SWRから反射電力と損失を計算
SWRまたは進行波と反射波の測定値から、反射係数・反射電力・ミスマッチ損失と整合の判定を算出します。
SWRから反射電力と損失を計算ツール
反射係数は(SWR−1)÷(SWR+1)で求めます。既定値のSWR1.8では0.8÷2.8=0.29。リターンロスは−20×log10(0.29)で10.88dBです。反射する電力は出力50W×反射係数の二乗0.0816=4.1W、放射に回るのは45.9W。ミスマッチによる損失は−10×log10(1−0.0816)=0.37dBで、進行波52Wと反射波3Wの測定値から逆算したSWRは1.63となります。
SWRと反射電力・損失の関係
| SWR | 反射係数 | 反射する電力の割合 | ミスマッチ損失 |
|---|---|---|---|
| 1.0 | 0.00 | 0% | 0dB |
| 1.5 | 0.20 | 4.0% | 0.18dB |
| 2.0 | 0.33 | 11.1% | 0.51dB |
| 3.0 | 0.50 | 25.0% | 1.25dB |
周波数帯ごとの許容SWRの目安
| 周波数帯 | 目安のSWR | 超えたときの主な影響 |
|---|---|---|
| HF帯(30MHz未満) | 2.0以下 | 給電線損失が小さく影響は限定的 |
| VHF帯(30〜300MHz) | 1.8以下 | 給電線での再反射損失が増加 |
| UHF帯(300MHz超) | 1.5以下 | 損失が大きく実効出力が明確に低下 |
| 固体化終段の送信機 | 1.5〜2.0 | 保護回路が働き出力が絞られる |
※参考計算です。機材の仕様・規格・法令は改定されるため、実機の仕様書と最新の告示を確認してください。
SWRから反射電力と損失を計算の詳しい解説
定在波比が高いと電力が失われると説明されることがありますが、正確には反射した電力が消えるわけではありません。反射波は送信機側へ戻り、その一部は再び送出されます。実際に問題になるのは、往復するあいだに給電線で消費される損失と、終段の保護回路が働いて出力そのものが絞られる動作です。前者は周波数が高いほど、後者は送信機の設計によって効き方が変わります。
判断が分かれるのは、どこまでのSWRを許容するかです。短波帯では給電線の損失が小さいため2.0程度なら実害はほとんどなく、整合器で送信機側だけ整えれば運用できます。極超短波帯では同じSWRでも往復の損失が大きく、1.5を超えると実効出力の低下が測定できる水準になります。移動運用のように設置条件が毎回変わる場合は、完璧を目指すより短時間で許容範囲に収める判断が現実的です。
見落とされやすいのが測定位置です。SWR計を送信機の直後に置くと、給電線の損失が反射波を減衰させるため実際より低い値が表示されます。給電線が長く損失の大きい構成ほどこの差は広がり、アンテナ直下では2.5だったものが送信機側では1.8に見えることがあります。整合の良否を判断したいのか送信機の負荷条件を確認したいのかで、測る場所を使い分ける必要があります。
周囲の条件でも値は動きます。雨で被覆が濡れる、積雪でエレメントに水分が付く、近くの構造物が変わるといった要因で共振点はずれ、季節を通して同じ値にはなりません。また整合器で送信機側を合わせても、給電線とアンテナのあいだの反射は残ったままです。損失を本当に減らしたいのであれば、アンテナ側の寸法や給電部の整合を調整する必要があります。
測定器そのものの精度も見ておく必要があります。簡易な測定器は低い電力域や設計帯域の外では誤差が大きく、同じ状態を測っても機種によって0.2から0.3ほど値が違うことがあります。判定の境目にある値で悩むより、同じ測定器で継続して記録し、変化の方向を見るほうが実務では役に立ちます。急に値が悪化した場合は、アンテナ本体よりコネクタや接続部を先に疑うのが定石です。
業界・現場での使い方
アンテナの調整
共振点からのずれを反射係数として把握し、エレメント長の補正量を判断します。
移動運用の設営
設置直後の測定値から許容範囲に入っているかを判断し、調整の要否を決めます。
業務無線の保守点検
定期測定の値を記録し、給電線やコネクタの劣化による変化を早期に見つけます。
送信設備の設計
許容SWRから必要な整合の精度を決め、整合器や変換部の仕様を検討します。
よくある間違い・注意点
- SWRが1.0でなければ運用できないと考える — 短波帯では2.0程度まで実害が小さく、過度な追い込みは費用対効果に合いません。
- 送信機の直後で測った値をアンテナの状態と考える — 給電線の損失で反射波が減衰し、実際より良い値が表示されます。
- 整合器を入れれば損失が消えると考える — 整えられるのは送信機側だけで、給電線とアンテナ間の反射は残ります。
- 反射電力を単純な損失として扱う — 反射波の一部は再送出されるため、失われる量は往復の減衰分に限られます。
- 天候による変動を考慮しない — 雨や積雪で共振点がずれるため、一度の測定値で年間を通して判断できません。
関連する規格・公的資料
- 総務省 電波利用ホームページ — 電波・無線局
- 日本アマチュア無線連盟 (JARL) — アマチュア無線
- 情報通信研究機構 (NICT) — 電波・標準時
- 国立天文台 — 天文観測
- 宇宙航空研究開発機構 (JAXA) — 宇宙科学
- 日本産業標準調査会 (JISC) — JIS規格
- 産業技術総合研究所 — 計量標準
- 日本光学工業協会 — 光学機器
- 日本天文学会 — 天文学
- 総務省 — 情報通信行政
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。医療・法務・税務の判断は最新の告示・規格および専門家の判断に従ってください。
よくある質問(FAQ)
SWR1.8のとき反射する電力はどれくらいですか?
反射係数0.29の二乗で約8.2%です。出力50Wなら4.1Wが反射し、45.9Wが放射に回ります。
リターンロスとSWRはどう対応しますか?
SWR1.5で約14dB、1.8で約10.9dB、2.0で約9.5dBです。値が大きいほど反射が少ない状態を示します。
進行波と反射波からSWRを求められますか?
反射係数を反射波と進行波の比の平方根として求め、(1+反射係数)÷(1−反射係数)で計算します。
SWRはどこで測るのが正しいですか?
目的によります。アンテナの状態を見るならアンテナ直下、送信機の負荷条件を見るなら送信機側です。
SWRが高いと送信機は壊れますか?
近年の固体化終段は保護回路で出力を絞る設計が一般的です。ただし長時間の高SWR運用は避けるべきとされています。
特性インピーダンスが50Ω以外の場合はどうしますか?
測定器の基準インピーダンスと給電線が一致していないと値がずれます。同じ基準で測る必要があります。
周波数によって許容値が違うのはなぜですか?
給電線の損失が周波数とともに増えるため、同じSWRでも往復で失われる電力が大きくなります。
SWRを下げるには何から手を付けますか?
まずエレメント長と給電部の接続を確認します。コネクタの接触不良や被覆の浸水も高SWRの原因になります。