発生し、羽根車損傷・振動騒音・揚程低下を招きます。実務ではNPSHa ≧ NPSHr + 0.5-1mの余裕を確保します。

ウォーターハンマーとは?対策は?

ポンプ急停止時に慣性で流体が減速する際、衝撃圧が発生する現象。ジューコフスキー式で数MPaに達することもあり、配管破裂の原因に。緩閉止バルブ・空気室・アキュムレータ・エアバルブで緩和。マンション給水では衝撃圧で管接続部が破断する事故事例あり。

プレミアム効率モーター(IE3)は必須?

2015年以降、日本のトップランナー制度で3.7-375kWの三相かご形誘導電動機はIE3効率クラスが義務化されており、新規購入・買い替え時は必ずIE3以上を選定。IE4(スーパープレミアム)は非強制ですが、大容量では年間電気代削減効果で更新が進んでいます。

ドライラン(空運転)は避けるべき?

はい。水がない状態でポンプを回すと軸受・メカニカルシール焼損。フロートスイッチ・電極棒・圧力スイッチによる自動停止装置を設置します。水中ポンプは特に危険で、水位低下警報+自動停止が必須。修理費が本体価格を超えるケースも多いです。

マンション増圧給水の設計は?

戸数×1戸あたり給水量(250-350L/日)×時間係数(ピーク時2-3倍)で流量を算出。全揚程は最上階水栓圧力(100kPa以上)+高低差+配管損失+残留速度水頭。50戸マンションで流量300-500L/min・全揚程40-50m・電動機出力3.7-5.5kW程度が実務目安です。

ポンプ効率と電動機効率、どちらを重視?

両方とも重要。ポンプ効率は羽根車形状・運転点で決まり、電動機効率はモーター容量・トップランナー基準で決まります。総合効率 = ポンプ効率 × 電動機効率で、たとえば65% × 88% = 57%程度が標準。両方を10%改善すると総合効率が20%改善し、電気代も同率削減できます。

ポンプの点検・保全はどのくらいの頻度?

年1回の定期点検(振動・軸受温度・グランドパッキン漏れ・電流測定)が推奨。3-5年でメカニカルシール交換、10-15年で羽根車・軸受総取り替えが標準的な保全サイクル。消防用ポンプは年1回の性能試験が法律義務で、記録の保管も義務化されています。