光ファイバ伝送損失 計算ツール|距離・接続数・波長からSMF/MMFの全損失と光バジェットを即算出
距離・融着接続数・コネクタ数・波長から光ファイバの総損失(dB)と光バジェット余裕を即算出。SMF/MMFの波長別減衰係数、GbE/10GbE/40GbEの伝送距離、OTDR測定による障害箇所推定、PONアクセス網の分岐損、EDFA光増幅による長距離化、DWDMの波長多重、海底ケーブルの中継設計まで、通信網設計・保守・現場実務を1画面で完結します。
光ファイバ伝送損失ツール
入力例と結果の読み方
光ファイバ工事の実務では、「10km区間・融着4箇所・コネクタ4箇所・1550nm」といった典型パターンで先に総損失を見積もり、光バジェットに収まるかを確認するのが基本フローです。
上のツールで各値を入力すると、総損失(dB)と光バジェット余裕(dB)が即座に算出されます。
余裕が3dB未満なら経路短縮・接続点削減の再検討、5dB以上なら十分な余裕確保という判断が実務上の目安。
EDFA挿入・波長変更を検討する場合も、まずはこのツールで基準値を掴んでから詳細設計に進むと効率的です。
計算式と単位系
総損失(dB) = 距離(km) × 減衰係数(dB/km) + 融着数 × 融着損(dB) + コネクタ数 × コネクタ損(dB)
光バジェット余裕(dB) = 送受信機バジェット(dB) − 総損失(dB)
光ファイバの伝送損失は、①ファイバ本体の減衰(km当たりの減衰係数×距離)、②融着接続点での接続損、③コネクタ差込部での挿入損、の合算で見積もります。1550nm帯のSMF(シングルモードファイバ)は約0.20dB/km、1310nm帯は約0.35dB/km、850nm帯のMMF(マルチモード)は約2.5dB/kmが標準値。融着接続は0.05dB前後、コネクタは0.3dB前後が実用目安です。10km・融着2箇所・コネクタ2箇所・1550nmなら合計約2.7dBとなり、標準的な光送受信機バジェット28dBに対して余裕25.3dBが確保できます。
光バジェットとは、送信器の出力パワーと受信器の最小感度の差を示す許容減衰量。GbE-LX(1310nm/長距離用)なら8〜11dB、10GBASE-LR(1310nm)なら6〜9dB、10GBASE-ER(1550nm/超長距離)なら15〜20dBが典型値です。光バジェット余裕が0dB以下になるとリンクエラーが多発するため、設計時は3〜5dBのマージン確保が実務ルールです。
損失要素と減衰係数早見表
| 要素 | 損失/係数 | 備考 |
|---|---|---|
| SMF 1310nm(O-band) | 0.32〜0.40 dB/km | 短中距離Ethernet標準 |
| SMF 1550nm(C-band) | 0.18〜0.22 dB/km | 長距離幹線・DWDM標準 |
| SMF 1625nm(L-band) | 0.22〜0.28 dB/km | DWDM拡張・監視波長 |
| MMF 850nm(OM3/OM4) | 2.3〜3.0 dB/km | データセンター短距離 |
| MMF 1300nm | 0.5〜1.0 dB/km | MMFの長波長帯 |
| 融着接続 | 0.03〜0.10 dB | アーク放電による溶融接続 |
| メカニカルスプライス | 0.2〜0.5 dB | 簡易接続・仮復旧用 |
| SCコネクタ(PC研磨) | 0.2〜0.5 dB | 戻り光反射-40dB以上 |
| LCコネクタ(UPC研磨) | 0.2〜0.4 dB | データセンター標準 |
| APCコネクタ(斜め研磨) | 0.3〜0.5 dB | 戻り光反射-60dB以上 |
| 光カプラ(2分岐) | 3.4〜3.6 dB | 50:50分岐 |
| 光カプラ(1×8分岐PON) | 10.5〜11.0 dB | 加入者網の分岐損 |
光ファイバ伝送損失の詳しい解説
