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製油所処理能力 計算ツール|BPD⇔年間kL・時間流量・稼働率・製品歩留り対応

製油所の日処理能力(BPD; Barrels Per Day)から、年間処理量(万kL)・時間流量(m³/h)・製品別歩留り(ガソリン・ナフサ・灯油・軽油・重油)を瞬時に計算。SDM(定期修理)・稼働率(340日運転)・国内主要製油所の実能力まで対応し、CDU(常圧蒸留装置)設計・エネルギー行政計画・トレーディング業務で頻用される数値を、石油連盟統計・資源エネルギー庁 石油需給・経産省 生産動態統計の公的資料に基づき解説します。

最終更新:2026-08-08/監修:計算ツールズ編集部

製油所処理能力 計算機

計算式と単位換算

基本式

年間処理量(kL) = BPD × 稼働日数 × 稼働率 × 0.159 kL/bbl

時間流量(m³/h) = BPD × 0.159 / 24

製油所の処理能力は1日あたり原油処理バレル数(BPD)で表現するのが国際慣行です。1バレル(bbl)=42米ガロン=158.987リットル≒0.159kLで換算します。年間処理量は「BPD × 稼働日数 × 0.159」で算出できますが、実務では稼働率(通常85〜95%)を掛けて実効値を求めます。

日20万BPD・340日稼働・稼働率100%の例

200,000 × 340 × 0.159 = 10,812,000 kL/年 ≒ 1,081万kL/年。稼働率90%なら約973万kL/年。国内平均的な製油所1基分に相当し、これがナフサ(石化原料)・ガソリン・軽油・ジェット燃料・重油の供給ソースになります。

時間流量

200,000 × 0.159 / 24 = 1,325 m³/h。CDU(常圧蒸留塔)の運転流量として設定される標準値です。装置設計時はこれに10〜15%の余裕率を加えます。

BPD/bbl/kL/L の単位関係

単位換算用途
1バレル(bbl)= 158.987 L ≒ 0.159 kL = 42 米ガロン石油業界の国際標準単位
1BPD= 1 barrel/day = 0.159 kL/日 ≒ 6.625 L/h製油所・パイプラインの能力表示
1KBD(千バレル/日)= 1,000 BPD ≒ 159 kL/日大規模製油所の単位
1MBD(百万バレル/日)= 1,000,000 BPD ≒ 159,000 kL/日国別・地域別統計
1米ガロン= 3.785 L製品小売単位(米国)
1英ガロン= 4.546 L製品小売単位(英国)
1トン原油≒ 7.33 bbl(密度0.86 t/kL基準) ≒ 1.17 kL重量⇔容量換算(密度で変動)

石油計量では15℃基準体積補正(API MPMS Chapter 11.1)が国際慣習。実測温度で計量した体積を15℃相当に換算して取引します。日本国内の軽油等取引も計量法上15℃基準です。詳しくは比重・密度計算ツール参照。

製油所典型製品歩留り

原油の性状(軽質/重質、Sweet/Sour)と製油所の装置構成(単純蒸留のみ/FCC/HCU/Coker等の有無)で歩留りは大きく異なります。以下は国内平均的な高度化製油所の目安。石油連盟「石油統計月報」および経産省「生産動態統計 石油製品」から集約。

製品歩留り%主用途
LPG(プロパン・ブタン)約3%家庭用・タクシー燃料・化学原料
ナフサ約15%石油化学原料(エチレン・BTX)
ガソリン(レギュラー・ハイオク)約23%自動車燃料
ジェット燃料(Jet A-1)約9%航空機燃料
灯油約10%暖房・農機・ジェット原料
軽油(ディーゼル)約20%大型車・船舶・発電機
A重油約6%ボイラ・発電・農業
C重油約9%船舶・大型ボイラ・発電
アスファルト約2%道路舗装
コークス・その他約3%電極・工業炉

これらは合計100%を超えることが多く、装置(FCCで軽質化)により重質分から軽質製品を生成できるため、実際は「歩留り合算=処理原油量×1.05〜1.10」となります(処理過程で軽い水素・軽ガスが加わる分)。

国内主要製油所一覧(2025年時点)

石油連盟の統計に基づく国内主要製油所と処理能力。2025年時点で国内稼働製油所は約20カ所、総処理能力約340万BPD。

製油所能力(千BPD)運営会社
川崎(神奈川)258ENEOS
根岸(神奈川)250ENEOS
大阪(大阪)135ENEOS
水島(岡山)253ENEOS
坂出(香川)110ENEOS
大分(大分)136ENEOS
仙台(宮城)145ENEOS
千葉(千葉)190出光興産
愛知(愛知)160出光興産
四日市(三重)132コスモ石油
堺(大阪)100コスモ石油
千葉(千葉)177コスモ石油
山口(山口)127西部石油(出光)
八代(熊本)富士石油等

国内需要は2000年代以降減少傾向で、旧・室蘭(北海道)、麻里布(山口)、下松、大阪、玉島、松山、菊間などが順次休止・機能転換されています。ENEOS・出光・コスモの3社体制が現在の中核。

