過料・科料・罰金 計算ツール|行政罰と刑罰の金額目安
日本の金銭的制裁は過料(行政罰)・科料(1万円未満の刑罰)・罰金(1万円以上の刑罰)の3種類に大別されます。それぞれの違い、想定金額、違反回数による累積、前科の有無、労役場留置まで、刑法・軽犯罪法・地方自治法・道路交通法の枠組みに沿って解説し、想定額を試算します。
過料・科料・罰金の想定額計算
3種類の違いと金額範囲
過料(行政罰)
1,000円〜100,000円程度(法令による。地方自治法では5万円以下・条例で規定)
行政上の義務違反に対する制裁で、刑罰ではないため前科が付きません。地方税滞納、住民票異動届の遅延、公共施設の利用規則違反、会社法・破産法の書類提出義務違反等が代表例。裁判所の非訟事件手続法・地方自治法に基づき徴収されます。
科料(刑罰・軽微)
1,000円〜9,999円(刑法17条)
刑法上の刑罰(主刑)で、罰金より軽く1万円未満の金額です。軽犯罪法違反(公共の場での軽度な迷惑行為等)や、迷惑防止条例違反等で科されます。前科として犯歴に記録されます。
罰金(刑罰)
10,000円以上(刑法15条。上限は各罰条による、多くは50万円〜数百万円)
刑法上の主刑で1万円以上。道路交通法違反(重い違反)、軽微な窃盗、暴行罪、業務上過失致傷罪等で科されます。前科として犯歴に記録され、公的資格・就業制限に影響することもあります。
過料・科料・罰金の比較表
| 項目 | 過料 | 科料 | 罰金 |
|---|---|---|---|
| 法的性質 | 行政罰 | 刑罰(主刑) | 刑罰(主刑) |
| 金額範囲 | 1,000円〜10万円程度 | 1,000〜9,999円 | 1万円以上 |
| 前科 | 付かない | 付く | 付く |
| 手続 | 非訟事件手続(裁判所) | 刑事訴訟 | 刑事訴訟 |
| 執行機関 | 裁判所・地方自治体 | 検察庁 | 検察庁 |
| 労役場留置 | なし | あり(1日以上30日以下) | あり(1日以上2年以下) |
| 代表例 | 地方税滞納、住民票届出遅延 | 軽犯罪法違反 | 道交法違反(重い違反)、窃盗 |
| 読み方 | かりょう | かりょう(あやまち料) | ばっきん |
読み方は同音の「過料(かりょう)」と「科料(かりょう)」で紛らわしいため、区別する際は「あやまちりょう(過料)」「とがりょう(科料)」と読むこともあります。
身近な違反と想定金額の例
| 違反 | 種類 | 金額目安 | 根拠法 |
|---|---|---|---|
| 住民票異動届の遅延 | 過料 | 5万円以下 | 住民基本台帳法52条 |
| 会社設立登記の懈怠 | 過料 | 100万円以下 | 会社法976条 |
| 戸籍届出の遅延(出生・婚姻等) | 過料 | 5万円以下 | 戸籍法137条 |
| 路上・公園の迷惑行為 | 科料 | 1,000〜9,999円 | 軽犯罪法1条 |
| ペットの飼育規則違反(自治体条例) | 過料 or 罰金 | 数千〜数万円 | 各自治体条例 |
| 飲酒運転(酒気帯び) | 罰金 | 50万円以下 | 道路交通法117条の2の2 |
| 無免許運転 | 罰金 | 50万円以下 | 道路交通法117条の2の2 |
| スピード違反(赤切符相当) | 罰金 | 3〜10万円 | 道路交通法118条 |
| 軽微な窃盗(万引き等) | 罰金 | 50万円以下 | 刑法235条 |
| 暴行罪 | 罰金 or 拘留・科料 | 30万円以下 | 刑法208条 |
| 業務上過失傷害 | 罰金 | 100万円以下 | 刑法211条 |
| 建築基準法違反(小規模) | 罰金 | 100万円以下 | 建築基準法99条 |
前科の扱い
刑罰(科料・罰金・拘留・懲役・禁錮・死刑)は前科となり、検察庁の犯歴票に永久記録されます。一般的な「前科」概念は主に有罪判決を受けた事実を指し、就職時の履歴書申告義務、公的資格取得制限、外国渡航時のビザ審査等に影響することがあります。
過料は行政罰であり前科にはなりません。ただし、市区町村役場の記録や交通違反者管理システム等の行政記録には残ることがあります。
罰金の場合、刑法34条の2により、罰金完納後5年間罰金以上の刑を受けなければ「刑の言渡し」の効力が失われ、法律上の「復権」となります(前科抹消ではないが、資格制限等の効力は消滅)。
利用シーンと現場実務
会社役員・法人代表者の届出漏れ
会社設立・変更登記の懈怠、決算公告の未実施等で過料通知が届くケース。会社法976条により100万円以下の過料。代表者個人宛に通知される。
個人の戸籍・住民票届出遅延
出生・婚姻・離婚・死亡等の戸籍届出、転入・転出・転居等の住民票届出の期限超過(通常14日以内)で過料5万円以下。実務では警告のみで見送られることも多い。