光ファイバ伝送損失は「通信距離・信号品質・網トポロジー設計の決定要素」です。信号の減衰要因はレイリー散乱・吸収・曲げ損・接続損の4種類。石英ガラスファイバでは1550nm帯が理論限界に近い0.15dB/km(先端品)まで低損失化されており、これが長距離幹線・海底ケーブルの主要波長になっている理由です。1550nm帯のGbEなら再生中継なしで70km、10GBASE-ERなら40kmが伝送可能。中継器・EDFA光増幅器を挿入すれば数百km〜数千kmの長距離化が可能で、日米間・欧米間の海底ケーブルは1万km級の光伝送を実現しています。
実務では「光バジェット設計+3〜5dBマージン」が鉄則です。設計時に総損失を精密に見積もっても、経年劣化・接続部の汚損・環境温度変化・微小曲げ損の蓄積で0.5〜2dB程度の余裕消費が発生します。特に外線工事後は接続部の完了検査(OTDR測定・パワーメータ測定)で総損失を実測し、設計値との差異を評価するのが標準手順。差異が1dB以上ある箇所は再融着・清掃・コネクタ交換で改善します。
都市部の地中ケーブル・電柱共架ケーブルでは、埋設・引き込み・立ち上げ・端子箱までに10〜20箇所の融着とコネクタが介在します。1箇所0.1dB前後の損失でも累積で2〜3dBに達するため、幹線設計時から接続点数を最小化する経路取りが重要です。データセンター内の短距離配線では、コネクタ挿入損の累積(0.3dB×パッチ4段=1.2dB)がボトルネックになりやすく、MPO-12/24等の多芯コネクタで接続点数を削減する設計が定石です。
光ファイバは電気ケーブルと違い電磁誘導・雷サージの影響を受けないのが最大の特徴。工場の高電圧環境・落雷多発地域・データセンターの絶縁分離では、光ファイバがメタルケーブルより信頼性が高くなります。ただしファイバ自体は絶縁でも、金属被覆(SUS/アルミ)や外部の吊り線からアース経路が形成される場合があり、雷対策では光/電気の境界(メディアコンバータ)でのSPD設置が必要です。
SMFとMMFの選び分け
光ファイバはSMF(シングルモード)とMMF(マルチモード)の2種類に大別されます。SMFはコア径9μm・波長1310/1550nmを主流とする長距離・高速用、MMFはコア径50/62.5μm・波長850/1300nmで短距離・低コスト用。データセンター内の300m以下ならOM3/OM4のMMF、建物間・キャンパス間の1km〜はSMFという設計が標準です。
SMF(OS2 ITU-T G.652.D)
コア径9μm、1310nm(O-band)・1550nm(C-band)使用。長距離・高速通信の標準。ゼロ分散1310nm/最低損失1550nm。データセンター間・幹線・海底ケーブル。
MMF OM3(50μm)
10GBASE-SR対応で300m、40GBASE-SR4/100GBASE-SR4で100m。青系アクア色のケーブル被覆。データセンター内の10G/40Gリンクの標準。
MMF OM4(50μm/低減衰)
OM3の伝送距離を約1.4倍に延伸(10GBASE-SR 400m/40GBASE-SR4 150m)。データセンター拡張やハイパースケール用途。ライラック色被覆。
MMF OM5(WBMMF)
Wideband MMF。SWDM(短波長WDM)により1本で40G/100G/400G伝送。既設OM3/OM4置換の高集約化用途。ライム色被覆で識別。
選定の実務ポイントは「距離+速度+コスト」の3軸バランス。300m以下ならMMFが電気機器(光トランシーバ)込みで低コスト、300m〜10kmはSMFの1310nm(GbE-LX/10GBASE-LR)、10km〜40kmはSMFの1310nm延伸/1550nm、40km超は1550nmのDWDM+EDFAが定石です。長距離になるほど電気機器(SFP+/QSFP)の単価が上がるため、伝送距離短縮の経路設計とのトレードオフを検討します。
Ethernet規格別の伝送距離
