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受水槽給水SHASE設備

受水槽容量 計算ツール|SHASE-S 206準拠の使用水量原単位×人員

建物用途別の使用水量原単位から受水槽容量(下限・上限・推奨)を即算出。共同住宅・オフィス・病院・ホテル・店舗まで対応。SHASE-S 206「給排水衛生設備規準」と水道法・厚労省告示に基づき、水質保持・法定清掃・断水時対応を両立する設計指針を解説します。

最終更新:2026-07-30/監修:計算ツールズ編集部

受水槽容量(人員×使用水量原単位)ツール

計算式と設計の考え方

基本式

1日使用水量 Q (m³) = 使用水量原単位 (L/単位/日) × 基準数 ÷ 1000

受水槽容量 V (m³) = Q × (4/10 〜 6/10) 日分

SHASE-S 206「給排水衛生設備規準」および国交省・厚労省の告示に基づく設計。1日使用水量の40〜60%を受水槽の有効容量として確保します。50戸(150人相当)の共同住宅なら1日使用水量約41m³、受水槽容量は16〜25m³が適正範囲となります。

SHASE-S 206の推奨レンジ

下限4/10、上限6/10と幅を持たせる理由は、建物の使用形態・断水対応要求度・水質管理体制によって最適解が異なるため。病院・介護施設は上限側、通常オフィスは下限側で設計します。安全率20%を上乗せする実務も一般的。

高置水槽との組合せ

10階建て以上のビルでは、受水槽→揚水ポンプ→高置水槽(屋上)→重力給水の2段構成が主流。高置水槽容量は1日使用水量の1/10〜2/10が目安で、下位階に十分な水圧を供給しながら滞留を最小化します。

用途別 使用水量原単位

SHASE-S 206および水道給水施設設計基準からの引用。実際の使用実態や省エネ・節水機器の普及で下振れする例も多く、既存物件の実績データ確認が有効です。

用途原単位基準単位備考
共同住宅(単身系)200-250 L/人/日居住人数単身少人数世帯
共同住宅(ファミリー系)250-350 L/人/日居住人数家族4人で1,200L/日
戸建住宅200-400 L/人/日居住人数庭散水含む場合上限側
オフィス(執務室のみ)60-100 L/人/日従業員数
オフィス(食堂・シャワー有)100-160 L/人/日従業員数
小中学校70-100 L/人/日生徒+教職員プール別途
高校・大学60-100 L/人/日生徒+教職員
幼稚園・保育所100-160 L/人/日園児+職員沐浴・調乳含む
病院(療養型)500-700 L/床/日ベッド数
病院(急性期)700-1000 L/床/日ベッド数手術室・透析室含む
介護施設350-500 L/人/日入居者+職員入浴頻度で変動
ビジネスホテル250-350 L/泊宿泊者ユニットバス標準
観光ホテル・旅館300-500 L/泊宿泊者大浴場・食事含む
レストラン120-160 L/食食数洗い場含む
ファストフード60-100 L/食食数使い捨て器主体
物販店舗15-30 L/㎡/日売場面積
スーパー・食品売場30-50 L/㎡/日売場面積惣菜・鮮魚含む
フィットネスジム200-500 L/㎡/日床面積プール・シャワー多
公衆浴場・銭湯500-1000 L/人入浴者

なぜ4/10〜6/10日分か

受水槽容量は「大きければ安心」ではなく、水質保持と維持管理のバランスで最適化する考え方です。

上限を6/10日とする理由

水質保持のため。残留塩素は水温・光条件で24-48時間で失われ始め、滞留時間48時間以上でレジオネラ属菌・従属栄養細菌の増殖リスクが上昇。上限側は水質基準(水道法4条・水質基準省令)を維持できる限界です。

下限を4/10日とする理由

維持管理と断水対応のため。水道法で受水槽は年1回の清掃が義務(有効容量10m³超)で、清掃中の断水想定で余裕を持たせる。加えて水道本管工事・地震等の突発断水で数時間〜半日の給水継続が必要な施設(病院・介護)への配慮。

