BCP策定費用
BCP(事業継続計画)の策定費用と年間維持費を従業員規模から試算する無料電卓。策定費の中身は機材ではなく分析と合意形成にかかる工数です。規模別の早見表、別枠で必要になる対策投資、公的な認定制度による支援措置まで解説します。
BCP策定費用ツール
計算式と前提
BCP(事業継続計画)の策定費用は、機材の値段ではなく人が動く時間の量で決まります。事業影響度分析から重要業務の洗い出し、目標復旧時間の設定、手順書の作成、訓練設計までの工数が、拠点数と業務プロセス数に比例して増えるためです。社員数はその代理指標として使っています。
策定費 = 規模別の標準工数 × 単価(内製なら人件費、外注ならコンサル日額8〜15万円)
年間維持費 = 策定費 × 20%(年1〜2回の訓練+計画の見直し+備蓄の入替+システム利用料)
既定値の「〜30名」では策定費300,000円、年間維持費60,000円を表示します。30〜100名なら1,000,000円と200,000円、100名以上なら3,000,000円と600,000円です。非常用発電機や安否確認システムなどの対策投資は、計画づくりとは別枠の設備費として扱うため、この金額には含みません。
規模別の費用早見表
本ツールが表示する金額と、その内側で想定している作業内容です。
| 従業員規模 | 策定費 | 年間維持費 | 想定される進め方 |
|---|---|---|---|
| 〜30名 | 300,000円 | 60,000円 | 公的機関の様式を使った内製が中心。専門家に数回だけ確認を依頼する形 |
| 30〜100名 | 1,000,000円 | 200,000円 | 外部支援を入れて事業影響度分析と手順書を作成。部門横断の調整会議が発生 |
| 100名以上 | 3,000,000円 | 600,000円 | 複数拠点・取引先を含めた分析、訓練シナリオ設計、経営層への報告体制まで整備 |
| 参考:認証取得まで行う場合 | +500,000〜1,500,000円 | +300,000円前後 | 国際規格の審査費用と年次のサーベイランス審査 |
計画づくりとは別に必要な対策投資
下記は「計画を実行できる状態にする」ための設備費で、上の策定費には含まれません。何をどこまで備えるかで総額が大きく変わります。
| 項目 | 初期費用の目安 | 継続費用の目安 |
|---|---|---|
| 非常用発電機・蓄電設備 | 1,000,000〜5,000,000円 | 年1回の点検で30,000〜100,000円 |
| 安否確認システム | 初期0〜200,000円 | 1人あたり月100〜200円 |
| データの遠隔バックアップ | 初期100,000〜500,000円 | 月20,000〜100,000円 |
| 備蓄品(3日分・1人あたり) | 10,000〜15,000円 | 賞味期限に応じて年20%程度を入替 |
| 衛星電話・業務用無線 | 100,000〜300,000円 | 月3,000〜10,000円 |
BCP策定費用の詳しい解説
BCPの費用が規模で階段状に上がるのは、作業量が人数ではなく、守るべき業務プロセスの数と部門間の調整回数で決まるからです。まず売上や信用への影響が大きい業務を特定する事業影響度分析を行い、それぞれに目標復旧時間を置き、必要な人員・設備・データ・取引先を洗い出して代替手段を決め、手順書と連絡体制へ落とし込みます。30名規模なら守る業務は数本に収まり、経営者が全体を把握しているため決定が速く進みます。100名を超えると部門ごとに重要業務の認識が食い違い、合意形成の会議が工数の相当部分を占めます。外部依頼の単価差ではなく、投入日数の差がそのまま金額差になります。
実務で判断が分かれるのは、内製と外注の線引きと、目標復旧時間をどこに置くかです。内製は費用を人件費に置き換えられる一方、担当者が通常業務と兼務すると完成しないまま止まる例が多く、結果的に高くつきます。外注は速く形になりますが、現場の実情を知らずに作られた手順書は訓練で破綻します。現実的なのは分析と枠組みを外部に任せ、現場の手順は自社で書く分担です。目標復旧時間は費用への影響が最も大きい変数です。「3日以内に再開」なら備蓄と連絡体制でおおむね足りますが、「翌日に再開」と決めた瞬間に代替拠点や非常用電源、遠隔バックアップが必要になり、対策投資が桁違いになります。
見落とされやすいのは、作った後の費用と計画の陳腐化です。年間維持費を策定費の20%と置くのは、年1〜2回の訓練、人事異動に伴う連絡網の更新、備蓄品の入替、安否確認システムの利用料がこの水準で発生するためです。訓練を一度も行わないBCPは、災害時に文書の所在すら分からないという形で機能しません。もう一つ見落とされがちなのが公的な支援です。中小企業向けの事業継続力強化計画は申請に費用がかからず、防災設備の税制優遇や補助金審査での加点、公的金融機関の低利融資の対象になります。損害保険の割引幅は限定的で、便益は取引先審査と資金調達の側にあります。