光ファイバEthernetは規格ごとに使用波長・ファイバ種別・伝送距離が定義されています。光バジェット設計はまず「規格の目安距離」で判断し、その上で実測損失・マージンを検証するのが標準手順です。
| 規格 | 波長 | ファイバ | 伝送距離 |
|---|---|---|---|
| 1000BASE-SX | 850nm | MMF OM3 | 550m |
| 1000BASE-LX | 1310nm | SMF | 10km |
| 10GBASE-SR | 850nm | MMF OM4 | 400m |
| 10GBASE-LR | 1310nm | SMF | 10km |
| 10GBASE-ER | 1550nm | SMF | 40km |
| 10GBASE-ZR | 1550nm | SMF | 80km |
| 40GBASE-SR4 | 850nm×4 | MMF OM4 | 150m |
| 40GBASE-LR4 | WDM 1300nm帯 | SMF | 10km |
| 100GBASE-SR4 | 850nm×4 | MMF OM4 | 100m |
| 100GBASE-LR4 | WDM 1300nm帯 | SMF | 10km |
| 100GBASE-ER4 | WDM 1300nm帯 | SMF | 40km |
| 400GBASE-DR4 | 1310nm×4(パラレル) | SMF | 500m |
| 400GBASE-LR8 | WDM 1300nm帯 | SMF | 10km |
規格名の末尾記号は「S=Short(数百m)・L=Long(10km)・E=Extended(40km)・Z=超長距離(80km)」の距離クラスを示します。IEEE 802.3の各章で定義される光バジェットは、最悪ケース(ファイバ最大損失+コネクタ規定数)を想定した値。実務では「規格の距離目安」でおおよそ判断し、実測損失で余裕を確認するのが二段階チェックです。
OTDR測定と障害箇所推定
OTDR(Optical Time Domain Reflectometer)は光ファイバの片端からパルス光を送出し、後方散乱光の時間変化を測定してファイバ長・接続点・断線箇所を可視化する保守用の必須機器。パルス光が反射・散乱して戻ってくる時間と強度から、①ファイバ全長、②接続点(融着/コネクタ)の位置と損失、③断線箇所、④曲げ損の異常、を推定できます。1550nm帯なら1回の測定で40〜60km、専用の長距離モードなら200km以上まで測定可能です。
ファイバ全長測定
パルス光の往復時間×光速÷屈折率(約1.468)÷2で距離換算。500m〜200kmの範囲を10m単位で測定。開通試験・完了検査で全長確認。
接続点損失の測定
各接続点で数値化。0.05dB以下=良好、0.1dB=許容、0.3dB以上=要再融着。合格判定で工事完了。
断線箇所の推定
大型反射ピーク+以降の後方散乱消失で断線位置を10m以下の精度で特定。復旧作業の掘削位置決めに使用。
曲げ損・接続不良の検出
点損失0.5dB以上の突発ロスは曲げ半径不足・接続部汚損・端面破損を示唆。清掃・再融着で改善するかを段階的に検証。
OTDR測定の実務ではデッドゾーン(近端の測定不能領域)に注意が必要です。パルス光の直後は反射波が受光素子を飽和させるため、近端5〜100m(パルス幅による)は解析不能。近端測定にはダミーファイバ(ローンチファイバ)500m〜1kmを介挿することで測定範囲を確保します。データセンター内の短距離配線ではローンチファイバなしでは測定できない領域が発生するため、ハンドヘルド型のパワーメータ+光源セットによる損失測定が並行手段です。
PONアクセス網の分岐損設計
PON(Passive Optical Network)は、局舎から加入者宅までを光カプラの分岐で1本のファイバを共有する光アクセス方式。日本のFTTH(GE-PON/10G-EPON)・海外のGPON/XG-PONの主流方式で、1本のSMFを1:32〜1:64に分岐して各家庭に配信します。分岐数が多いほど分岐損が大きくなり、光バジェットの制約が厳しくなるのがPON設計の核心課題です。