交通違反の反則金と罰金の違い
青切符(交通反則通告制度)は行政上の反則金で前科なし、赤切符は刑事罰の罰金で前科あり。区別が重要。
迷惑防止条例違反(自治体条例)
各都道府県の迷惑防止条例で、痴漢・盗撮・スカウト規制等。違反内容により過料・科料・罰金・拘留・懲役の別が定められる。条例文の確認が必要。
飲食店・小売店の営業規制違反
食品衛生法・風営法・古物営業法等の営業規制違反による罰金。営業許可取消と併科される場合もある。
コロナ関連の休業要請違反(過去例)
特措法改正(2021年)により、営業時間短縮命令違反に過料30万円以下(蔓延防止等重点措置)・50万円以下(緊急事態措置)が科された事例。今後の感染症法・特措法運用でも参照される。
支払方法と分納・猶予
罰金・科料の支払は原則、検察庁からの納付告知書に基づき指定金融機関で一括納付です。経済的困難な場合は分納・納付猶予を検察庁徴収事務担当に申請可能(検察庁事務規程)。認められれば数か月〜1年程度の分割払いが実務上運用されています。
過料の支払は裁判所または地方自治体からの通知に基づき納付。強制執行(給与差押・預金差押)の対象になります。
労役場留置(換刑処分)
罰金・科料を完納できない場合、労役場に留置されて労役に服することで支払に代える換刑処分があります(刑法18条)。留置期間は罰金1日以上2年以下、科料1日以上30日以下。1日あたりの換算額は判決時に裁判所が定め、通常5,000〜1万円程度です。
過料には労役場留置制度はありません。
よくある間違い・注意点
- 過料と科料を混同 ― 同じ「かりょう」でも前科の有無・執行機関が全く異なります。通知書の発行元(裁判所/地方自治体か検察庁か)で判別できます。
- 反則金と罰金を混同 ― 青切符の反則金は行政処分で前科なし、赤切符の罰金は刑罰で前科あり。金額の大きさより種別が重要です。
- 「小額だから無視」して延滞 ― 過料でも強制執行(給与差押等)の対象。罰金は労役場留置の可能性もあります。必ず期限内に納付を。
- 会社法違反の過料を個人資産で払わされる ― 会社法違反の過料は代表者個人に科されるケースが多い。会社経費で処理できないため注意。
- 前科抹消と刑の消滅を混同 ― 罰金完納後5年で「刑の言渡しの効力消滅」(復権)しますが、検察庁の犯歴票からは消えません。海外ビザ申請等で開示が必要な場合あり。
- 労役場留置を「懲役」と誤解 ― 労役場留置は罰金・科料の換刑処分で刑務所ではありません。刑事施設内の労役場で軽作業に従事します。
- 示談で過料・科料・罰金が消える ― 民事の示談は成立しても、行政罰・刑罰は別。刑事は起訴便宜主義で不起訴となる場合もあるが自動ではない。
関連する法令
- 刑法9条・15条・17条・18条 ― 主刑の種類、罰金(1万円以上)、科料(1万円未満)、労役場留置の規定。
- 刑法34条の2 ― 刑の消滅(罰金完納後5年で言渡しの効力消滅)。
- 刑事訴訟法 ― 罰金・科料の徴収手続(490条以下)。
- 非訟事件手続法119条以下 ― 過料の裁判手続。
- 会社法976条 ― 取締役等の任務懈怠に対する過料100万円以下。
- 住民基本台帳法52条 ― 住民票異動届の遅延に対する過料5万円以下。
- 戸籍法137条 ― 戸籍届出遅延に対する過料5万円以下。
- 軽犯罪法1条 ― 全34号の禁止行為と拘留・科料。
- 道路交通法117条の2以下 ― 交通違反の罰則規定(飲酒運転・無免許運転等)。
- 地方自治法228条・255条の3 ― 条例違反への過料5万円以下、地方税滞納への過料。
参考文献・公的資料
各違反の具体的金額や最新の裁判例、行政運用は以下の公的機関の資料を参照してください。
- 法務省 刑事局 ― 刑法・刑事訴訟法・少年法等の所管。罰金・科料の運用に関する法令解釈通達。
- e-Gov法令検索 刑法 ― 刑法全文検索。第9条(主刑の種類)・15条(罰金)・17条(科料)等を無料閲覧。
- e-Gov法令検索 軽犯罪法 ― 全34号の禁止行為と拘留・科料の規定。
- 検察庁 ― 罰金・科料の徴収事務、分納・猶予申請窓口。全国の地方検察庁の連絡先。
- 裁判所(最高裁判所) ― 過料事件の非訟事件手続、判例検索。
- 警察庁 交通局 ― 交通反則通告制度、赤切符・青切符の運用、飲酒運転罰則の解説。
- 総務省 地方自治法 ― 地方自治法228条・255条の3等の過料条項の解釈。
- 法務省 民事局 戸籍 ― 戸籍届出の期限、遅延時の過料の実務運用。
- 法務省 保護局 ― 犯罪者の社会復帰、前科・前歴の記録に関する制度。
よくある質問(FAQ)
過料と科料はどう違う?
