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インバータVFD省エネ電気現場実務

インバータ容量選定 計算ツール|モータkW→VFD kVA、省エネ試算・高調波対策・JEC/IEC規格対応

モータ容量・過負荷余裕・力率から必要なインバータ(VFD)容量kVAを即算出。ポンプ・ファンの3乗則省エネ試算、直入れ/スターデルタ/VFD始動の比較、高調波対策(ACL/DCL・6/12/18パルス・アクティブフィルタ)JEC-2410/IEC 61800/省エネ法トップランナー基準まで、電気主任技術者・設備設計者の現場実務に即した解説付き。

最終更新:2026-08-08/監修:計算ツールズ編集部

インバータ容量選定ツール

計算式と単位系

基本式

VFD容量[kVA] = モータ出力[kW] × (1 + 過負荷率) / 力率(cosφ)

VFD入力電流[A] = VFD容量[kVA] × 1000 / (√3 × 電源電圧[V])

インバータの必要容量は、モータ軸出力に対して過負荷余裕力率(通常0.85)を織り込んだkVA値で選定します。連続運転(HD:Heavy Duty)と可変トルク(ND:Normal Duty)で許容過負荷が異なり、HDは150%×60秒、NDは110%×60秒が国際標準(IEC 61800-2)です。

三相電力の関係

三相皮相電力S[kVA] = √3 × V[V] × I[A] × 10⁻³
三相有効電力P[kW] = S × cosφ = √3 × V × I × cosφ × 10⁻³

200V系ではI[A] ≒ S[kVA] × 2.89、400V系ではI[A] ≒ S[kVA] × 1.44 で概算可能。配線サイズ・遮断器選定の一次見積もりに使えます。

用途別過負荷区分

HD(定トルク): コンプレッサー・押出機・コンベア・搬送機など始動トルクや衝撃負荷が大きい用途。ND(可変トルク): ファン・ブロワー・ポンプなど回転数の2乗でトルク・3乗で動力が変化する流体機械。同じ15kWモータでもHDなら22kVA、NDなら18kVA級で足りるケースが一般的です。

インバータの基本原理

インバータ(VFD:Variable Frequency Drive)は、商用電源(50/60Hz固定)を一旦直流に整流(コンバータ部)し、IGBT等のパワー素子でPWM(パルス幅変調)して任意周波数・任意電圧の交流に再合成する電力変換装置です。

V/f制御・ベクトル制御

V/f一定制御は電圧と周波数の比を一定に保つ最も基本的な制御方式で、ファン・ポンプ等の一般用途で採用。ベクトル制御(センサレス/PGフィードバック)はモータ電流を励磁・トルク成分に分解して独立制御し、低速でも100%トルクを維持でき、精密位置決めや厳しい速度精度が要る用途に使います。

回生とブレーキ

減速時にモータが発電機として動作し、直流部の電圧が上昇するのが回生現象。エレベーター・巻上機・遠心分離機など位置エネルギーや慣性エネルギーが大きい用途では、制動抵抗で熱として消費するか、電源回生コンバータで商用側に返還します。回生コンバータは初期費用が高いものの、大容量用途では省エネと発熱削減で数年で回収可能です。

モータ×VFD標準対応表(過負荷20%・力率0.85)

三相200V/400V級モータに対する標準的なVFD容量選定表です。JEMA(日本電機工業会)推奨値および主要メーカー(三菱電機・安川電機・富士電機・ABB・Siemens等)のカタログ推奨値を参考にしています。

モータ出力VFD容量(HD)200V入力電流400V入力電流用途例
0.75 kW1.5 kVA4.3 A2.2 A小型ポンプ・ファン
1.5 kW2.2 kVA6.4 A3.2 A小型コンベア
2.2 kW3.7 kVA10.7 A5.3 A加工機補機
3.7 kW5.5 kVA15.9 A7.9 A循環ポンプ
5.5 kW7.5 kVA21.7 A10.8 A換気ファン
7.5 kW11 kVA31.8 A15.9 A給水ポンプ
11 kW15 kVA43.3 A21.7 A大型ブロワー
15 kW22 kVA63.5 A31.8 A空調AHU・押出機
18.5 kW26 kVA75.1 A37.5 Aプレス・搬送機
22 kW30 kVA86.6 A43.3 A射出成形機
30 kW42 kVA121 A60.6 A大型ファン
37 kW55 kVA159 A79.4 A大型ポンプ
45 kW65 kVA188 A93.8 Aコンプレッサー
55 kW80 kVA231 A115 A大型送風機
75 kW110 kVA318 A159 A大型冷却塔
110 kW150 kVA433 A217 Aプラント基幹機
160 kW220 kVA635 A318 A大型プレス
200 kW280 kVA809 A404 A製鉄・化学プラント