| 分岐比 | 理論分岐損 | 実挿入損 | 典型用途 |
|---|---|---|---|
| 1×2 | 3.0 dB | 3.4〜3.7 dB | 幹線分岐 |
| 1×4 | 6.0 dB | 6.5〜7.0 dB | 集合住宅分岐 |
| 1×8 | 9.0 dB | 10.5〜11.0 dB | 戸建て集約 |
| 1×16 | 12.0 dB | 13.5〜14.5 dB | マンション幹線 |
| 1×32 | 15.0 dB | 17.0〜18.5 dB | GE-PON標準 |
| 1×64 | 18.0 dB | 20.5〜22.0 dB | XG-PON/10G-EPON |
GE-PONの光バジェットはClass B+(28dB)/C+(32dB)で規定されており、1×32分岐で18dBの分岐損、そこにファイバ損失(20km×0.35=7dB)+接続損(0.5〜1dB)を加えて合計25.5〜26.5dBの総損失。Class B+では2.5〜3dBの余裕、C+では6dB余裕という設計になります。10G-EPONではさらに厳しいバジェット制約から、1×32を上限とする運用が一般的です。
PONの光カプラは受動素子(電源不要)なので、局舎側OLTから多数のONU(加入者側終端装置)を無電源の分岐で束ねられるのが最大のメリット。1台のOLTで最大64加入者を収容できることで、都市部のFTTHが低コストで実現しています。カプラは屋外電柱・共架設備・地下MHの端子箱に設置され、屋内・屋外の温度サイクル(-20〜+70℃)に耐える防水・防塵性能が要求されます。
EDFA光増幅による長距離化
EDFA(Erbium-Doped Fiber Amplifier)は、エルビウムイオン(Er3+)を添加した特殊光ファイバに励起光(980nm/1480nm)を注入し、通過する信号光(1550nm帯)を光のまま増幅する装置。1台で15〜30dBの利得が得られ、電気変換を挟まずに光信号を再増幅できるため、長距離幹線・海底ケーブルの主力デバイスとなっています。
典型的な長距離幹線の設計では、80〜100km毎にEDFAを挿入し、最大数千kmを再生中継なしで伝送します。太平洋横断の海底ケーブルは約60〜80km毎にEDFAを海底設置(電源は海底ケーブル内の給電線から供給)、日米間8,000〜10,000kmを100〜130段のEDFAで中継します。EDFAの性能限界はASE雑音(自然放出雑音)の累積で、段数×3〜5dBの雑音指数悪化が信号品質(BER)の律速条件になります。
ブースタEDFA(送信側)
送信器の出力を+10〜+15dBmに増幅し、長距離伝送の初段で使用。飽和動作で出力パワー確保。
インライン EDFA(中継)
60〜100km毎の中継点に配置。20〜25dBの利得で減衰した信号を再度パワーアップ。海底ケーブルの主力。
プリアンプEDFA(受信側)
受信器直前で低雑音増幅。雑音指数4〜5dBの高性能素子で受信感度を改善。ラマン増幅と併用も一般的。
ラマン増幅器
ファイバ自体を利得媒体とする分布増幅方式。EDFAより雑音特性が良く、ウルトラロングホール伝送で採用。
WDM/DWDMの波長多重
WDM(Wavelength Division Multiplexing)は、1本の光ファイバに複数の波長を多重して伝送容量を拡大する技術。粗多重のCWDM(1270〜1610nmを20nm間隔で8〜18波)と密多重のDWDM(1530〜1565nmを0.4〜0.8nm間隔で40〜160波)があります。長距離幹線・データセンター間接続の高帯域化は基本的にDWDM+EDFAの組み合わせです。