過大設計の弊害

滞留時間48時間超で水質悪化、清掃コスト増、設置スペース圧迫、初期投資増、断水時の水温変化(夏場の高温化)も進みます。1990年代までの過大受水槽が近年の直結増圧化・小型化改修の対象になっています。

BCPを考慮した設計

病院・介護施設・データセンター等は3日分の緊急用水備蓄を推奨(内閣府BCPガイドライン)。ただし通常時の水質悪化を避けるため、緊急用は別タンクにするか、通常受水槽を6/10で運用+緊急給水車手配契約で対応。

直結増圧方式との比較

近年は直結増圧給水方式(受水槽を設けず本管圧力+ブースターポンプで直供給)が普及しています。5階建て以下の中小マンション・オフィスビルで採用が急増し、受水槽方式との使い分けが重要な設計判断となります。

項目受水槽方式直結増圧方式
設置スペース受水槽室+ポンプ室が必要ポンプユニットのみ
初期投資中〜大小(6-8割程度)
清掃・水質検査年1回法定清掃+検査(有償)不要
水質滞留による塩素低下リスク本管水質そのまま
断水対応受水槽分の給水継続可能本管断水と即連動
適用階数制限なし本管圧により5-10階まで
推奨用途病院・大規模ビル・多雪地域中小マンション・小規模オフィス

直結増圧方式は本管圧力(通常0.2-0.5MPa)とブースターポンプで対応。水道局との事前協議・条例確認が必須で、地域によっては採用不可の場合もあります。

水質保持と法定清掃

簡易専用水道・貯水槽水道の管理

有効容量10m³超の受水槽は水道法の「簡易専用水道」に該当し、以下の管理義務が発生します(水道法34条の2)。

  • 年1回以上の清掃(専門業者による)
  • 年1回の管理状況の検査(登録検査機関による法定検査)
  • 色・濁り・臭い・味・残留塩素の日常確認
  • 10m³超50m³以下は「小規模貯水槽水道」で条例に基づく管理

清掃・検査の実施フロー

清掃期間中は数時間〜半日の断水が発生。事前告知(1週間前掲示)、給水車手配、住民への説明が必要です。10m³以下でも自治体条例で管理義務がある場合が多く、東京都・大阪府・愛知県などは独自条例で厳しく規定。

水質基準項目

水道法4条・水質基準省令で51項目の水質基準あり。受水槽の日常点検では特に「残留塩素0.1mg/L以上」「濁度2度以下」「pH5.8-8.6」「色度5度以下」を確認。異常時は速やかに保健所に連絡。

受水槽の材質と耐久性

受水槽の材質は水質保全・耐久性・コストで選定します。用途と設置環境で使い分けが進んでいます。

材質耐用年数特徴用途
FRP(強化プラスチック)15-25年軽量・耐食・組立式・安価マンション・オフィス標準
SUS(ステンレス鋼板)30-40年高耐久・衛生的・高価病院・食品工場・高級物件
鋼板ライニング15-20年大容量対応・内面樹脂被覆大型ビル・工場・寒冷地
PE(ポリエチレン)20-30年一体成型・軽量・耐震性戸建・小規模施設
コンクリート製50年+建築躯体と一体・重厚1980-90年代物件(現在は非推奨)

1990年代までのコンクリート製受水槽は水質管理が難しく漏水事例も多かったため、現在はFRP・SUS・PEへの更新が主流。管理組合・オーナー判断で15-20年サイクルの計画的更新が推奨されます。

業界・現場での使い方

新築マンション設計

設備設計事務所が意匠設計と並行して用途別原単位で必要容量算定。分譲マンションは戸数×3人×250-350L/人で算出。近年は6階以下で直結増圧が主流化。

病院・介護施設

断水時継続給水を要するため上限側(6/10日以上)で設計。BCP対策として+3日分緊急備蓄、井戸水バックアップ、給水車手配契約を組合せる。手術室・透析室は特に停水が命に関わる。

