時効期間 計算ツール|借金・家賃・売掛金・損害賠償の消滅時効早見と援用の手続き
債権の消滅時効期間を、2020年4月施行の改正民法(債権法改正)に基づき早見。借金(消費貸借)・家賃・売掛金・給料・慰謝料・損害賠償・相続回復請求など、日常で問題になる債権を網羅。時効の起算点、完成猶予・更新(旧・時効の停止・中断)、援用の意思表示、刑事事件の公訴時効まで、民法166条・167条・724条、刑事訴訟法250条など公的根拠に照らして整理します。
債権別 時効期間 早見計算
民法改正の全体像(2020年4月1日施行)
改正のポイント
2017年に成立し2020年4月1日に施行された改正民法(債権法改正)により、消滅時効の期間・起算点が大幅に整理されました。従来の「1年・2年・3年・5年・10年」など職業別の短期消滅時効は廃止され、原則として以下の二本立てになりました。
主観的起算点:権利を行使できることを知った時から 5年
客観的起算点:権利を行使できる時から 10年
(いずれか早い方の経過で時効完成)
不法行為による損害賠償は知った時から3年・行為時から20年(民法724条)、生命身体侵害の損害賠償は知った時から5年・行為時から20年(民法724条の2、生命身体特則)と別途規定。労働債権(給料・退職金)は労働基準法115条により賃金5年(当面3年)・退職金5年で、民法とは別ルートで存続しています。
改正前債権との経過措置
2020年3月31日以前に発生した債権は旧法(原則10年、商事5年、職業別短期)が適用されます。これに対して2020年4月1日以降発生の債権は新法適用。契約の締結日・貸付日・不法行為の発生日で線引きし、混同しないよう注意が必要です。
民事債権の時効早見表
| 債権の種類 | 時効期間 | 起算点 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 借金(消費貸借) | 5年 / 10年 | 返済期日の到来 | 民166① |
| クレジット・ショッピング | 5年 | 各月支払期日 | 民166①・商事一般 |
| 家賃・地代 | 5年 | 各月末等の支払期日 | 民166① |
| 売掛金(BtoB) | 5年 | 納品・請求書発行時 | 民166① |
| 診療報酬(医療機関) | 5年 | 診療完了時 | 民166①(旧3年) |
| 飲食代・宿泊代 | 5年 | 提供完了時 | 民166①(旧1年) |
| 給料・退職金 | 5年(当面3年) | 各月支給日・退職日 | 労基115 |
| 不法行為の損害賠償 | 3年 / 20年 | 損害・加害者を知った時 | 民724 |
| 生命身体侵害の損害賠償 | 5年 / 20年 | 損害・加害者を知った時 | 民724の2 |
| 慰謝料(離婚・不貞) | 3年 / 20年 | 離婚成立・不貞発覚時 | 民724 |
| 遺留分侵害額請求 | 1年 / 10年 | 相続開始・侵害を知った時 | 民1048 |
| 相続回復請求 | 5年 / 20年 | 侵害を知った時 | 民884 |
| 建物瑕疵担保責任 | 1年(引渡し10年) | 不適合を知った時 | 民566・住品法 |
| 取消権・解除権 | 5年 / 20年 | 追認可能時・行為時 | 民126 |
| 判決確定後の債権 | 10年 | 判決確定時 | 民169 |
※「5年 / 10年」は主観的起算点5年・客観的起算点10年のうち早い方。改正民法では確定期限がある債権は主観・客観がほぼ一致するため、実務的には5年で完成するケースが多くなります。
刑事事件の公訴時効(刑訴法250条)
刑事事件の公訴時効は民事の消滅時効と別体系で、犯罪の重大性で期間が定められています。2010年改正で人を死亡させた重大犯罪の一部について時効が撤廃されました。
| 犯罪の類型 | 公訴時効 | 代表例 |
|---|---|---|
| 人を死亡させた罪(無期・死刑) | 時効なし | 殺人・強盗殺人 |
| 人を死亡させた罪(長期20年以上) | 30年 | 強制わいせつ致死 |
| 人を死亡させた罪(それ以外) | 20年 | 危険運転致死・傷害致死 |
| 死刑 | 25年 | — |
| 無期の懲役・禁錮 | 15年 | — |
| 長期15年以上の懲役・禁錮 | 10年 | 強盗・強制わいせつ |