DWDMシステムの設計では、①光バジェット(EDFA含めた全体パワーバランス)、②波長ごとのSNR(信号対雑音比)、③非線形効果(自己位相変調・相互位相変調・四光波混合)、④色分散・偏波モード分散、を総合的に見積もる必要があります。特に非線形効果は入力パワーを上げるほど顕著になるため、単純に「EDFAで増幅→伝送距離延伸」とはならないのがDWDM設計の難所です。
2024年時点のDWDM先端システムは、1波長あたり400Gbps(コヒーレント伝送)、160波多重で1ファイバ64Tbpsの伝送容量を実現。日本国内のバックボーン網や太平洋横断ケーブルはこの世代の技術で構築されており、AI/クラウド需要による通信量爆発に対応しています。ファイバ1本の物理的限界(シャノン容量)は約100Tbps程度とされ、これを超える需要には空間多重(SDM)技術やマルチコアファイバの実用化が進められています。
コヒーレント伝送(Coherent Detection)は、送信側でレーザ光の位相・振幅・偏波を精密制御し、受信側でデジタル信号処理(DSP)により復調する方式。従来の強度変調(オンオフキーイング)から、QPSK・16QAM・64QAMの多値位相変調へと進化することで、シンボル当たりの情報量を2〜6倍に高密度化。さらにDSPによる色分散・偏波モード分散の電子補償が可能になり、物理的な分散補償ファイバ(DCF)を廃止できる利点もあります。100G/200G/400G/800Gの高速コヒーレント光トランシーバ(CFP2/QSFP-DD/OSFP形状)が2020年代以降のデータセンター相互接続の主軸です。
業界・現場での使い方
光ファイバ伝送損失計算は、通信キャリア・データセンター事業者・製造業のFA/OT・ケーブルテレビ・研究機関まで幅広い現場で日常的に使われる基礎技術です。
通信キャリア(NTT/KDDI/SB等)
幹線・アクセス網の設計・保守。FTTH加入者接続の光バジェット計算、局舎間伝送路のEDFA配置、故障時のOTDR切り分け。
データセンター事業者
ラック間・DC間の光配線設計。10G/40G/100G/400G規格の距離・波長選定。MPOカセット・パッチパネルの損失管理。
製造業のFA/工場ネットワーク
PLC・制御機器の光接続。電磁環境の悪い工場でメタルEthernetをMedia Converterで光化、絶縁とノイズ耐性を確保。
ケーブルテレビ(CATV)事業者
HFC(Hybrid Fiber-Coax)ネットワークの光部分。光ノードから加入者宅までの分岐損計算、映像品質担保。
海底ケーブル・国際通信事業者
太平洋横断・大西洋横断ケーブルの設計。EDFA中継段数・ASE雑音累積・非線形効果の総合設計。
研究機関・学術ネットワーク
SINET・国際研究網の高速接続。実験用途の長距離コヒーレント伝送、量子鍵配送(QKD)、光時計配信網。
よくある間違い・注意点
光ファイバ伝送損失の計算・設計は、規格・実測・保守で扱う数値が微妙に異なり、実務では前提の取り違えで判断を誤りやすいポイントがあります。
- 波長の混同 — 1310nmと1550nmで減衰係数が約1.7倍違う。1550nm前提の設計値を1310nmで運用すると余裕不足に。
- SMFとMMFの混用 — コア径が異なるため接続すると10dB以上の巨大損失が発生。パッチコード・カセットの色分け(黄=SMF、水色/紫/緑=MMF各種)で識別。
- メカニカルスプライスの過信 — 応急復旧用の簡易接続で、経年劣化で損失増加。原則は融着接続で本復旧。
- コネクタ端面の清掃不足 — 端面の油脂・微小粉塵で0.5〜数dBの損失増加+反射光増加。専用クリーナで清掃、顕微鏡で確認。
- 曲げ半径の不足 — 最小曲げ半径(SMF:30mm/MMF:20mm)を割ると急激に損失増加。パッチパネル配線・端子箱内の折り返しで頻発。
- 光バジェットの誤解 — 光バジェットは「余裕」ではなく「許容減衰量」。総損失≦光バジェットが動作条件、余裕はさらに3〜5dB確保。
- OTDRの近端デッドゾーン無視 — 近端5〜100mは測定不能。データセンター内の短距離配線はダミーファイバ介挿かパワーメータ実測を併用。
