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高調波THD電源品質電気インバータフィルタJEAG

高調波THD 計算ツール|基本波・3/5/7次高調波の実効値から総合高調波歪率を即算出

基本波(50/60Hz)と各次高調波の実効値から総合高調波歪率(THD: Total Harmonic Distortion)を即算出。IEEE 519(5%基準)/JEAG 9702(電圧THD 5%以下・電流上限値)の適合判定、インバータ・整流器・LED照明などの高調波発生源、トランス発熱・電線発熱・保護継電器誤動作リスク、ACLフィルタ・アクティブフィルタによる低減対策、力率改善コンデンサとの相互作用(共振)、電源品質診断、省エネ機器導入時の高調波対策まで、電気設備エンジニア・電源品質診断士・工場保全担当の実務を1画面で完結します。

最終更新:2026-07-30/監修:計算ツールズ編集部

高調波THDツール

入力例と結果の読み方

高調波THDの計算では、基本波(50/60Hz)と各次高調波(3次150/180Hz、5次250/300Hz、7次350/420Hz等)の実効値を電流アナライザで測定し、平方和のルートを基本波で割って求めます。

上のツールに基本波100A・3次15A・5次10A・7次5Aを入力すると、THD=√(15²+10²+5²)/100=約18.7%と算出され、「悪化・要対策」の判定になります。

実務目安はTHD 5%以下=良好、5〜10%=注意、10%以上=要対策。IEEE 519(電圧THD 5%以下)、JEAG 9702(高圧受電の等価電流上限)を目安に判定します。

10%を超える場合はACLフィルタ・アクティブフィルタの導入、あるいは高調波発生源(インバータ・整流器)の見直しが必要です。

計算式と単位系

THD(%) = √(I₃² + I₅² + I₇² + I₉² + …) ÷ I₁ × 100

THD(V) = √(V₃² + V₅² + V₇² + …) ÷ V₁ × 100

THDは「基本波成分に対する高調波成分の実効値比」で定義される指標。電流THD(THD-I)と電圧THD(THD-V)の2種類があり、電圧THDが系統への影響を、電流THDが機器発生源の性質を評価します。IEEE 519では低圧系統で電圧THD 5%以下、個別高調波電圧3%以下という基準が示されています。

日本のJEAG 9702「高調波抑制対策技術指針」では、高圧・特別高圧受電の需要家に対して、6.6kV配電系統に流出する高調波電流の上限を示しており、需要家契約電力・受電電圧に応じた等価電流の上限値が細かく規定されています。上限を超える場合は、原則としてACLフィルタ・アクティブフィルタで低減対策を講じる義務があります。

THDの計算では通常、実務的に影響の大きい3次・5次・7次・9次・11次・13次までを対象にします。それ以上の高次高調波(15次、17次…)は減衰が大きく影響が限定的ですが、精密なEMC評価では50次以上まで含めることもあります。ソフト計算では平方和のルート、実測ではFFT解析器で自動算出するのが一般的です。

高調波THD基準と業界目安

THD値状態評価典型的な問題推奨対策
0〜3%非常に良好問題なし継続監視のみ
3〜5%良好(IEEE基準内)特段の問題なし年次モニタリング
5〜8%注意軽微な発熱・雑音発生源特定・原因調査
8〜10%要注意トランス発熱・機器雑音フィルタ導入検討
10〜15%悪化保護継電器誤動作リスクACLフィルタ導入
15〜20%重度設備損傷リスク顕在化アクティブフィルタ必須
20%以上危険設備損傷・停電リスク緊急対策・システム全面見直し

電流THDと電圧THDは相関しますが同じではありません。同じ電流波形歪でも、系統インピーダンスが低い(強い電源)なら電圧歪は小さく、系統インピーダンスが高い(弱い電源)なら電圧歪が大きくなります。工場・オフィスの受電点で電圧THD 3〜5%が中心域、電流THDは負荷特性で30%以上になる場合もあります。

高調波THDの詳しい解説

高調波は「非線形負荷が生む波形歪」。整流器・インバータ・LED照明・エアコン・OA機器等の半導体を使う機器が発生源で、電流波形を歪めて基本波の整数倍(3次・5次・7次…)の高調波成分を含むようになります。この歪んだ電流が系統インピーダンスを流れることで、電圧波形も歪み、系統全体の電源品質が低下します。トランスの銅損・鉄損の増加による発熱、電線の表皮効果による発熱、保護継電器の誤動作(整定値のオーバーシュート)、蛍光灯のちらつき等が典型的な影響です。

