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還気外気混合AHU全熱交換器省エネ

還気外気混合温度 計算ツール|AHU混合ボックス・外気負荷・全熱交換器・省エネ診断

AHU(空気調和機)の還気(RA)と外気(OA)を混合した混合空気温度を、外気温・還気温・外気導入率から瞬時に算出。全熱交換器あり/なしの外気負荷比較・CO₂濃度と必要換気量・熱回収率まで対応し、事務所・病院・工場・学校の空調設計と省エネ診断で頻用されます。建築物衛生法(ビル管理法)・SHASE-S(空気調和・衛生工学会規格)・建築物省エネ法・ZEB基準に照らして解説します。

最終更新:2026-08-08/監修:計算ツールズ編集部

還気外気混合温度 計算機

計算式と単位系

基本式(単純混合)

t_mix = t_r × (1 − r) + t_o × r

還気温 t_r と外気温 t_o を外気導入率 r (0〜1) の割合で線形加重平均したのが混合空気温度です。顕熱のみの単純式で、湿度を考慮しない場合や、比熱・密度の温度依存性を無視できる範囲で使用します。実際の設計では湿り空気線図(H-x線図)で顕熱・潜熱を含めた分析を行います。

全熱交換器(顕熱・潜熱回収)ありの場合

t_o' = t_o − η × (t_o − t_r)

t_mix' = t_r × (1 − r) + t_o' × r

全熱交換器(HEX; Heat Exchanger)は排気(EA)と外気(OA)を接触させ、温度・湿度を回収する装置。温度効率(顕熱効率)η = 60〜80% が典型的で、外気を実質的に還気温側へ寄せます。冷房時は外気温を下げ、暖房時は外気温を上げる方向に働き、コイル負荷を大幅削減できます。

コイル負荷(顕熱)

Q(kW) = 0.34 × Vs × Δt (概算式、標準空気)

Vs(m³/h)は総送風量、Δt(℃)は混合温度と給気目標温度の差。空気の比熱と密度の積 ρ×Cp ≒ 1.2 kJ/(m³·K)、1時間=3600秒で「Vs × Δt / 3600 × 1.2 ≒ Vs × Δt × 0.000333」→ kW換算で×1000する結果、簡便式 Q ≒ 0.34 × Vs × Δt が使われます。より正確には湿り空気線図でエンタルピー差から算定します。

還気・外気・給気の関係

用語略記意味
外気OA (Outside Air)屋外から取り入れる新鮮な空気
還気RA (Return Air)室内から循環して戻ってくる空気
給気SA (Supply Air)コイルで温湿度調整後、室内へ送る空気
排気EA (Exhaust Air)屋外に排出する使用済み空気
混合空気MA (Mixed Air)OA+RAを混合した空気(コイル入口)
還気率RA / (OA+RA) の比率 = (1 − 外気導入率)
外気導入率OA / (OA+RA) の比率

AHU(Air Handling Unit)は混合ボックス→フィルタ→冷温水コイル→加湿器→送風機の構成が標準。混合ボックスで外気と還気を機械的に混ぜて熱負荷を平準化し、コイルでの調整量を最小化します。

用途別 外気導入率(建築物衛生法・SHASE-S基準)

建築物衛生法(ビル管法)は延床3,000㎡以上の特定建築物に適用され、室内CO₂濃度1,000ppm以下を維持することを義務化しています。用途別の必要換気量は空気調和・衛生工学会規格(SHASE-S 102)で規定されています。

用途1人あたり必要換気量典型的外気導入率
事務所30 m³/(h·人)20〜30%
会議室・研修室36 m³/(h·人)30〜50%
飲食店36 m³/(h·人)30〜60%
学校普通教室22 m³/(h·人)30〜50%
病院一般病室36 m³/(h·人)50〜100%
手術室100% + HEPA
百貨店・物販店30 m³/(h·人)20〜30%
ホテル客室36 m³/(h·人)30〜50%
劇場・映画館29 m³/(h·人)20〜40%
体育館・アリーナ20〜60% (使用状況次第)
喫煙室・厨房100% (排気優先)