| 長期15年未満の懲役・禁錮 | 7年 | 詐欺・恐喝・横領 |
| 長期10年未満の懲役・禁錮 | 5年 | 傷害・窃盗 |
| 長期5年未満・罰金 | 3年 | 暴行・過失致傷 |
| 拘留・科料 | 1年 | 軽犯罪 |
起算点の考え方
時効期間は「いつから数え始めるか」で結論が大きく変わります。改正民法は主観的起算点と客観的起算点を併存させ、以下のように運用します。
確定期限つき債権
返済日・支払期日が定まっている借金・家賃・売掛金は期限到来時から進行。分割払いは各回の支払期日ごとに個別に時効が進行するため、5年経過しても未消滅の分は残ります。
期限の定めなき債権
期限の定めがない場合は債権成立時から進行(客観的起算点)。ただし主観的起算点として「催告や請求により支払時期を知った時から5年」の判定が別途行われます。
不法行為・不当利得
民法724条:損害と加害者を知った時から3年(生命身体は5年)、行為時から20年。加害者不明の轢き逃げ・過失運転致死などでは20年が実質的な最終期限。
労働債権
労働基準法115条により給料・退職金は各支給日から5年(当面3年)。未払残業代請求は、支給日ごとに時効が個別進行するため、5年(3年)分をまとめて請求できます。
継続的取引の売掛金
納品・役務提供ごとに個別債権が発生し、それぞれ独立して時効進行。月末締めの請求書サイクルでは「請求書発行月の月末から5年」を目安に管理します。
判決確定後の再進行
判決・和解等により債権が確定した場合、時効は10年に延長(民法169条)。強制執行のたびに更新事由となるため、実務上は10年ごとに管理します。
完成猶予と更新(旧・停止と中断)
改正民法では、旧法の「時効の中断」を「更新」(ゼロからやり直し)、旧法の「時効の停止」を「完成猶予」(一定期間ストップ)に用語整理しました。
更新事由(時効期間がゼロにリセット)
- 裁判上の請求・支払督促・調停・和解等(民147条)… 確定判決・調停成立で新たに10年進行
- 強制執行・担保権実行(民148条)… 手続終了時点から新期間開始
- 債務者による承認(民152条)… 一部弁済・支払猶予願・利息支払も承認に該当
完成猶予事由(一定期間だけストップ)
- 催告(内容証明郵便等) … 6か月間の完成猶予(民150条)
- 協議を行う旨の合意 … 最大1年・合意期間の完成猶予(民151条)
- 仮差押え・仮処分 … 事件終了から6か月間の完成猶予(民149条)
- 天災その他避けることのできない事変 … 障害消滅時から3か月間の完成猶予(民161条)
援用の意思表示と手続
民法145条により、時効の利益を享受するには「援用」の意思表示が必要です。援用しない限り時効成立の効果は発生しません。実務では以下の段取りが基本となります。
援用の3ステップ
- 時効完成日の確認:最終返済日・請求日・訴訟・承認履歴を精査し、更新事由がないか判定
- 内容証明郵便による通知:債権者に対し「消滅時効を援用する」旨を配達証明付き内容証明で送付
- 信用情報の抹消依頼:CIC・JICC・KSC等の信用情報機関に、時効完成の証拠を添えて事故情報削除を申請
援用のタイミング
債権者からの督促・訴訟開始前に援用するのが安全。訴訟提起後は答弁書での援用も可能ですが、その前に一部弁済・分割払い交渉に応じてしまうと「承認」により時効が更新され援用不能になります。少額の入金や書面での「支払います」の一言が命取りになるため、督促を受けた段階で弁護士・司法書士に相談が推奨されます。
費用の目安
司法書士による時効援用手続は1社あたり2万〜5万円が相場。弁護士では3万〜10万円。信用情報の抹消まで含めるケースが一般的で、日本司法支援センター(法テラス)の民事法律扶助を利用すれば無料相談・立替制度の利用が可能です。
実務での典型パターン
💳 消費者金融の借金
2007年以前の高金利借金は過払い金請求とセットで検討。最終返済から5年経過し、その間に裁判上の請求も承認もなければ援用可能。「請求されたら少しでも払ってしまう」のが時効更新の典型ミス。
🏠 滞納家賃・原状回復費
各月家賃は月末から5年、原状回復費は明渡し時から5年(旧法は敷金精算3年)。連帯保証人請求も本人債務と同時に時効進行するため、共通で援用可能。
💰 未払残業代の請求