対策の主流はACLフィルタ(受動フィルタ)アクティブフィルタ(能動フィルタ)。ACLフィルタは特定次数(5次・7次等)にチューニングした共振回路で対象高調波を吸収し、既知の負荷パターンで安価に実装可能です。アクティブフィルタはインバータで補償電流をリアルタイム生成し、任意次数・任意負荷変動に対応できる高性能タイプ。近年はIGBT・SiCの進化で導入コストが下がり、100〜1000kVAクラスの中大規模施設で急速に普及しています。

日本国内では1994年制定のJEAG 9702により、高圧・特別高圧の需要家に対する高調波抑制対策が事実上義務化されています。契約電力・受電電圧・6.6kV流出電流の3軸で規制されるため、大規模施設の設備更新時には必ずJEAG適合の高調波検討書を電力会社に提出する必要があります。適合しない場合は建物竣工検査・電力受電開始が承認されないケースもあります。

近年は再エネ導入・EV普及で系統インピーダンス変動が増加しており、従来の設計基準では吸収しきれない高調波・低周波振動が問題化しています。特に太陽光発電のパワコン・EV充電器・データセンターのUPSは高調波発生源として要注意で、系統計画側でも従来以上に高調波を精密に見積もる必要が生じています。

高調波の発生源とメカニズム

高調波を発生させる非線形負荷は多岐にわたります。以下が代表的な発生源と、その典型的な次数構成です。

3相ダイオード整流器

5次・7次・11次・13次・17次・19次が主要成分。VFD(可変速ドライブ)、EV急速充電器、UPSの入力側で発生。

単相ダイオード整流器

3次・5次・7次・9次が主要成分。PC電源、LED照明、家電機器で発生。3次高調波は中性線に集中して流れる特性あり。

サイリスタ位相制御

制御角依存の複雑な高調波構成。溶接機・アーク炉・電気鉄道の主電動機制御で発生。

変圧器の励磁電流

3次・5次・7次の奇数次成分。無負荷時・軽負荷時に鉄芯の飽和で発生。通常は少量で問題なし。

ソフトスタータ(サイリスタ)

起動時のみ多量の高調波を発生。定常運転移行後は減少。モータ始動時の一時的な影響。

電気機器のスイッチング電源

PC・サーバー・LED照明・エアコンのインバータ部で発生。高次奇数次(3・5・7・9・11次)の混合。

近年のIT化・省エネ化により、施設内の非線形負荷比率は50〜80%に達しており、線形負荷主体だった1990年代以前とは全く異なる電源品質環境になっています。省エネ機器導入と高調波対策はセットで検討する必要があります。

機器・系統への影響

高調波が系統・機器に与える主要な影響を分野別に整理します。

影響対象問題現象THD閾値
変圧器(トランス)銅損・鉄損増加、発熱、寿命短縮電流THD 15%以上
電線(ケーブル)表皮効果による発熱、絶縁劣化電流THD 20%以上
電動機(モータ)回転子発熱、トルク脈動、振動電圧THD 5%以上
コンデンサ(進相)過電流・共振・寿命短縮電流THD 10%以上
保護継電器整定値誤差、誤動作電圧THD 10%以上
電子機器ノイズ、動作不安定電圧THD 8%以上
照明機器ちらつき(フリッカ)、寿命短縮電圧THD 5%以上
中性線(3相4線)3次高調波集中、過負荷単相負荷多い場合

特に注意が必要なのは3相4線式配電の中性線。3次高調波は3相の位相が全て同相になるため中性線に集中して流れます。線形負荷主体の設計では中性線容量を相線の70%程度で済ませていたケースもありましたが、非線形負荷比率が高い現代のオフィスビル・データセンターでは中性線に相線の1.5倍以上の電流が流れることもあり、中性線の過負荷・発熱事故が発生します。

フィルタ・対策技術

高調波抑制対策には、①発生源対策、②パッシブ対策(ACLフィルタ)、③アクティブ対策(APF)、の3階層があります。

発生源対策(機器選定)

12パルス整流器・PWMコンバータ搭載機器の選定。従来6パルスより高調波発生を1/2以下に低減。設計段階の選択で対策コスト最小化。

ACLフィルタ(受動)

ACリアクトル+コンデンサの直列共振回路。特定次数(5次・7次等)を吸収。中コスト、負荷変動小のケース向け。

アクティブフィルタ(APF)

インバータで補償電流をリアルタイム生成。任意次数・変動負荷に対応、負荷変動大のケース向け。高コスト。

ハイブリッドフィルタ

ACL+APFの併用。ACLで主要次数、APFで残余成分を対応。コスト効率と性能のバランス。

ゾンビフィルタ(小容量分散)

各機器直下に小容量フィルタを分散設置。上流負担を軽減、設置柔軟性が高い。近年増加傾向。

系統補強(トランス増強)