ND(可変トルク)機は概ね1ランク下の容量で選定可能ですが、加速レート・慣性モーメント・周囲温度により個別検証が必要です。

3乗則による省エネ試算

ファン・ブロワー・遠心ポンプなど流体機械の消費電力は回転数の3乗に比例(親和則/相似則)します。ダンパー・バルブ絞りではなくインバータで回転数制御することで劇的な省エネが実現します。

流量比回転数比消費電力比(3乗)削減率
100%1.00100%0%
90%0.9072.9%27.1%
80%0.8051.2%48.8%
70%0.7034.3%65.7%
60%0.6021.6%78.4%
50%0.5012.5%87.5%
40%0.406.4%93.6%

例: 15kW送風機を年間5,000時間稼働、平均流量70%制御にすると、ダンパー絞り(電力ほぼ100%消費)比で 15 × 0.657 × 5,000 = 49,275kWh/年、電気料金20円/kWh換算で約98万円/年の削減。VFD本体・工事費50万円なら1年以内で投資回収可能です。省エネ法「事業者クラス分け評価制度(SABC評価)」ではSクラス認定にも寄与します。

始動方式との比較

三相誘導モータの始動方式は複数あり、モータ容量・電源設備容量・負荷特性で選定します。

始動方式始動電流始動トルクコスト用途
直入れ(全電圧)定格の6-8倍100%5.5kW以下・電源余裕大
スターデルタ定格の2-3倍33%7.5-55kW・軽負荷始動
リアクトル始動定格の3-5倍50-70%ポンプ・ファン
コンドルファ定格の3-5倍40-70%大型機・高頻度始動
ソフトスタータ定格の3-4倍(可変)可変中高頻繁始動・機械保護
インバータ(VFD)定格100%以下200%可能省エネ+可変速+始動全対応

VFDは始動電流をモータ定格以下に抑制でき、電源設備・変圧器容量の削減、契約電力の低減、機械ショックの緩和など多目的な効果を得られます。近年は7.5kW以上ではVFDが第一選択となっています。

高調波対策

インバータは電源からの入力電流に高調波(基本波の整数倍成分)を発生させ、変圧器の発熱・力率低下・他機器の誤動作・進相コンデンサの焼損などの問題を起こします。日本では「高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン」(経済産業省)で総合電流歪率(THD)5%以下が推奨されています。

交流リアクトル(ACL)

VFD入力側に直列挿入する空芯/鉄芯のリアクトル。電流ピーク値を抑制し、5次高調波を約50%削減。最も基本的で安価な対策(VFD容量の1-3%の追加費用)。

直流リアクトル(DCL)

VFD内蔵の直流部に挿入する平滑リアクトル。ACLより高い高調波抑制効果(5次で60-70%削減)。大容量VFDでは標準内蔵。

12/18パルス整流

移相変圧器で位相をずらした複数のコンバータで整流。12パルスは5,7次を打ち消し、18パルスは11,13次まで抑制。大容量プラントで採用。

アクティブフィルタ

高調波電流と逆位相の補償電流を能動的に注入して打ち消す高機能装置。THDを2%以下に抑制可能で、複数VFDを一括対応可能。太陽光・EV充電器等でも活用。

PWMコンバータ(回生対応)

コンバータ部もIGBTで能動制御し、高調波発生を根本的に抑制(THD 3%以下)。同時に回生機能も付与。エレベータ・巻上機で採用増。

力率改善コンデンサの扱い

VFD負荷回路に既設の進相コンデンサがあると、高調波共振で焼損の恐れ。直列リアクトル付き(6%または13%)への交換または撤去が必須。

選定チェックリスト

VFDを新規導入・更新する際に確認すべき項目です。

  • 負荷特性(HD/ND) — 定トルク負荷か流体機械か。誤選定はトリップ多発の原因。
  • 周囲温度・IP等級 — 標準は40℃/IP20。50℃超・屋外・粉塵環境では容量ディレーティング(1℃あたり1-2%減)や別置盤要。
  • ケーブル長 — VFD→モータ間の配線長が50m超だとサージ電圧増大でモータ絶縁破壊のリスク。出力リアクトルまたはdV/dtフィルタで対策。
  • 始動頻度 — 1時間あたりの始動回数が多い場合はコンデンサ寿命・冷却設計に影響。
  • 電源環境 — 単独運転か複数台並列か、電源変動・瞬時停電への対応要件。
  • 制御信号 — 4-20mA/0-10V/RS485(Modbus)/EtherCAT/PROFINET等の上位系との接続方式。
  • 保守性 — 主要部品(電解コンデンサ・冷却ファン)の推奨交換周期(7-10年)。