外気導入率が高いほどCO₂・臭気対策には有利ですが、外気負荷(冷暖房負荷)が増加します。全熱交換器の導入で両立を図るのが省エネ設計の定石です。

混合温度早見(還気26℃基準)

外気温 t_o \ 外気率10%20%30%50%70%100%
−5℃(冬季)22.919.816.710.54.3−5.0
0℃23.420.818.213.07.80.0
10℃24.422.821.218.014.810.0
18℃(中間期)25.224.423.622.020.418.0
26℃26.026.026.026.026.026.0
30℃26.426.827.228.028.830.0
33℃(夏季)26.727.428.129.530.933.0
35℃(酷暑)26.927.828.730.532.335.0

還気温を保つ(冷暖房で維持している室内温度)前提で、外気温と外気率の組み合わせから混合温度が求まります。冷房負荷は「混合温度 − 給気目標温度」に比例します。

全熱交換器の効果と選定

全熱交換器(Total Heat Exchanger)は顕熱(温度)と潜熱(湿度)の両方を回収する熱交換装置。回転式(ハニカムロータ)と静止式(セラミック/PET)の2形式が主流です。

効率と省エネ効果

  • 温度効率(顕熱効率)η_T — 60〜80%が実務値。80%以上は高効率機。
  • 湿度効率(潜熱効率)η_H — 55〜75%が典型的。回転式が高効率。
  • 外気負荷削減 — 60〜70%削減が典型的、初期投資回収3〜5年
  • ZEB(ネットゼロエネルギービル)基準 — 全熱交換器・高性能冷凍機・LED照明・BEMS等の組み合わせで達成

選定のポイント

  1. 設計外気風量に対する定格風量(80〜100%が経済的)
  2. 圧力損失(給排気ファン動力に直結、通常100〜200Pa)
  3. フィルタ+防塵性能・洗浄性
  4. 結露・霜対策(寒冷地はプレヒータ併設)
  5. スペース制約(天井内・機械室・屋上のいずれか)

近年はデシカント全熱交換器(除湿・調湿機能付)や、外気冷房制御と組み合わせた中間期節電機能を持つ機種も増加。BEMSと連動して自動制御する事例が主流です。

CO₂濃度と必要換気量

室内CO₂濃度は在室者の呼気で上昇し、集中力低下・眠気の要因となります。建築物衛生法で1,000ppm以下、健康な生活環境として850ppm以下が推奨されます。

必要換気量の算定式

Q_v (m³/h) = M × 1,000,000 / (C_i − C_o)

Mは在室者のCO₂排出量(kg/h・人、成人事務作業で約0.020 kg/h)、C_iは目標室内CO₂濃度(ppm)、C_oは外気CO₂濃度(現在420ppm前後)。事務所で1人あたり約30 m³/h の換気量が目安になる根拠。

外気導入率とCO₂管理

状況推奨外気率
通常事務(人密度普通)20〜30%
会議・研修時(人密度高)50%以上または一時増風量
コロナ・感染症対策厚労省ガイドライン30 m³/h以上/人
喫煙室100%(排気優先)

CO₂濃度センサ・在室者検知センサと連動したDCV(需要制御換気)で、必要時にのみ外気を増やすのが省エネ・空気質両立の最新設計です。

業界での応用

AHU(空気調和機)設計

AHU混合ボックスの外気ダンパ・還気ダンパ開度を制御して外気導入率を可変化。ダンパ機構・BEMS連動・季節切替スケジューリングで年間の冷暖房負荷を最適化します。オフィスビル・商業施設・ホテルの設計事務所・空調メーカーで日常業務。