既存受水槽の更新

20年経過した受水槽の更新時に容量見直し。過大な旧受水槽(1980-90年代設計)を小型化+直結増圧化する事例が増加。管理費削減効果が管理組合合意の決め手に。

データセンター・工場

サーバ冷却水・工程水は用途別に別系統化。冷却塔補給水は蒸発量+ブロー量で日量算出。半導体工場は超純水製造装置の原水として別途大容量の受水槽が必要。

公共施設・避難所

災害時の避難所指定校・体育館は耐震型受水槽+緊急遮断弁を採用。地震時に配管破損しても受水槽内の水を災害用に確保。学校プール(200-300m³)も緊急水源として活用。

ホテル・宿泊業

チェックイン時刻(15-18時)にシャワー使用が集中する時間需要も加味。ピーク時の給水圧維持のため、受水槽+高置水槽+ブースターポンプの複合設計。大浴場付きは通常+2倍の容量。

災害時の応急給水と受水槽の活用

大地震・水道本管断水時、受水槽は数時間〜1日分の緊急水源として機能します。BCP設計での位置づけを整理します。

  • 緊急遮断弁の設置: 震度5強以上で自動閉止し、受水槽内の水を確保。配管破損時の流失を防ぐ。
  • 非常用取水栓: 受水槽下部に手動取水口を設け、停電時も水を汲み出せる構造に。
  • 耐震型受水槽: 震度7に耐える固定金具、フレキシブル継手、内部の防波板で液面揺れ対策。
  • 飲料水確保量の目安: 1人1日3L×人数×3日分が内閣府BCPガイドライン推奨値。受水槽で不足する場合は別途ペットボトル備蓄・給水車契約で補完。
  • 応急給水拠点との連携: 自治体の応急給水拠点(通常配水池・浄水場)から給水車で搬送。マンション管理組合は事前に自治体と協議しておく。

東日本大震災・熊本地震・能登半島地震では、耐震型受水槽を備えた建物が数日間の断水期間中に機能した事例が多数報告されており、防災設備としての重要性が再認識されています。

よくある間違い・注意点

  • 「大きければ安心」と過大設計 — 滞留時間48時間超で残留塩素消失・レジオネラ増殖リスク。1日使用量の6/10以内が上限。夏場の水温上昇で細菌増殖が加速します。
  • 原単位を建物用途と異なる値で採用 — 共同住宅と戸建で200-400L/人と幅があり、単身系とファミリー系でも異なる。実績データや近隣物件で検証してください。
  • 清掃頻度を考慮しない容量設計 — 年1回法定清掃時の断水想定を無視すると入居者クレームに。予備水源・給水車手配契約も要検討。
  • 6面点検スペースを確保しない — 受水槽は上下左右前後の6面点検スペース(上60cm、他45cm以上)が必要。清掃・検査ができないと保守不可の物件になります。
  • 使用水量ピークを見落とす — 一日平均で設計すると朝夕のピーク(平均の2-3倍)で断水。時間最大流量への対応は高置水槽・ブースターポンプ側で吸収する設計が必要。
  • 本管圧力を過大に想定 — 直結増圧方式は本管圧力(0.2-0.5MPa)前提。深夜・早朝のピーク帯は圧力低下し、上階への給水不足に。水道局との事前協議で最低保証圧を確認。
  • 耐震対策を軽視 — 大地震で受水槽の破損・脱落・配管切断は復旧の大きな障害。SHASE-S 013「建築設備の耐震設計指針」に基づく耐震型受水槽の採用を推奨。

関連する規格・法令

  • SHASE-S 206 ― 空気調和・衛生工学会規格「給排水衛生設備規準」。受水槽容量算定、給水量原単位、時間最大流量の計算基準。日本の給排水設計の事実上の標準。
  • 水道法 第3条・第34条の2 ― 簡易専用水道の定義(有効容量10m³超)と管理義務(清掃・検査・報告)。厚労大臣所管。
  • 水質基準に関する省令 ― 水質基準51項目の詳細規定。給水栓での基準値(残留塩素0.1mg/L以上等)を規定。
  • 建築基準法施行令 第129条の2の5 ― 給水管・排水管等の設置基準。逆流防止・地震対策の基本。
  • SHASE-S 013 ― 建築設備の耐震設計・施工指針。受水槽の耐震固定・配管フレキシブル継手の設計。
  • 厚生労働省 貯水槽水道の管理指針 ― 貯水槽水道の設置者・水道事業者の責務、清掃・水質検査の実施要領。
  • 各自治体の貯水槽水道条例 ― 東京都・大阪府・愛知県等が10m³以下の小規模貯水槽の管理を独自条例で規定。