- DWDMの非線形効果無視 — EDFAで増幅すればいくらでも伸ばせるわけではなく、四光波混合・自己位相変調で信号品質が悪化。ファイバ入力パワー上限(0dBm/ch程度)を守る。
- 波長分散の見落とし — 高速伝送(10G以上)ではSMFの色分散(17ps/nm/km@1550nm)がパルス広がりを引き起こす。長距離・高速では分散補償が必須。
- 光反射の見落とし(戻り光) — APCコネクタ(斜め研磨)を使わないと反射光がレーザに戻り、レーザ発振不安定化・BER悪化。長距離・DWDM系ではAPC必須。
- OTDR単独での合否判定 — OTDRは片方向測定で、双方向測定(両端から測定して平均)しないと接続損の正負(みかけ上の利得)が発生。長距離幹線は双方向必須。
- 設計値と実測値の乖離 — 実際の敷設ケーブルは製造ロット・環境で±10%の減衰係数変動。完了検査での実測値ベースで再評価するのが標準手順。
関連する規格・法規
光ファイバ伝送に関わる主要な国内外の規格を整理します。設計・製造・保守の実務で参照される標準です。
- ITU-T G.652 ― 汎用シングルモード光ファイバ(通称SMF/OS2)の国際規格。1310nm/1550nm帯の特性、モードフィールド径、色分散を規定。
- ITU-T G.653/G.655/G.657 ― 分散シフトファイバ(DSF)、非零分散シフトファイバ(NZ-DSF)、曲げ耐性ファイバの規格。用途別の光ファイバ選定基準。
- ITU-T G.694.1/G.694.2 ― DWDM/CWDMの波長グリッド規格。DWDMは1530〜1565nmの周波数グリッド、CWDMは1270〜1610nmの20nm間隔グリッド。
- JIS C 6820/C 6823 ― 光ファイバ通則および試験方法。国内の光ファイバ製造・試験の基準規格。
- IEEE 802.3 ― Ethernet規格。1000BASE-SX/LX、10GBASE-SR/LR/ER、40G/100G/400Gの物理層仕様と光バジェット規定。
- IEC 61300シリーズ ― 光ファイバ相互接続デバイス及び受動部品の試験・測定手順。挿入損・反射減衰量の測定法。
- 電気通信事業法 ― 電気通信設備の技術基準。通信キャリアの光ネットワークが遵守すべき基準法。
※本ツールは公的基準に基づく参考計算です。実際の設計・施工・保守は、最新のITU-T/JIS/IEEE規格および所轄官庁・通信事業者の判断に従ってください。
参考文献・公的資料
光ファイバ・光通信の一次情報は、以下の国際機関・国内標準化団体・公的機関を参照してください。
- ITU-T 勧告(Gシリーズ) ― 光ファイバ・光伝送システム・光ネットワークの国際標準。G.652(SMF)、G.655(NZ-DSF)、G.657(曲げ耐性)等。
- IEEE 802.3 Ethernet標準 ― Ethernet全規格の一次情報。光インタフェースの波長・距離・光バジェット規定。
- IEC(国際電気標準会議) ― IEC 61300(光ファイバ接続部品試験)、IEC 60793(光ファイバ)等の光関連国際規格。
- 日本規格協会(JSA) ― JIS C 6820/6823等の国内光ファイバ規格。JIS購入・閲覧窓口。
- 総務省 情報通信政策 ― 電気通信事業法・技術基準・光アクセス整備計画の一次情報。
- 情報通信研究機構(NICT) ― 国立研究機関。空間多重・マルチコアファイバ・量子光通信の最先端研究。
- 日本電気通信端末機器審査協会 ― 光端末の技術基準適合認定機関。
- JEITA(電子情報技術産業協会) ― 国内の光通信部品業界団体。標準化・市場動向・技術セミナー。
- NTT研究所 ― 国内主要通信事業者の研究部門。空間多重・光増幅・光交換等の技術報告。
よくある質問(FAQ)
10km・融着2・コネクタ2の1550nm損失は?