労働基準法115条により5年(当面3年)。労働審判・訴訟で更新でき、退職後2年以内であれば全額請求現実的。タイムカード・LINE履歴・自己申告書等の証拠保全が最初のステップ。
🚗 交通事故の慰謝料・治療費
物損は3年、人身傷害は5年(民724の2)、加害者不明時は20年。自賠責保険は事故時から3年で被害者請求権が消滅。労災は療養補償請求権が2年、遺族補償請求権が5年(労災法42条)。
👨👩👦 離婚後の慰謝料・養育費
離婚慰謝料は離婚成立から3年、不貞慰謝料は不貞・加害者判明から3年。養育費は各月支払期から5年ずつ、確定判決・調停成立後は10年。子の成人まで自動で権利が消滅する制度ではないので、放置しても復活できます。
⚰️ 相続・遺留分の請求
遺留分侵害額請求は「相続開始と遺留分侵害を知った日」から1年、相続開始から10年で消滅(民1048)。相続回復請求は侵害を知った時から5年・侵害開始から20年(民884)。期間経過後の請求は原則不能なため、遺言確認・戸籍取得を早期に。
よくある間違い・注意点
- 「時効は自動成立」の誤解 — 民法145条により援用(意思表示)が必須。何もしないと債権者が請求してきた際に敗訴します。
- 少額入金による更新 — 「督促されたので1,000円だけ払った」「分割払いに応じた」は民法152条の承認にあたり時効更新。時効直前の債務者との接触は最も危険。
- 電話での支払約束 — 録音・書面に残らなくても承認が認定される可能性。督促電話は「弁護士に相談してから」と即座に返答するのが安全。
- 新法・旧法の混同 — 2020年3月31日以前の債権は旧法。飲食代1年・診療報酬3年など職業別短期が生きているため、旧法適用債権は先に時効完成しているケースも。
- 連帯保証人の別途対応 — 主債務の時効更新が連帯保証人にも及ぶが(民457条)、保証人独自の承認・請求も別途評価。個別の内容証明が必要。
- 公訴時効を民事時効と混同 — 刑事の公訴時効は検察官の起訴期限、民事の消滅時効は債権の期間。同じ事件でも別体系で進行します。
関連する法令・判例
- 民法166条 ― 債権は主観的起算点5年、客観的起算点10年で時効消滅(2020年改正)。
- 民法167条 ― 人の生命身体侵害の損害賠償請求権の特則(20年)。
- 民法169条 ― 確定判決等で確定した権利の時効は10年。
- 民法724条・724条の2 ― 不法行為の時効(3年/20年、生命身体は5年/20年)。
- 民法145〜152条 ― 時効の援用、完成猶予・更新事由の総則。
- 労働基準法115条 ― 賃金債権は5年(当面3年)で消滅。
- 刑事訴訟法250条 ― 公訴時効の類型別期間。
- 消費者契約法・特定商取引法 ― 契約取消し・クーリングオフの短期時効。
- 破産法・民事再生法 ― 破産手続開始決定は時効の完成猶予事由。
- 最判平成29.12.19 ― 承認による時効の中断について、代理人の権限まで含めた判例法理。
参考文献・公的資料
時効の実務は事案ごとに争点が細かいため、判断に迷う場合は必ず弁護士・司法書士に相談してください。以下は公的な一次情報です。
- 法務省 民法(債権関係)の改正に関する情報 ― 2020年施行の改正民法の逐条解説・パンフレット。時効期間・起算点の変更を公式に整理。
- 厚生労働省 労働基準関係情報 ― 労働基準法の時効改正(未払賃金請求権の消滅時効5年)に関する公式解説。
- 日本司法支援センター(法テラス) ― 民事法律扶助制度により無料相談・弁護士費用の立替制度。時効援用手続の入口として利用可能。
- 日本弁護士連合会 ― 各地弁護士会の相談窓口案内・弁護士検索。時効事案は弁護士会法律相談センターで初回30分5,500円が目安。
- 日本司法書士会連合会 ― 認定司法書士による140万円以下の借金時効援用手続の窓口。
- 裁判所 ― 支払督促・少額訴訟・調停等の手続案内。時効更新の裁判上の請求に該当。
- CIC(指定信用情報機関) ― クレジット・ローンの信用情報。時効成立後の事故情報削除申請窓口。
- JICC(日本信用情報機構) ― 消費者金融系の信用情報機関。
- 全国銀行個人信用情報センター(KSC) ― 銀行系ローン・住宅ローンの信用情報。
- e-Gov法令検索 ― 民法・労働基準法・刑事訴訟法など全法令の公式条文。
よくある質問(FAQ)
時効は放っておけば自動で成立する?
