溶接電流選定(板厚別)
板厚と溶接法から推奨溶接電流・電圧・電極径を即算出。被覆アーク/MAG/TIG対応、姿勢補正付き。
溶接電流選定(板厚別)ツール
溶接電流の目安
被覆アーク: I ≒ 40 + 20×板厚
MAG/MIG: I ≒ 50 + 22×板厚
TIG: I ≒ 10×板厚 + 30
板厚に応じて電流を上げ、溶込みを確保。立向は下向の80%、上向は70%に低減して垂れ落ち防止。実務では材質・継手形状で±20%調整。
板厚別 溶接電流早見(MAG・下向)
| 板厚mm | 電流A | 電圧V | ワイヤ径mm |
|---|---|---|---|
| 1.6 | 85 | 18 | 0.8 |
| 3.2 | 120 | 19 | 0.9 |
| 4.5 | 150 | 20 | 1.0 |
| 6.0 | 180 | 21 | 1.0 |
| 9.0 | 250 | 23 | 1.2 |
| 12.0 | 310 | 25 | 1.2 |
| 16.0 | 400 | 28 | 1.4 |
溶接電流選定(板厚別)の詳しい解説
溶接電流は板厚に比例して増加し、板厚6mmのMAG溶接で約180A、12mmで310Aが目安。電流不足だと溶込み不足(未溶着欠陥)、電流過大だと母材溶断・スパッタ増・欠陥増を招くため、板厚別の適正値を守るのが基本です。
実務では姿勢別電流補正も重要。立向溶接は下向の80%、上向は70%に電流を下げないと溶融金属が垂れ落ち・穴あきに。JIS Z 3801-3812の溶接技能者資格試験でも、姿勢別電流設定が採点対象です。TIG溶接は電極が消耗しない特殊性で、板厚mmあたり30-40Aと低電流でも溶接可能。
業界・現場での使い方
鉄骨工事現場
H形鋼・ボックス柱の建方溶接。板厚9-19mmでMAG主流、電流200-400A。
自動車ボディ組立
薄板0.7-2mmのスポット/MAG溶接。ロボット溶接で電流一定制御。
配管・タンク製作
SUS薄板1-6mmのTIG溶接。低電流で高品質接合。
被覆アーク溶接(手溶接)の棒径別 電流目安
被覆アーク溶接(手棒)では、板厚よりも使用する溶接棒の径で電流を決めるのが現場の基本です。目安は棒径×30〜40Aで、最終的には溶接棒メーカーが指定する推奨電流範囲に収めます。
被覆アーク溶接の電流 I ≒ 棒径(mm) × 30〜40 A
| 棒径 mm | 下向き電流 A | 主な用途 |
|---|---|---|
| 2.6 | 60〜100 | 薄板・仮付け・狭隘部 |
| 3.2 | 90〜140 | 最も汎用。板厚4〜9mmの本溶接 |
| 4.0 | 140〜180 | 板厚9mm以上・多層盛の中間層 |
| 5.0 | 180〜230 | 厚板の下向専用 |
姿勢補正の考え方はMAGと同じで、立向は下向の80%、上向は70%まで電流を下げます。棒径を上げれば能率は上がりますが、溶け込み過多と歪みが出やすくなるため、開先形状と積層計画に合わせて選定してください。なお低水素系溶接棒は吸湿すると割れの原因になるため、使用前にメーカー指定条件での再乾燥が必要です。
よくある間違い・注意点
- 薄板に大電流 — 母材焼き抜けリスク。1.6mmで200A設定は焼落ち確実。
- 姿勢補正を忘れる — 立向・上向で下向設定→垂れ落ち・欠陥発生。
- 溶接前電流試験なしで実作業 — 試験片で電流・速度を試調整せずに本材加工→不良多発。
関連する規格・法規
- JIS Z 3801 手溶接技術検定
- JIS Z 3841 半自動溶接技術検定
- JIS Z 3811 溶接接合部の非破壊検査
- 日本溶接協会(JWES) — 溶接技術標準・技能者評価試験
- 日本産業標準調査会 JIS検索 — JIS Z 3000番台 溶接規格の公式検索
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。実際の設計・施工・法令適用は最新の告示・規格および所轄官庁の判断に従ってください。
よくある質問(FAQ)
板厚6mmのMAG電流は?
約180A・電圧21V・ワイヤφ1.0mm(下向)。
立向溶接で電流下げる理由は?
溶融金属が垂れ落ちる。20%低下で溶滴保持能力確保。
電流過大の症状は?
スパッタ多発・アンダーカット・溶接ビード幅過大・母材変形。
TIGとMAGの使い分けは?
TIG=高品質・低速・薄板・SUS/AL、MAG=高速・厚板・鋼材。
溶接棒φ3.2mmの適正電流は?
下向きで90〜140A、中心値はおよそ110Aです。棒径×30〜40Aという目安どおりの値になります。立向はこの80%(約90〜110A)、上向は70%(約80〜100A)まで下げてください。
電流不足だとどうなる?
アークが不安定になり、溶込み不足・融合不良という内部欠陥が出ます。ビードは盛り上がって幅が狭くなり、スラグも巻き込みやすくなります。外観では判別しにくく、非破壊検査で初めて見つかることが多い危険な不良です。本作業の前に試験片で電流と運棒速度を決めてください。