トランス容量を上げて系統インピーダンスを下げることで電圧歪を低減。抜本対策だが投資額大。

対策選定の基本ロジックは、「発生源特定→負荷変動の把握→適切な対策方式選定」の順。負荷変動が小さければACLフィルタで安価に対策、負荷変動が大きい(データセンター等)ならアクティブフィルタが不可欠です。JEAG 9702適合の高調波検討書は、対策実施後の予測THDと規制値の対比を電力会社に提出する必要があります。

力率改善コンデンサとの共振

力率改善用の進相コンデンサは、系統インダクタンスとLC共振回路を形成する場合があり、共振周波数付近の高調波を増幅する現象があります。これを「LC共振」または「並列共振」と呼び、実務で最も注意すべき現象の一つです。

共振周波数f = 1÷(2π√(LC))で計算され、系統インダクタンスL・進相コンデンサ容量Cが決まると、特定の次数の高調波を強く増幅します。例えば5次高調波(300Hz)が共振点近くにあると、電圧THDが数倍に増幅され、コンデンサ自体の過電流損傷やトランス発熱事故の原因になります。

対策は、①直列リアクトル付き進相コンデンサ(6%リアクトル・13%リアクトル等の標準構成)、②コンデンサ容量の分散(共振点を高調波から離す)、③アクティブフィルタとの併用、の3手法。特に6%直列リアクトル付きは、5次高調波以下を含めた広範な次数の共振防止に効果的で、日本の高圧受電設備の事実上の標準構成になっています。

測定・診断の実務

高調波の測定は、電力アナライザ(パワーアナライザ)による受電点電圧・電流波形のFFT解析が標準手法です。1〜2週間の連続測定で、負荷変動を含めた総合的なTHD評価を行います。

受電点測定

6.6kV受電の低圧側で電圧・電流をFFT解析。JEAG 9702適合判定の基本測定。

負荷別測定

主要負荷(VFD・UPS・LED照明等)の直下で測定。高調波発生源の特定・寄与度評価。

時系列測定

1週間〜1ヶ月の連続測定で負荷変動・時間帯依存性を把握。24/7運転施設で不可欠。

フィルタ効果測定

対策実施前後の比較測定で対策効果を定量評価。減衰率(dB)で対策効果を示す。

電力アナライザは、日置電機・共立電気計器・横河計測などが国内メーカーの主要ブランド。IEC 61000-4-7準拠のクラスAアナライザが公式測定用、簡易測定はクラスBで代替可能です。測定結果は電力会社への高調波検討書提出、電気設備の定期診断報告、省エネ機器導入時の事前評価等に活用されます。

業界・現場での使い方

高調波THD計算は、電気設備設計・受電契約・工場保全から省エネ機器導入まで、幅広い実務で使われる電源品質管理の基礎ツールです。

電気設備設計事務所

新築ビル・工場の高調波検討書作成。JEAG 9702適合判定、フィルタ選定、電力会社との協議。

電気工事業者

電源品質診断・フィルタ設置工事。トラブル対応の原因調査、対策工事の実施。

工場保全・電気主任技術者

電源品質の日常監視、トランス発熱・保護誤動作の原因調査、月次点検の一環。

データセンター運用

UPS・PDUの高調波発生源対策、Tier認証のための電源品質基準達成、フィルタ設置。

省エネコンサル

省エネ機器(VFD・LED・インバータエアコン)導入前後の高調波影響評価、複合対策提案。

電力会社・系統運用者

需要家からの高調波流出監視、系統計画への反映、大規模需要家との個別協議。

よくある間違い・注意点

高調波の計算・対策は、規格・実測・機器選定で扱う数値が微妙に異なり、実務では前提の取り違えで判断を誤りやすいポイントがあります。

  • 計算対象の高調波次数不足 — 11次以上も含めるべきケース。3〜13次までは実務で全て評価。
  • IEC/IEEE基準の混同 — 日本はJEAG 9702準拠。IEEE 519は米国基準、混同すると規制超過を見落とす。
  • 電流THDと電圧THDの混同 — 電流THDは負荷特性、電圧THDは系統への影響。規制対象は電圧THDが主。
  • 力率改善コンデンサの単純追加 — LC共振で高調波増幅リスク。直列リアクトル付きの標準構成を選定。
  • 単相と3相の高調波構成の違い — 単相は3次高調波が主要、3相は5次・7次が主要。負荷構成に応じた対策を。
  • フィルタ導入後の未確認 — 対策後の実測でTHDが規制値以下になったか確認必須。設計値と実測値のズレが発生する。
  • 負荷変動を考慮しない設計 — 24/7運転施設は時間帯・季節で負荷特性が大きく変動。1週間以上の連続測定で評価。
  • 3相4線式の中性線容量不足 — 3次高調波が中性線に集中。相線と同容量以上の中性線を確保。
  • 省エネ機器導入時の高調波無視 — VFD・LED・インバータエアコンは高調波発生源。導入時に電源品質評価をセットで実施。
  • フィルタ本体の高調波発生 — アクティブフィルタも動作時に一定の高調波を出す。設計時に総合評価。