参考文献・公的資料

受水槽の設計・維持管理には以下の公的機関の資料を参照してください。

※本ページの計算結果はSHASE-S 206に基づく概算値です。実際の設計・施工・法令適用は最新の告示・規格および所轄水道事業者・特定行政庁の指示に従ってください。簡易専用水道の管理、法定清掃・水質検査、緊急時対応等は関連法令に基づく専門家(建築設備士・給水装置工事主任技術者・水道技術管理者等)の判断が必要です。

よくある質問(FAQ)

受水槽容量の目安は?

1日使用水量の40〜60%(4/10〜6/10日分)がSHASE-S 206の推奨範囲。50戸の共同住宅なら1日約41m³使用で受水槽16〜25m³が適正。用途・BCP要求度に応じて調整します。

大きすぎるとダメな理由は?

滞留時間48時間以上で残留塩素消失・レジオネラ属菌増殖リスクが上昇。水質基準を維持できず、健康被害リスクと清掃コスト増を招きます。夏場の水温上昇でリスクがさらに高まります。

直結増圧方式との違いは?

直結増圧は受水槽なしで本管圧力+ブースターポンプで直供給。設置スペース・清掃コスト削減、水質は本管水質のまま。5階以下の中小マンションで急速普及中。ただし本管圧力の余裕確認と水道局協議が必要。

受水槽の法定清掃頻度は?

水道法で年1回以上(有効容量10m³超の簡易専用水道)。専門業者による清掃と、登録検査機関による水質検査・管理状況検査が義務化されています。10m³以下も多くの自治体条例で年1回清掃が規定。

マンションの受水槽容量が過大な場合の対処は?

①一部を隔壁で仕切って有効容量を減らす改修、②直結増圧方式への切替。分譲マンションは管理組合合意(特別決議)が必要ですが、清掃コスト削減効果で費用回収可能な例が多い。

6面点検スペースとは?

受水槽の上下左右前後6面を点検・清掃するための空間。上60cm以上、他45cm以上が標準。設計時に確保しないと清掃業者が入れず、法定検査不可の物件になります。

BCPで3日分の水は必要?

内閣府BCPガイドラインでは3日分の飲料水(1人1日3L)を目安。ただし常時受水槽を大容量化すると水質悪化するため、緊急用は別タンク・井戸バックアップ・給水車契約で対応する設計が主流。

水質基準の残留塩素は?

給水栓での遊離残留塩素0.1mg/L以上(結合残留塩素0.4mg/L以上)を維持することが水道法4条・水質基準省令で規定。日常点検で0.1未満が続く場合は塩素追加・清掃・受水槽容量見直しが必要。

時間最大流量は?

1日使用水量÷24時間の2〜3倍が時間最大流量。朝の洗面・夕方の入浴・食事準備時にピーク発生。受水槽本体は日量ベース、給水管・ポンプは時間最大ベースで設計する必要があります。

受水槽の耐震対策は?

SHASE-S 013「建築設備の耐震設計指針」に基づく耐震型受水槽(FRP強化槽)、緊急遮断弁、配管のフレキシブル継手を組合せる。大地震時に破損しても内部水を災害用に確保できます。

ホテルの受水槽容量は?

ビジネスホテルは1泊250-350L、観光ホテル・大浴場付きは300-500L/泊。チェックイン時のシャワー使用集中で時間最大流量が平均の3-4倍に。ポンプ・高置水槽の余裕確保が快適性を左右します。

受水槽の材質は?

FRP(強化プラスチック)・SUS(ステンレス)・鋼板ライニング(内面樹脂被覆)が主流。FRPは軽量・耐食で普及、SUSは高価だが長寿命(30年+)。コンクリート製の建築躯体一体型は水質管理難しく現在は非推奨。