いいえ、民法145条により援用(意思表示)が必要です。時効期間が経過しても、債権者から請求されたときに「時効を援用します」と主張しない限り、支払義務は消えません。援用は内容証明郵便で通知するのが実務標準です。
時効が中断・更新される行為は何?
改正民法では裁判上の請求・支払督促・強制執行・債務者による承認が更新事由。特に承認は1円でも入金する・分割払いを認める・「支払います」と口頭で言うだけで成立するため、督促を受けたら安易に返答せず専門家に相談してください。
裁判で判決が出た後の時効は?
民法169条により10年に延長されます。強制執行のたびに更新事由となるため、確定判決を持っている債権者は10年おきに執行手続を繰り返すことで永続的に権利を保持できます。
2020年改正で借金の時効はどう変わった?
旧法では消費者金融・銀行等の商事債権は5年、個人間の貸金は10年と分かれていました。改正後は原則5年(主観的起算点)・10年(客観的起算点)に統一。分割払いの返済期日ごとに個別進行する点は変わりません。
飲食代・タクシー代の時効は本当に1年?
旧法では飲食代・タクシー代は1年、宿泊代・診療報酬は3年の職業別短期時効がありました。2020年改正でこれらは廃止され、原則5年に統一されています。ただし2020年3月31日以前の債権は旧法適用のため、多くはすでに時効完成しています。
未払残業代は何年前まで請求できる?
労働基準法115条により5年(当面3年)。2020年4月改正前は2年でした。退職後でも支給日ごとの時効管理となるため、直近3年(改正後の実務運用)分は満額請求可能です。証拠保全(タイムカード・PC操作ログ・LINE等)が第一歩。
不法行為の3年と20年、どちらが優先?
民法724条は「損害と加害者を知った時から3年」または「不法行為の時から20年」のうち早い方で消滅。加害者不明・当て逃げ・輸血肝炎など長期潜伏型では20年が実質最終期限として機能します。
養育費は時効で消滅する?
養育費は各支払期日から5年、家裁で確定した養育費は判決確定後10年で消滅時効。ただし民事執行法の改正により給料差押えの手続が改善され、時効管理をしていれば長期的に回収できます。放置しても復活可能な点は他の債権と異なります。
時効援用は自分でできる?
手続自体は内容証明郵便で「消滅時効を援用する」旨を通知するだけで可能。ただし更新事由の有無判定・信用情報の抹消依頼・訴訟対応まで含めると専門家依頼が現実的。認定司法書士は140万円以下の債権であれば代理可能で費用は2万〜5万円が相場です。
時効期間中に一部返済してしまったら?
民法152条の「承認」に該当し、時効期間はゼロから再進行します。1円の入金・支払猶予願・分割払い交渉・「後で払います」の一言すべてが承認となる恐れがあります。督促を受けた段階で対応方針を専門家に相談してください。
殺人事件の公訴時効は本当に撤廃された?
はい。2010年の刑事訴訟法改正で、人を死亡させた罪で死刑にあたるもの(殺人・強盗殺人等)は公訴時効廃止。改正時点で時効未完成の事件も遡及適用され、過去の未解決事件の再捜査が可能になっています。
時効成立後にクレジット・ローンは組めるようになる?
時効援用後、信用情報機関(CIC・JICC・KSC)に事故情報の抹消申請を行う必要があります。抹消完了後は原則として新規審査に通る可能性が出てきますが、金融機関ごとの社内ブラックリスト(属性情報)は残るため、契約履歴のある金融機関では引き続き審査が厳しい場合があります。