外調機(OAHU/RAHU)の負荷計算

外気専用機(OAHU)と還気専用機(RAHU)を分離するダブルコイル方式は、冷房・暖房需要が異なるゾーンで有効。外気負荷の最大値を把握して冷凍機・ボイラ容量を選定します。

省エネ診断・BEMS運用

実測データからCO₂濃度・外気導入率・熱回収率を可視化し、無駄換気や過剰外気を検出。省エネ法定期報告・エネルギー使用合理化計画の根拠データとして活用。

感染症対策と換気設計

厚生労働省コロナ対策で外気導入強化(30 m³/h/人以上)、CO₂濃度1,000ppm以下厳守が推奨。既存施設では換気量測定と全熱交換器増設が主な対策。

クリーンルーム・病院手術室

外気100%または高外気率の設計。HEPAフィルタ・陽圧/陰圧制御・気流方向管理が必要。半導体・医薬・食品工場、手術室ではSHASE-S 010に基づく設計。

ZEB(ネットゼロエネルギービル)

建築物省エネ法の最上位「ZEB」認証取得には、全熱交換器・高効率冷凍機・LED・BEMS・再エネの組み合わせで一次エネルギー消費50%以上削減が必須。混合空気管理は最重要施策の1つ。

よくある間違い・注意点

  • 外気導入率ゼロで運転 — 省エネのため外気を絞りすぎるとCO₂濃度が上昇し、建築物衛生法違反(1,000ppm超)になります。特定建築物は法定義務、定期報告あり。
  • 外気導入率100%を漫然と維持 — 過剰外気は冷暖房負荷増。中間期(春秋)は外気冷房として活用しても、厳寒期・酷暑期は削減が省エネの定石。全熱交換器で両立を。
  • 顕熱のみで判断 — 実際の空調負荷は顕熱+潜熱の合計(全熱)。特に夏季高湿環境や冬季低湿環境では潜熱負荷が支配的になります。湿り空気線図での分析必須。
  • ダクトサイズ小で圧損増 — 外気ダクトを細く設計すると圧損増でファン動力が増大。省エネ設計は風速4〜8 m/sが標準。
  • 全熱交換器の効率を過信 — カタログ値は最適条件下。汚れ・目詰まりで実効率は数年で20〜30%低下することも。定期洗浄・フィルタ交換の運用計画が重要。
  • 喫煙室・厨房と一般空調の混合 — 臭気・煙対策として喫煙室・厨房・トイレ排気は空調系統から独立させ、100%排気が原則。混合すると全館に臭気拡散のリスク。

関連する規格・法令

  • 建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法・ビル管法) ― 延床3,000㎡以上の特定建築物に適用、CO₂濃度1,000ppm以下等。
  • 建築基準法(28条、シックハウス対策) ― 換気設備の義務化(0.5回/h以上の常時換気)。
  • 建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法) ― BEIによる一次エネルギー消費量規制。
  • SHASE-S 102 換気設備の設計・維持管理 ― 空気調和・衛生工学会規格。用途別の換気量・気流基準。
  • SHASE-S 010 空調・換気設備の設計基準 ― 病院・手術室・クリーンルームの気流・圧力管理。
  • JIS B 8628 熱交換器 ― 全熱交換器の性能試験方法・効率表示規格。
  • JIS B 8613 気流分布性能表示 ― 吹出口・吸込口の性能規定。
  • ZEB(Net Zero Energy Building)基準 ― 資源エネルギー庁・国交省が定める省エネ超高性能ビル認定基準。
  • 労働安全衛生法(事務所衛生基準規則) ― 事業場での室内CO₂・温度・湿度管理義務。
  • ASHRAE Standard 62.1 ― 米国の換気基準。国際的なベンチマーク。

参考文献・公的資料

※本ページの計算値・用途別基準は空調設計の参考値です。実際の建築物設計・確認申請・省エネ計算では、建築設備士・空調衛生設備専門家・建築主事の判断と、対象建築物の用途・面積・地域区分に応じた最新の法令・技術基準を必ず適用してください。特定建築物では建築物衛生法の定期報告義務があります。

よくある質問(FAQ)

還気26℃・外気33℃・外気導入率30%の混合温度は?

t_mix = 26 × 0.7 + 33 × 0.3 = 18.2 + 9.9 = 28.1℃。冷房負荷は外気0%時と比べて増加します。全熱交換器(温度効率70%)なら外気を実質28.1℃に近づけて負荷削減可能。

外気導入率はどう決める?