条件による違いも大きく出ます。製造業は設備と在庫、情報サービス業はデータと通信、小売業は店舗と物流網が要になり、対策投資の中身が入れ替わります。介護事業所では計画の策定と訓練が制度上求められ、未対応だと報酬上の不利益を受けるため、費用ではなく必須要件として扱う必要があります。立地も効き、津波や河川氾濫の想定区域にある拠点は代替拠点の確保が前提になります。大手の取引先から提出を求められる立場なら供給責任の観点が加わり、分析範囲が仕入先まで広がります。制度要件や契約上の義務が絡む場面では、専門家に確認しながら進めてください。
よくある間違い・注意点
- 策定費だけを予算化して維持費を忘れる — 訓練・見直し・備蓄の入替で毎年20%前後がかかります。初年度だけの費用として稟議を通すと、2年目以降に更新が止まります。
- 計画づくりと対策投資を混同する — 非常用電源やバックアップ環境は別枠の設備費です。策定費300,000円で災害対策が完了すると考えると、実行段階で予算が足りなくなります。
- 目標復旧時間を根拠なく短く設定する — 「翌日再開」と書いた瞬間に代替拠点と非常用電源が必要になります。まず現状で何日かかるかを測り、そこから短縮幅と費用を比べてください。
- 作って終わりにする — 訓練していない手順書は使われません。年1回でも安否確認の一斉送信と代替手段の確認を行うだけで、実効性は大きく変わります。
- 公的な支援制度を調べずに全額自己負担で進める — 中小企業向けの認定制度は申請に費用がかからず、防災設備の税制優遇や補助金の加点につながります。適用可否は要件で変わるため、所轄の窓口や専門家に確認してください。
参考資料・公的情報
- 中小企業庁 中小企業BCP策定運用指針 — 様式と記入例が公開されており、内製で進める場合の出発点になります。
- 中小企業庁 — 事業継続力強化計画の認定制度と支援措置。
- 内閣府 防災情報のページ — 事業継続ガイドラインと想定災害の考え方。
- 経済産業省 — 防災・減災設備に関する税制と産業政策。
- 厚生労働省 — 介護・医療分野における業務継続計画の要件。
- 総務省消防庁 — 消防計画・自衛消防組織との関係。
- 中小企業基盤整備機構 — 策定支援の相談窓口と実務事例。
- 日本規格協会 — 事業継続マネジメントの国際規格と関連書籍。
- 日本損害保険協会 — 企業向け災害保険の補償範囲と割引の考え方。
- 気象庁 — 地震・気象の想定と警報の運用。
※本ツールは公表資料と一般的な相場に基づく参考計算です。制度要件・税制優遇の適用可否・契約上の義務については、所轄官庁の窓口および税理士・社会保険労務士などの専門家にご確認ください。
よくある質問(FAQ)
BCPとは何ですか?
事業継続計画の略で、地震・水害・感染症・システム障害などが起きても重要な業務を止めない、あるいは早く再開するための計画です。防災計画が人命と資産を守ることを目的とするのに対し、BCPは事業をどの順番でどれだけ早く戻すかを決める点が違います。目標復旧時間と代替手段を具体的に書いていなければ、名前がBCPでも実質は防災マニュアルにとどまります。
策定は義務ですか?
一般の民間企業に一律の法的義務はありません。ただし介護事業所では業務継続計画の策定と訓練が制度上求められており、対応していないと報酬面で不利益を受ける仕組みになっています。また上場企業や大手の取引先を持つ事業者では、取引継続の条件として実質的に必須になっている場面が増えています。
策定するとどんな効果がありますか?
取引先の調達審査で有利になること、公的な認定を受けた場合に防災設備の税制優遇や補助金審査の加点が得られること、金融機関の融資判断で評価されることが主な効果です。損害保険料の割引を期待する声もありますが、割引幅は限定的で、主な便益は資金調達と取引維持の側にあると考えたほうが実態に近いです。
内製と外注はどちらが安く済みますか?
金額だけなら内製ですが、担当者が通常業務と兼務すると完成しないまま止まる例が多く、その場合は結果的に高くつきます。現実的なのは、事業影響度分析と全体の枠組みを外部に依頼し、現場の手順書は自社で書く分担です。公的機関が様式と記入例を無償公開しているため、30名規模なら内製の成功率は比較的高いといえます。
年間維持費20%の内訳は何ですか?
年1〜2回の訓練にかかる時間と資料作成、人事異動に合わせた連絡網と手順書の更新、備蓄品の期限切れ入替、安否確認システムの利用料です。備蓄は賞味期限がおおむね5年のため毎年20%前後を入れ替える計算になり、これだけでも継続費用が発生します。
事業継続力強化計画とBCPはどう違いますか?
事業継続力強化計画は中小企業向けの認定制度で、BCPより簡素な様式で防災・減災の取り組みを整理して申請します。認定を受けると支援措置の対象になります。BCPは制度ではなく計画そのものを指す言葉で、内容はより詳細です。まず認定制度で骨格を作り、必要に応じてBCPへ広げる進め方が取られます。
国際規格の認証を取ると費用はどれくらい増えますか?
審査費用として初回に500,000〜1,500,000円、その後も年次の維持審査で300,000円前後が目安です。認証は取引先への説明力を高めますが、認証が無くても計画の実効性は確保できます。取引先から明示的に求められているかを確認してから判断してください。