CDU/VDU/FCC等の主要装置

製油所は複数の分離・変換装置が直列/並列に組み合わされ、原油から多品種の製品を生産します。

CDU(常圧蒸留装置)

製油所の入口装置。原油を350℃程度に加熱し、蒸留塔で沸点差でLPG・ナフサ・灯油・軽油・残油に分離。BPDで表示される「製油所能力」はこのCDU処理能力を指すのが慣例です。

VDU(減圧蒸留装置)

CDU底部の重質残油(常圧残油)を減圧下で再蒸留し、VGO(減圧軽油)・VR(減圧残油)に分離。VGOはFCCの原料に、VRはCoker・アスファルトへ。

FCC(流動接触分解装置)

VGO・重質軽油を触媒(ゼオライト)で分解し、ガソリン・LPG・軽油に転換。日本の製油所高度化の中核装置で、能力は原油処理量の30〜50%規模。

HCU(水素化分解装置)

水素圧下で重質油を軽質化。触媒はNi-MoやNi-W系。低硫黄軽油・ジェット燃料の生産に必須で、環境規制強化に伴い増強される装置です。

Reformer(接触改質)

ナフサをPt系触媒で改質し、高オクタン価ガソリンとBTX(ベンゼン・トルエン・キシレン)を生成。ハイオクガソリン・石化原料の両方に必要。

Coker(コーカー・遅延コーカー)

VR(減圧残油)をコークス(炭素固体)とガス・液体に分解。ゼロ残渣化を実現し、アルミ電極用石油コークスも生産。日本では設置例が限定的。

SDM(定修)と稼働率の考え方

製油所は法定で4年に1度の定期修理(SDM: Scheduled Downtime Maintenance)が必須です。高圧ガス保安法・消防法に基づく検査・部品交換を実施します。

  • 1回のSDM期間 — 通常30〜60日、大規模なら90日超
  • 年間稼働日数の想定 — SDM考慮で340〜355日が典型的
  • 実稼働率 — 全能力に対し85〜95%(市場需給・故障・生産調整含む)
  • SDM時の代替供給 — 系列他製油所・輸入で埋め合わせ

SDM期間中は近隣製油所や輸入で需給を補完します。1つの製油所停止で日本の石油製品供給に大きな影響が出るため、事前計画と広域連携が経済産業省・石油連盟主導で行われます。

業界での応用

石油会社の運営計画

各製油所の処理能力・製品歩留り・SDMスケジュールから、年間生産計画・営業計画を策定。原油調達・製品出荷・在庫管理を最適化するリニアプログラム(LP)モデルの入力に用いられます。

エネルギー行政・需給計画

資源エネルギー庁が「石油需給見通し」を年次策定。国内需要と製油所処理能力のバランス、SDM影響、輸入依存度を分析。エネルギー基本計画・備蓄政策の基礎データ。

石油トレーディング

WTI・Brent・DubaiのCRUDE先物と、ガソリン・軽油の製品先物のCRACK SPREADからマージン分析。製油所の実処理能力と製品スロット確保が価格変動の要因になります。

石油備蓄・危機対応

国家備蓄+民間備蓄で消費量の約200日分を確保(IEA基準90日を大幅超過)。石油ローリー・タンカー輸送計画に処理能力データが必要。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が国家備蓄を管理。

石油化学連携

製油所ナフサ→エチレン・BTX→石油化学製品の垂直統合。コンビナート内の物質収支計算に処理能力データを使用。三菱ケミカル・住友化学等の石化各社とENEOS・出光・コスモの製油所が地理的に結合しています。

脱炭素・水素・SAF(持続可能航空燃料)

2050年カーボンニュートラルに向け、既存製油所インフラを活用したブルー水素・グリーン水素・SAF・バイオ燃料の生産計画。原油処理量削減トレンドの下で高付加価値化を模索。

よくある間違い・注意点

  • 1バレル=200Lと誤認 — 正しくは1バレル≒159L(158.987L)。42米ガロンを1バレルとした歴史的単位です。誤ると2〜3割の計算誤差になります。
  • 稼働率100%前提での計算 — 実際はSDM・故障・需給調整で稼働率85〜95%が現実的。年間処理量の推定には稼働率を必ず考慮してください。
  • CDU能力=製油所総能力の誤認 — CDUは入口装置で、FCC・HCU・Reformerなどの下流装置も稼働率に影響。総合能力はボトルネック工程に律速されます。
  • 公称能力と実効能力の混同 — 公表される「能力」は設計上の最大値で、環境負荷制約・製品需要バランスで実際の運転は70〜90%程度になることが多い。
  • 温度補正を忘れる — 原油売買は15℃基準体積(API MPMS Ch.11.1)。実測温度そのままで計量すると1%程度の誤差が発生します。
  • 硫黄分・API度の違いを無視 — 軽質Sweet原油(低硫黄・高API)は歩留りが良く、重質Sour原油(高硫黄・低API)は水素化脱硫コストがかかります。全原油同一と扱うのは要注意。