10km × 0.20dB/km + 2 × 0.05dB + 2 × 0.3dB = 2.0 + 0.1 + 0.6 = 約2.7dB。10GBASE-LR(光バジェット6〜9dB)なら余裕3〜6dBで動作可能。
SMFとMMFはどう選ぶ?
300m以下・データセンター内=MMF(OM3/OM4)、1km〜10km・建物間=SMFの1310nm(GbE-LX/10GBASE-LR)、40km超=SMFの1550nm(10GBASE-ER)が定石。距離・速度・電気機器コストの3軸で判定します。
光バジェット余裕はどれくらい必要?
設計時は3〜5dBのマージンを確保。経年劣化(20年で0.5〜1dB)・接続部の汚損(0.5〜2dB)・温度変化(±0.5dB)の余裕消費を見込みます。
OTDRとパワーメータの使い分けは?
OTDRは接続点の位置と損失を可視化(工事完了検査・障害切り分け)、パワーメータ+光源は全長総損失の実測(合否判定)。用途で使い分けます。長距離幹線はOTDR中心、DC内短距離はパワーメータ中心。
光バジェット不足時の対処は?
①経路短縮、②接続点数の削減、③高性能SFP(受信感度の高い品)への交換、④EDFA挿入(長距離)、⑤DWDM化(帯域確保)、⑥波長変更(1310→1550の低損失波長へ)。順に検討します。
PONの1×32分岐は何dBの損失?
理論分岐損15dB+実装損2〜3dBで17〜18dB。GE-PON Class B+(28dBバジェット)なら幹線20km(7dB)を加えても25dBで2〜3dB余裕。C+(32dB)ならさらに余裕。
APCとUPCコネクタの違いは?
UPC=垂直研磨、反射-40〜-50dB。APC=8度斜め研磨、反射-60dB以上。長距離・DWDM・PON・アナログ映像系はAPC必須(戻り光でレーザ不安定化を防ぐ)、短距離データ通信はUPCで可。混在接続不可(接続すると大損失)。
海底ケーブルの中継設計は?
60〜100km毎にEDFAを海底設置、太平洋横断1万kmを100〜130段で中継。海底ケーブル内の給電線でEDFAに電源供給。DWDMで数十波多重し、1ファイバあたり10〜30Tbpsの帯域を確保。
光ファイバ通信のメリットは?
①低損失(1550nmで0.2dB/km、メタルの1/100以下)、②高速(1本で数十Tbps)、③電磁誘導耐性(工場・雷対策)、④絶縁性、⑤細径軽量(メタルの1/10の重量)、⑥盗聴困難(電磁波が漏れない)。長距離・高速・耐環境用途で圧倒的優位。
MMFの伝送距離がSMFに比べて短い理由は?
MMFは複数の光路(モード)を伝搬させるため、モード間の到達時間差(モード分散)がパルス広がりを引き起こし、高速通信の距離を制限。10Gbpsで数百m、100Gbpsでは100m前後が限界。SMFはシングルモードのためモード分散がなく、10km以上の長距離高速通信が可能です。
光ファイバの寿命は?
石英ガラス自体は理論上100年以上劣化しませんが、実運用ではコーティング(UV硬化樹脂)の経年劣化・水分侵入によるOH基増加・微小曲げの累積で20〜30年の設計寿命が一般的。海底ケーブルは25年設計、地上幹線は20〜30年で更新計画されるのが実務標準です。
1本のファイバでどれくらいの帯域が使える?
SMFのシャノン容量限界は理論的に約100Tbps。2024年の商用DWDMは1ファイバ64Tbps(400G×160波)まで実現。研究段階では単一コアで200Tbps、マルチコアファイバ(4〜19コア)や少数モードファイバでは1〜10Pbpsのデモも成功しています。