関連する規格・法規

高調波・電源品質関連の主要な国内外の規格・基準を整理します。

  • JEAG 9702 ― 高調波抑制対策技術指針。日本の高圧・特別高圧需要家の事実上の適合基準。1994年制定、随時改訂。
  • JIS C 61000-4-7 ― 電磁両立性(EMC)測定技術。パワーアナライザによる高調波測定手順。
  • IEEE 519 ― Recommended Practice for Harmonic Control in Electric Power Systems. 米国基準、電圧THD 5%以下を推奨。
  • IEC 61000-3-2/3-12 ― 家電機器・産業機器の高調波電流放射限度値。機器認証で参照。
  • IEC 61000-4-30 ― 電源品質測定方法の国際規格。クラスA/B/Sのパワーアナライザ性能要件。
  • 電気事業法 ― 電力品質維持義務の根拠法。電力会社と需要家双方の責任範囲を規定。
  • 電気設備技術基準 ― 経済産業省告示。高圧受電設備の設計要件、高調波抑制の間接規定。

※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。実際の設計・診断・対策は最新のJEAG/IEEE/IEC規格および所轄電力会社・電気主任技術者の判断に従ってください。

参考文献・公的資料

高調波・電源品質の一次情報は、以下の公的機関・業界団体・規格制定機関を参照してください。

※本ページの計算結果は概算です。実際の高調波診断・対策設計は、①負荷リストの精密集計、②連続測定による実測、③JEAG 9702適合の高調波検討書作成、④電力会社との協議、⑤フィルタ設計・施工、を考慮した専門技術者による対応が必要です。設計・診断・施工は電気設備設計事務所・電気工事業者・電気主任技術者の判断に従ってください。

よくある質問(FAQ)

THD 5%以下の意味は?

IEEE 519基準の許容範囲内で電源品質が良好な状態。トランス発熱・保護継電器誤動作等の実務的な問題は発生しないレベルで、継続監視のみで対策不要です。

電流THDと電圧THDの違いは?

電流THDは負荷の非線形性を示し、負荷特性で決まる。電圧THDは系統インピーダンスと電流THDの積で決まる系統への実質影響。規制対象は主に電圧THD、機器発生源評価は電流THD。

JEAG 9702とIEEE 519の違いは?

JEAG 9702は日本の高圧・特別高圧受電の需要家向け(6.6kV流出電流上限)、IEEE 519は米国基準(電圧THD 5%以下推奨)。日本の実務ではJEAG 9702適合が事実上必須です。

ACLフィルタとアクティブフィルタどっちを選ぶ?

負荷変動が小さければACLフィルタ(受動・安価)、負荷変動大きければアクティブフィルタ(能動・高性能・高価)。データセンター等の変動大用途はアクティブ、ビル・工場の定常負荷はACLが定番です。

力率改善コンデンサで高調波が悪化?

単純追加はLC共振で高調波増幅リスクあり。直列リアクトル付き進相コンデンサ(6%リアクトル標準)を選定することで共振防止と力率改善の両立が可能です。

3次高調波はなぜ中性線に集中する?

3相の位相が全て同相になるため。3相4線式配電では中性線に相電流の1.5倍以上が流れることも。中性線容量を相線と同容量以上にするのが対策の基本です。

省エネ機器(VFD・LED)導入で高調波が増える?

増えます。VFDは5次・7次、LEDは3次を多く発生。導入時に高調波発生量を評価し、必要に応じてフィルタを併設するのが実務標準です。

高調波測定はどうやる?

電力アナライザ(パワーアナライザ)で受電点電圧・電流をFFT解析。IEC 61000-4-7準拠のクラスAアナライザで1週間〜1ヶ月の連続測定が公式手法です。

高調波対策の費用は?

ACLフィルタは100kVAクラスで100〜300万円、アクティブフィルタは300〜1,000万円。設計費・工事費を含めた総投資額は本体の1.5倍程度が目安です。

高調波検討書はいつ必要?

高圧・特別高圧の新規受電・設備増設時に電力会社への提出が必要。契約電力の増加、VFDや大型UPSの追加など、高調波発生源となる負荷の追加時が代表的なケースです。