関連する規格・法令

  • 石油の備蓄の確保等に関する法律 ― 国家備蓄・民間備蓄の義務量を規定。90日分以上の備蓄を維持。
  • 石油精製業等に関する法律(石油業法) ― 精製設備能力・生産計画・製品供給に関する規制。
  • 高圧ガス保安法 ― 製油所内の高圧ガス設備の保安検査(4年ごとの定修)。
  • 消防法(危険物取扱) ― 石油タンク・配管の防災基準、貯蔵所の技術上の基準。
  • 大気汚染防止法・水質汚濁防止法 ― 製油所の排ガス・排水規制。SOx/NOx/BOD/COD等。
  • 計量法 ― 15℃基準体積による取引・証明の義務化(石油製品)。
  • JIS K 2249-1 ― 原油及び石油製品-密度の求め方及び密度・質量・容量換算表(15℃)。
  • JIS K 2202 ― 自動車ガソリン規格。オクタン価・硫黄分・ベンゼン分等の品質規定。
  • JIS K 2204 ― 軽油規格。セタン価・硫黄分・目詰まり点等の規定。
  • API MPMS Chapter 11.1 ― 石油製品の温度体積補正表(旧ASTM D1250)。

参考文献・公的資料

※本ページの数値・製油所一覧は公表資料に基づく参考値です。最新の稼働状況・能力変更・SDMスケジュールは各社リリースおよび資源エネルギー庁・石油連盟の公式統計を優先してください。実際のトレーディング・供給計画・投資判断は、石油業界専門家(高圧ガス製造保安責任者・危険物取扱者甲種等)および会社内の公式データによる検証を必ず行ってください。

よくある質問(FAQ)

日20万BPD・340日稼働の年間処理量は?

200,000 × 340 × 0.159 = 約1,081万kL/年。稼働率100%前提の理論値で、稼働率90%なら約973万kL/年。国内平均的な製油所1基分に相当します。

1バレルは何リットル?

1バレル(bbl) ≒ 158.987リットル(0.159 kL)。米国基準の42米ガロン=1バレルという単位で、世界の石油業界で共通使用されています。200Lや100Lではないため注意。

製油所のBPDは何を指す?

通常はCDU(常圧蒸留装置)の1日あたり原油処理バレル数を指します。製油所全体の入口能力の指標として使われ、下流のFCC・HCU等の能力とは区別されます。

SDM(定修)期間中はどう供給する?

系列他製油所・共同備蓄・製品輸入で埋め合わせるのが基本。事前に石油連盟・資源エネルギー庁と調整し、SDMスケジュールを分散配置して市場影響を最小化します。

国内製油所の総処理能力は?

2025年時点で約340万BPD(約20カ所)。ENEOS・出光興産・コスモ石油の3社が中核で、旧・室蘭・大阪・玉島などが順次休止された結果です。国内需要減退に応じた集約が進行中。

製品歩留りの目安は?

国内高度化製油所の目安: LPG3%、ナフサ15%、ガソリン23%、ジェット9%、灯油10%、軽油20%、A重油6%、C重油9%、アスファルト2%、コークス等3%。原油性状と装置構成で大きく変動します。

稼働率は通常何%?

実運転で85〜95%が典型的。100%は理論値で、SDM・故障・需給調整・環境制約で常に下振れます。国内平均稼働率は年80〜90%(石油連盟統計)。

WTI・Brent・Dubai の違いは?

WTIは米国産(軽質Sweet)、Brentは北海産(軽質Sweet)、Dubaiは中東産(中重質Sour)。日本の輸入原油の70%以上が中東産(Dubai系)で、価格連動性はDubaiが基準になります。API度・硫黄分の違いで精製コストが変わります。

石油の15℃基準体積補正とは?

石油業界では原油・製品を15℃相当の体積で計量する国際慣行。実測温度から15℃補正には、API MPMS Chapter 11.1の体積補正係数(VCF)表を適用します。日本の計量法上も軽油等取引は15℃基準。

製油所の脱炭素対応は?

2050年カーボンニュートラル達成に向け、①省エネ・熱回収強化、②CCS(CO₂回収貯留)、③水素製造装置化、④SAF・バイオ燃料生産、⑤エネルギートランジション拠点化 の5方向。既存インフラを活かした転用が経産省・NEDO主導で進行中。

国内石油需要は減っている?

はい、ピーク時(1999年)の約270万BPDから2024年には約270万BPDまで減少(EV化・燃費改善・人口減少)。今後も年1〜2%の減少ペースが見込まれ、製油所集約・脱炭素転換が進行中です。

石油備蓄はどれくらいある?

国家備蓄+民間備蓄で消費量の約200日分を確保(IEA基準90日を大幅超過)。国家備蓄はJOGMECが北海道苫小牧東部等の10カ所で管理、民間備蓄は各社が保有義務を果たしています。