業界での応用

空調・ビル設備

空調機(AHU)ファン、冷却水ポンプ、冷却塔ファンをVFD化。外気温・室温・熱負荷に応じた可変流量制御で年間30-50%の省エネ達成事例多数。ZEB(Net Zero Energy Building)認証取得の必須技術。

上下水道・排水

浄水場・下水処理場の送水ポンプ・曝気ブロワー。時間帯・流入量変動に追従した回転数制御。国交省の下水道革新的技術実証事業(B-DASH)でVFD最適制御が採用され、実証で30-40%の電力削減を報告。

工場・生産設備

コンベア・押出機・射出成形機・工作機械。生産速度の可変制御、始動ショック緩和、位置決め精度向上。省エネ法トップランナー基準の対象品目としてIE3プレミアム効率モータとの組合せが推奨。

エレベータ・搬送機

電源回生型VFDで下降時のエネルギー回収、乗り心地(加減速の滑らかさ)向上。ビル設備の省エネ改修の定番項目。

製鉄・化学プラント

圧延機・撹拌機・遠心分離機。中電圧(3.3kV/6.6kV)VFDで数百kW〜数MW級を制御。連続運転プラントでは冗長化(N+1)構成が必須。

再エネ・EV充電

風力発電の可変速ドライブ、EV急速充電器、太陽光PCS。回生機能とアクティブフィルタで系統連系品質を確保。

よくある間違い・注意点

  • 容量ぎりぎり選定 — 過負荷保護トリップが頻発。特に加速時の始動電流ピークが定格を超えると停止。過負荷余裕20%以上を必ず確保してください。
  • 高調波対策なし — 電源側にリアクトル(ACL/DCL)なしで運用すると、変圧器・進相コンデンサの焼損、他機器の誤動作、力率低下による契約電力増を招きます。
  • キャリア周波数の設定ミス — キャリア高(15kHz以上)にすると静音化・低振動化する反面、VFD発熱が増えて容量ディレーティング必要。低キャリア(2-4kHz)では磁気騒音が発生。
  • モータ絶縁の劣化 — VFDのPWMサージ電圧が長ケーブル配線で反射・重畳し、モータコイル絶縁を破壊。ケーブル30m超では出力リアクトル、100m超ではサインフィルタを検討。
  • 冷却設計不足 — 盤内温度が50℃を超えるとVFD寿命(コンデンサ)が半減。強制換気ファン・エアコン設置、風道確保を怠らないこと。
  • 停止時の回生対応漏れ — 慣性の大きい負荷を短時間で減速すると回生過電圧トリップ。制動抵抗または回生コンバータで対応。
  • 複数台の電源系統設計 — 変圧器容量に対しVFD総容量が過大だと電源電圧歪みで全機不安定化。専用変圧器または電源分離を検討。

関連する規格・法令

  • JEC-2410 ― 電気学会電気規格調査会「半導体電力変換装置」。日本国内のインバータ・コンバータ・サイリスタ変換装置の性能・試験方法の基準。
  • JIS C 4212 ― 高効率低圧三相かご形誘導電動機。IE3プレミアム効率モータ規格。VFD組合せの前提。
  • IEC 61800シリーズ ― Adjustable Speed Electrical Power Drive Systems。国際標準の可変速ドライブ規格。61800-2(一般要求)、61800-3(EMC要求)、61800-5-1(安全)、61800-9(エコデザイン)。
  • IEC 60034 ― Rotating Electrical Machines。回転電気機械の国際規格。効率クラスIE1〜IE5を規定。
  • 省エネ法(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律) ― 三相誘導電動機トップランナー基準。0.75kW以上の一般用モータはIE3以上が原則。
  • 高調波抑制対策ガイドライン ― 経済産業省制定。高圧・特別高圧受電需要家の高調波流出電流上限値を規定。契約電力・受電電圧別に基準値。
  • 電気設備技術基準・解釈 ― 経済産業省令。低圧・高圧・特別高圧設備の絶縁・接地・保護協調の基準。VFD盤・モータ配線の設計に必須。
  • 電気事業法(自家用電気工作物) ― キュービクル・大型モータ設備は電気主任技術者による保安管理が義務。

参考文献・公的資料

VFDの選定・省エネ試算・法令遵守に関するより詳細な情報は、以下の公的機関・業界団体の一次資料を参照してください。

※本ページの計算結果および対応表は概算値です。実際の設備設計・工事・法令適用は、最新の規格・告示、メーカー選定資料、電気主任技術者・エネルギー管理士・電気工事士等の有資格者の判断に従ってください。特に高圧受電設備、高調波対策、防爆エリア、非常用電源への適用では、所轄官庁および電力会社との事前協議が必須です。

よくある質問(FAQ)

15kWモータに必要なVFD容量は?