過料は行政罰で前科が付かず、裁判所または地方自治体が徴収します。科料は刑罰(主刑)で1万円未満、前科が付き、検察庁が徴収します。読み方は同じ「かりょう」ですが法的性質は全く別です。
反則金と罰金の違いは?
交通違反の青切符(反則金)は行政処分で前科なし、赤切符(罰金)は刑事罰で前科あり。反則金納付は事実上の「行政的簡易処理」で刑事手続を回避する制度です。無視して期限を過ぎると刑事手続に移行し罰金化することがあります。
罰金が払えない場合はどうなる?
刑法18条の労役場留置制度で、労役に服することで支払に代えます。1日あたり5,000〜1万円程度の換算で、罰金1日以上2年以下、科料1日以上30日以下です。事前に検察庁に分納・猶予申請することも可能です。
過料は前科になる?
なりません。過料は行政罰であり、犯歴票にも記録されず、就職時の履歴書申告義務もありません。ただし、市区町村役場や交通違反者管理システム等の行政記録には残ることがあります。
罰金の前科は消える?
刑法34条の2により、罰金完納後5年間罰金以上の刑を受けなければ「刑の言渡しの効力」が消滅(復権)します。ただし検察庁の犯歴票からは消えず、海外ビザ申請時等では開示が必要になる場合があります。
会社法違反の過料は誰が払う?
会社法976条の過料は取締役等の個人に課されます。会社経費では処理できず、代表者個人の資産から支払う必要があります。設立・変更登記の懈怠、決算公告の未実施等で発生します。
戸籍・住民票届出の期限を過ぎた場合の過料額は?
戸籍法137条・住民基本台帳法52条により5万円以下の過料。ただし実務では初回・軽微な遅延では警告で終わることが多く、悪質・繰返しの場合に過料通知が届くケースが一般的です。
迷惑防止条例違反の罰則は?
各都道府県の迷惑防止条例で規定され、痴漢・盗撮等は6か月以下懲役または50万円以下罰金が典型例。スカウト規制・つきまとい行為は科料・罰金の別が定められます。条例文の確認が必要です。
示談で罰金は免除される?
自動免除されません。民事の示談は成立しても、刑事事件は検察官の起訴便宜主義(刑訴法248条)により、示談内容を考慮して不起訴処分となる場合はあります。ただし約束されたものではなく、示談後も罰金判決となることも十分あり得ます。
飲酒運転の罰則はいくら?
道路交通法117条の2の2により、酒気帯び運転は3年以下懲役または50万円以下罰金、酒酔い運転は5年以下懲役または100万円以下罰金。免許停止・取消の行政処分も併科されます。
コロナ関連の休業要請違反の過料は?
2021年改正特措法により、蔓延防止等重点措置の営業時間短縮命令違反に30万円以下、緊急事態措置違反に50万円以下の過料が新設されました。今後の感染症対策法制でも参照される制度です。
過料・科料・罰金の通知が来たら何をする?
まず通知書の発行元(裁判所・自治体・検察庁)と納付期限を確認。過料は非訟事件手続で異議申立可能、罰金・科料は刑事訴訟で確定判決に対する事後救済は限定的です。金額・内容に疑問があれば法テラスまたは弁護士に相談してください。