用途・在室人員・目標CO₂濃度から算定。事務所で20〜30%、会議室で30〜50%、病院で50〜100%が標準。建築物衛生法・SHASE-S 102の1人あたり必要換気量に基づいて設計します。

全熱交換器の効果はどれくらい?

温度効率60〜80%で、外気負荷を60〜70%削減できます。投資回収は3〜5年が典型。ZEB(ネットゼロエネルギービル)達成の必須アイテムで、建築物省エネ法の高性能基準にも寄与します。

CO₂濃度1,000ppm超はどうなる?

建築物衛生法違反となり、特定建築物では立入検査・指導対象になります。集中力低下・眠気・頭痛の原因となり、健康面でも問題。センサ設置・CO₂連動制御(DCV)で改善します。

外気冷房とは?

中間期(春秋)や早朝で外気温が室内目標温度より低い場合、冷凍機を止めて外気を100%導入し無料で冷房する制御。エアオンリー冷房・ナイトパージとも呼ばれ、大きな省エネ効果があります。BEMSで自動制御。

顕熱交換器と全熱交換器の違いは?

顕熱のみ回収=顕熱交換器(SHE)、顕熱+潜熱を回収=全熱交換器(THE)。日本の高湿環境では全熱交換器の方が省エネ効果大。回転式(ハニカムロータ)と静止式(セラミック/PET)があります。

ダクト風速の目安は?

主ダクトで6〜10 m/s、分岐ダクトで3〜6 m/s、吹出口で2〜4 m/sが標準。速すぎると騒音増、遅すぎるとダクトサイズ増でコスト高。ファン動力・空力損失・騒音のバランスで決定します。

喫煙室の換気は?

健康増進法(2020年改正)で分煙義務化。喫煙室は100%排気で陰圧維持、給気口から風速0.2 m/s以上の空気流入。空調系統から独立し、他室への煙拡散を防ぎます。

コロナ対策の換気強化は?

厚生労働省ガイドラインで1人あたり30 m³/h以上、CO₂濃度1,000ppm以下が推奨。既存施設では外気導入率を上げるか、全熱交換器・空気清浄機の増設が対策。

ZEB達成のための空調ポイントは?

①高効率冷凍機・ヒートポンプ、②全熱交換器導入、③BEMSによる需要制御換気(DCV)、④外気冷房・ナイトパージ活用、⑤高断熱・高気密外皮 の5点セットが必須。国交省ZEB基準で認定されます。

手術室・クリーンルームの外気導入率は?

原則100%外気で、HEPAフィルタ・陽圧維持・気流方向管理が必要。SHASE-S 010・ISO 14644(クリーンルーム清浄度)に基づく設計。手術室・ICU・NICUではさらに厳格な基準が適用されます。

デシカント全熱交換器とは?

吸湿剤(シリカゲル・ゼオライト等)を含む素子で、温度に加えて湿度回収能力を強化した全熱交換器。除湿再熱運転と組み合わせて、夏場の潜熱負荷削減に有効。産業用・大型ビルで普及。

寒冷地の全熱交換器はどう対策する?

外気温がマイナスになる寒冷地では排気側の水分が凍結し閉塞・破損リスクがあります。対策として①電気式プレヒータで外気を予熱、②間欠的なデフロスト運転、③外気バイパスダンパで一時的にHEXをバイパスする方式が採用されます。北海道・東北の寒冷地標準仕様として重要な設計項目です。