過負荷余裕20%・力率0.85前提で 約22kVA(HD区分)。ND(ファン・ポンプ)なら18kVA級でも可。入力電流は200V級で約64A、400V級で約32Aとなり、これに1.25倍程度の余裕を持たせて配線・遮断器を選定します。

ファン・ポンプで省エネ効果はどれくらい?

流量制御にダンパー/バルブ絞りではなくVFDで回転数を下げると、消費電力は回転数の3乗に比例して減少します。平均70%流量なら電力34%(削減率66%)、60%流量なら電力22%(削減率78%)。年間5,000時間稼働・15kW送風機なら年間50〜80万円の電気代削減が現実的で、1〜2年で投資回収可能です。

HD(定トルク)とND(可変トルク)の違いは?

HDは150%×60秒の過負荷耐量、NDは110%×60秒。コンプレッサー・押出機・搬送機はHD、ファン・ブロワー・遠心ポンプはND。同一モータでも用途区分で1〜2ランク容量が変わります。IEC 61800-2で定義。

高調波対策は必ず必要?

低圧単機で小容量なら必須ではありませんが、高圧受電・複数台・大容量では対策必須。「高調波抑制対策ガイドライン」で契約電力別に流出電流上限が定められ、超過すると電力会社との協議・アクティブフィルタ設置が必要。標準対策は交流/直流リアクトル(ACL/DCL)。

インバータの寿命は何年?

主要な消耗部品は電解コンデンサ(7-10年)冷却ファン(3-5年)。周囲温度が10℃上がるとコンデンサ寿命は半分に。定期点検で寿命診断機能を活用し、計画交換することで突発停止を防げます。IGBTモジュール本体は15-20年使用可能。

キャリア周波数はどう設定する?

標準は2〜4kHz。キャリアを上げる(10-15kHz)と磁気騒音・振動が低減し静音化しますが、VFDのスイッチング損失が増えて発熱するため容量ディレーティング(80%程度に減らして使用)が必要。キャリアを下げると発熱減で高効率だが「キーン」という金属音が出ます。用途と設置環境で選択。

スターデルタ始動とVFDの使い分けは?

スターデルタは始動時のみ電流抑制する安価な方式ですが、常用運転は直入れ状態のため省エネ効果はゼロ。VFDは始動+可変速+省エネの3つを同時実現できるため、7.5kW以上ではVFDが第一選択。初期費用はスターデルタ盤の1.5〜3倍ですが、省エネで2〜3年で回収可能。

モータケーブルが長いと問題ある?

VFDのPWMサージ電圧が長ケーブルで反射・重畳し、モータコイル絶縁を破壊する「マイクロサージ」現象があります。30m超で出力リアクトル、100m超でサインフィルタ、200m超で光ファイバ制御など段階的対策が必要。特に400V級はサージ電圧が高く要注意です。

汎用モータはVFDでそのまま使える?

IE3プレミアム効率モータ(0.75kW以上、省エネ法対象)はVFD対応設計されていますが、低速運転(30Hz以下)では自己冷却ファン風量不足で温度上昇。長時間の低速大トルク運転なら別電源冷却ファン付きモータ(VFDインバータモータ)を選定してください。

停電時にVFDはどうなる?

瞬時停電(15ms程度)は内蔵コンデンサでライドスルー可能。長い停電では自動再始動またはフリーラン停止。UPSを介した給電、瞬低対策コンデンサモジュール、フライホイールUPSなどで無停止化する例も。半導体工場・データセンターで採用。

回生ブレーキと制動抵抗はどちらを選ぶ?

制動抵抗は安価だが回生エネルギーを熱で捨てるため電力ロス。回生コンバータは高価だが商用側に返還して省エネ化。年間回生時間が短い搬送機は制動抵抗、常用回生のエレベータ・遠心分離機は回生コンバータが経済的な目安です。

電気主任技術者の点検義務は?

キュービクル・6.6kV受電の自家用電気工作物では、電気主任技術者による月次点検・年次点検が電気事業法で義務化。VFDについても絶縁抵抗測定、冷却ファン動作確認、電解コンデンサ膨張チェック、高調波電流測定などを保安規程に基づき実施します。